暴虐の果て

たじ

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第12話

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4月12日

「……ハァーッ……!」

俺は息を詰めて隠れていたロッカーから出て一息ついた。

迷い込んだ部屋は10畳程の広さで、部屋の中央にはパイプ椅子とスチール机が一つずつ置いてあり、部屋の左隅には先程俺が身を隠していたロッカーが、そして右側の壁際には金属製のキャビネットが置いてある。

キャビネットの上部にはガラス戸がついており、ガラスを透かして見ると、中には何かの液体が入った茶色の薬品の瓶のようなものがギッシリと詰め込まれている。

一体、何だろこれ……?

何だか妙にキャビネットが気になった。

一応キャビネットには鍵が掛かっているものの、机の上には無造作に鍵が置いてあったのでとりあえず鍵穴に鍵を差し込むとすんなり鍵は開いた。

キャビネットの下部の戸を開くと、中にはプラスチックのファイルが何冊か置いてある。

一冊抜き出してパラパラとめくってみる。

そこには、薬品瓶に詰められた液体について汚い字で記述があった。

"この薬はアイツの隠れ家から頂戴してきたものを元に更なる調整が加えてある。
キマルと幻覚と過去の出来事がグチャグチャになってすんごい気持ちよくなれる。
元の薬は未知の深海魚の身を使ったものみたいだけど、それ以外にも色々混ざってる。
それについてはファイルAを参照の事。"

「……何だこれ?ドラッグなのこれ?」

思わず茶色の薬品瓶をジッと見てしまう。

……とりあえず続きを読もう。

"監禁したやつらにはこの薬を直接注射したり、混ぜたパンと水を与えてある。一度これをやると中毒性がエグいからヤメられなくなる。ヤメようとすると耐えられなくなる程、頭痛と吐き気に襲われちゃう!でも、俺は一杯持ってるからだいじょーび!!"

……ちょっと待てよ……。……じゃあ、俺も………?
ゾワリ、と背筋が寒くなった。

……この記述が本当なら、薬も一緒に持っていった方がいいんじゃないか?
じゃないと、逃げてる途中で禁断症状が出たりしたら大変な事になるんじゃあ……?

……例え警察に届けるにしろ、薬の禁断症状に耐えられなくなって使ってしまうにしろ、どちらにしても何本か持っていった方が…………。

でも、何か瓶を持ち運べるような入れ物がないと、剥き出しのまま持っていく訳にもいかないな……。

そこで俺がさっき入っていたロッカーを開けて見てみると、ちょうどおあつらえ向きにナイロン製のリュックサックが一つ入っていた。

「……………………。
……とりあえずファイルと薬瓶をリュックに詰めよう。」

……そして俺はファイルと薬の瓶を詰めたリュックサックを担いで部屋からソーッと音を立てないように出た。





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