暴虐の果て

たじ

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第37話

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11月13日午前0:00過ぎ

謎の女と別れたマキは、あれから何とか山の麓まで向かおうとしていた。

しかし、そうは言っても、徒歩である。
どうやら、マキの監禁されていた屋敷は、山の頂上付近にあったらしく、歩けども歩けども一向に麓まで辿り着けないでいた。

これが、まだ昼間のうちならば、通りかかった車をヒッチハイクして乗せてもらうことも出来るだろうが、深夜なので車は一台も走っていない。

……早く、早くしないと、ひょっとすると、犯人たちが追いかけてくるかも……。

気が急くあまり、マキは道路の端に落ちていた小石につまづいて転倒してしまう。

「……キャッッ!!」

なんとか、手をついて顔から落ちることは避けられたものの、

「…………痛いっっ!!」

マキの右足に鋭い痛みが走る。

「……うっ!いたたたた…………」

そろそろと立ち上がり、足首を確認すると紫色になっている。

どうやら、転んだ際右の足首を捻ってしまったらしい。

歩くこと自体は出来るものの、その動きはやはりどこかぎこちなかった。

それでも右足を庇いながら、ヒョコヒョコと下へ下へと下っている途中で、後方から車の走行音が聞こえた気がした。

もしも、犯人が追ってきているとしたら…………。
瞬間マキの背筋が、スーーッと寒くなる。

「……とにかく、どこかに隠れないと……」

そう呟きながら、傍らの茂みから山の中へと入っていって木の陰に隠れる。

少しして眼下の道を一台の車が通りすぎていった。やけに、スピードを上げていた車の様子からやはり犯人たちが逃げだした自分を追ってきたのだと、マキは確信する。

…………これから、一体どうしたらいいのだろう。こんなときに、恋人で先輩所員のシンジがいたらきっと冷静にアドバイスしてくれるだろうに…………。

そう考えたマキの口から、はあっ、とため息が知らず知らずのうちに漏れ出した。


     ◆  ◆  ◆  ◆


「……くそっっ!!あのアマ、どこ行きやがったっっ!!」


運転席で激昂してハンドルを叩きながらーーは、そう吐き捨てた。道の端を歩いていたサトミを拾ってからもうかれこれ20分程は車を走らせている。

「……フーッフーッフーッ………………」

一通り怒りをぶちまけるとーーの頭は次第に冷静になっていった。そして、頭の中にジワジワと疑問が湧きあがってくる。

……それにしても、妙だな?
こんな短時間のうちに、徒歩でそんなに下まで行けるものなのだろうか?相手は監禁されて薬でラリってるんだぞ?……なにかおかしかないか?

……もしかすると、山のどこかしらに隠れてこちらをやり過ごそうと考えているのでは?

キキィィーーーーッ、とけたたましいブレーキ音を立てて車が停まる。

やがて、車はもと来た道へと引き返していった。
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