36 / 57
36 憶測
しおりを挟む
アリサがサッと手を上げると指揮者がタクトを振り楽団が『ワルツ二番』の前奏を奏で始める。それを合図に数組のカップルがホールにスタンバイし頃合いをみて曲が始まった。
「ご挨拶はアリサ様でしたわね。キリリとなさっておいででステキでしたわ」
「これからどうなるのだろうね」
「アリサ様ですもの。すでにご対策をなさっていると思いますわ」
「だが女性に継承権はないよ。アリサ様が実務を担われるだけでも良い領地になりそうだけど」
ダンスをしながら、ジュースを飲みながら、庭園に行きながら、それぞれにそのような会話をしていた。
オルクス公爵が退場した会場で挨拶をした者がアリサだったのだ。それはいろいろな憶測を呼びこれからの国をオルクス公爵家を期待する声になっていた。
『でもこの国では女性の後継は認められていないからな。ケネシス様が養子縁組なさるのだろう』
『ズバニール様がパレシャ嬢と婚約することも書かれていたからお名前はズバニール様で実務はアリサ様なのかもしれないな』
『パレシャ嬢は無効って言っていたけど公爵家の判断を男爵家が無効にはできないだろう』
『アリサ様とケネシス様のお子様がお生まれになるまでオルクス公爵様はご引退なさらないおつもりなのだわ』
アリサたちにはこれ以上聞くなと言われているので誰も聞いてはこないがチラチラと四人の様子を伺いながら思考し意見を交わし思慮している。
「はあ。このような形で注目される予定ではございませんでしたのに」
アリサが扇の奥でため息を吐いた。
「考えるなと言う方が無理というものだ」
ルナセイラが四人のために用意されたテーブルから果実水をとり一つをメイロッテに渡した。ケネシスもアリサに渡す。
「とりあえず発表を終えた。これから何かと騒がしくなるだろうが義家族で頑張っていこう」
ルナセイラがグラスを持ち上げ四人はグラスを合わせた。それを見計らったかのようにダンスを終えたアリサの友人令嬢二人がパートナーを伴いお祝いを言いに来る。
「この度はお誕生日そしてご婚約おめでとうございます」
テッドの口上でご令嬢二人とノアルが礼をする。アリサの友人とノアルは従兄弟で本日のパートナーを務めている。
「皆様、ありがとうございます。皆様が動いてくだされば他の方も動きやすくなると思いますわ」
「うふふ。わたくしどもはいつでもお話ができますので一旦下がりますわ。お困りでしたらいつでも合図をくださいませね」
「危険分子は排除されましたのでアリサを守ることはできると思いますが、いざとなりましたらアリサを頼みます」
「ぶふっ!」
ノアルは水たまり事件以来ケネシスの真面目顔から発せられる『危険分子』というワードに異常に反応して笑いを堪えることが大変になっている。
「それではのちほど」
四人が礼をとり下がるとメイロッテの友人たちが挨拶に来た。こうして四人は親しいと思われる者たちから順々に挨拶を受けていった。
なんとかパーティーを終えた翌日それぞれの部屋で朝食を取り昼前に会議室にしている来客室に集められた。
パレシャとズバニールが入室するとすでに他のメンバーは着席していた。
「お父さん! お母さん! どうしてここにいるの?」
パレシャがユノラド男爵夫妻に駆け寄るとユノラド男爵夫妻も立ち上がってパレシャを迎えた。だがパレシャが期待いていたような顔つきではなかった。
眉間にシワを寄せてとても小さな声でパレシャに質問を浴びせる。
「パレシャ……。いったいお前は何をしたんだ」
「二人はいつ来たの? いつまでいられるの?」
パレシャが喜びを表すようにぴょんぴょんと跳ねていて母親ユノラド男爵夫人が落ち着けようと腕を引く。父親がため息とともに話を続けた。
「昨夜遅くに到着した。父さんと母さんは公爵家からお迎えが来てわけもわからず来てみたがこちらのご子息と婚約するとか馬車で聞いたが、到着してみれば無効になったとか……」
「無理矢理連れて来られたの? なにそれ横暴じゃん!」
「何を言っているの? オルクス公爵家で旅費も食費もすべて持ってくださっているのよ」
「でも断れない状況だったんでしょう?」
「お前の婚約話があるからと言われれば相手が公爵様でなくとも断ったりしない。中央学園では上手くやっていると言っていたじゃないか」
パレシャは三学年に上がる前の春休みに実家へ戻りズバニールと上手くいっていると話している。
「ズバニール様とは順調よ。でもちょっと状況が変わったの」
「ユノラド男爵様」
大変ににここやかな執事がユノラド男爵家三人に声をかけた。
「ともかくお座りになってくださいませ」
三人は話をしながらどんどん壁に向かっていたらしくテーブルからは随分と離れた壁際で話込んでいたことに自分たちもびっくりしていた。どうやら自己防衛本能がそうさせてしまっていたらしい。
「ご挨拶はアリサ様でしたわね。キリリとなさっておいででステキでしたわ」
「これからどうなるのだろうね」
「アリサ様ですもの。すでにご対策をなさっていると思いますわ」
「だが女性に継承権はないよ。アリサ様が実務を担われるだけでも良い領地になりそうだけど」
ダンスをしながら、ジュースを飲みながら、庭園に行きながら、それぞれにそのような会話をしていた。
オルクス公爵が退場した会場で挨拶をした者がアリサだったのだ。それはいろいろな憶測を呼びこれからの国をオルクス公爵家を期待する声になっていた。
『でもこの国では女性の後継は認められていないからな。ケネシス様が養子縁組なさるのだろう』
『ズバニール様がパレシャ嬢と婚約することも書かれていたからお名前はズバニール様で実務はアリサ様なのかもしれないな』
『パレシャ嬢は無効って言っていたけど公爵家の判断を男爵家が無効にはできないだろう』
『アリサ様とケネシス様のお子様がお生まれになるまでオルクス公爵様はご引退なさらないおつもりなのだわ』
アリサたちにはこれ以上聞くなと言われているので誰も聞いてはこないがチラチラと四人の様子を伺いながら思考し意見を交わし思慮している。
「はあ。このような形で注目される予定ではございませんでしたのに」
アリサが扇の奥でため息を吐いた。
「考えるなと言う方が無理というものだ」
ルナセイラが四人のために用意されたテーブルから果実水をとり一つをメイロッテに渡した。ケネシスもアリサに渡す。
「とりあえず発表を終えた。これから何かと騒がしくなるだろうが義家族で頑張っていこう」
ルナセイラがグラスを持ち上げ四人はグラスを合わせた。それを見計らったかのようにダンスを終えたアリサの友人令嬢二人がパートナーを伴いお祝いを言いに来る。
「この度はお誕生日そしてご婚約おめでとうございます」
テッドの口上でご令嬢二人とノアルが礼をする。アリサの友人とノアルは従兄弟で本日のパートナーを務めている。
「皆様、ありがとうございます。皆様が動いてくだされば他の方も動きやすくなると思いますわ」
「うふふ。わたくしどもはいつでもお話ができますので一旦下がりますわ。お困りでしたらいつでも合図をくださいませね」
「危険分子は排除されましたのでアリサを守ることはできると思いますが、いざとなりましたらアリサを頼みます」
「ぶふっ!」
ノアルは水たまり事件以来ケネシスの真面目顔から発せられる『危険分子』というワードに異常に反応して笑いを堪えることが大変になっている。
「それではのちほど」
四人が礼をとり下がるとメイロッテの友人たちが挨拶に来た。こうして四人は親しいと思われる者たちから順々に挨拶を受けていった。
なんとかパーティーを終えた翌日それぞれの部屋で朝食を取り昼前に会議室にしている来客室に集められた。
パレシャとズバニールが入室するとすでに他のメンバーは着席していた。
「お父さん! お母さん! どうしてここにいるの?」
パレシャがユノラド男爵夫妻に駆け寄るとユノラド男爵夫妻も立ち上がってパレシャを迎えた。だがパレシャが期待いていたような顔つきではなかった。
眉間にシワを寄せてとても小さな声でパレシャに質問を浴びせる。
「パレシャ……。いったいお前は何をしたんだ」
「二人はいつ来たの? いつまでいられるの?」
パレシャが喜びを表すようにぴょんぴょんと跳ねていて母親ユノラド男爵夫人が落ち着けようと腕を引く。父親がため息とともに話を続けた。
「昨夜遅くに到着した。父さんと母さんは公爵家からお迎えが来てわけもわからず来てみたがこちらのご子息と婚約するとか馬車で聞いたが、到着してみれば無効になったとか……」
「無理矢理連れて来られたの? なにそれ横暴じゃん!」
「何を言っているの? オルクス公爵家で旅費も食費もすべて持ってくださっているのよ」
「でも断れない状況だったんでしょう?」
「お前の婚約話があるからと言われれば相手が公爵様でなくとも断ったりしない。中央学園では上手くやっていると言っていたじゃないか」
パレシャは三学年に上がる前の春休みに実家へ戻りズバニールと上手くいっていると話している。
「ズバニール様とは順調よ。でもちょっと状況が変わったの」
「ユノラド男爵様」
大変ににここやかな執事がユノラド男爵家三人に声をかけた。
「ともかくお座りになってくださいませ」
三人は話をしながらどんどん壁に向かっていたらしくテーブルからは随分と離れた壁際で話込んでいたことに自分たちもびっくりしていた。どうやら自己防衛本能がそうさせてしまっていたらしい。
22
あなたにおすすめの小説
婚約破棄で悪役令嬢を辞めたので、今日から素で生きます。
黒猫かの
恋愛
「エリー・オルブライト! 貴様との婚約を破棄する!」
豪華絢爛な夜会で、ウィルフレッド王子から突きつけられた非情な宣告。
しかし、公爵令嬢エリーの心境は……「よっしゃあ! やっと喋れるわ!!」だった。
【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます
腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった!
私が死ぬまでには完結させます。
追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。
追記2:ひとまず完結しました!
『処刑されるたびに12歳に戻る悪役令嬢、7回目の人生は「何もせず寝て過ごす」ことに決めたら、なぜか周囲が勝手に勘違いして聖女扱いされています
六角
恋愛
公爵令嬢リリアーナは、18歳の誕生日に必ず断罪・処刑されては12歳に戻るという地獄のループを6回も繰り返していた。 真面目に努力しても、剣を極めても、裏社会を支配しても、結局は殺される運命。 心折れた彼女は、7回目の人生でついに決意する。 「もう頑張らない。どうせ死ぬなら、今回はひたすら寝て過ごそう」と。
しかし、安眠を求めて「うるさい」と敵を黙らせれば『王者の覇気』と恐れられ、寝ぼけて放った魔法は『神の奇跡』と崇められ、枕への異常なこだわりは『深遠なる儀式』と誤解されてしまう。 気がつけば、ストーカー気味のヤンデレ王子、パン屋の元ヒロイン、狂犬の如きライバル令嬢、元部下の暗殺者、そして不眠症の魔王までもが彼女の信者となり、リリアーナは意図せずして国を、そして世界を救う「最強の聖女」へと祭り上げられていく。
「お願いだから、私を寝かせて!」 睡眠欲だけで運命(システム)さえもねじ伏せる、無気力悪役令嬢の痛快勘違いサクセス(?)ストーリー!
【完結】パパ、私は犯人じゃないよ ~処刑予定の私、冷徹公爵(パパ)に溺愛されるまで~
チャビューヘ
ファンタジー
※タイトル変更しました。
「掃除(処分)しろ」と私を捨てた冷徹な父。生き残るために「心を無」にして媚びを売ったら。
「……お前の声だけが、うるさくない」
心の声が聞こえるパパと、それを知らずに生存戦略を練る娘の物語。
-----
感想送っていただいている皆様へ
たくさんの嬉しい言葉や厳しい意見も届いており一つ一つがすごく嬉しいのと頑張ろうと感じています。ご意見を元に修正必要な部分は随時更新していきます。
成長のため感想欄を閉じませんが公開はする予定ありません。ですが必ず全て目を通しています。拙作にお時間を頂きありがとうございます。これからもよろしくお願いします。
【完結】レイハート公爵夫人の時戻し
風見ゆうみ
恋愛
公爵夫人である母が亡くなったのは、私、ソラリアが二歳になり、妹のソレイユが生まれてすぐのことだ。だから、母の記憶はないに等しい。
そんな母が私宛に残していたものがあった。
青色の押し花付きの白い封筒に入った便箋が三枚。
一枚目には【愛するソラリアへ】三枚目に【母より】それ以外、何も書かれていなかった。
父の死後、女性は爵位を継ぐことができないため、私は公爵代理として、領民のために尽くした。
十九歳になった私は、婚約者に婿入りしてもらい、彼に公爵の爵位を継いでもらった。幸せな日々が続くかと思ったが、彼との子供を授かったとわかった数日後、私は夫と実の妹に殺されてしまう。
けれど、気がついた時には、ちょうど一年前になる初夜の晩に戻っており、空白だったはずの母からの手紙が読めるようになっていた。
殺されたことで羊の形をした使い魔が見えるようになっただけでなく『時戻しの魔法』を使えるようになった私は、爵位を取り返し、妹と夫を家から追い出すことに決める。だが、気弱な夫は「ソラリアを愛している。別れたくない」と泣くばかりで、離婚を認めてくれず――。
【完結】追放された子爵令嬢は実力で這い上がる〜家に帰ってこい?いえ、そんなのお断りです〜
Nekoyama
ファンタジー
魔法が優れた強い者が家督を継ぐ。そんな実力主義の子爵家の養女に入って4年、マリーナは魔法もマナーも勉学も頑張り、貴族令嬢にふさわしい教養を身に付けた。来年に魔法学園への入学をひかえ、期待に胸を膨らませていた矢先、家を追放されてしまう。放り出されたマリーナは怒りを胸に立ち上がり、幸せを掴んでいく。
悪役令嬢発溺愛幼女着
みおな
ファンタジー
「違います!わたくしは、フローラさんをいじめてなどいません!」
わたくしの声がホールに響いたけれど、誰もわたくしに手を差し伸べて下さることはなかった。
響いたのは、婚約者である王太子殿下の冷たい声。
わたくしに差し伸べられたのは、騎士団長のご子息がわたくしを強く床に押し付ける腕。
冷ややかな周囲のご令嬢ご令息の冷笑。
どうして。
誰もわたくしを信じてくれないまま、わたくしは冷たい牢の中で命を落とした。
【完結】断罪された悪役令嬢は、本気で生きることにした
きゅちゃん
ファンタジー
帝国随一の名門、ロゼンクロイツ家の令嬢ベルティア・フォン・ロゼンクロイツは、突如として公の場で婚約者であるクレイン王太子から一方的に婚約破棄を宣告される。その理由は、彼女が平民出身の少女エリーゼをいじめていたという濡れ衣。真実はエリーゼこそが王太子の心を奪うために画策した罠だったにも関わらず、ベルティアは悪役令嬢として断罪され、社交界からの追放と学院退学の処分を受ける。
全てを失ったベルティアだが、彼女は諦めない。これまで家の期待に応えるため「完璧な令嬢」として生きてきた彼女だが、今度は自分自身のために生きると決意する。軍事貴族の嫡男ヴァルター・フォン・クリムゾンをはじめとする協力者たちと共に、彼女は自らの名誉回復と真実の解明に挑む。
その過程で、ベルティアは王太子の裏の顔や、エリーゼの正体、そして帝国に忍び寄る陰謀に気づいていく。かつては社交界のスキルだけを磨いてきた彼女だが、今度は魔法や剣術など実戦的な力も身につけながら、自らの道を切り開いていく。
失われた名誉、隠された真実、そして予期せぬ恋。断罪された「悪役令嬢」が、自分の物語を自らの手で紡いでいく、爽快復讐ファンタジー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる