【完結】王子と結婚するには本人も家族も覚悟が必要です

宇水涼麻

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14 マナーのレッスン

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 ボーラン男爵はどうにか断るための言葉を並べたがネイベット侯爵は笑顔で答える。

「みなさまの分は、今日のところは必要ありませんよ。今日は体験していただき、みなさまが家庭教師が必要だとお感じになりましたら、言っていただければ手配します」

 有無を言わせぬネイベット侯爵の圧にボーラン男爵が抗えるはずもなかった。

「そ……そうですか」

 ボーラン男爵が夫人と子息を見ると、無料で豪華な食事ができそうだと目をキラキラさせている。ボーラン男爵はフッとため息を吐いた。

「わかりました」

 ボーラン男爵は不安そうに家族の顔を見た。家族全員がマナーを考えての食事などにしたことがないのだ。そんな気持ちは夫人と子息には伝わっていなかった。

 それから間もなくしてメイドが昼食だと言いに来た。ボーラン一家は隣の部屋に通される。そこにはレンエールとサビマナがすでに座っていた。
 ボーラン一家の顔を見るとサビマナは喜んで立ち上がった。あまりの興奮に椅子を倒してしまうが、本人は気にしていない様子だ。

「ボーラン令嬢様。椅子を引かれるまでお立ちになってはいけません」

 サビマナが家族に声をかける前にコリンヌから指導が入る。

「今日は家族が一緒なのでしょう? 自由にさせてよっ!」

 ネイベット侯爵が前に出た。

「本日はボーラン男爵ご一家様にもマナーを学んでいただくことになりました。
ボーラン嬢が王子妃になられましたら、ご一家様も晩餐にご招待されることになります。ですから、マナーをマスターしていただかなくてはなりませんから、ね」

 サビマナは「王子妃になる」と言われて機嫌を直し、ニコニコと椅子に腰掛けた。

 執事服を着た者たちが一人に一人ボーラン男爵一家に付いた。そして、テーブルへと誘い、椅子を引いて座らせる。
 すぐにスープが運ばれてきた。ボーラン男爵一家への指導は執事たちがマンツーマンで行った。初日のサビマナのようにカトラリーの説明から始まる。
 案の定、一時間かけてスープしか飲めなかった。テーブルを共にしているレンエールとサビマナにも同じタイミングで次が出されるので、二人もまだスープだけである。
 予想していたボーラン男爵は疲れた顔をした。予想していなかった夫人と子息はもっと疲れた顔になっている。

「レンエール様とボーラン嬢はお勉強のお時間です」

 いつの間にかバロームが入室しており声をかけてきた。ボーラン男爵一家は唖然とする。

「スープしか飲んでないのよっ! 勉強なんてできるわけないじゃないっ!
スープだけの食事だなんて、私の家族にも失礼でしょう!」

「お声を荒げるのはお止めください」

 すでに数十回目となる指導をされ、サビマナはコリンヌを睨む。
 ネイベット侯爵がバロームを手で制した。

「わかりました。では、このまま食事マナーレッスンを続けましょう。ボーラン男爵もよろしいですね?」

 ボーラン男爵一家は本当は逃げたかったが、そうとは言えず、座っているしかない。
 
 それから夕方までかかり食事を終わらせた。ボーラン男爵一家は高級な料理を全く楽しめず味も堪能できなかった。背中は硬直し、お茶を持つ手も震えていた。カチャカチャと音をさせて執事たちにまたしても注意を受けた。

 ネイベット侯爵がやっと立ち上がった。

「三十分ほどではありますが、ご家族でお過ごしください」

 ネイベット侯爵に促され、メイドや文官、レンエールとバロームも部屋から出た。
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