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15 隣室の仕組み
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廊下に出たネイベット侯爵はレンエールを隣室へ誘った。そこは隣室との壁が薄くしてあり、隣室の声が聞こえるようになっている部屋であった。もちろん、そんなことは王城で勤務する者でも数名しか知らない。レンエールも初めて知った。
隣室との壁に近づくだけでボーラン男爵一家の声が聞こえてきた。
レンエールはネイベット侯爵にすすめられた椅子に腰掛けて聞き耳を立てた。
「ねぇ?! マナー、マナーってムカつくでしょう?!」
サビマナの金切り声が響く。
「晩餐会など年に何度もあるわけでもなし、あのような決まりが必要なのか?」
ボーラン男爵は昼食を美味しく食べられなかったことに苛立っていた。
「お茶の飲み方までうるさく言われるなんてなぁ」
ボーラン子息も舌打ちしている。
「食事は和気あいあいと食べればそれがもてなしだと思うけど」
つい数年前まで平民であったボーラン夫人は平民感覚でそう言った。
「お母さん! いいこと言うわねぇ! 今度、それを言ってみるわ!
ホントにあのコリンヌって女、うるさいことばっかり言うのよっ!」
「毎回か? あれでは飯が不味くなるな」
「でっしょう??! おかげでいつも半分しか食べられないのよ」
サビマナは出された物は平らげている。時間的に出されないメニューもあるが、半分とは大げさだ。
「それにしては、痩せてないな。ハッハッハ」
ボーラン子息の冗談に一家は笑っている。
「コリンヌの目を盗んで大口で早く食べているからねっ! それに、半分といっても、うちよりずっと豪華だし」
「まあ! いいわねぇ」
「マナーができない時はサンドイッチになっちゃうんだけど、それも充分に豪華よ。レンはサンドイッチを食べたがらないから私がほとんど食べているの。エヘヘ」
「サンドイッチなら決まりもマナーもないからな」
本来はサンドイッチの食べ方にも決まりやマナーはあるのだが、馬車内での腹満たし飯なので言われないだけである。お茶会などで出された軽食には当然食べ方もマナーもある。サビマナはお茶会の教育まで手が回っていないだけだった。
そんなことを知らないボーラン一家は大笑いしていた。
隣室では、レンエールが悲しそうな顔で椅子に落ちていた。一家でマナーの必要性を全く理解していないことや、サビマナが反省もせずにコリンヌの悪口を言って言い負かすことを考えていることや、自分がサビマナに何も言えていないこと。それらなどに対して悲観していた。
「そうだ、サビマナ。朝と夜の勉強をしていないというのは本当か?」
ボーラン男爵は怒り顔ではなく、困り顔である。声音も優しげで、隣室でもボーラン男爵が怒っていないことはわかる。
「だってぇ。夜は十一時にやっと寝るのよ」
「まあ! 十時に終わりではないの?」
「その後に、湯浴みしてオイル塗って美容時間になるのよ」
「なるほどな。肌がツヤツヤだと思ったよ」
「キャッ! うふふ」
ボーラン男爵子息がサビマナの頬をぷにぷにと押した。
「それに学園でたっぷり勉強してくるのよ。昼休みもないんだからぁ」
「マナーレッスンか?」
「そうよ。二時間まるまる、ね。本当に嫌になっちゃうわ」
学園の昼休みは二時間ほどある。マナーを一つ一つ指導されるので、食事に二時間もかかってしまっている。それにしてはスープのマナーしか身についていないことに誰も疑問を持たない。
「うーん。でもな、今、家庭教師代は我が家が払っているんだ。一刻も早くマスターしてくれ」
ボーラン男爵は困り顔をサビマナに見せて説得を試みた。
隣室との壁に近づくだけでボーラン男爵一家の声が聞こえてきた。
レンエールはネイベット侯爵にすすめられた椅子に腰掛けて聞き耳を立てた。
「ねぇ?! マナー、マナーってムカつくでしょう?!」
サビマナの金切り声が響く。
「晩餐会など年に何度もあるわけでもなし、あのような決まりが必要なのか?」
ボーラン男爵は昼食を美味しく食べられなかったことに苛立っていた。
「お茶の飲み方までうるさく言われるなんてなぁ」
ボーラン子息も舌打ちしている。
「食事は和気あいあいと食べればそれがもてなしだと思うけど」
つい数年前まで平民であったボーラン夫人は平民感覚でそう言った。
「お母さん! いいこと言うわねぇ! 今度、それを言ってみるわ!
ホントにあのコリンヌって女、うるさいことばっかり言うのよっ!」
「毎回か? あれでは飯が不味くなるな」
「でっしょう??! おかげでいつも半分しか食べられないのよ」
サビマナは出された物は平らげている。時間的に出されないメニューもあるが、半分とは大げさだ。
「それにしては、痩せてないな。ハッハッハ」
ボーラン子息の冗談に一家は笑っている。
「コリンヌの目を盗んで大口で早く食べているからねっ! それに、半分といっても、うちよりずっと豪華だし」
「まあ! いいわねぇ」
「マナーができない時はサンドイッチになっちゃうんだけど、それも充分に豪華よ。レンはサンドイッチを食べたがらないから私がほとんど食べているの。エヘヘ」
「サンドイッチなら決まりもマナーもないからな」
本来はサンドイッチの食べ方にも決まりやマナーはあるのだが、馬車内での腹満たし飯なので言われないだけである。お茶会などで出された軽食には当然食べ方もマナーもある。サビマナはお茶会の教育まで手が回っていないだけだった。
そんなことを知らないボーラン一家は大笑いしていた。
隣室では、レンエールが悲しそうな顔で椅子に落ちていた。一家でマナーの必要性を全く理解していないことや、サビマナが反省もせずにコリンヌの悪口を言って言い負かすことを考えていることや、自分がサビマナに何も言えていないこと。それらなどに対して悲観していた。
「そうだ、サビマナ。朝と夜の勉強をしていないというのは本当か?」
ボーラン男爵は怒り顔ではなく、困り顔である。声音も優しげで、隣室でもボーラン男爵が怒っていないことはわかる。
「だってぇ。夜は十一時にやっと寝るのよ」
「まあ! 十時に終わりではないの?」
「その後に、湯浴みしてオイル塗って美容時間になるのよ」
「なるほどな。肌がツヤツヤだと思ったよ」
「キャッ! うふふ」
ボーラン男爵子息がサビマナの頬をぷにぷにと押した。
「それに学園でたっぷり勉強してくるのよ。昼休みもないんだからぁ」
「マナーレッスンか?」
「そうよ。二時間まるまる、ね。本当に嫌になっちゃうわ」
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ボーラン男爵は困り顔をサビマナに見せて説得を試みた。
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