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23 約束の力
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ネイベット侯爵が穏やかにボーラン男爵をフォローした。
「殿下。ボーラン男爵殿はボーラン嬢がご心配なようで領地へ戻っておられないようなのです。ですから、ここで詳しく進行状況を説明できないのではないでしょうか?」
普通ならばそんなフォローはありえないのだが、そう考える余裕はボーラン男爵にはなかった。助けが入ったと、千切れんばかりに首を縦に振っている。
「そうなのか。娘想いなのだな。サビマナは幸せ者だな。
サビマナのためになるのだから領地の開発は順調なのだろうなぁ」
領地に思いを馳せるレンエールとネイベット侯爵が目を合わせてにこやかに談笑している……ように見えなくはない。
「ですから、私からボーラン領へ視察に行かせますよ。四ヶ月前にボーラン領へ視察へ行った者なので、変化にも気が付きやすいでしょう」
ネイベット侯爵が文官に視線を投げると文官は恭しく頭を下げ了承の意を伝えてきた。
「おお! 四ヶ月前のボーラン領へ視察と言えば、俺たちの婚約が成ってすぐの話ではないかっ! そうか、すぐに動いてくれたのか。ネイベット大臣。さすがだな」
「とんでもございません」
「「「アハハハ」」」
レンエールとネイベット侯爵と文官のわざとらしい高笑いが響く。
「それと、国王陛下のご命令に背くわけには参りませんし、国王陛下のご意思を貴族に行き渡らせることも王宮総務局の仕事ですので、一応、すべての貴族に『現在、王家の婚約に変化なし』との手紙を王宮総務大臣の名で送ります」
ネイベット侯爵は『すべての貴族』という言葉を強調した。
「そうだな。それに合わせて、王宮総務局は俺とノマーリンとの結婚式のようなフリをして準備を進めてくれ。
サビマナとの結婚式を遅らせたくないのだ」
「かしこまりました。名前の部分だけを誤魔化しながら準備をしてまいりましょう。
婚姻を遅らせたくないとは、ボーラン嬢は殿下にも大切にされているのですね」
「ハハハ、婚約者だからなぁ」
「殿下、それは小さな声でお願いしますね」
ネイベット侯爵が冗談だというようにウィンクした。
「ここで言う分には問題ないだろう」
レンエールも笑顔で答える。
「そうですね。外でないならいいでしょう」
「ボーラン男爵も国王陛下との約定を守り、外では言っていないそうだしな。それにしても、嫌な噂が出ているものだな」
『ボーラン男爵が二人の婚約を理由に金を借りているという噂』について再度話題にした。レンエールはボーラン男爵への冒涜だと怒りを表していた。
「噂というものは勝手なものですからな」
ネイベット侯爵もすかさず『ボーラン男爵は悪くない』と暗に伝える。
ボーラン男爵は小刻みに首を左右に振って震えていた。
レンエールとサビマナとの婚約を王宮総務局に否定され、結婚式の準備も名前を秘匿されて行われては金を借りた貴族たちにどうされるかは、火を見るより明らかだ。
さらには、領地へ視察などされれば、先程レンエールに指摘されたことを何もやっていないことが明るみになる。
ボーラン男爵の顔色は真っ赤で汗をダクダクとかいている。
「申し訳ありませーーーん!!!」
ボーラン男爵がソファから立ち上がり、転がるように……、大きな体すぎて転がってしまい床に倒れそのまま床に這いつくばりソファの脇で土下座をした。
普通、不安や恐怖では顔が青くなるのだが、そうならないのは、でっぷりとした体のせいかもしれない。
「殿下。ボーラン男爵殿はボーラン嬢がご心配なようで領地へ戻っておられないようなのです。ですから、ここで詳しく進行状況を説明できないのではないでしょうか?」
普通ならばそんなフォローはありえないのだが、そう考える余裕はボーラン男爵にはなかった。助けが入ったと、千切れんばかりに首を縦に振っている。
「そうなのか。娘想いなのだな。サビマナは幸せ者だな。
サビマナのためになるのだから領地の開発は順調なのだろうなぁ」
領地に思いを馳せるレンエールとネイベット侯爵が目を合わせてにこやかに談笑している……ように見えなくはない。
「ですから、私からボーラン領へ視察に行かせますよ。四ヶ月前にボーラン領へ視察へ行った者なので、変化にも気が付きやすいでしょう」
ネイベット侯爵が文官に視線を投げると文官は恭しく頭を下げ了承の意を伝えてきた。
「おお! 四ヶ月前のボーラン領へ視察と言えば、俺たちの婚約が成ってすぐの話ではないかっ! そうか、すぐに動いてくれたのか。ネイベット大臣。さすがだな」
「とんでもございません」
「「「アハハハ」」」
レンエールとネイベット侯爵と文官のわざとらしい高笑いが響く。
「それと、国王陛下のご命令に背くわけには参りませんし、国王陛下のご意思を貴族に行き渡らせることも王宮総務局の仕事ですので、一応、すべての貴族に『現在、王家の婚約に変化なし』との手紙を王宮総務大臣の名で送ります」
ネイベット侯爵は『すべての貴族』という言葉を強調した。
「そうだな。それに合わせて、王宮総務局は俺とノマーリンとの結婚式のようなフリをして準備を進めてくれ。
サビマナとの結婚式を遅らせたくないのだ」
「かしこまりました。名前の部分だけを誤魔化しながら準備をしてまいりましょう。
婚姻を遅らせたくないとは、ボーラン嬢は殿下にも大切にされているのですね」
「ハハハ、婚約者だからなぁ」
「殿下、それは小さな声でお願いしますね」
ネイベット侯爵が冗談だというようにウィンクした。
「ここで言う分には問題ないだろう」
レンエールも笑顔で答える。
「そうですね。外でないならいいでしょう」
「ボーラン男爵も国王陛下との約定を守り、外では言っていないそうだしな。それにしても、嫌な噂が出ているものだな」
『ボーラン男爵が二人の婚約を理由に金を借りているという噂』について再度話題にした。レンエールはボーラン男爵への冒涜だと怒りを表していた。
「噂というものは勝手なものですからな」
ネイベット侯爵もすかさず『ボーラン男爵は悪くない』と暗に伝える。
ボーラン男爵は小刻みに首を左右に振って震えていた。
レンエールとサビマナとの婚約を王宮総務局に否定され、結婚式の準備も名前を秘匿されて行われては金を借りた貴族たちにどうされるかは、火を見るより明らかだ。
さらには、領地へ視察などされれば、先程レンエールに指摘されたことを何もやっていないことが明るみになる。
ボーラン男爵の顔色は真っ赤で汗をダクダクとかいている。
「申し訳ありませーーーん!!!」
ボーラン男爵がソファから立ち上がり、転がるように……、大きな体すぎて転がってしまい床に倒れそのまま床に這いつくばりソファの脇で土下座をした。
普通、不安や恐怖では顔が青くなるのだが、そうならないのは、でっぷりとした体のせいかもしれない。
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