【完結90万pt感謝】大募集! 王太子妃候補! 貴女が未来の国母かもしれないっ!

宇水涼麻

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第一章 本編

2 貴族の婚姻は……

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 メーデルの勘違いなセリフに、ラビオナは目をパチパチさせて小首を傾げている。

「な、なんだその態度はっ!」

「ですが、あれは王家にしか出せない求人広告ですわ。それをわたくしに聞かれても困りますわ」

 ラビオナは頬に手を添えて、眉根を寄せた。

「お、お前は王太子である俺の婚約者だろうがっ! つまりは未来の王太子妃だっ!
お前がいながら、なぜあのような求人広告が出るのだっ!」

 ラビオナがこれでもかという程目を見開いた。こんなに表情豊かなラビオナは珍しい。つまりは、ラビオナの演技も入っているのだろう。

「まあ! まあ! まあ! メーデル王太子殿下はわたくしが貴方様の婚約者であったことをご存知でしたの?」

「「「ブッ!!!」」」

 食堂室の至る所で吹き出し笑いが出た。メーデルは顔を真っ赤にして睨み、笑った者を見咎めようとしたが、野次馬が多すぎて誰なのかはわかりようもない。

 キョロキョロと目を動かしているメーデルを無視して、ラビオナは話を続けた。

「お誕生日のプレゼントもない。こちらからのプレゼントにお手紙の一つもない。お茶会もキャンセルなさる。パーティーのエスコートもない。
学園内ではシエラ様と肩を組んで歩く。シエラ様と膝をすり合わせてベンチに座る。ランチをシエラ様の手ずから食べさせていただく。
重要なパーティーには出席なさらず、小さなパーティーにシエラ様をエスコートしてご出席なさる。
更には、シエラ様を毎週のように別邸へ連れ込む」

 生徒たちの予想の上を行くメーデルの不貞ぶりに、野次馬たちはざわついた。

「わたくしは、てっきり、メーデル王太子殿下はわたくしという婚約者の存在をお忘れであったのかと思いましたわ」

 ラビオナは目を細め口元は呆れて笑っていた。まわりもあちらこちらで失笑が漏れている。あちらこちらすぎてメーデルには断定が難しく、メーデルはラビオナを睨みつけることにしたようだ。

「お前とは嫌でも婚姻するのだっ! そんなものは必要なかろうがっ!」

 あまりの発言に失笑していた野次馬たちも沈黙した。
 そこにラビオナの小さなため息が響く。

「はぁ……」

『バッ!』

 ラビオナが扇を広げて鼻まで隠し、目を細めた。扇の奥の目は怒りを帯びていた。

 怒りはあっても態度には出さないラビオナは、淡々とした落ち着いていた口調であるが、それが尚更怖いと思わせる雰囲気でメーデルを見据える。

「メーデル王太子殿下。その発言はすべての貴族に失礼極まりないものですわ。王侯貴族社会のトップとなる予定の者がしてよい発言ではございません。
これについては、公爵家の者として、そして王家に仕える忠臣として、厳重に抗議させていただきます」

 王侯貴族社会を維持するため、政略的婚姻は未だに多い。その中でも婚約者へ誠実さは当然求められる。少なくとも、婚姻して子供を授かるまでは。
 そうやって紡いできた歴史を根底から否定するような発言を王太子がしていい訳がない。

「グッ!!!」

 メーデルは周りの雰囲気も含め、黙るしかできなかった。何も言えなくなり、ラビオナの足元を睨みつけている。

「あのぉ。では、王太子妃がお二人以上になるのですか?」

 空気を読まない女シエラが口を出した。

「シエラ様。まずはラビオナ様に発言の許可をいただくことが当然のマナーですわ」

 ラビオナと同席していたヘレナーシャ・エッセリウム伯爵令嬢が、シエラに正義感溢れる黄緑色の瞳を真っ直ぐに向けて注意した。生徒たちもウンウンと頷く。
 シエラはとても器用に涙を浮かべた。

 そこへちょうど騒ぎを聞きつけたメーデルの側近候補者の二人が現れた。
 短めの黒髪は立たせていてどんぐりのような丸い紺目のまあまあ美形なノエルダム・コームチア公爵子息。父親は宰相である。
 もう一人は、肩まで伸ばした赤茶髪と少し垂れているオレンジ目のこちらもまあまあ美形なウデルタ・メヘンレンド侯爵子息。父親は騎士団の団長だ。
 この二人、体つきは対照的である。ガタイがよく声の大きいのはノエルダムで、華奢で一般的な女性より少しだけ背が高いのはウデルタだ。
 決して逆ではない。

 二人はシエラの両脇に立った。二人を交互に見たシエラの瞳からタイミングを見計らったようにポロリと涙が流れた。本当に器用だ。

『『『あざとい……』』』

 野次馬たちはそう思ったが、当の二人はそうではない。ウデルタは心配そうにシエラの背を擦り、ノエルダムは顔を赤くして怒り出した。

「殿下っ! シエラが泣いておりますっ!」

 シエラを背に庇っていたメーデルが振り返る。

「誰がこのようなことをっ!」

 ノエルダムの質問に答えたのはヘレナーシャだった。ヘレナーシャは立ち上がって、背中まで伸びたシフォンベージュの髪を首の後ろへ手で流した。

「当然のマナーをお教えしてさしあげましたら、お泣きになりましたのよ」

 ノエルダムは射殺しそうな目力でヘレナーシャを睨みつけた。
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