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第一章 本編
9 求人の内容は……
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【王太子妃候補者募集!】
~貴女が未来の国母かもしれないっ!~
~さあ! チャンスを掴みにいこう!~
~麗しき王太子を射止めるのは貴女だっ!~
〈募集要項〉
○爵位不問!
○性格不問!
○十六歳から二十五歳までの貴族籍に属する健康な女性であること
○ゼルアナート貴族学園を卒業しているまたは卒業見込みであること(なんらかの理由で卒業が取り消された、または、退学した時点で候補から落選する)
○メーデル王太子殿下の不貞を心広く許せること
○メーデル王太子殿下の個人資産はないため、贅沢はできないことを理解すること
○月に一度のテストに一年間合格すること(不合格の時点で候補から落選する)
〈本採用について〉
●一年後、候補に残った者の中からメーデル王太子殿下がお一人を選ばれる
●王太子妃に選ばれた場合、翌日から本格的な王太子妃教育を開始する
●メーデル王太子殿下に選ばれなかった者には、王妃陛下より『選ばれし淑女の称号』が与えられ、また、婚約婚姻も王家が後押しする
〈注意事項〉
※一ヶ月後、応募の受け付けを開始し受付の期間は二日間とする。
※テストの内容については、後日、学園の大講義室にて説明会を行う。
その際、爵位を問わず質問を受け付ける。
※尚、この求人広告は、国王陛下並びに王妃陛下の命にて発行されている。
〰️ 〰️ 〰️
メーデルは怒りで顔を紫にしていた。
「なんだっ! この内容はっ!」
「内容については後程。
朝の求人広告にもこれが記載されていたのですが、ご覧になりましたか?」
高官が掌で示した一番下ところに視線を合わせる。
※尚、この求人広告は、国王陛下並びに王妃陛下の命にて発行されている。
メーデルは近衛兵から『陛下の掲示物』とは聞いていたが、実際に記載されている物を見て顔をひくつかせた。
「もちろん、朝の物にも記載されておりました」
高官が意地悪そうに笑う。
「こんな大事なことはもっとわかりやすく書けっ!」
最後まで読みさえすればかなりわかりやすく書いてあるのでただの八つ当たりにしか聞こえない。
高官はメーデルの言い分を無視した。
「それで? 内容に問題がありましたか?」
高官のすっとぼけた言い方に、メーデルは頬をビクビクビクと引き攣らせた。
「この『性格不問』とは、どういうことだっ! 国母になろうとする者が捻くれ者であっていいわけがないっ!」
「それは、王太子妃教育でいかようにもなります」
高官は抑揚もなく答えた。『当然だ』との言い方を聞いた女子生徒たちがブルッと震えた。
ラビオナは『そこまで露骨に言わずとも』と思った。だが、『本音は隠し常に笑顔を』と教え込まれてきたことを思い出した。
『性格を隠すことは確かに可能ね』
ラビオナは思い直し、扇の奥の口元を思わず緩めた。
「バカを言うなっ! 性格が早々変えられるわけがないっ!」
ポーカーフェイスを全くできていないメーデルが唾を飛ばして怒鳴る。
『本当に王族教育を受けているのか?』と特に高位貴族子女たちは心の中で驚いていた。
「はい。そうですね。
しかしながら、対外的なお性格を作ることは可能です。
笑顔で対応する。
お言葉を選ぶ。
仕草を上品にする。
それだけで対外的な印象はよくなり、『清楚で性格の良い方だ』と判断されます」
理屈は納得できるが、それをさも当然だと思うのは別の話だ。いくら紳士教育淑女教育を受けていてもまだ成人前の少年少女たちだ。大人の裏を聞いてしまったような気持ちになった。
ラビオナだけは『やはりそうよね』と心から納得し、紅茶に手を伸ばしてホッと息をついた。
高官は嘲るような微笑で呆けているメーデルを見た。
「ですから、対内的なお性格の良さをお求めになるのは、メーデル王太子殿下だけですよ」
高官はニヤリと笑った。おそらくわざとであるが、単純なメーデルは怒りを増幅させた。
『なんのためにメーデル王太子殿下を煽っていらっしゃるのかしら?』
ラビオナは美丈夫の高官をさりげなくだが注意深く観察した。
「なら、尚更だっ! この項目は消せっ!」
メーデルは怒りで『陛下』の存在を飛ばしている。
「いえいえ、だからこそ最後に残った淑女たちからメーデル王太子殿下がお決めになるようになっております」
高官は恭しく頭を下げながら手は掲示物に向いており、『本採用について』の項目をトントンとノックして示した。求人広告の一部を掌で指し示されている。
●一年後、候補に残った者の中からメーデル王太子殿下がお一人を選ばれる
しっかりと記載されていた。
「その方のご気性がいかがなものか、殿下との相性はどうかなど、我々にはわかりようはございませんから。
特にメーデル王太子殿下のご趣味は全くもって理解できかねますし……」
高官のシエラへ向けられた視線は侮辱に満ちている。メーデルが睨みつけるも視線の意味を変えることはなかった。
「ですから、候補者となる女性たちとメーデル王太子殿下とで交流をしていただく他ありません。その辺りはメーデル王太子殿下ご自身に頑張っていただくしかありませんね」
高官は笑いを深めにっこりとした。確かに、メーデルと合うかどうかはメーデルにしかわからない。シエラと同じようなご令嬢など二人といないと思われるので尚更だ。
~貴女が未来の国母かもしれないっ!~
~さあ! チャンスを掴みにいこう!~
~麗しき王太子を射止めるのは貴女だっ!~
〈募集要項〉
○爵位不問!
○性格不問!
○十六歳から二十五歳までの貴族籍に属する健康な女性であること
○ゼルアナート貴族学園を卒業しているまたは卒業見込みであること(なんらかの理由で卒業が取り消された、または、退学した時点で候補から落選する)
○メーデル王太子殿下の不貞を心広く許せること
○メーデル王太子殿下の個人資産はないため、贅沢はできないことを理解すること
○月に一度のテストに一年間合格すること(不合格の時点で候補から落選する)
〈本採用について〉
●一年後、候補に残った者の中からメーデル王太子殿下がお一人を選ばれる
●王太子妃に選ばれた場合、翌日から本格的な王太子妃教育を開始する
●メーデル王太子殿下に選ばれなかった者には、王妃陛下より『選ばれし淑女の称号』が与えられ、また、婚約婚姻も王家が後押しする
〈注意事項〉
※一ヶ月後、応募の受け付けを開始し受付の期間は二日間とする。
※テストの内容については、後日、学園の大講義室にて説明会を行う。
その際、爵位を問わず質問を受け付ける。
※尚、この求人広告は、国王陛下並びに王妃陛下の命にて発行されている。
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メーデルは怒りで顔を紫にしていた。
「なんだっ! この内容はっ!」
「内容については後程。
朝の求人広告にもこれが記載されていたのですが、ご覧になりましたか?」
高官が掌で示した一番下ところに視線を合わせる。
※尚、この求人広告は、国王陛下並びに王妃陛下の命にて発行されている。
メーデルは近衛兵から『陛下の掲示物』とは聞いていたが、実際に記載されている物を見て顔をひくつかせた。
「もちろん、朝の物にも記載されておりました」
高官が意地悪そうに笑う。
「こんな大事なことはもっとわかりやすく書けっ!」
最後まで読みさえすればかなりわかりやすく書いてあるのでただの八つ当たりにしか聞こえない。
高官はメーデルの言い分を無視した。
「それで? 内容に問題がありましたか?」
高官のすっとぼけた言い方に、メーデルは頬をビクビクビクと引き攣らせた。
「この『性格不問』とは、どういうことだっ! 国母になろうとする者が捻くれ者であっていいわけがないっ!」
「それは、王太子妃教育でいかようにもなります」
高官は抑揚もなく答えた。『当然だ』との言い方を聞いた女子生徒たちがブルッと震えた。
ラビオナは『そこまで露骨に言わずとも』と思った。だが、『本音は隠し常に笑顔を』と教え込まれてきたことを思い出した。
『性格を隠すことは確かに可能ね』
ラビオナは思い直し、扇の奥の口元を思わず緩めた。
「バカを言うなっ! 性格が早々変えられるわけがないっ!」
ポーカーフェイスを全くできていないメーデルが唾を飛ばして怒鳴る。
『本当に王族教育を受けているのか?』と特に高位貴族子女たちは心の中で驚いていた。
「はい。そうですね。
しかしながら、対外的なお性格を作ることは可能です。
笑顔で対応する。
お言葉を選ぶ。
仕草を上品にする。
それだけで対外的な印象はよくなり、『清楚で性格の良い方だ』と判断されます」
理屈は納得できるが、それをさも当然だと思うのは別の話だ。いくら紳士教育淑女教育を受けていてもまだ成人前の少年少女たちだ。大人の裏を聞いてしまったような気持ちになった。
ラビオナだけは『やはりそうよね』と心から納得し、紅茶に手を伸ばしてホッと息をついた。
高官は嘲るような微笑で呆けているメーデルを見た。
「ですから、対内的なお性格の良さをお求めになるのは、メーデル王太子殿下だけですよ」
高官はニヤリと笑った。おそらくわざとであるが、単純なメーデルは怒りを増幅させた。
『なんのためにメーデル王太子殿下を煽っていらっしゃるのかしら?』
ラビオナは美丈夫の高官をさりげなくだが注意深く観察した。
「なら、尚更だっ! この項目は消せっ!」
メーデルは怒りで『陛下』の存在を飛ばしている。
「いえいえ、だからこそ最後に残った淑女たちからメーデル王太子殿下がお決めになるようになっております」
高官は恭しく頭を下げながら手は掲示物に向いており、『本採用について』の項目をトントンとノックして示した。求人広告の一部を掌で指し示されている。
●一年後、候補に残った者の中からメーデル王太子殿下がお一人を選ばれる
しっかりと記載されていた。
「その方のご気性がいかがなものか、殿下との相性はどうかなど、我々にはわかりようはございませんから。
特にメーデル王太子殿下のご趣味は全くもって理解できかねますし……」
高官のシエラへ向けられた視線は侮辱に満ちている。メーデルが睨みつけるも視線の意味を変えることはなかった。
「ですから、候補者となる女性たちとメーデル王太子殿下とで交流をしていただく他ありません。その辺りはメーデル王太子殿下ご自身に頑張っていただくしかありませんね」
高官は笑いを深めにっこりとした。確かに、メーデルと合うかどうかはメーデルにしかわからない。シエラと同じようなご令嬢など二人といないと思われるので尚更だ。
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