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第一章 本編
17 応募者の人数は……
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「では、ご起立ください」
全員が立ち上がるのを見て、王妃陛下も立ち上がった。
「一ヶ月後、皆さんに会えることを楽しみにしていますね」
女子生徒たちや卒業生の淑女たちは、王妃陛下にうっとりとした。
「最礼!」
文官の号令に従い頭を下げる。王妃陛下が退場し、会場も解散となった。
〰️ 〰️ 〰️
『不貞』については、予想通りの指針が示された。貴族の紳士淑女として当然の範囲である。つまりは、メーデルやノエルダムやウデルタやシエラの行為は『不貞である』という判断になった。
シエラは掲示板に張り出された指針を見て、不服そうに唇を尖らせる。が、次にはパッと顔を明るくした。
「メーデの不貞っていうのを許せばいいのよねっ! 不貞はこれだって書かれているけど、不貞をしてはいけないとは書かれていないものっ! うふふ」
斜め上の発想に周りにいた者たちは驚きを隠せなかった。確かにそうは取れる書き方だが、『これは不貞だからしてはいけません』と受け取ることが普通だろう。
しかし、翌日になると張り紙が追加されていた。
〰️ 〰️ 〰️
メーデル王子殿下が今後は不貞とみなされることは行わないと両陛下に対してお約束なさいました。
不貞とは上記に掲示されている通りです。
求人内容を訂正いたします。
○募集は、メーデル王子殿下の婚約者候補である
○メーデル王子殿下が過去に不貞を働く方であったことを心広く許せること
○婚約が成立した後、男女どちらであっても不貞は許されないことを了承できること(理由如何に関わらず不貞が発覚した場合、不貞をした方が相応の慰謝料を支払い離縁する)
〰️ 〰️ 〰️
シエラが発した昨日の大きな声の独り言が、王城に報告されていたのだ。それにしても、両陛下がメーデルの不貞行為については記載せずに済まないほどお怒りだとわかる。これはラビオナの価値とも言える。
新しい張り紙を見たシエラは被っていたネコを爽快に脱ぎ捨て、眉を寄せて口を尖らせ鼻の皺を寄せていた。
周りにいた生徒はクスクスと笑う。数名の男子生徒が驚きと悲しみの顔をしていた。シエラの可愛らしさに憧れを持っていたのかもしれない。
〰️ 〰️ 〰️
翌日卒業式が執り行われ、さらにその翌日は朝早くから領地へ帰る卒業生の女子生徒で大混雑していた。領地で両親と相談するために急いで帰ろうとしている。ここで数時間早まっても何も変わらないだろうが、なんとなく殺気立った雰囲気に口を出せる男はいない。
学園長の図らいで男子生徒は午後に出ることになった。
さらに三日後の在校生の帰郷も同じように取り計らわれた。
〰️ 〰️ 〰️
一ヶ月後。王城前は受け付けを待つ淑女たちで溢れていた。あまりの人数に学園の大講義室も受付所となり、女子生徒たちはそちらで受け付けすることになる。
メーデルはその人数の多さに初めは驚愕していたが、自分の人気ぶりだとほくそ笑み、そのうち高笑いするようになった。
「ラニィがいなくとも何の問題もないじゃないか。一年あるのだ。相手はゆっくりと決めればよいな。あっはっは!」
メーデルはシエラという存在がいるにも関わらず、自分が選ぶ立場であるとふんぞり返った。
メーデルは自分が不貞を犯したことを棚上げし、シエラが不貞をする女性であることに少しだけ嫌悪感を感じ始めていた。
〰️ 〰️ 〰️
王妃陛下が王城の三階廊下から特設受け付け所を見下ろしていた。
王妃陛下はメーデルとは考えが異なるようだ。
「まあまあ! 敏い貴族が多いこと。いい傾向だわ。
賢い淑女が増えるのは、国の発展に必要だと思うの。そのきっかけにしたいわね」
「王妃陛下の野望は大きいですね」
「うふふふ。男たちが悠長に呑気な顔をしている間にって思っていましたけど、先日のお話で男たちの中にも気が付いた者がいるようね。
まあ、気が付いたのなら、それを利用するだけですけどね」
「怖い怖い……」
男は空色の瞳を細めて王妃陛下を見た。王妃陛下はそれを嬉しそうに受け止めた。
「矢面はお前なのよ。しっかり頼みますね」
「はぁ……。怖い怖い……」
その男は王妃陛下に挨拶もせずに踵を返し、グレーの頭髪をポリポリとかきながら、美しい顔を悩ましげに少し歪めて歩いていった。
〰️ 〰️ 〰️
申込みは二百人を越えていた。中には先日まで婚約者がいたはずのご令嬢までいる。
王妃陛下のはからいで、宿を四つ貸し切り、王都にタウンハウスを持たない子爵家男爵家のご令嬢ですでに学園を卒業している者たちの仮寮とした。
〰️
学園の入学式の翌日から講義ははじまった。
初月の項目はマナーとダンスと護身術体術の初級だ。
大人数なので六グループに分けた。爵位を平均的に分けられた。
マナーやダンスは高位貴族令嬢たちがお手本となり、下位貴族令嬢たちはメキメキと上達していく。護身術体術は下位貴族令嬢が有利だ。護衛など雇うお金がないので、多少なりともやっている者が多かったのだ。高位貴族令嬢たちは自分の身を守ることと大切さを理解し学んでいった。
全員が立ち上がるのを見て、王妃陛下も立ち上がった。
「一ヶ月後、皆さんに会えることを楽しみにしていますね」
女子生徒たちや卒業生の淑女たちは、王妃陛下にうっとりとした。
「最礼!」
文官の号令に従い頭を下げる。王妃陛下が退場し、会場も解散となった。
〰️ 〰️ 〰️
『不貞』については、予想通りの指針が示された。貴族の紳士淑女として当然の範囲である。つまりは、メーデルやノエルダムやウデルタやシエラの行為は『不貞である』という判断になった。
シエラは掲示板に張り出された指針を見て、不服そうに唇を尖らせる。が、次にはパッと顔を明るくした。
「メーデの不貞っていうのを許せばいいのよねっ! 不貞はこれだって書かれているけど、不貞をしてはいけないとは書かれていないものっ! うふふ」
斜め上の発想に周りにいた者たちは驚きを隠せなかった。確かにそうは取れる書き方だが、『これは不貞だからしてはいけません』と受け取ることが普通だろう。
しかし、翌日になると張り紙が追加されていた。
〰️ 〰️ 〰️
メーデル王子殿下が今後は不貞とみなされることは行わないと両陛下に対してお約束なさいました。
不貞とは上記に掲示されている通りです。
求人内容を訂正いたします。
○募集は、メーデル王子殿下の婚約者候補である
○メーデル王子殿下が過去に不貞を働く方であったことを心広く許せること
○婚約が成立した後、男女どちらであっても不貞は許されないことを了承できること(理由如何に関わらず不貞が発覚した場合、不貞をした方が相応の慰謝料を支払い離縁する)
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シエラが発した昨日の大きな声の独り言が、王城に報告されていたのだ。それにしても、両陛下がメーデルの不貞行為については記載せずに済まないほどお怒りだとわかる。これはラビオナの価値とも言える。
新しい張り紙を見たシエラは被っていたネコを爽快に脱ぎ捨て、眉を寄せて口を尖らせ鼻の皺を寄せていた。
周りにいた生徒はクスクスと笑う。数名の男子生徒が驚きと悲しみの顔をしていた。シエラの可愛らしさに憧れを持っていたのかもしれない。
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翌日卒業式が執り行われ、さらにその翌日は朝早くから領地へ帰る卒業生の女子生徒で大混雑していた。領地で両親と相談するために急いで帰ろうとしている。ここで数時間早まっても何も変わらないだろうが、なんとなく殺気立った雰囲気に口を出せる男はいない。
学園長の図らいで男子生徒は午後に出ることになった。
さらに三日後の在校生の帰郷も同じように取り計らわれた。
〰️ 〰️ 〰️
一ヶ月後。王城前は受け付けを待つ淑女たちで溢れていた。あまりの人数に学園の大講義室も受付所となり、女子生徒たちはそちらで受け付けすることになる。
メーデルはその人数の多さに初めは驚愕していたが、自分の人気ぶりだとほくそ笑み、そのうち高笑いするようになった。
「ラニィがいなくとも何の問題もないじゃないか。一年あるのだ。相手はゆっくりと決めればよいな。あっはっは!」
メーデルはシエラという存在がいるにも関わらず、自分が選ぶ立場であるとふんぞり返った。
メーデルは自分が不貞を犯したことを棚上げし、シエラが不貞をする女性であることに少しだけ嫌悪感を感じ始めていた。
〰️ 〰️ 〰️
王妃陛下が王城の三階廊下から特設受け付け所を見下ろしていた。
王妃陛下はメーデルとは考えが異なるようだ。
「まあまあ! 敏い貴族が多いこと。いい傾向だわ。
賢い淑女が増えるのは、国の発展に必要だと思うの。そのきっかけにしたいわね」
「王妃陛下の野望は大きいですね」
「うふふふ。男たちが悠長に呑気な顔をしている間にって思っていましたけど、先日のお話で男たちの中にも気が付いた者がいるようね。
まあ、気が付いたのなら、それを利用するだけですけどね」
「怖い怖い……」
男は空色の瞳を細めて王妃陛下を見た。王妃陛下はそれを嬉しそうに受け止めた。
「矢面はお前なのよ。しっかり頼みますね」
「はぁ……。怖い怖い……」
その男は王妃陛下に挨拶もせずに踵を返し、グレーの頭髪をポリポリとかきながら、美しい顔を悩ましげに少し歪めて歩いていった。
〰️ 〰️ 〰️
申込みは二百人を越えていた。中には先日まで婚約者がいたはずのご令嬢までいる。
王妃陛下のはからいで、宿を四つ貸し切り、王都にタウンハウスを持たない子爵家男爵家のご令嬢ですでに学園を卒業している者たちの仮寮とした。
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学園の入学式の翌日から講義ははじまった。
初月の項目はマナーとダンスと護身術体術の初級だ。
大人数なので六グループに分けた。爵位を平均的に分けられた。
マナーやダンスは高位貴族令嬢たちがお手本となり、下位貴族令嬢たちはメキメキと上達していく。護身術体術は下位貴族令嬢が有利だ。護衛など雇うお金がないので、多少なりともやっている者が多かったのだ。高位貴族令嬢たちは自分の身を守ることと大切さを理解し学んでいった。
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