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第一章 本編
31 彼の者たちは……
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ウデルタは騎士団に騎士見習いとして一年間所属したがやはり騎士にはなれなかった。約束通り、騎士団の小間使いになった。小間使いとなっても、とにかく真面目に働いた。
ウデルタは騎士団に所属していた間に、自分にできることは一生懸命真面目にやることだけだと身にしみるほど感じたのだ。
ウデルタは訓練についていくことが難しかった。しかし逃げ場所もなく、とにかくやるしかない。初めは中傷や虐めを受けた。だが、ウデルタが懸命にやっていることをわかると馬鹿にする者はいなくなった。
ウデルタとしてみれば、初めは父親や長兄チハルタの視線が怖かったためにやっていたのだが、懸命さを認められることを嬉しく思うようになった。
ウデルタが小間使いとして真面目に働く姿を一年間見た長兄チハルタはウデルタを騎士団専属文官見習いにした。ウデルタはそれも真面目に働き学んでいった。二年後には騎士団専属文官に実採用され、実家であるメヘンレンド侯爵家への出入りも許可された。
翌年、王妃陛下から『准淑女の称号』を得た男爵令嬢が、騎士団専属文官に採用された。そのご令嬢とウデルタは懇意になった。男爵令嬢は次女なので二人とも継ぐものはない。
二人は婚姻を機に王都に借りた小さな一軒家で暮らし始めた。貴族文官を続けるために侯爵家の一員として名を連ねてはいるが、メイドも付けず平民と同じように暮らしてる。准男爵の爵位を受けるほどの功績を残したわけではないが、二人共騎士団にはなくてはならない存在になっていた。
二人の間に子供はできなかった。それでも、二人はいつまでも微笑みの絶えない思い合える夫婦であった。
〰️ 〰️ 〰️
ノエルダムがお世話になることになったヨベリス前南方辺境伯殿の未亡人ニーチェル・ヨベリスは、ノエルダムを婿ではなく護衛兼使用人として受け入れた。
戦場の女傑と言われたニーチェルはノエルダム相手に『軽く運動しましょう』と言っては一時間も剣を合わせる。
ノエルダムは初めてニーチェルと手合わせした際にはコテンパンにされた。武術には自信のあったノエルダムは自分は何もできない人間なのだと打ちのめされた。
男手はノエルダムしかいないのだが、指示をされないと何もできない。そのことにも、ノエルダムの自尊心は壊されていく。
後がないノエルダムは自分の不甲斐なさを見つめ、認め、反省した。そして、ニーチェルの指導で人としてやり直す覚悟もした。
ニーチェルが連れていったメイドはノエルダムより四つほど年上の平民女性だった。元旦那さんが事故死してしまい、子供二人を育てることに不安を覚えていたところにニーチェルが手を差し伸べたそうだ。ニーチェルが隠居する館に幼い子供二人も一緒に来ていた。
ノエルダムとその平民女性が心を通わせることになったのは、ここに来てから五年もたった後である。ノエルダムはそれまで懸命に自分が精神的に大人になる努力をしていた。
この頃にはニーチェルの剣の相手も互角にできるようになっているし、仕事も自分で動けるようになっていた。
あの騒動から七年目に、ノエルダムは平民になることを父親コーチアム公爵に了承を得た。そして、ニーチェルが見届人となりその平民女性と婚姻した。
それまで以上に夫婦でニーチェルに尽くしていった。元気な子供たち四人がいて賑やかな館であることをニーチェルも喜んでいる。
〰️ 〰️ 〰️
シエラは西方辺境伯の城で下女になった。しかし、あまり働こうとせず、何度も独房に入れられた。
そんなある時、辺境伯夫人の付き添いで数名のメイドたちとともに町の孤児院へ慰問に行った。シエラは子供たちと嬉々として遊ぶ。さらには遊びだけではなく、子供たちと共にランチをすると、とてもよく面倒を見た。
辺境伯夫人は、シエラは本当はもっと両親からの愛情を受けたかったのではないか、自分と孤児たちを重ねたのではないかと考えた。
辺境伯夫人の口添えで、辺境伯は下女の貸し出しという形でシエラを孤児院の下働きにした。シエラは人が変わったようによく働きはじめた。
〰️ 〰️ 〰️
卒業式から五年。メーデルは知人の伯爵家のパーティーにおいて、ライラリンネにプロポーズされている。
嬉しい気持ちはあるが、かといってそれを受ければライラリンネの経歴に傷がつくと考えを巡らせ、周章狼狽している。
「で、では、こうしよう。一年後、君がまだ俺と……その……一緒になってもいいと思っていたら、君のお父上を通して手紙をくれ」
ライラリンネが驚いた顔でメーデルを見た。
「あの……。お手紙は一年後でないとダメですか?」
ライラリンネが残念そうに目を伏せる。
「あ、いや、君の勉学の邪魔をしたくないだけなのだ……が……」
メーデルは目を泳がせた。実際に、メーデルはライラリンネをもっと知りたいと思い始めていた。それでもこの可愛らしく若い女性に醜聞まみれの自分がそぐわぬと思わざるを得ない。気持ちと思考の間でメーデルは返事をしあぐねた。それが恋の始まりだとも気が付かずに。
ライラリンネは手を前に合わせて上目遣いでメーデルを見た。
「邪魔なわけがありません。夢が叶うかもと思うだけで、自力以上に頑張れます。
あの……閣下のご迷惑でなければ、時々で構いませんのでお手紙をしてくれると嬉しく思います。わたくし、学園の寮におりますので……」
可愛らしいおねだりに、メーデルは陥落した。
この出会いから一年と一ヶ月後、あの騒動から七年。ライラリンネは立派に『淑女の称号』を手に入れ、その半年後、メーデルと婚姻した。
メーデルはライラリンネとの出会いから一年半、それまで以上に働き、すべての負債を返済した。そうして、気持ちよくライラリンネを迎えたのだった。
二人はクレアンナート公爵領の発展に大きく貢献した。それでも本人たちは倹約家であったので、そのあたりも領民に慕われていくことになる。それは二人の間に子供ができても変わることはなかった。
~ 第一章 本編 fin ~
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第二章 メーデルサイド
是非こちらもよろしくお願いします。
ウデルタは騎士団に所属していた間に、自分にできることは一生懸命真面目にやることだけだと身にしみるほど感じたのだ。
ウデルタは訓練についていくことが難しかった。しかし逃げ場所もなく、とにかくやるしかない。初めは中傷や虐めを受けた。だが、ウデルタが懸命にやっていることをわかると馬鹿にする者はいなくなった。
ウデルタとしてみれば、初めは父親や長兄チハルタの視線が怖かったためにやっていたのだが、懸命さを認められることを嬉しく思うようになった。
ウデルタが小間使いとして真面目に働く姿を一年間見た長兄チハルタはウデルタを騎士団専属文官見習いにした。ウデルタはそれも真面目に働き学んでいった。二年後には騎士団専属文官に実採用され、実家であるメヘンレンド侯爵家への出入りも許可された。
翌年、王妃陛下から『准淑女の称号』を得た男爵令嬢が、騎士団専属文官に採用された。そのご令嬢とウデルタは懇意になった。男爵令嬢は次女なので二人とも継ぐものはない。
二人は婚姻を機に王都に借りた小さな一軒家で暮らし始めた。貴族文官を続けるために侯爵家の一員として名を連ねてはいるが、メイドも付けず平民と同じように暮らしてる。准男爵の爵位を受けるほどの功績を残したわけではないが、二人共騎士団にはなくてはならない存在になっていた。
二人の間に子供はできなかった。それでも、二人はいつまでも微笑みの絶えない思い合える夫婦であった。
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ノエルダムがお世話になることになったヨベリス前南方辺境伯殿の未亡人ニーチェル・ヨベリスは、ノエルダムを婿ではなく護衛兼使用人として受け入れた。
戦場の女傑と言われたニーチェルはノエルダム相手に『軽く運動しましょう』と言っては一時間も剣を合わせる。
ノエルダムは初めてニーチェルと手合わせした際にはコテンパンにされた。武術には自信のあったノエルダムは自分は何もできない人間なのだと打ちのめされた。
男手はノエルダムしかいないのだが、指示をされないと何もできない。そのことにも、ノエルダムの自尊心は壊されていく。
後がないノエルダムは自分の不甲斐なさを見つめ、認め、反省した。そして、ニーチェルの指導で人としてやり直す覚悟もした。
ニーチェルが連れていったメイドはノエルダムより四つほど年上の平民女性だった。元旦那さんが事故死してしまい、子供二人を育てることに不安を覚えていたところにニーチェルが手を差し伸べたそうだ。ニーチェルが隠居する館に幼い子供二人も一緒に来ていた。
ノエルダムとその平民女性が心を通わせることになったのは、ここに来てから五年もたった後である。ノエルダムはそれまで懸命に自分が精神的に大人になる努力をしていた。
この頃にはニーチェルの剣の相手も互角にできるようになっているし、仕事も自分で動けるようになっていた。
あの騒動から七年目に、ノエルダムは平民になることを父親コーチアム公爵に了承を得た。そして、ニーチェルが見届人となりその平民女性と婚姻した。
それまで以上に夫婦でニーチェルに尽くしていった。元気な子供たち四人がいて賑やかな館であることをニーチェルも喜んでいる。
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シエラは西方辺境伯の城で下女になった。しかし、あまり働こうとせず、何度も独房に入れられた。
そんなある時、辺境伯夫人の付き添いで数名のメイドたちとともに町の孤児院へ慰問に行った。シエラは子供たちと嬉々として遊ぶ。さらには遊びだけではなく、子供たちと共にランチをすると、とてもよく面倒を見た。
辺境伯夫人は、シエラは本当はもっと両親からの愛情を受けたかったのではないか、自分と孤児たちを重ねたのではないかと考えた。
辺境伯夫人の口添えで、辺境伯は下女の貸し出しという形でシエラを孤児院の下働きにした。シエラは人が変わったようによく働きはじめた。
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卒業式から五年。メーデルは知人の伯爵家のパーティーにおいて、ライラリンネにプロポーズされている。
嬉しい気持ちはあるが、かといってそれを受ければライラリンネの経歴に傷がつくと考えを巡らせ、周章狼狽している。
「で、では、こうしよう。一年後、君がまだ俺と……その……一緒になってもいいと思っていたら、君のお父上を通して手紙をくれ」
ライラリンネが驚いた顔でメーデルを見た。
「あの……。お手紙は一年後でないとダメですか?」
ライラリンネが残念そうに目を伏せる。
「あ、いや、君の勉学の邪魔をしたくないだけなのだ……が……」
メーデルは目を泳がせた。実際に、メーデルはライラリンネをもっと知りたいと思い始めていた。それでもこの可愛らしく若い女性に醜聞まみれの自分がそぐわぬと思わざるを得ない。気持ちと思考の間でメーデルは返事をしあぐねた。それが恋の始まりだとも気が付かずに。
ライラリンネは手を前に合わせて上目遣いでメーデルを見た。
「邪魔なわけがありません。夢が叶うかもと思うだけで、自力以上に頑張れます。
あの……閣下のご迷惑でなければ、時々で構いませんのでお手紙をしてくれると嬉しく思います。わたくし、学園の寮におりますので……」
可愛らしいおねだりに、メーデルは陥落した。
この出会いから一年と一ヶ月後、あの騒動から七年。ライラリンネは立派に『淑女の称号』を手に入れ、その半年後、メーデルと婚姻した。
メーデルはライラリンネとの出会いから一年半、それまで以上に働き、すべての負債を返済した。そうして、気持ちよくライラリンネを迎えたのだった。
二人はクレアンナート公爵領の発展に大きく貢献した。それでも本人たちは倹約家であったので、そのあたりも領民に慕われていくことになる。それは二人の間に子供ができても変わることはなかった。
~ 第一章 本編 fin ~
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第二章 メーデルサイド
是非こちらもよろしくお願いします。
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