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災難4 慰謝料
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ソチアンダ侯爵家に着いたメヘンレンド侯爵夫妻は丁寧に応接室に通された。ソチアンダ侯爵夫妻とユリティナが入室し軽い挨拶の後五人がソファに座る。
「メヘンレンド侯爵。今日はいかがなされた?」
「本日はお願いがあって参りました。我が家の有責にてユリティナ嬢とウデルタとの婚約を破棄とさせていただきたいっ」
メヘンレンド侯爵夫妻は深々と頭を下げた。
「…………。 メヘンレンド侯爵。頭を上げてください」
メヘンレンド侯爵夫妻が頭を上げると、ソチアンダ侯爵一家は苦笑いしていた。それを見てメヘンレンド侯爵夫妻は目を伏せる。
「何もかもご存知なのですね……」
「存じていると申しますか…… 予想できていたといったところですな」
メヘンレンド侯爵夫人がまた深々と頭を下げる。
「本当に申し訳ありません。許してくれなどと言える立場でもございません。ユリティナ嬢の将来に傷が残らぬよう対応させていただきたく存じます。
かくなる上は愚息の首をお持ちいたします!」
メヘンレンド侯爵夫人の口上にメヘンレンド侯爵も慌てて一緒に頭を下げた。
「「「首!!??」」」
ソチアンダ侯爵一家は目を見開いて驚いた。
「「はいっ!」」
「いやいやいや、それはいけませんよ。未来ある若者ではありませんかっ!」
「あのような者の未来など必要ではありません!」
「お二人とも本当に頭を上げてください」
ソチアンダ侯爵はため息とともに懇願した。二人はゆっくりと頭を上げる。
「首など……。本当に必要ありませんよ。
先程、婚約解消については予想していたと申しましたが、それは後々のお話でその前にご子息の再教育のお話かと思っておったのですよ」
「もし、今回のことが『成績が悪い』とか『素行が悪い』ということならそれも考えたでしょう。しかし、不貞となれば話は別です。女性を侮辱するような行為はこれ―メヘンレンド侯爵夫人―にとって最も許されざる行為なのです」
メヘンレンド侯爵は夫人の膝に手を置いて『これ』が何かを示した。
「さすがに謹厳実直なメヘンレンド家ですね。ユリティナもメヘンレンド侯爵夫妻に大事に思われていたのだと実感できて喜んでいるでしょう。なぁ? ユリティナ……」
「はい。お父様。わたくしの醜聞を一に考えてくださり、感謝と喜びの気持ちでいっぱいですわ」
ユリティナは輝く笑顔であった。メヘンレンド侯爵夫妻はユリティナが思っていたより平素な様子に心からホッとした。
「しかし、不貞とは……。 証拠があったのですか?」
「執事からの報告では、学園で同級生のシエラという女子生徒と深夜に密室で二人きりであったそうです。さすがに中の様子まではわかりませんが……。
そちら様にお世話になること―婿入り―となっておったのです。疑惑だけで充分です!」
メヘンレンド侯爵邸での『お泊り事件』では何もなかったとメイドたちから報告されている。ベッドや風呂場の乱れでわかるものだ。
しかし、『学園でのお泊り事件』はリネンなどは他の生徒と一緒にされるため、正確にはわからない。
「疑惑だけで充分ですか。そこまでうちを立てていただき感謝いたします。では、この婚約はなかったことにいたしましょう」
「「ありがとうございます!」」
メヘンレンド侯爵夫妻は再び頭を下げたが、今度はすぐに上げた。
「つきましては、慰謝料ですが、ソチアンダ侯爵の言い値で結構です!」
「いやいやいや、それはお待ちください。
それより、今回のお話はギバルタ殿は何と申されておるのですか?」
「ギバルタですか?」
「はい。慰謝料のお話はギバルタ殿の意見を聞いてからにしたいと思うのです。
ユリティナ。それでいいな?」
慰謝料は家と家とのやり取りだ。娘に伺いをたてたソチアンダ侯爵の言葉にメヘンレンド侯爵夫妻は疑問を持った。
「はい。お父様。わたくしはギバルタ様のご意見を聞きとうございますわ」
ソチアンダ侯爵夫妻は優しい瞳で娘ユリティナを見つめ、ウンウンと頷く。
「え? あ……。 そうなのですか? では、明日、妻とギバルタをこちらに伺わせます。私は先の戦争の報告と今回の婚約破棄について王城へ報告に参りますゆえ、同行できませんことをお許しください」
「婚約破棄ではなく、婚約白紙にいたしませんか?」
「それで良いのですか?」
破棄と白紙では慰謝料の相場が四倍ほど違ってくる。
「ええ、それでお願いします。では、陛下へのご報告はメヘンレンド侯爵にお願いしてよろしいのですね?」
「はい。責任を持って報告してまいります」
「では、明日は奥様とギバルタ殿のご来訪をお待ちしております」
五人が立ち上がり、ソチアンダ侯爵とメヘンレンド侯爵がガッチリと握手をした。
「メヘンレンド侯爵。今日はいかがなされた?」
「本日はお願いがあって参りました。我が家の有責にてユリティナ嬢とウデルタとの婚約を破棄とさせていただきたいっ」
メヘンレンド侯爵夫妻は深々と頭を下げた。
「…………。 メヘンレンド侯爵。頭を上げてください」
メヘンレンド侯爵夫妻が頭を上げると、ソチアンダ侯爵一家は苦笑いしていた。それを見てメヘンレンド侯爵夫妻は目を伏せる。
「何もかもご存知なのですね……」
「存じていると申しますか…… 予想できていたといったところですな」
メヘンレンド侯爵夫人がまた深々と頭を下げる。
「本当に申し訳ありません。許してくれなどと言える立場でもございません。ユリティナ嬢の将来に傷が残らぬよう対応させていただきたく存じます。
かくなる上は愚息の首をお持ちいたします!」
メヘンレンド侯爵夫人の口上にメヘンレンド侯爵も慌てて一緒に頭を下げた。
「「「首!!??」」」
ソチアンダ侯爵一家は目を見開いて驚いた。
「「はいっ!」」
「いやいやいや、それはいけませんよ。未来ある若者ではありませんかっ!」
「あのような者の未来など必要ではありません!」
「お二人とも本当に頭を上げてください」
ソチアンダ侯爵はため息とともに懇願した。二人はゆっくりと頭を上げる。
「首など……。本当に必要ありませんよ。
先程、婚約解消については予想していたと申しましたが、それは後々のお話でその前にご子息の再教育のお話かと思っておったのですよ」
「もし、今回のことが『成績が悪い』とか『素行が悪い』ということならそれも考えたでしょう。しかし、不貞となれば話は別です。女性を侮辱するような行為はこれ―メヘンレンド侯爵夫人―にとって最も許されざる行為なのです」
メヘンレンド侯爵は夫人の膝に手を置いて『これ』が何かを示した。
「さすがに謹厳実直なメヘンレンド家ですね。ユリティナもメヘンレンド侯爵夫妻に大事に思われていたのだと実感できて喜んでいるでしょう。なぁ? ユリティナ……」
「はい。お父様。わたくしの醜聞を一に考えてくださり、感謝と喜びの気持ちでいっぱいですわ」
ユリティナは輝く笑顔であった。メヘンレンド侯爵夫妻はユリティナが思っていたより平素な様子に心からホッとした。
「しかし、不貞とは……。 証拠があったのですか?」
「執事からの報告では、学園で同級生のシエラという女子生徒と深夜に密室で二人きりであったそうです。さすがに中の様子まではわかりませんが……。
そちら様にお世話になること―婿入り―となっておったのです。疑惑だけで充分です!」
メヘンレンド侯爵邸での『お泊り事件』では何もなかったとメイドたちから報告されている。ベッドや風呂場の乱れでわかるものだ。
しかし、『学園でのお泊り事件』はリネンなどは他の生徒と一緒にされるため、正確にはわからない。
「疑惑だけで充分ですか。そこまでうちを立てていただき感謝いたします。では、この婚約はなかったことにいたしましょう」
「「ありがとうございます!」」
メヘンレンド侯爵夫妻は再び頭を下げたが、今度はすぐに上げた。
「つきましては、慰謝料ですが、ソチアンダ侯爵の言い値で結構です!」
「いやいやいや、それはお待ちください。
それより、今回のお話はギバルタ殿は何と申されておるのですか?」
「ギバルタですか?」
「はい。慰謝料のお話はギバルタ殿の意見を聞いてからにしたいと思うのです。
ユリティナ。それでいいな?」
慰謝料は家と家とのやり取りだ。娘に伺いをたてたソチアンダ侯爵の言葉にメヘンレンド侯爵夫妻は疑問を持った。
「はい。お父様。わたくしはギバルタ様のご意見を聞きとうございますわ」
ソチアンダ侯爵夫妻は優しい瞳で娘ユリティナを見つめ、ウンウンと頷く。
「え? あ……。 そうなのですか? では、明日、妻とギバルタをこちらに伺わせます。私は先の戦争の報告と今回の婚約破棄について王城へ報告に参りますゆえ、同行できませんことをお許しください」
「婚約破棄ではなく、婚約白紙にいたしませんか?」
「それで良いのですか?」
破棄と白紙では慰謝料の相場が四倍ほど違ってくる。
「ええ、それでお願いします。では、陛下へのご報告はメヘンレンド侯爵にお願いしてよろしいのですね?」
「はい。責任を持って報告してまいります」
「では、明日は奥様とギバルタ殿のご来訪をお待ちしております」
五人が立ち上がり、ソチアンダ侯爵とメヘンレンド侯爵がガッチリと握手をした。
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