【完結】【35万pt感謝】転生したらお飾りにもならない王妃のようなので自由にやらせていただきます

宇水涼麻

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24 王子宮

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 その日、アランディルスは完璧な社交性を見せて貴族たちを充分に満足させた。
 パーティの翌日から、アランディルスは王子宮で生活することになっている。

 の、だ、が。

 その身は当然というように王妃宮に充てがわれた自室にあった。アランディルス用の応接室兼執務室兼……まあ、つまり現在の勉強部屋を挟んだ部屋はバードルの部屋となっている。
 二人は時間になると勉強部屋へ集合し家庭教師による教育が施され、剣技を学び、時々は社交も学んだ。

「二人がこれまでと変わらぬ生活ができるのも陛下の無関心のおかげだわ。感謝しなくては、ね」

 パーティーからすでに一ヶ月、自室で優雅にお茶を嗜むレイジーナにソフィアナはニッコリとして同意した。

 表面上王子宮を使用しているように見せるため、南離宮での使用人を数名王子宮に住まわせ、掃除などの宮邸維持をさせている。食材などはルネジー商会を通しているので納入のフリをして貯蓄している。

「わたくしがやっていることは以前の王妃宮の使用人たちと同じことなのよね……」

 横領している自覚はあるため自嘲するように悲しげに笑う。

「違います! 妃殿下はその金額をそのまま福祉にご利用なさっているではありませんか。孤児院への寄付に子どもたちは喜んでおります。私利私欲に使ったあの者たちとはまっっっったく違います!」

 最後の日まで図々しい態度だった者たちを思い出し苛立つガレンが力強く拳を握り熱弁するのでレイジーナは嬉しくなってホッと息を吐いた。

「わたくしの行いが一人でも多くの子どもの糧になるといいわね」

 レイジーナは孤児院に勉強用具や木剣や裁縫道具も送っている。

「そのような形のボランティアをなさっているのは妃殿下だけです。お名前をお出しせずになさるなんて……。世間の声が悔しくて悔しくて」

「表立ったら叩かれて、そちらへ支援できなくなるわ」

 レイジーナが優美に笑うのでガレンとソフィアナは諦めたように嘆息して仕事モードへ入った。

 しばらくして客人が来たとの連絡を受け応接室へと移動した。そこで待っていたのは南離宮の時からルネジー商会の表の長を務めているリグダーだ。リグダーはレイジーナたちの物になるより前からこの商会で働く者だ。

「ご無沙汰をして申し訳ございません」

「いいのよ。こちらへの許可が下りるのに時間がかかったでしょう。苦労をかけたわね」

「とんでもないです。こうして王妃宮内を堂々と歩けるなんて夢のようです。妃殿下のお計らいのおかげでございます。本来なら私など門前払いのはずですから。少しくらい時間がかかること程度は何の問題もございません」

「ふふふ。ならよかったわ。これからもよろしく頼むわね。それで、新しい契約書はできた?」

「はい。こちらに。ニルネス会長のサインはすでにいただいております」

「リグダー。この『三割』ってどう思う?」

「これから活動が制限される妃殿下のためには、大変に妥当な数字かと思われますが?」

「わたくしはいらないって言ったのよ」

「それは……ニルネス会長の意にそぐわぬものと思われますが……」

「そうなのよ。わたくしが強く言わなかったら五割のままでいるつもりだったのよ。信じられないわ」

 レイジーナは溜息を大きく吐き出した。

『秘書たちからニルネス会長のお気持ちは何も伝わっていらっしゃらないとは聞いていたが……』

 ニルネスの気持ちをしゃべるわけにはいかないリグダーは苦笑いを返すしかなかった。

「妃殿下はこれに反対されるだろうからと、ニルネス会長は先にサインなさいました。もしこれを妃殿下が破棄されるようでしたら、以前の五割契約のままになさるそうです」

「まあ! そこまでするなんて!」

『ご自分が得をされるようなご行為はお考えにならないのだな。お二人共、健全なお考え過ぎる……』

 これまでも二人が推し進めてきたことに際して、何度も損得を後回しにするレイジーナとニルネスを宥めて懇願して泣き落として苦労してきたのはリグダーである。それでも二人を支えていきたいと考えているし、自分が歯止めになるべきだと決意している。

『十年前に店ごと引き取っていただけて本当によかった。あのときは罪悪感で押しつぶされそうになっていたからな』

 レイジーナとニルネスによってコテンパンにされ強制労働所へ送還された元オーナーは五年前に出所したがその日のうちに街の裏道で袋叩きにあって殺された。犯人は捕まっていないが事前に出所の情報が街に流れていたので、送還前にしていた行為の被害者たちであることは容易に予想できた。

『あの情報も……。いや、今更勘ぐるのはやめておこう。大事にされるお相手に健全でも、それを守るために健全でないことは…………この社会では必要なことなのだから』

 リグダーは努めて顔を柔和にしてレイジーナと向き合った。
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