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疑問9 神様はいるのかしら?
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私が風呂場で読んでいた小説は短編だったと思う。
母親の死の原因だと家族に虐げられて苦しんだ伯爵令嬢は、祖父母の領地にある思い出の湖で入水自殺する。彼女の死体はキレイなまま祖父母である侯爵邸近くに打ち上げられた。彼女の死後、虐待が発覚し祖父母は彼女の体を伯爵家に返還することを拒否し、湖の近くにある母親の墓標の近くに令嬢の墓標も建てた。
あらすじはこのようなものだったはずだ。虐待シーンの描写がなかなかエグかった。父親と兄は殴る蹴るは当たり前。使用人たちまで加担していた。
「私ならオリビアを助ける話にしたいなぁって考えていたような……気がする……」
神様がそのチャンスをくれたのかもしれないと思わなくはない。私はムクッと起き上がりベランダへ出た。
ベランダの柵は夜露で濡れている。
「神様ぁ。それならオリビアに会わせてよ。もし、うまくザマァできたとしても、オリビアがいないんじゃ意味ないじゃん……」
星空に向けて独り言ちた。
〰️
これを仕掛けたのは本当に神様かもしれない。だって、私はすぐにオリビアに会えたのだから。
その日の夜、私は夢を見た。
広い芝生。真っ白な日傘は大きくて、真っ白なベンチとテーブルに心地よい日陰を作っている。テーブルにはお茶が湯気を立てていて、お皿に乗せられたクッキーはドライフルーツが練り込まれていて宝石のようにキラキラしていた。
その近くに二本の大きな樹木。二本を繋ぐように紫色のハンモックが揺れている。
ハンモックの中で眠る美しい少女。
幼い少女の姿をであったが、私はすぐにオリビアだとわかった。
だが、夢の中だからなのか、私はオリビアに語りかけることも揺り起こすこともできず、ただ目を覚ましてくれることを祈ることしかできなかった。
〰️
翌朝、フィゾルド侯爵夫妻にこの不思議な夢の話をすると、再び泣き始めた。
「ビアはワシらとの思い出の中で眠っているのか……」
「ビアちゃんはわたくしたちの元へずっと来たかったのね」
「オリビアお嬢様のここでの暮らしは幸せそのものでした……」
バレルまで涙を流している。だが、悲しみの中にも喜びが見えて、私も少し嬉しく思う。
私が昨夜の夢で見たオリビアはどうやら十歳ではないかと思われた。十歳でノイデル伯爵家に引き取られたからだ。
「喜びも悲しみもしばらくお待ちください。その場所はわかりますか? 今も同じ状態になっておりますか?」
「いや、ビアがいなくなって、使わなくなってしまったんだ。
バレル! すぐに手配をしろ」
「かしこまりました」
バレルが頭を四十五度下げ、サッと部屋を出ていく。
「わたくしはクッキー用のドライフルーツを作らなくてはっ!」
フィゾルド侯爵夫人はパタパタと音がしそうなほど急いで廊下へ出た。大変素晴らしい淑女の彼女は足音などさせないが。
オリビアの思い出のクッキーはどうやら夫人の手作りだったようだ。
「三日もすれば用意ができるだろう」
「ありがとうございます。でも……」
「どうしたね?」
「ここまでしていただいたのに、オリビアさんに会えなかったら……すみません」
「それならまた違う方法を探そう。シズがワシらのためにやってくれているというのは理解しとる。遠慮せず言っておくれ」
「わかりました」
お祖父様の優しい言葉に、私も穏やかに微笑むことができた。
母親の死の原因だと家族に虐げられて苦しんだ伯爵令嬢は、祖父母の領地にある思い出の湖で入水自殺する。彼女の死体はキレイなまま祖父母である侯爵邸近くに打ち上げられた。彼女の死後、虐待が発覚し祖父母は彼女の体を伯爵家に返還することを拒否し、湖の近くにある母親の墓標の近くに令嬢の墓標も建てた。
あらすじはこのようなものだったはずだ。虐待シーンの描写がなかなかエグかった。父親と兄は殴る蹴るは当たり前。使用人たちまで加担していた。
「私ならオリビアを助ける話にしたいなぁって考えていたような……気がする……」
神様がそのチャンスをくれたのかもしれないと思わなくはない。私はムクッと起き上がりベランダへ出た。
ベランダの柵は夜露で濡れている。
「神様ぁ。それならオリビアに会わせてよ。もし、うまくザマァできたとしても、オリビアがいないんじゃ意味ないじゃん……」
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これを仕掛けたのは本当に神様かもしれない。だって、私はすぐにオリビアに会えたのだから。
その日の夜、私は夢を見た。
広い芝生。真っ白な日傘は大きくて、真っ白なベンチとテーブルに心地よい日陰を作っている。テーブルにはお茶が湯気を立てていて、お皿に乗せられたクッキーはドライフルーツが練り込まれていて宝石のようにキラキラしていた。
その近くに二本の大きな樹木。二本を繋ぐように紫色のハンモックが揺れている。
ハンモックの中で眠る美しい少女。
幼い少女の姿をであったが、私はすぐにオリビアだとわかった。
だが、夢の中だからなのか、私はオリビアに語りかけることも揺り起こすこともできず、ただ目を覚ましてくれることを祈ることしかできなかった。
〰️
翌朝、フィゾルド侯爵夫妻にこの不思議な夢の話をすると、再び泣き始めた。
「ビアはワシらとの思い出の中で眠っているのか……」
「ビアちゃんはわたくしたちの元へずっと来たかったのね」
「オリビアお嬢様のここでの暮らしは幸せそのものでした……」
バレルまで涙を流している。だが、悲しみの中にも喜びが見えて、私も少し嬉しく思う。
私が昨夜の夢で見たオリビアはどうやら十歳ではないかと思われた。十歳でノイデル伯爵家に引き取られたからだ。
「喜びも悲しみもしばらくお待ちください。その場所はわかりますか? 今も同じ状態になっておりますか?」
「いや、ビアがいなくなって、使わなくなってしまったんだ。
バレル! すぐに手配をしろ」
「かしこまりました」
バレルが頭を四十五度下げ、サッと部屋を出ていく。
「わたくしはクッキー用のドライフルーツを作らなくてはっ!」
フィゾルド侯爵夫人はパタパタと音がしそうなほど急いで廊下へ出た。大変素晴らしい淑女の彼女は足音などさせないが。
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お祖父様の優しい言葉に、私も穏やかに微笑むことができた。
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