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44 姉「部屋に勝手に来ないでくださいね」
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ワインとチーズを交互に口に入れご満悦な顔で頷くカティドを他所にムーガはまだ固まっていた。
「隊長って今度副師団長になるじゃないですか。その準備で最近忙しいですよね。
ヴィエナには隊長が何をしているのかは見えていないんですから心配にもなりますよ。
騎士団に入れば隊長の傍にいれると思っているみたいっすよ」
「俺のため…………?」
「本人の心の安定のためってことが大きいとは思います。なんやかんや言ってもまだガキですからね。父親を失ったのは騎士団の仕事ですから隊長に同じようになってほしくないんでしょう。見張っていたいっていうのかな?」
カティドがグラスを空けた。
「俺は明日も仕事なんでもう寝ます。隊長はどうぞごゆっくり」
とはいえ、カティドの部屋にはベッドとテーブルしかなくムーガのいられる場所などない。四人部屋でなく一人部屋でテーブルがあるだけマシである。カティドはムーガの隊の副隊長なのでいい部屋が充てがわれている。
ムーガは呆然とした状態でカティドの部屋を後にした。
数日の葛藤の後、ヴィエナの希望を叶えてやることに決め、そのためにヴィエナはリタの男爵家と養子縁組した。ムーガが副師団長に昇格し忙しくてなかなか帰ることができなくなったことも理由の一つだ。
「ヴィーは私の義妹なので私の許可なくヴィーの部屋へ行くのは禁止です!」
まさかの副産物にムーガは驚愕して判断を早まったかと後悔したほどだ。
「ちょっちょっちょっ!! 貸部屋の金は俺が払っているんだぞ」
「副師団長なんですからケチケチしないでくださいよっ! それ、ヴィーに言っていいですかっ?!」
あくまでもヴィエナにはカッコいい父親モドキでいたいムーガは口籠った。
「女たちで交代でヴィーの部屋に泊まるので心配しないでくださいっ!」
こぶしを力強く握り自信満々に目を輝かせたリタに何も言えないのであった。
「まあ、でもヴィーが喜ぶんで副師団長が来るのは許しますんで。とにかく! 私に言ってからっ!
いいですねっ!」
リタの勢いにムーガは頷く。
後日ムーガはカティドに愚痴を言ったが一蹴された。
「それは副師団長のためっすよ。副師団長が部屋へ行ったら女が裸でベッドにいたってなったら問題になるかもしれないじゃないっすか」
「はだかぁ??!!」
「ええ。やつらはプライベートではそれに近いらしいです」
「だがこれまでもやつらは来ていたぞ」
「副師団長の家だから遠慮していたんでしょう。遊びに行っても泊まりはしてなかったはずですから。これからはリタの家みたいなものだから遠慮するつもりがないんですよ。
副師団長だけならヴィエナが一人の夜が多くなるんすから仕方ないじゃないですか」
「はぁ」
「それに……」
疑問を込めてカティドを見た。
「副師団長が行く時には誰も行かないようにするんだと思います。副師団長とヴィエナを二人にするために」
忙しくなってしまったムーガにとってヴィエナとの時間は貴重になることは間違いない。
「そぉ……か……」
こうしてムーガとヴィエナは師匠と弟子という時間が増えていく。
ヴィエナはみるみる間に上達した。
さらにヴィエナのどこにでもいる平凡な容姿が幸いとなり化粧一つで別人になるという特技まで身につけ隠密工作員にはうってつけな者に成長したのだった。化粧を覚えたのは女性騎士たちに可愛がられたためだが大変良いおまけである。
ヴィエナは本物の男爵令嬢になったのだが生活は王都で教育者は第三師団第二部隊の隊員たちなので令嬢らしくなるはずもなく自由に成長していった。
そして十五歳で騎士団に採用が決まると呼び方も『ムーガおじちゃん』から『ムーガ様』になり多少敬語にもなった。
ムーガは一抹の不満を持ちながらも納得せざるを得なかった。
「隊長って今度副師団長になるじゃないですか。その準備で最近忙しいですよね。
ヴィエナには隊長が何をしているのかは見えていないんですから心配にもなりますよ。
騎士団に入れば隊長の傍にいれると思っているみたいっすよ」
「俺のため…………?」
「本人の心の安定のためってことが大きいとは思います。なんやかんや言ってもまだガキですからね。父親を失ったのは騎士団の仕事ですから隊長に同じようになってほしくないんでしょう。見張っていたいっていうのかな?」
カティドがグラスを空けた。
「俺は明日も仕事なんでもう寝ます。隊長はどうぞごゆっくり」
とはいえ、カティドの部屋にはベッドとテーブルしかなくムーガのいられる場所などない。四人部屋でなく一人部屋でテーブルがあるだけマシである。カティドはムーガの隊の副隊長なのでいい部屋が充てがわれている。
ムーガは呆然とした状態でカティドの部屋を後にした。
数日の葛藤の後、ヴィエナの希望を叶えてやることに決め、そのためにヴィエナはリタの男爵家と養子縁組した。ムーガが副師団長に昇格し忙しくてなかなか帰ることができなくなったことも理由の一つだ。
「ヴィーは私の義妹なので私の許可なくヴィーの部屋へ行くのは禁止です!」
まさかの副産物にムーガは驚愕して判断を早まったかと後悔したほどだ。
「ちょっちょっちょっ!! 貸部屋の金は俺が払っているんだぞ」
「副師団長なんですからケチケチしないでくださいよっ! それ、ヴィーに言っていいですかっ?!」
あくまでもヴィエナにはカッコいい父親モドキでいたいムーガは口籠った。
「女たちで交代でヴィーの部屋に泊まるので心配しないでくださいっ!」
こぶしを力強く握り自信満々に目を輝かせたリタに何も言えないのであった。
「まあ、でもヴィーが喜ぶんで副師団長が来るのは許しますんで。とにかく! 私に言ってからっ!
いいですねっ!」
リタの勢いにムーガは頷く。
後日ムーガはカティドに愚痴を言ったが一蹴された。
「それは副師団長のためっすよ。副師団長が部屋へ行ったら女が裸でベッドにいたってなったら問題になるかもしれないじゃないっすか」
「はだかぁ??!!」
「ええ。やつらはプライベートではそれに近いらしいです」
「だがこれまでもやつらは来ていたぞ」
「副師団長の家だから遠慮していたんでしょう。遊びに行っても泊まりはしてなかったはずですから。これからはリタの家みたいなものだから遠慮するつもりがないんですよ。
副師団長だけならヴィエナが一人の夜が多くなるんすから仕方ないじゃないですか」
「はぁ」
「それに……」
疑問を込めてカティドを見た。
「副師団長が行く時には誰も行かないようにするんだと思います。副師団長とヴィエナを二人にするために」
忙しくなってしまったムーガにとってヴィエナとの時間は貴重になることは間違いない。
「そぉ……か……」
こうしてムーガとヴィエナは師匠と弟子という時間が増えていく。
ヴィエナはみるみる間に上達した。
さらにヴィエナのどこにでもいる平凡な容姿が幸いとなり化粧一つで別人になるという特技まで身につけ隠密工作員にはうってつけな者に成長したのだった。化粧を覚えたのは女性騎士たちに可愛がられたためだが大変良いおまけである。
ヴィエナは本物の男爵令嬢になったのだが生活は王都で教育者は第三師団第二部隊の隊員たちなので令嬢らしくなるはずもなく自由に成長していった。
そして十五歳で騎士団に採用が決まると呼び方も『ムーガおじちゃん』から『ムーガ様』になり多少敬語にもなった。
ムーガは一抹の不満を持ちながらも納得せざるを得なかった。
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