婚約破棄されそうな令嬢は知らないことだらけ

宇水涼麻

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第四章 公爵令息の作戦 準備編

作戦11 報告書を作成する

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 週末、公爵邸にいたところ、父上に執務室に呼ばれた。
「3日後、王城で、陛下がお前たちにお会いになる。昼食をとったら、学園から、4人で馬車で登城しなさい。制服のままでよかろう。」

「父上、4人とは?」

「ユラベル侯爵令嬢、マーペリエ辺境伯令嬢、ナハナージュ侯爵令嬢だ。」

「わかりました。」

「イリサス・シャーワント、ウズライザー・バルトルガー、エンゾラール・サンドエク、
彼らについて、いろいろわかっていることがあるそうだな。あと、アナファルト殿下のこともだな。
 国王陛下が、例のご令嬢が、どういうご令嬢か知れば、アリーシャへの気持ちは変わるかもしれぬ。

明後日までに、それぞれまとめておけ。国王陛下がご覧になる。」

「つまり、陛下には、姉上のことは納得していただいてないのですね。」

「そうだ。殿下の不誠実で醜聞な様子は、学園での生活態度と成績だけだからな。」

「あ、ランタル公爵様のお誕生日パーティーにかの令嬢を連れていったそうです。」
これは、もちろん、ディークの情報だ。

「何?前王弟を愚弄しているのか?陛下からみたら、叔父上にあたる方だぞ。

それも付け足しておけ。」

「わかりました。
あと、父上、お話があります。」

「なんだ?」

「イリサス・シャーワント様とイメルダリア・ユラベル嬢の婚約が、破棄であれ白紙であれ成立した曉には、イメルダリア・ユラベル嬢との婚約と結婚を認めるていただきたい。」

「なんだと!!?」
沈黙が長い。

「そうか、お前もそんな年か。
アリーシャもそうだが、うちは政略結婚を必要とはしていない。とはいえ、身分が違いすぎると厄介なのは確かだがな。

侯爵家なら何の問題もあるまい。了承は、得ているのか?」

「まだです。まだ彼女は、イリサス様の婚約者殿ですから。ですが、婚約解消となりましたら、明日その場であっても、ユラベル侯爵様にご許可をいただくつもりです。」

「まあ、自分でできるのならよかろう。好きにするといい。」

「ありがとうございます!」

「アリーシャにも、お前くらい自由な気持ちがあれば、な。」
父上の嘆きなど初めて聞いた。


〰️ 〰️ 〰️


 報告書を書くため、次の日の放課後、生徒会室に6人が集まった。

ロンとイメルダリアさん
ディークとヴィオリアさん
僕とエマローズさん

 それぞれチームになって、大量のメモやノートから、それぞれ時系列に並べて表にしていく。茶会の参加者名簿や鍛練場の利用者名簿、買い物の商品名、参加者の証言、僕たちが見た正確な日付。

 言いがかりでないという証拠を読む人に分かりやすくまとめていく。

 学園長に許可をもらって、1日目は、夜9時まで、生徒会室で頑張った。2日目は、余裕を持って夕方6時に終わった。よくできていると思う。

 さて、解散しようとなったとき、イメルダリアさんが、
「まだ、許可をいただいた時間がありますもの、ご一緒に夕食をいただきませんか?
その後、みなさんにお話がありますの。」

「わたくしもお話がありますわ。」
エマローズさんがすぐに賛成し、誰も反対などしないので、食堂へ行き、端のテーブルで、6人で食事をした。ここにはたくさんの生徒がいるので、普通の話をした。
 ご令嬢たちはデザートを、僕たちはサンドイッチとデザートを持って生徒会室へ戻った。

 今日のお茶当番は、ロンとエマローズさん。それぞれ生徒会室にいる日が違うので、はっきりしたものではないが、令嬢たちは令嬢たちでなんとなく、僕たちは僕たちでなんとなく当番制になっている。

 みんなにお茶が配られ、当番の二人が座る。なんとなく、この6人の時の座る場所も固定されていた。一人掛けソファーに僕とイメルダリアさん。僕の右手の二人掛けソファーにヴィオリアさんとエマローズさん。反対側にロンとディークだ。

 しばらくの間、デザートの感想など雑談したが、頃合いをみて、イメルダリアさんが話を始めた。
「わたくし、一昨日、婚約白紙にできましの。」
「よかったね。」「おめでとう。」声をかけて拍手がなる。

「ですが、条件があって、卒業までは、発表しないことになりましたの。」

「え?なぜ?」
ディーク、よく聞いたっ!

「イリサス様がお心を入れ替えて、宰相を目指してくれることを、ご両親は望んでおられるのですわ。」

「はあ?本人は宰相やめたって言ってるの?」
ディークが怒りで言葉が雑だ。

「そんなこと、おっしゃってないわ。でも、今のままでは、難しいのはわかりますでしょ。」
うん、わかる。みんなも小さく頷く。

「エマローズさんは?」
僕が聞いた。

「わたくしは、サンドエク伯爵様に今回のことを伝えてましたわ。借金の額に驚いておいででした。
今、婚約をなくすと、サンドエク家に借金が回ってしまうので、借金のあてができるまで、待ってほしいと。
最大延長は、卒業式の前日となりました。
その前にエンゾラール様の研究が終われば借金も減るのですが、無理そうですわね。」

「でも、まだまだ長いけど、最悪卒業式の前日には、できるんでしょ。よかったわ。」
ヴィオリアさんがエマローズさんの手を握った。

「とりあえず、いい方向に行きましたね。」
僕がまとめると

「アリーシャ様はいかがですの?」
イメルダリアさんが聞いてきた。

「姉上の場合は、まだ少し難しいかな。ディークに、一つ情報をもらったんだけどね。それでもまだ足りないっていうのが父上の判断だよ。

心配してくれて、ありがとう。イメルダリアさんは、本当に優しいね。」

 僕が、イメルダリアさんに応えるときだけ、砕けた話し方をすることも、最後にイメルダリアさんを誉めることも、この4人はもう慣れてくれた。もちろん、初めはびっくりされたけど。
 本当は、『そこが好きだなっ』って言いたいけど、みんなの前で誉めるだけで、ほら、イメルダリアさん、顔真っ赤。可愛いなぁ。回りに声が聞こえないときには、言ってるよ。

 ディークがさらっと無視して続ける。
「前王弟のランタル公爵様の誕生日パーティーに、王子とメノール嬢が参加して、影で批判されてるんだよ。」

「うわぁ、ありえないわね。」
「よく、陛下に叱られませんわね?」

「まだ、先週の話だから、知らないんじゃないかな?招待状の名前は『アナファルト王子と婚約者殿』だったって。」
 ヴィオリアさんとエマローズさんは、ディークの言葉に反応してるけど、イメルダリアさんはまだ顔を赤くして俯いている。あの初さは、罪だぞ、可愛いすぎるだろっ。
 ちなみに、ロンはずっと食べてる。僕のサンドイッチも、取られた。

 その後、復活したイメルダリアさんの仕切りで明日頑張ろうということになって、解散した。
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