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4 怒りの矛先はどこ?
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ミーデの話が眉唾物に感じるポーリィナは淑女らしからぬことだが、眉をギリリと寄せる。
「それにご相談にものっていましたよ」
「あちらが勝手にお話することをただ黙って聞いていただけよ」
ポーリィナは『自分が望んでいない方向に誤解を受けているのかもしれない』と思い始め、怒りを越えて悲しくなってきた。
「普通、婚約者でもない男女が二人でお話する機会なんてないですからねぇ」
「わたくしだって、彼らと二人きりになんてなったことはないわ。ライル王子殿下が遅れてきたタイミングとかでしょう?
それに、いつもミーデが一緒にいたじゃないの?」
「彼らにとって私はメイドなんでしょうね。メイドは人数にいれませんから」
ポーリィナは怒りやら悲しみやら悔しさやら、とにかく感情が忙しい。それを出せるのもここだけなのだ。
「なにそれ?! 失礼な話ねっ!」
「ですが、今日も『ポーリィナ様と二人でお茶会』だと思っていらっしゃったと思いますよ」
デミスとユシャフを通した応接室には、家令ゼビデッドとメイド長とミーデがずっといた。
ポーリィナはなるほどと少しだけ納得したが、ミーデを友人だと考えているポーリィナは納得しても気に入らない。
「とにかく、彼らからしたら、ポーリィナ様は、二人きりで相談にのってくれていつも笑顔を絶やさない天使なのですよ」
「笑顔でいるのは、淑女ならみんなそうだわ」
「学園では完璧な淑女は数少ないですからね。私もいつも笑顔ではないですよ」
「え? そうなの?」
「ええ。
あ、でも、ポーリィナ様にはいつも笑顔になってしまいますね。ポーリィナ様の笑顔につられてしまうんですよね。ポーリィナ様って、まじで天使なんですもの。
ライルやマーデルにも笑顔なポーリィナ様ってすごいなって思ってましたよ」
「ミーデっ! 呼び捨てよ」
「邸内に来客がなければ大丈夫ですよ。先輩方は優秀ですもの」
「もうっ!」
ミーデはクスクス笑った。学園では淑女の笑顔を絶やさないポーリィナだが、こうして部屋で友人として話をするミーデだから見れる顔もあるのだ。ミーデはそれが嬉しかった。
〰️ 〰️
夕方遅くになり、コーカス公爵が帰宅したとポーリィナに連絡が入った。ポーリィナはミーデを連れてコーカス公爵の執務室へ赴いた。
コーカス公爵に促され、執務室のソファーに向かい合って座った。ミーデは家令ゼビデッドとともに話が聞ける程度に離れた壁に立った。
「お父様。お昼過ぎにはおかえりになるかと思いましたのに、遅かったのですわね」
「ああ。四人のくそオヤジたちに喝をいれてきたからな」
「お父様っ!」
ポーリィナは慌ててコーカス公爵を止めた。
「邸内に来客がおらんときは大丈夫だ」
ポーリィナはミーデを見た。ミーデがウンウンと頷いた。
それにしても、三人のくそオヤジたちではなく、四人のくそオヤジたちということは、この国の最高位である国王陛下も含まれていると予想ができる。ポーリィナはなんと言ってよいかわからなかった。
「今日来た馬鹿どもたちの親には、きっちり説教してきた。平謝りだったが、許すつもりはない。五年ほど付き合いを取りやめだ」
「かしこまりました」
ゼビデッドが了承した。付き合いとは領地としての交易も止めるということだろう。コーカス公爵領は肥沃な土地で多くの食料を賄っている。コーカス公爵領から買えなくなると、他領がコーカス公爵領から買ったものを買うので値段が跳ね上がることになる。それだけでも大損害だ。
「わしもポーリィナもしばらく領地に籠もる。三日後に出立できるようにしてくれ。メディとオーエンには手紙を書こう。早馬の準備もしてくれ」
メディはポーリィナの母親、オーエンはポーリィナの兄である。
「かしこまりました」
ゼビデッドは他の執事たちに指示をするため隣部屋に移った。ゼビデッドが戻るまで、ポーリィナとコーカス公爵はお茶をした。ゼビデッドはすぐに戻ってきた。
コーカス公爵は再び話を始めた。
「ライル・リントン男爵殿との婚約はもちろん白紙だ。リントン男爵殿は暴れておったが、すでに男爵領への馬車の中だ」
「は? はい? ライル・リントン男爵? ライル王子殿下のことですか?
「そうだ。元王子だっ。
国王が『二人―ライルとマーデル―を別れさせる』というから大反対して無理矢理婚姻をさせてきた。それならどちらに転んでも痛みを与えられるだろう。
ポーリィナを傷つけたのだ。国王もワシに文句は言わなかったよ」
マーデルが王太子妃になっても、ライルがリントン家に婿入りしても、どちらでも反省させられるということだろう。マーデルが王太子妃になったら、国王と王妃はいつまでも引退できなくなっていた。
ちなみにライルにはまだ幼い弟王子が二人いる。
「ご婚姻されたのですか? 昨日の今日で?
それはすごいですね。お父様も大変でしたでしょう?」
自分の苦労をわかってくれる娘に破顔してしまうコーカス公爵だった。
「それにご相談にものっていましたよ」
「あちらが勝手にお話することをただ黙って聞いていただけよ」
ポーリィナは『自分が望んでいない方向に誤解を受けているのかもしれない』と思い始め、怒りを越えて悲しくなってきた。
「普通、婚約者でもない男女が二人でお話する機会なんてないですからねぇ」
「わたくしだって、彼らと二人きりになんてなったことはないわ。ライル王子殿下が遅れてきたタイミングとかでしょう?
それに、いつもミーデが一緒にいたじゃないの?」
「彼らにとって私はメイドなんでしょうね。メイドは人数にいれませんから」
ポーリィナは怒りやら悲しみやら悔しさやら、とにかく感情が忙しい。それを出せるのもここだけなのだ。
「なにそれ?! 失礼な話ねっ!」
「ですが、今日も『ポーリィナ様と二人でお茶会』だと思っていらっしゃったと思いますよ」
デミスとユシャフを通した応接室には、家令ゼビデッドとメイド長とミーデがずっといた。
ポーリィナはなるほどと少しだけ納得したが、ミーデを友人だと考えているポーリィナは納得しても気に入らない。
「とにかく、彼らからしたら、ポーリィナ様は、二人きりで相談にのってくれていつも笑顔を絶やさない天使なのですよ」
「笑顔でいるのは、淑女ならみんなそうだわ」
「学園では完璧な淑女は数少ないですからね。私もいつも笑顔ではないですよ」
「え? そうなの?」
「ええ。
あ、でも、ポーリィナ様にはいつも笑顔になってしまいますね。ポーリィナ様の笑顔につられてしまうんですよね。ポーリィナ様って、まじで天使なんですもの。
ライルやマーデルにも笑顔なポーリィナ様ってすごいなって思ってましたよ」
「ミーデっ! 呼び捨てよ」
「邸内に来客がなければ大丈夫ですよ。先輩方は優秀ですもの」
「もうっ!」
ミーデはクスクス笑った。学園では淑女の笑顔を絶やさないポーリィナだが、こうして部屋で友人として話をするミーデだから見れる顔もあるのだ。ミーデはそれが嬉しかった。
〰️ 〰️
夕方遅くになり、コーカス公爵が帰宅したとポーリィナに連絡が入った。ポーリィナはミーデを連れてコーカス公爵の執務室へ赴いた。
コーカス公爵に促され、執務室のソファーに向かい合って座った。ミーデは家令ゼビデッドとともに話が聞ける程度に離れた壁に立った。
「お父様。お昼過ぎにはおかえりになるかと思いましたのに、遅かったのですわね」
「ああ。四人のくそオヤジたちに喝をいれてきたからな」
「お父様っ!」
ポーリィナは慌ててコーカス公爵を止めた。
「邸内に来客がおらんときは大丈夫だ」
ポーリィナはミーデを見た。ミーデがウンウンと頷いた。
それにしても、三人のくそオヤジたちではなく、四人のくそオヤジたちということは、この国の最高位である国王陛下も含まれていると予想ができる。ポーリィナはなんと言ってよいかわからなかった。
「今日来た馬鹿どもたちの親には、きっちり説教してきた。平謝りだったが、許すつもりはない。五年ほど付き合いを取りやめだ」
「かしこまりました」
ゼビデッドが了承した。付き合いとは領地としての交易も止めるということだろう。コーカス公爵領は肥沃な土地で多くの食料を賄っている。コーカス公爵領から買えなくなると、他領がコーカス公爵領から買ったものを買うので値段が跳ね上がることになる。それだけでも大損害だ。
「わしもポーリィナもしばらく領地に籠もる。三日後に出立できるようにしてくれ。メディとオーエンには手紙を書こう。早馬の準備もしてくれ」
メディはポーリィナの母親、オーエンはポーリィナの兄である。
「かしこまりました」
ゼビデッドは他の執事たちに指示をするため隣部屋に移った。ゼビデッドが戻るまで、ポーリィナとコーカス公爵はお茶をした。ゼビデッドはすぐに戻ってきた。
コーカス公爵は再び話を始めた。
「ライル・リントン男爵殿との婚約はもちろん白紙だ。リントン男爵殿は暴れておったが、すでに男爵領への馬車の中だ」
「は? はい? ライル・リントン男爵? ライル王子殿下のことですか?
「そうだ。元王子だっ。
国王が『二人―ライルとマーデル―を別れさせる』というから大反対して無理矢理婚姻をさせてきた。それならどちらに転んでも痛みを与えられるだろう。
ポーリィナを傷つけたのだ。国王もワシに文句は言わなかったよ」
マーデルが王太子妃になっても、ライルがリントン家に婿入りしても、どちらでも反省させられるということだろう。マーデルが王太子妃になったら、国王と王妃はいつまでも引退できなくなっていた。
ちなみにライルにはまだ幼い弟王子が二人いる。
「ご婚姻されたのですか? 昨日の今日で?
それはすごいですね。お父様も大変でしたでしょう?」
自分の苦労をわかってくれる娘に破顔してしまうコーカス公爵だった。
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