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28 護衛の解雇
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そうこうしていると若いメイドが飛び出してきてその場で土下座した。ボブバージルのやつは私を振り払ってメイドごときに手を貸している。
そして爵位を持ち出して命令してきた。
「王弟ギャレット公爵家が次男ボブバージル・ギャレットが命じる。すぐに鍵を開けよっ!」
何も知らないガキのくせに爵位のひけらかし方だけは知っていたようだ。
執事が尻もちをつき震えているので護衛の一人が執事から鍵を奪いドアを開けるのを見ているしかできない。
『こんなことなら鍵は私が持っているべきだったわ。あの護衛たちには一握りも給与なんて払わないからねっ』
役に立たない執事と護衛に歯ぎしりが止まらない。
「僕と彼女以外の入室は許さない」
最後の一言まで忌々しい言葉を投げてクラッリサの部屋へと消えて行った。
「あいつが帰ったら教えてちょうだい。そのくらいはやりなさいよ」
「ぎゃあ!!」
座ったままの呆けている使えない執事の太ももを靴で踏み込んでやった。いつの間にかヒールのなくなっていた靴では痛みなど大したことがないのに痛がり方だけは大げさな執事だ。
「あんたらはもう必要ない。首よ。ギルドにお金なんて払わないからね」
護衛たちにも怒りをぶつける。
「ああ。いらねえよ。公爵家を敵に回すのを避けられるならこんなところの安月給なんざ痛くもねえ。だけど金輪際うちの職業ギルドで護衛を雇えるとは思わないでくれよな」
「なんですって?!」
「ギルドとしてもギャレット公爵家は敵に回せねえ。市井の治安隊で世話になってるんだ。あの方がギャレット公爵家の坊っちゃんだって知っていたら手なんか出さねえのによ。
ギルド長に言い訳するのが大変だぜ。
おい! 行くぞ」
もう一人の護衛に命令して立ち去る。
「お前なあ。顔見てから手を出せよ。どう見たってあの美形はギャレット公爵様のお身内じゃねえか。そんじょそこらにいる美人家系じゃねえぞ。仕事熱心と状況判断は別の話だ。しっかりしねえと痛い目にあうからな」
壮年の護衛が何やらブツブツ言い若い護衛がペコペコして階段を降りていった。
「あんたはここにいなさいよっ」
蹲る執事に命令して自分の部屋に戻った。
『あの執事はボブバージルが帰ったら首よっ! ホントに使えないやつらばかりだわ!』
私に与えられたお金を私の美容に使うために安く雇える執事にしたら全く仕事ができなくて呆れたわ。職業ギルドに文句を言わなくちゃならないわね。
「ボブバージル! あいつのせいで面倒なことばかりだわ。素直にダリアナに靡けばいいものをっ!」
私は部屋で地団駄踏んでいた。
〰 〰 〰
メイドと二人でクララの部屋へ入ると部屋は真っ暗だった。
窓には厚いカーテンが閉められたままでロウソク一本火が灯されていない部屋では僕はさすがに動けない。でも勝手知ったるメイドは窓へかけていきカーテンを開ける。
明るくなった部屋をキョロキョロと見回しクララを探すとクララはベッド近くの壁側の部屋の隅で丸くなっていた。明るくなって尚影になってしまうようなところだ。
「クララ…………」
ビクッとして顔を上げたクララは髪はボサボサでもう昼をとっくに過ぎているのに寝間着だった。目がトロンとしており焦点が合っていなくて僕だとわかっているのかも不明だ。僕は泣きそうになるのを我慢してクララを少しでも安心させるためにクララの目に入らないかもしれなくとも笑顔を作る。僕の脇に戻ってきたメイドも目に涙を溜めながら口角を上げていた。
「私も三日ほどお嬢様にお会いできていなかったのです」
メイドが僕に小さな声で伝えて微笑した。今は怒りや悲しみや焦燥感や反省よりもクララを今の状態から救出することが優先である。
こういうときは僕より慣れ親しんだメイドがいいだろうと彼女に任せることにした。メイドがクララに近づこうとしたタイミングでノックの音がしてメイドは素早く扉へ行くと外にいる者と何やら話をしてまたすぐに戻ってきた。
「信用できるメイドにミルクを頼みました。家内の様子に気がついてかけつけてくれたようです」
僕はクララの味方がこのメイドだけではなくまだ何人かいることに安堵する。この数ヶ月のクララの生活がよくないものであったのは間違いないが数名の味方がいたのなら最悪な状況にはなっていないだろう。
「そうか。それはいいね」
メイドがクララに近づき何やら話しかけながらゆっくりと立たせる。僕はわざと窓際に行き二人を遮らないようにした。
そして爵位を持ち出して命令してきた。
「王弟ギャレット公爵家が次男ボブバージル・ギャレットが命じる。すぐに鍵を開けよっ!」
何も知らないガキのくせに爵位のひけらかし方だけは知っていたようだ。
執事が尻もちをつき震えているので護衛の一人が執事から鍵を奪いドアを開けるのを見ているしかできない。
『こんなことなら鍵は私が持っているべきだったわ。あの護衛たちには一握りも給与なんて払わないからねっ』
役に立たない執事と護衛に歯ぎしりが止まらない。
「僕と彼女以外の入室は許さない」
最後の一言まで忌々しい言葉を投げてクラッリサの部屋へと消えて行った。
「あいつが帰ったら教えてちょうだい。そのくらいはやりなさいよ」
「ぎゃあ!!」
座ったままの呆けている使えない執事の太ももを靴で踏み込んでやった。いつの間にかヒールのなくなっていた靴では痛みなど大したことがないのに痛がり方だけは大げさな執事だ。
「あんたらはもう必要ない。首よ。ギルドにお金なんて払わないからね」
護衛たちにも怒りをぶつける。
「ああ。いらねえよ。公爵家を敵に回すのを避けられるならこんなところの安月給なんざ痛くもねえ。だけど金輪際うちの職業ギルドで護衛を雇えるとは思わないでくれよな」
「なんですって?!」
「ギルドとしてもギャレット公爵家は敵に回せねえ。市井の治安隊で世話になってるんだ。あの方がギャレット公爵家の坊っちゃんだって知っていたら手なんか出さねえのによ。
ギルド長に言い訳するのが大変だぜ。
おい! 行くぞ」
もう一人の護衛に命令して立ち去る。
「お前なあ。顔見てから手を出せよ。どう見たってあの美形はギャレット公爵様のお身内じゃねえか。そんじょそこらにいる美人家系じゃねえぞ。仕事熱心と状況判断は別の話だ。しっかりしねえと痛い目にあうからな」
壮年の護衛が何やらブツブツ言い若い護衛がペコペコして階段を降りていった。
「あんたはここにいなさいよっ」
蹲る執事に命令して自分の部屋に戻った。
『あの執事はボブバージルが帰ったら首よっ! ホントに使えないやつらばかりだわ!』
私に与えられたお金を私の美容に使うために安く雇える執事にしたら全く仕事ができなくて呆れたわ。職業ギルドに文句を言わなくちゃならないわね。
「ボブバージル! あいつのせいで面倒なことばかりだわ。素直にダリアナに靡けばいいものをっ!」
私は部屋で地団駄踏んでいた。
〰 〰 〰
メイドと二人でクララの部屋へ入ると部屋は真っ暗だった。
窓には厚いカーテンが閉められたままでロウソク一本火が灯されていない部屋では僕はさすがに動けない。でも勝手知ったるメイドは窓へかけていきカーテンを開ける。
明るくなった部屋をキョロキョロと見回しクララを探すとクララはベッド近くの壁側の部屋の隅で丸くなっていた。明るくなって尚影になってしまうようなところだ。
「クララ…………」
ビクッとして顔を上げたクララは髪はボサボサでもう昼をとっくに過ぎているのに寝間着だった。目がトロンとしており焦点が合っていなくて僕だとわかっているのかも不明だ。僕は泣きそうになるのを我慢してクララを少しでも安心させるためにクララの目に入らないかもしれなくとも笑顔を作る。僕の脇に戻ってきたメイドも目に涙を溜めながら口角を上げていた。
「私も三日ほどお嬢様にお会いできていなかったのです」
メイドが僕に小さな声で伝えて微笑した。今は怒りや悲しみや焦燥感や反省よりもクララを今の状態から救出することが優先である。
こういうときは僕より慣れ親しんだメイドがいいだろうと彼女に任せることにした。メイドがクララに近づこうとしたタイミングでノックの音がしてメイドは素早く扉へ行くと外にいる者と何やら話をしてまたすぐに戻ってきた。
「信用できるメイドにミルクを頼みました。家内の様子に気がついてかけつけてくれたようです」
僕はクララの味方がこのメイドだけではなくまだ何人かいることに安堵する。この数ヶ月のクララの生活がよくないものであったのは間違いないが数名の味方がいたのなら最悪な状況にはなっていないだろう。
「そうか。それはいいね」
メイドがクララに近づき何やら話しかけながらゆっくりと立たせる。僕はわざと窓際に行き二人を遮らないようにした。
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