【完結】公爵子息である僕の悪夢は現実になってしまうが愛しい婚約者のためにも全力で拒否します【幼少編】

宇水涼麻

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48 ギャレット公爵邸への帰還

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 私は悠々と立ち上がり会頭に背を向けた。

「あ! エイダ様にもう一つ」

 仕方がないという顔で振り返る。会頭は私から奪ったイヤリングと指輪を入れた胸ポケットをポンポンと叩いた。

「これらは大変に良い石なのですがいかんせんデザインが古いです。お付き合いなさる商会は精査されるべきかと存じます」

「私は優美なアンティークが好みなのよっ!」

「左様でございましたか。失礼いたしました。しかしもしも今後ご入用でしたら私が商会をご紹介することも可能ですので是非お声掛けください」

 私は返事をせずに踵を返して店を出た。

『あの商人めっ! 私が高位貴族の夫人たちとは社交しないからって古いものを売りつけたのね! 侯爵家に戻ったら潰してやるんだからっ!』

 ゲラティル子爵邸に入るとすぐにお兄様に呼ばれた。ダリアナには聞かせられないからダリアナは別宅に行かせる。

「たった半年で戻ってきたのか?」

 私を労うこともなく開口一番怒鳴りつけてきた。

「半年でこれなら文句ありませんでしょう?」

 伯爵が出発の朝に渡してきたお金の半分をテーブルの上に投げてやる。

「なんだこれは? 金なのか? まさか里帰りではなく離縁ではあるまいなっ?」

 オールポッド侯爵家を出たときよりは少ないがなかなかの量が入っている。私とダリアナにはマクナイト伯爵邸にいた頃に購入したドレスや貴金属があるからお兄様が納得するくらいのお金を入れてやった。

「まだはっきりはしてませんけどそうなるかもしれませんわね」

 すぐさま袋を拾い上げ中身を確認する。

「それくらいの金が入っているじゃないかっ!」

「だからっ! 半年なのにそれだけあるのですから文句はありませんでしょう?」

「全くっ! せっかくの伯爵家なのに。もし離縁されたらまた見合いだぞ。それまでは大人しくしていろっ!」

『怒鳴るくらいならその金は私に返せばいいのに』

 また乳母をさせられるかと思っていたから助かった。金を渡せば大人しくなるお兄様。反吐が出そうだわ。


〰 〰 〰

 僕がマクナイト伯爵邸から戻るとなんと家で父上が仕事を休んでまで待っていてくれた。マクナイト伯爵家から先触れが来ていたらしい。
 玄関で待っていてくれた父上と母上。僕は恥ずかしながら母上を前にして少し泣いてしまって母上はそっと僕を抱きしめてくれた。十三歳の僕より少しだけ背の低い母上の肩に顔を埋める。自分が考えていたよりも僕は緊張していたようだ。

 父上と母上に左右を支えられるように応接室へ行くと母上は僕に寄り添うように隣に座ってくれて父上は威厳のある表情で僕の向かい側に座った。
 昨日のことを父上に説明すると思いの外話を理解してくれていた。どうやら父上は母上からそれまでのクララとダリアナ嬢の話を聞いていたようだ。

「そうか。それは大変だったな。しかし、お前が婿入りする家だ。そしてお前が守るべき婚約者だ。よくやった」

 父上の言葉と共に母上が僕を幼子のように頭を撫でる。それがとても心地良い。

「はい、父上。僕も今回はクララを守れて良かったです」

「ギャレット公爵家の名前を使うのも乱用しなければ構わないよ。お前はきちんとわかっていそうだな」

「はい」

『僕は父上と母上に守っていただいているんだ。僕もいつかクララを何からでも守ってあげられるようになりたい』

 ギャレット公爵家の名前の力があるのも父上のお力のおかげだ。

「だがな、バージル。一人でクラリッサ嬢の部屋へ向かったのは愚策だぞ」

 父上の厳しい顔に僕も気持ちを引き締めた。

「クラリッサ嬢の部屋へ行くのなら少なくとも護衛は連れて行くべきだった。クラリッサ嬢の部屋の警備がはじめから護衛であったならお前は監禁を確認できなかったかもしれん。そうなったら危ないのはクラリッサ嬢だ。わかるな?」

 クララの危険までは考えていなかった僕の顔は青くなっていたかもしれない。

「はい。自分が非力であることを忘れていました。申し訳ありません」

「謝ることではないが反省をして次に繋げるべきことだ。覚えておきなさい」

「はい」

『護衛に抑えつけれらた瞬間は興奮していて気が付かなったが今思えば力の差が歴然であったということなのだ』

 父上の言葉が思い当たり小さく震えた。

  父上はふうっと息を一つ吐く。

「たまたま我が家を知る職業護衛だったから大きな怪我をせずに済んだがバージルの行為はその場で切られても文句は言えないものだぞ」

「え? 僕を知っていたのですか?」

「そうらしいな。今朝早くに職業ギルドのギルド長が謝罪に来た。若い護衛が確認をせずに先走ってしまったと、な」

『クララの部屋の前で『おいっ』と叫んだのは僕にではなく走ってきた護衛に向けたものだったのかもしれない。そういえばおじさんの方の護衛は僕に乱暴な言葉も行動もなかったな』
 
「その若い護衛もバージルを子供だと判断したから剣までは抜かなったのだろう」

「そうかもしれません。浅はかでした。ごめんなさい」

 母上がギュッと手を握ってくれる。ギャレット公爵家の護衛も強い方が僕の側にいた。僕はそういう立場なのだ。

『僕が自分の身を大切にすることがみんなの危険を回避することになるのかもしれない』

「わかればいい」
 
 僕は父上に力強く頷いた。
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