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2 出会い
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そんな春休みのある日、二人は町娘の格好をして、市井に遊びに行った。後ろには付かず離れず護衛がいる。
二人がブラブラと噴水前に行くと、泣いている5歳くらいの女の子とそれに困っているベルティナたちと同い年くらいの男の子がいた。
「どうかしましたか?」
ベルティナは、男の子に近づきながら声をかけた。振り向いた男の子は、とてもキレイな顔をしていて、ベルティナは少し驚いてしまった。
「ああ、どうやらこの女の子は、迷子らしいんだが、僕はこの辺に詳しくなくてね。困っていたんだ」
キレイな顔をしているのに、頭をかきながら話す仕草はまだあどけなくて、親しみやすい雰囲気の男の子だった。
「この辺で迷子を預けるなら、パン屋のおばさんのところよね?」
セリナージェがベルティナに確認した。ベルティナも頷く。
「ええ、そうね。パン屋さんは知っていますか?」
「あ~、いや、…すまない…」
男の子は、少し頬を染めて、本当にすまなそうな顔をして、また頭をかいた。ベルティナとセリナージェは、目を合わせて頷いた。
「じゃあ、私たちが連れていきましょう」
セリナージェが女の子に手を伸ばした。しかし、女の子は、男の子のズボンを離そうとしない。女の子が、上目遣いでベルティナとセリナージェを睨んでいる。睨んでいるのに、可愛らしい。
「ぷっ、くふふふ」
セリナージェは吹き出した。
「ふふふ、気に入られてるみたいですね。では、一緒に行きましょうか」
ベルティナも笑ってしまい、男の子を誘うことになった。
「ああ、頼むよ。よし、いいお姉さんたちでよかったな。おいで!」
男の子が手を伸ばすと女の子は躊躇せずに飛び込んだ。男の子は、軽々と女の子を縦抱きにする。細く見えるが、何か鍛えているのかもしれない。
そして、3人で歩きだした。パン屋の前まで行くと、お母さんらしき人がこちらに気が付き、走ってきた。
「サーラ!よかったわ!お母さん探したのよ」
サーラと呼ばれた女の子は、ここまで我慢してきたのだろう。勢いよく泣き出した。男の子の腕からサーラちゃんを受け取ると、お母さんは何度も頭をさげながら帰っていった。
3人は笑顔で手を振って、親子を見送った。
「へぇ、探す方もここが預かる場所だって知っているんだね。町の連携ができてて、素晴らしいな」
男の子が、とても感心していた。
「この国では当たり前よ。どの町にも世話役さんがいて、迷子はそこに預けることに、なってるの」
「それを知らないのなら、旅行者なの?」
ベルティナの説明を感心して聞いていた男の子に、セリナージェが質問した。
「まあ、そんな感じだ。
で、そのぉ、悪いんだけど、実は、僕も迷子なんだ…」
男の子は、先程のように、頭をかきながら、頬を染めて申し訳なさそうな顔をした。
ベルティナとセリナージェは、呆れてしまって、一瞬間があいた。
「「ふっ、ハハハ」」
二人が、笑い出す。男の子は照れくさそうだ。
「あのぉ、僕はエリオ。ピッツォーネ王国から来たんだ」
「私はセリナ、こっちはベルティナよ。で、どこへ行きたいの?」
「宿屋トーニなんだけど、知ってるかい?」
「んー、わかんないわね。やっぱり、こういう時は、パン屋のおばさんだわ。聞いてきましょう」
3人で、パン屋さんへ聞きにいった。エリオは、そこで細長いドーナツを5つ買った。
〰️
教えてもらった場所にそれはあった。
宿屋に3人で入る。
「エリオ!大丈夫だったか?」
「はぁ~よかったぁ」
入口に3人が入っただけで、二人の男の子が走ってきた。そして、エリオの無事を喜んでいた。
「二人ともごめん。彼女たちに助けてもらったんだ。僕の友達のクレメンティとイルミネだよ。
セリナ嬢とベルティナ嬢だ」
エリオがお互いを紹介した。
「ステキなレディに助けてもらえて、助かりました。ありがとうございます」
丁寧にお礼を言う方がクレメンティ。
「ホントに助かったよ。俺達も探したんだけど、見つからないからここで待つことにしたところだったんだ」
軽快なノリがイルミネ。
「大きな迷子さんは、これで大丈夫そうね」
セリナージェが、お茶目な笑顔で、ベルティナにウィンクした。
「ふふふ、そうね、じゃあ私たちは行きましょうか」
ベルティナは、笑顔で返す。二人が引き返そうと後ろを向くと、エリオが声をかけてきた。
「あ、ちょっと待って!あのぉ、よかったら、明日とか、王都を案内してくれないかな?」
「エリオ!」
エリオの意見に、クレメンティが即座に反対の意を唱えた。
「レム、俺はいいと思うよ。地理がわからない俺たちでウロウロするより、ずっといい」
イルミネは、エリオの意見に賛成のようだが、クレメンティは2対1でも、意見を変える気がないように、渋面だった。
「あ、でも、私たちもそんなに詳しいわけじゃないのよ。小さなお店とかはあまり知らないの」
ベルティナは、自分たちの正直な状況を説明した。基本的に生真面目なベルティナとセリナージェは、今までも、比較的安全と思われる有名なところにしか行っていないのだ。
「僕たちは、初めてきた町だからね。二人が知ってるところで全然構わないよ」
エリオは、ベルティナの状況を聞いても、クレメンティの渋面を見ても、意見を変えるつもりはないらしい。
ベルティナとセリナージェが顔を合わせる。二人としては、どちらでもかまわないのだ。そして、二人はクレメンティを見た。
「よろしくお願いします」
クレメンティが丁寧に頭を下げた。
「じゃあ、私たち、明日は王立図書館へ行くつもりだったんだけど、それでいいかしら?」
セリナージェが、元々2人で予定していたことを提案した。
「え!!」
クレメンティの目が変わった。明らかにキラキラしている。
「な、頼んでよかったな!」
イルミネが、クレメンティを、肘で小突いた。クレメンティは、頬を染めて、小さく頷いた。
「クスクス、じゃあ、明日、昼前に来るわ。どこかでランチをしてから、図書館へ行きましょう」
「それで頼むよ」
ベルティナの意見をエリオが賛同し、それに決定した。
帰り際、エリオからドーナツを2つもらった。サクサクとしたドーナツはとても美味しかった。
ベルティナもセリナージェも、そんなスマートな扱いを受けたことが初めてだったので、なんとなく、フワフワした。
〰️ 〰️
次の日、約束通り、ランチの後、王立図書館へ出かけることにした。
ベルティナとセリナージェは、実は辻馬車に乗るのは初めてだったのでドキドキしたが、男の子3人も一緒なので、そういう意味では、安心して利用できた。
ベルティナとセリナージェの二人で王立図書館へ行くときには、屋敷の馬車を使うのだが、なんとなく、彼らとはお互いに身分を隠しているので、屋敷の馬車を使うわけにはいかなかった。
個人馬車と違い、とても大きい馬車は荷台がぐるりと座席になっていて、10人も乗れる。箱馬車と違いオープンになっているので、ゆっくりと進むが風が気持ちいい。5人は町並みを楽しみながら、王立図書館へ行った。
ベルティナもセリナージェも王立図書館は、初めてではない。3人が興味があるというコーナーへ連れていく。3人はピッツォーネ王国の人なのに、スピラ語(スピラリニ王国の言葉)が話せるだけでなく、読み書きもできるという。とても優秀なことがわかった。
民族文芸コーナーでは、ベルティナとセリナージェもピッツォーネ王国とここスピラリニ王国との違いを3人から聞けて、とても楽しく、とても有意義な時間となった。
それから、話の流れで、ベルティナとセリナージェは、3人に毎日付き合うことになり、二人は執事やメイドに聞いてから案内した場所もあったので、二人もかなり王都に詳しくなった。
ある日、王立公園へ行ってみると、教会主催のボランティアの花壇作りをやっていた。5人は汚れることなど、気にせずに、一生懸命に手伝った。帰りに、神父様から、残った苗をもらった。
「僕たちは、育てる場所がないからね」
そう言って、苗はベルティナとセリナージェがもらうことになった。
またある日は、メイドオススメの喫茶店へ出かけた。フルーツをふんだんに使ったパンケーキがとても美味しいお店だった。しかし、3人には、量的に少々物足りなかったらしく、屋台で肉の腸詰めを挟んだパンを3つずつ買っていたのには、ベルティナとセリナージェは、呆れながら笑っていた。
〰️ 〰️ 〰️
そして、2週間があっという間に過ぎた。明後日には学園が始まる。なので、お別れの挨拶をした。
「私たちが、お付き合いできるのは、今日までなの。楽しんでもらえたかしら?」
セリナージェが、小首を傾げて可愛らしく聞いた。
「ああ!とても楽しかったよ。いろいろとありがとう」
エリオはキレイな顔で、満面の笑みで返した。ベルティナは、何度見ても、エリオのキレイな笑顔にはドキドキしてしまう。それでも、それは外に出さないように、ベルティナも笑顔で返した。
「それはよかったわ。私たちも楽しかったわ」
「僕たちはまだ当分王都にいるから、また会ったらお茶でもしようね」
イルミネの明るいお誘いは、社交辞令だとわかりやすくて、答えやすい。
「そうね。図書館とかでなら、本当に会いそうね。ふふ」
セリナージェは、図書館での時間がとても楽しかったようだ。この2週間に3度も行った。
「イルが一人で図書館に行くことはないだろうけどな」
クレメンティのイルミネへのツッコミに、みんなが笑った。
「「じゃあね」」
お互いに名乗らず、噴水の前で別れた。
〰️
「エリオ、よかったのか?」
イルミネが、ベルティナたちに手を振ったまま、エリオに尋ねた。
「今更名乗るのか?彼女たちの仕草から見たら、上手く行けば明後日会えるだろう」
エリオも、まだ見える二人の後ろ姿に手を振っていた。
「何クラスあると思っているんだよ。学年だって同じとは限らないぞ」
そう言いながら、セリナージェが振り向いたことに気がついたクレメンティは、大きな体を少し背伸びをして手を振った。
「でも、会える気がする」
エリオが断言した。
「会いたいの間違えだろう?」
イルミネの意地悪なツッコミに、エリオは前蹴りで仕返しした。
3人は宿屋へと戻った。
二人がブラブラと噴水前に行くと、泣いている5歳くらいの女の子とそれに困っているベルティナたちと同い年くらいの男の子がいた。
「どうかしましたか?」
ベルティナは、男の子に近づきながら声をかけた。振り向いた男の子は、とてもキレイな顔をしていて、ベルティナは少し驚いてしまった。
「ああ、どうやらこの女の子は、迷子らしいんだが、僕はこの辺に詳しくなくてね。困っていたんだ」
キレイな顔をしているのに、頭をかきながら話す仕草はまだあどけなくて、親しみやすい雰囲気の男の子だった。
「この辺で迷子を預けるなら、パン屋のおばさんのところよね?」
セリナージェがベルティナに確認した。ベルティナも頷く。
「ええ、そうね。パン屋さんは知っていますか?」
「あ~、いや、…すまない…」
男の子は、少し頬を染めて、本当にすまなそうな顔をして、また頭をかいた。ベルティナとセリナージェは、目を合わせて頷いた。
「じゃあ、私たちが連れていきましょう」
セリナージェが女の子に手を伸ばした。しかし、女の子は、男の子のズボンを離そうとしない。女の子が、上目遣いでベルティナとセリナージェを睨んでいる。睨んでいるのに、可愛らしい。
「ぷっ、くふふふ」
セリナージェは吹き出した。
「ふふふ、気に入られてるみたいですね。では、一緒に行きましょうか」
ベルティナも笑ってしまい、男の子を誘うことになった。
「ああ、頼むよ。よし、いいお姉さんたちでよかったな。おいで!」
男の子が手を伸ばすと女の子は躊躇せずに飛び込んだ。男の子は、軽々と女の子を縦抱きにする。細く見えるが、何か鍛えているのかもしれない。
そして、3人で歩きだした。パン屋の前まで行くと、お母さんらしき人がこちらに気が付き、走ってきた。
「サーラ!よかったわ!お母さん探したのよ」
サーラと呼ばれた女の子は、ここまで我慢してきたのだろう。勢いよく泣き出した。男の子の腕からサーラちゃんを受け取ると、お母さんは何度も頭をさげながら帰っていった。
3人は笑顔で手を振って、親子を見送った。
「へぇ、探す方もここが預かる場所だって知っているんだね。町の連携ができてて、素晴らしいな」
男の子が、とても感心していた。
「この国では当たり前よ。どの町にも世話役さんがいて、迷子はそこに預けることに、なってるの」
「それを知らないのなら、旅行者なの?」
ベルティナの説明を感心して聞いていた男の子に、セリナージェが質問した。
「まあ、そんな感じだ。
で、そのぉ、悪いんだけど、実は、僕も迷子なんだ…」
男の子は、先程のように、頭をかきながら、頬を染めて申し訳なさそうな顔をした。
ベルティナとセリナージェは、呆れてしまって、一瞬間があいた。
「「ふっ、ハハハ」」
二人が、笑い出す。男の子は照れくさそうだ。
「あのぉ、僕はエリオ。ピッツォーネ王国から来たんだ」
「私はセリナ、こっちはベルティナよ。で、どこへ行きたいの?」
「宿屋トーニなんだけど、知ってるかい?」
「んー、わかんないわね。やっぱり、こういう時は、パン屋のおばさんだわ。聞いてきましょう」
3人で、パン屋さんへ聞きにいった。エリオは、そこで細長いドーナツを5つ買った。
〰️
教えてもらった場所にそれはあった。
宿屋に3人で入る。
「エリオ!大丈夫だったか?」
「はぁ~よかったぁ」
入口に3人が入っただけで、二人の男の子が走ってきた。そして、エリオの無事を喜んでいた。
「二人ともごめん。彼女たちに助けてもらったんだ。僕の友達のクレメンティとイルミネだよ。
セリナ嬢とベルティナ嬢だ」
エリオがお互いを紹介した。
「ステキなレディに助けてもらえて、助かりました。ありがとうございます」
丁寧にお礼を言う方がクレメンティ。
「ホントに助かったよ。俺達も探したんだけど、見つからないからここで待つことにしたところだったんだ」
軽快なノリがイルミネ。
「大きな迷子さんは、これで大丈夫そうね」
セリナージェが、お茶目な笑顔で、ベルティナにウィンクした。
「ふふふ、そうね、じゃあ私たちは行きましょうか」
ベルティナは、笑顔で返す。二人が引き返そうと後ろを向くと、エリオが声をかけてきた。
「あ、ちょっと待って!あのぉ、よかったら、明日とか、王都を案内してくれないかな?」
「エリオ!」
エリオの意見に、クレメンティが即座に反対の意を唱えた。
「レム、俺はいいと思うよ。地理がわからない俺たちでウロウロするより、ずっといい」
イルミネは、エリオの意見に賛成のようだが、クレメンティは2対1でも、意見を変える気がないように、渋面だった。
「あ、でも、私たちもそんなに詳しいわけじゃないのよ。小さなお店とかはあまり知らないの」
ベルティナは、自分たちの正直な状況を説明した。基本的に生真面目なベルティナとセリナージェは、今までも、比較的安全と思われる有名なところにしか行っていないのだ。
「僕たちは、初めてきた町だからね。二人が知ってるところで全然構わないよ」
エリオは、ベルティナの状況を聞いても、クレメンティの渋面を見ても、意見を変えるつもりはないらしい。
ベルティナとセリナージェが顔を合わせる。二人としては、どちらでもかまわないのだ。そして、二人はクレメンティを見た。
「よろしくお願いします」
クレメンティが丁寧に頭を下げた。
「じゃあ、私たち、明日は王立図書館へ行くつもりだったんだけど、それでいいかしら?」
セリナージェが、元々2人で予定していたことを提案した。
「え!!」
クレメンティの目が変わった。明らかにキラキラしている。
「な、頼んでよかったな!」
イルミネが、クレメンティを、肘で小突いた。クレメンティは、頬を染めて、小さく頷いた。
「クスクス、じゃあ、明日、昼前に来るわ。どこかでランチをしてから、図書館へ行きましょう」
「それで頼むよ」
ベルティナの意見をエリオが賛同し、それに決定した。
帰り際、エリオからドーナツを2つもらった。サクサクとしたドーナツはとても美味しかった。
ベルティナもセリナージェも、そんなスマートな扱いを受けたことが初めてだったので、なんとなく、フワフワした。
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次の日、約束通り、ランチの後、王立図書館へ出かけることにした。
ベルティナとセリナージェは、実は辻馬車に乗るのは初めてだったのでドキドキしたが、男の子3人も一緒なので、そういう意味では、安心して利用できた。
ベルティナとセリナージェの二人で王立図書館へ行くときには、屋敷の馬車を使うのだが、なんとなく、彼らとはお互いに身分を隠しているので、屋敷の馬車を使うわけにはいかなかった。
個人馬車と違い、とても大きい馬車は荷台がぐるりと座席になっていて、10人も乗れる。箱馬車と違いオープンになっているので、ゆっくりと進むが風が気持ちいい。5人は町並みを楽しみながら、王立図書館へ行った。
ベルティナもセリナージェも王立図書館は、初めてではない。3人が興味があるというコーナーへ連れていく。3人はピッツォーネ王国の人なのに、スピラ語(スピラリニ王国の言葉)が話せるだけでなく、読み書きもできるという。とても優秀なことがわかった。
民族文芸コーナーでは、ベルティナとセリナージェもピッツォーネ王国とここスピラリニ王国との違いを3人から聞けて、とても楽しく、とても有意義な時間となった。
それから、話の流れで、ベルティナとセリナージェは、3人に毎日付き合うことになり、二人は執事やメイドに聞いてから案内した場所もあったので、二人もかなり王都に詳しくなった。
ある日、王立公園へ行ってみると、教会主催のボランティアの花壇作りをやっていた。5人は汚れることなど、気にせずに、一生懸命に手伝った。帰りに、神父様から、残った苗をもらった。
「僕たちは、育てる場所がないからね」
そう言って、苗はベルティナとセリナージェがもらうことになった。
またある日は、メイドオススメの喫茶店へ出かけた。フルーツをふんだんに使ったパンケーキがとても美味しいお店だった。しかし、3人には、量的に少々物足りなかったらしく、屋台で肉の腸詰めを挟んだパンを3つずつ買っていたのには、ベルティナとセリナージェは、呆れながら笑っていた。
〰️ 〰️ 〰️
そして、2週間があっという間に過ぎた。明後日には学園が始まる。なので、お別れの挨拶をした。
「私たちが、お付き合いできるのは、今日までなの。楽しんでもらえたかしら?」
セリナージェが、小首を傾げて可愛らしく聞いた。
「ああ!とても楽しかったよ。いろいろとありがとう」
エリオはキレイな顔で、満面の笑みで返した。ベルティナは、何度見ても、エリオのキレイな笑顔にはドキドキしてしまう。それでも、それは外に出さないように、ベルティナも笑顔で返した。
「それはよかったわ。私たちも楽しかったわ」
「僕たちはまだ当分王都にいるから、また会ったらお茶でもしようね」
イルミネの明るいお誘いは、社交辞令だとわかりやすくて、答えやすい。
「そうね。図書館とかでなら、本当に会いそうね。ふふ」
セリナージェは、図書館での時間がとても楽しかったようだ。この2週間に3度も行った。
「イルが一人で図書館に行くことはないだろうけどな」
クレメンティのイルミネへのツッコミに、みんなが笑った。
「「じゃあね」」
お互いに名乗らず、噴水の前で別れた。
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「エリオ、よかったのか?」
イルミネが、ベルティナたちに手を振ったまま、エリオに尋ねた。
「今更名乗るのか?彼女たちの仕草から見たら、上手く行けば明後日会えるだろう」
エリオも、まだ見える二人の後ろ姿に手を振っていた。
「何クラスあると思っているんだよ。学年だって同じとは限らないぞ」
そう言いながら、セリナージェが振り向いたことに気がついたクレメンティは、大きな体を少し背伸びをして手を振った。
「でも、会える気がする」
エリオが断言した。
「会いたいの間違えだろう?」
イルミネの意地悪なツッコミに、エリオは前蹴りで仕返しした。
3人は宿屋へと戻った。
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