あさひ市で暮らそう〜小さな神様はみんなの望みを知りたくて人間になってみた〜

宇水涼麻

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73 マックウィーンとラミレス

 初夏の暑い日。洋太は国道126号線を干潟駅から東に向かって疾走していた…………自転車で。疾走していても余裕で鼻歌を歌いながら周りの景色を楽しむことができる洋太は急ブレーキをかけて止まった。危ないので皆様はおやめくださいね。
 洋太が見つけたのは真っ赤なボディーに大きな目の付いた車! カーズのマックウィーンだ! …………ではなく……いや、本当にカーズ風なのだけどもちろん、洋太がそれを知るわけもないし、車のひたいには『MOCCA~モッカ~』と描かれていた。
 派手な車好きの洋太はウキウキとした足取りで道路を渡りその車へと近づいていった。

「派手な車は美味しいものを売っている!」

 独自の解釈ではしゃぐ洋太である。

 まさに今、キッチンカーブーム。まつりやイベントはもちろんのこと、最近ではちょっとしたスペースに数台のキッチンカーが出ていることもよくある。
 クレープMOCCA~モッカ~が停まっていたのもそんな小さな場所で、ビッグハウス脇にある癒し処おはなの駐車場であった。

 一年ほど前にキッチンカーを始めたモッカであるが、キッチンカーブームにノッてというわけではない。それよりもずっと前に、モッカの店主ももかは『クレープ屋のキッチンカーがやりたい!』という決意を持って動き始めていた。
 きっかけは子育てと職場での立場のバランスがうまくいかなかったことだ。職場を退職する決意をしたももかはやりたいことをやろうと決意し、その時真っ先に浮かんだ「クレープ屋」は考えれば考えるほどやりたいことだった。戸惑うことなく成田市にある店舗を持つクレープ屋に就職し、2年ほど勤務をしてクレープの修行をした。こうしてももかが自分に納得しキッチンカーを始めた時期がたまたまキッチンカーブームであった。  
 キッチンカーのデザインはギリギリまで悩んで「やっぱりやりたいようにしよう!」と大好きなテーラー・スウィフトをモデルにしたロゴを依頼した。

 そして、今日もご機嫌なテーラー・スウィフトの曲を流しながらクレープを焼いている。 

「おおお! クレープか!」

 モッカの横に自転車を停めた洋太はニンマリと笑う。間違いなく洋太が好きなヤツである。メニューを見て目を見開いた。

「あ! これは珍しいぞ、たまごサラダか。俺、惣菜系も好きなんだよなぁ」

「わかります! 私もクレープ屋を選んだのは甘いのもしょっぱいのも美味しいからなんですよ」 

「こっちはアイスが乗っているのか?!」

 キラキラさせた瞳で問えば可愛らしいももかが笑う。

「はいっ! 美味しいですよ。トッピングで何にでもお付けできます」

「ティラミスってなんだ?」

 まだ生まれたばかりの洋太はティラミスブームがあったことを知らない。

「マスカルポーネクリームとコーヒーシロップとココアパウダーのクレープです」

「よくわからないな。でもオススメみたいだからそれにしよう。アイスは付けてくれ」

「ありがとうございます。今日は暑いですものね。お待ちくださーい」 

 洋太はあっという間にアイスティラミスを平らげるとツナタマゴを追加注文で購入し、意気揚々と帰っていった。もちろん、それが家まで届くことはない。

 その日の夕方、その近くには水萌里の姿があった。水萌里は慣れた様子で木だまりへと向かったのだが店の様子にがっかりしている。『本日は夜はおやすみします』と黒板に書かれていたのだ。『今晩はなんとなく家事をやる気にならないからお弁当でいいわよね。私は食べて帰ろう♪』という気分で木だまりへ来てしまったので、これから買い物をして帰るなどとは到底思えなかった。

「よしっ! フェスタさんに初チャレンジ!」

 水萌里が意気揚々と向かったのは木だまりの隣にある『アジアンダイニングFESTA』である。FESTAのオーナーマッキーは若い頃には都内の某有名アジア料理店に勤めていて、アジア料理に惚れ込んだ。旭市に店を出すことにしたときは迷うことなくアジアン料理に決めた。タイ風でありながら、日本人に好まれる程度に絶妙にしていながらも、ナンプラーや追加用パクチーなどを用意してあるので、カスタマイズで頼める仕様となっている。
 
 水萌里は来店は初めてだが、ここの味をよく知っている。なぜならFESTAは真っ黄色のキッキンカーもやっているからだ。カーズでは、モッカが『マックウィーン』ならFESTAは『ラミレス』といったところだ。
 
 FESTAのキッキンカーはガパオライスとカレーライスの二種類しか扱っていない。水萌里はFESTAのガパオライスが好きなのだ。鶏ひき肉をバジル味で炒めた具は絶品だ。ただし、水萌里用は追加辛みは無しで。
 グリーンカレーは辛くて苦手だった。だが、真守はその辛さにハマったらしく、土産にすれば喜ぶ。洋太には両方買うようにしているが、両方を「美味い!」と喜んでいる。

 店内でメニューを見るとサイドメニューが充実していて目移りする。

『ああ。三人で来ればよかったわ。食べたいものばかりだけど一人では食べきれないもの』

 水萌里は気持ちを切り替えて鶏肉のフォーを注文した。フォーはキッチンカーでは食べることはできない。
 味にも量にも満足した水萌里の手にはおみやげのお弁当袋が握られていた。

 ☆☆☆
 ご協力
 クレープMOCCAモッカ様
 アジアンダイニングFESTAフェスタ様

 
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