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右肩を濡らして
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「傘を閉じた時にさ、右肩が濡れてるようじゃなきゃ、ダメなんだよ」
麻衣は言った。
外は今日も雨。ファストフード店の中の空気もどこか湿っぽい。
「ダメ、って言われてもなあ」
俺はポテトを一つ摘み上げる。
「そういうことは自分のカレシに言えよ。俺も里帆に言われたら考えるよ」
「そんなものいないし」
剣呑な目つき。別に煽ったつもりはないんだが。
「大体言われてから考えるってどうなの。相傘した時に相手が濡れないようにって、その程度の気遣い、相手に言われなくてもやってこそ本当の優しさってもんでしょ」
「うーん」
ポテトを咀嚼しながら、視線を外に向ける。
「啓くんって気弱なだけなんだよね。優しいわけじゃなくて」
言ってくれる。
「まあ否定はしねえけどさ」
氷で薄くなったコーラを一口。
「だけどさ、わざわざ他人の付き合い方に口出すことは」
「口出すとは何だ。友人のありがたいアドバイスを不条理なイチャモンみたいに言うな」
「自分で言うか?」
麻衣は続ける。
「それに他の子ならともかく里帆だからね。会わせたの私だし。責任があるわけよ」
「責任?」
「そう。あんたがどれだけ優柔不断で身勝手で情けないやつかよく知ってる私としてはさ、少しでもマシなやつになってくれないと、安心して里帆をまかせられないの」
大きなお世話、そう言いかけてふと見ると、そこには窓の外に視線を向けた麻衣の横顔があり。
その奥に見えたものが、言葉を途切れさせた。
麻衣が向き直って言う。
「何よ」
「……なんでもね」
寂しさ? 悲しみ? 苛立ち?
一瞬の影の正体を見極めようとするが、彼女はただ不思議そうにそんな俺の顔を見返すばかりだ。
「言いたいことがあるなら」
「ねーよ、別に」
確かに俺は優しくないんだろう。
けれども麻衣はどうなんだ? その右肩は誰かのために濡れているのか? だとしたら、麻衣が濡らすまいと傾ける傘の方にいるのは誰なんだ?
麻衣が見ていたものを探すように、俺は窓の外を眺める。
麻衣は言った。
外は今日も雨。ファストフード店の中の空気もどこか湿っぽい。
「ダメ、って言われてもなあ」
俺はポテトを一つ摘み上げる。
「そういうことは自分のカレシに言えよ。俺も里帆に言われたら考えるよ」
「そんなものいないし」
剣呑な目つき。別に煽ったつもりはないんだが。
「大体言われてから考えるってどうなの。相傘した時に相手が濡れないようにって、その程度の気遣い、相手に言われなくてもやってこそ本当の優しさってもんでしょ」
「うーん」
ポテトを咀嚼しながら、視線を外に向ける。
「啓くんって気弱なだけなんだよね。優しいわけじゃなくて」
言ってくれる。
「まあ否定はしねえけどさ」
氷で薄くなったコーラを一口。
「だけどさ、わざわざ他人の付き合い方に口出すことは」
「口出すとは何だ。友人のありがたいアドバイスを不条理なイチャモンみたいに言うな」
「自分で言うか?」
麻衣は続ける。
「それに他の子ならともかく里帆だからね。会わせたの私だし。責任があるわけよ」
「責任?」
「そう。あんたがどれだけ優柔不断で身勝手で情けないやつかよく知ってる私としてはさ、少しでもマシなやつになってくれないと、安心して里帆をまかせられないの」
大きなお世話、そう言いかけてふと見ると、そこには窓の外に視線を向けた麻衣の横顔があり。
その奥に見えたものが、言葉を途切れさせた。
麻衣が向き直って言う。
「何よ」
「……なんでもね」
寂しさ? 悲しみ? 苛立ち?
一瞬の影の正体を見極めようとするが、彼女はただ不思議そうにそんな俺の顔を見返すばかりだ。
「言いたいことがあるなら」
「ねーよ、別に」
確かに俺は優しくないんだろう。
けれども麻衣はどうなんだ? その右肩は誰かのために濡れているのか? だとしたら、麻衣が濡らすまいと傾ける傘の方にいるのは誰なんだ?
麻衣が見ていたものを探すように、俺は窓の外を眺める。
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