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けいりん

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ニュートンのゆりかご

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 かち、かち、かち、かち……
 硬質の音が規則的なリズムを刻む。
「これ、なんて言うんだっけ?」
「カチカチ玉?」
「そのまんまだね」
 私は笑い、真理恵もつられるように口元を歪める。  
 全部で5つの銀色の玉が、互いに接するようにぶら下がっている。端の一つが、振り子の要領で動き隣の球にぶつかると、真ん中の三つは静止したまま、反対側の一つが向こう側へと動き出す。戻ってくるとまたこちら側の球が弾き出され、再び隣の球にぶつかり……二つの球が、一つの物体であるかのように振幅運動を繰り返す。球と球がぶつかり合う音が、私たちの時を細切れにしていく。
「で、何? 話って」
「ああ、こないだの飲み会の時さ、坂本っていたでしょ」
「真理恵の隣にいた人?」
 確かパートはテナーだったか。真理恵とは高校が一緒だと言っていた。
 うちくらい大きな合唱団だと、パート外には時々知らない人がいる。その男も主観的には初対面だった一人。
「そう。あいつがさ、美由紀の連絡先知りたいって。教えていい?」
「なんで真理恵経由なのよ」
「さあ。私は伝えてるだけ」
「そういうの、直接言ってこない人はちょっとなあ」
「じゃあ、そう伝えていい ? 聞きたければ直接どうぞって?」
「できれば遠回しに断ってほしいんだけど」
「それどういう意味? どっちにしても教えられないならそう伝えるし、直接言ってこいって言うならそうするし。はっきりしてくれないかな」
「うーん」
 私はため息をつく。かち、かち、かち、金属球がそこにアクセントを添える。
 そう、あんたってばこれと一緒。言われた事を右から左へ伝えるだけ。
「まだよく知らないから教えられません、ってとこかなあ」
「わかった。じゃあそう言うよ」
 ほら、自分は動かない。
 全ては彼女の上を素通りするだけ。
 言葉も。想いも。その、坂本って男に意図せずいい印象を与えてしまったかもしれない、精一杯の笑顔も、明るい声も。
 自分に向けられたものですら、真理恵は向こう側へと受け渡すだけ。
 それでも私は笑うしかない。一度動き出した以上、何度でもぶつかるのが「端の球」の運命だから。
「うん、お願い」
 とびっきりの笑顔を、私は作る。
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