24 / 32
高校生 激動編
023. 誤魔化しが下手な瑠維さんと僕
しおりを挟む
僕は瑠維さんに絡みついたまま泣いているので仕方なく抱きかかえられ僕の部屋のベッドに寝かされた。
「今週は家でゆっくり体調を整えて来週の月曜日から学校に…ね。まだ本調子じゃないんだから寝ていなさい」
瑠維さんは僕の母さんのように優しく微笑んだ。
僕は瑠維さんの顔を見てかなり気が緩んだみたいだ。
「…瑠維さんがさっき『おかえりなさい』って言ってくれたのが母さんのこと…少し思い出したんです…抱きしめてくれたことも。母さんがいつも『亜月の笑っている顔は父様にそっくり。亜月は大きくなったら父様みたいにカッコよくなるわね。大人になるのが楽しみね』って笑ってた。…それだけ」
「そう、か…。美桜はそんなことを…」
瑠維さんは昔を懐かしむ瞳をしていた。
「これからは美桜の話もたくさんしよう…でもゆっくりでいい…僕もいるから安心して」
瑠維さんは優しく僕の頭を撫でた。
僕は撫でられたことで安心したからなのかそのまま眠ってしまった。
「今は眠るんだ…その後は必ずいいことが待っている…」
瑠維は小さな声で呟き、暫くの間亜月の寝顔を見ていた。
眠った亜月を確認すると静かに部屋を出た。
部屋の扉を閉めるとホッと息を吐いた。
僕は瑠維さんに抱きかかえられ部屋のベッドに寝かされた。
「今週は家でゆっくり体調を整えて来週の月曜日から学校に…ね。まだ本調子じゃないんだから寝てなさい」
瑠維さんはまるで僕の母さんのように優しく微笑んだ。
「…母さんのこと…少し思い出した…瑠維さんがさっき『おかえりなさい』って言ってくれた時…。僕が家に入ると母さんは必ず『おかえりなさい』って言うんだ。そして優しく力強く僕のことを抱きしめてくれた。その後言うんだ…『亜月の笑っている顔は父様にそっくり。亜月は父様みたいにカッコいい大人になるのかな。すごく楽しみ』って…僕の顔を見ながら嬉しそうに笑ってた。思い出したのはそれだけ…。急に泣いてごめんなさい」
「そう、か…。美桜はそんなことを君に伝えていたのか…」
瑠維さんは昔を懐かしんでいる瞳をしていた。部屋を出ようとしていたみたいだったがベッドに腰かけた。
「これからたくさん美桜の話をしよう…ゆっくりでいい…もう誰も君の邪魔はしないよ。僕も居るから安心していいよ…」
瑠維さんは優しく僕の頭を撫でた。
僕は撫でられて安心したのかそのまま眠ってしまった。
瑠維さんは暫くの間、僕の寝顔を見ていた。
落ち着いて眠っている僕を見ると小さな溜息を吐いてから部屋を出た。
瑠維は入院中に持っていった荷物を片付け始めた。
衣類を洗濯機に入れ洗濯を細々とした物をそれぞれの場所に片づけた。
勉強道具はリビングのテーブルに置くと以前亜月にクリスマスプレゼントと言って手渡した電子辞書もあった。
亜月は電子辞書を麗夏に取り上げられるか最悪壊されてしまうだろうと想像した。
だから亜月は禿河の家に持ち帰らず瀧野瀬の家に置いていた。
瑠維はその電子辞書を見ながら考えていた。
これからの亜月には誰にも気を遣わずにプレゼントをあげられることを嬉しく思ったけれどあと一つ亜月に言わなければならないと覚悟を決めた。
ただ亜月はこれまで悲惨なことを何度も経験したことが今日のように突然泣き出したみたいにショックを起こすかもしれないそう思うと瑠維の覚悟は少し揺らいでしまった。
グダグダ考えても仕方がないな…。亜月の右腕が治るまではこのマンションで生活することにも慣れなきゃならんしな。先延ばしにしていると思われるかもしれないが何が起こるかなんてわからないしな。デリケートな問題もあるから慎重に進めよう。
自分の判断を肯定するように大きく頷いた。
「……ですけどお義父さ……俺に……亜月は……なので父親……話せません。分かっています……俺が…ちゃんと……」
隣の部屋…というかリビングから瑠維さんの声が聞こえた。
瑠維さんが珍しく『俺』と言っていた。
瑠維さんは普段『僕』と言うし、仕事の時には『私』と使い分けていて『俺』と言うのは家族とか近しい関係の人のみに使っているから電話の相手はそういうことなのかなと思った。
僕は目が覚めて喉が渇いていた。
水を飲もうと起き上がりリビングに向かった。
リビングの扉を開けると通話が終わったからか携帯電話とにらめっこをしていた。
「瑠維さんの喋り声がしてたけど誰か来てたの?」
僕は目をこすりながら瑠維さんに尋ねた。
「あ、あぁ…電話だよ。今さっき瀧野瀬のお祖父様から亜月君の様子を聞かれたんだよ」
「ふーん…」
瑠維さんの秘密主義で僕は知らないことだらけだ。僕は瑠維さんの答えに軽く返事をするしかなかった。
僕はキッチンでコップに水を注いだ。
水を入れたコップを手にリビングの椅子に座った。
向かいに座る瑠維さんとの何か分からない沈黙がきつい。
「そうだ…これ。学校に提出する書類だよ。一応亜月君が持っていて」
瑠維さんは住所・氏名の変更になったことを書いた紙を渡してきた。
僕は変更になった内容が気になり、確認するため渡された紙を見た。
当然住所は禿河の家の場所ではなくこのマンションだった。
名前も『瀧野瀬亜月』に変更されていて僕はやっと自分の名前に実感が持てた。だって病院じゃずっと看護師さんからも病院の先生からも『亜月君』と呼ばれていたから。
「どうしたの亜月君?顔が嬉しそうだけど」
僕の顔がかなりニヤけていたみたいだ。
「な、な、なんでもないです」
慌てて答えたけれど恥ずかしくなって瑠維さんに渡されたさっきの書類を眺めた。
ふーん…あっそうか、保護者も僕の場合変更だよね。これはお祖父様だよね…。
一人納得するように目を向けた。
保護者:瀧野瀬 瑠維
続 柄: 父
「えっ?!えええええーーー!!!」
僕はビックリしすぎて大きな声を出してしまい、その声に瑠維さんが驚いた。
「うわっ、びっくりー!…どうしたんだい、亜月君?」
「ご、ごめんなさい…ってこれはどういうことなんですか?」
テーブルの上に置いた紙のある場所を指で指しながら瑠維さんを見た。
「あぁ…、それね…。えっと、うん、見なかったことにして欲しいな…」
えっ?!瑠維さんに説明を拒まれた感じ?
「ん…、あっと、えっと、その…ね。このことに関しては話も長くなるだろうし、亜月君の体調がまた悪くなっても困るから…ということで…怪我の治療が終わって完治してから…ゆっくりね」
瑠維さんの誤魔化せていない誤魔化し方にちょっと呆れながら一応は納得した。
納得はしたけど…したはずだけど…なんか中途半端で僕のモヤモヤは晴れない…。
「今週は家でゆっくり体調を整えて来週の月曜日から学校に…ね。まだ本調子じゃないんだから寝ていなさい」
瑠維さんは僕の母さんのように優しく微笑んだ。
僕は瑠維さんの顔を見てかなり気が緩んだみたいだ。
「…瑠維さんがさっき『おかえりなさい』って言ってくれたのが母さんのこと…少し思い出したんです…抱きしめてくれたことも。母さんがいつも『亜月の笑っている顔は父様にそっくり。亜月は大きくなったら父様みたいにカッコよくなるわね。大人になるのが楽しみね』って笑ってた。…それだけ」
「そう、か…。美桜はそんなことを…」
瑠維さんは昔を懐かしむ瞳をしていた。
「これからは美桜の話もたくさんしよう…でもゆっくりでいい…僕もいるから安心して」
瑠維さんは優しく僕の頭を撫でた。
僕は撫でられたことで安心したからなのかそのまま眠ってしまった。
「今は眠るんだ…その後は必ずいいことが待っている…」
瑠維は小さな声で呟き、暫くの間亜月の寝顔を見ていた。
眠った亜月を確認すると静かに部屋を出た。
部屋の扉を閉めるとホッと息を吐いた。
僕は瑠維さんに抱きかかえられ部屋のベッドに寝かされた。
「今週は家でゆっくり体調を整えて来週の月曜日から学校に…ね。まだ本調子じゃないんだから寝てなさい」
瑠維さんはまるで僕の母さんのように優しく微笑んだ。
「…母さんのこと…少し思い出した…瑠維さんがさっき『おかえりなさい』って言ってくれた時…。僕が家に入ると母さんは必ず『おかえりなさい』って言うんだ。そして優しく力強く僕のことを抱きしめてくれた。その後言うんだ…『亜月の笑っている顔は父様にそっくり。亜月は父様みたいにカッコいい大人になるのかな。すごく楽しみ』って…僕の顔を見ながら嬉しそうに笑ってた。思い出したのはそれだけ…。急に泣いてごめんなさい」
「そう、か…。美桜はそんなことを君に伝えていたのか…」
瑠維さんは昔を懐かしんでいる瞳をしていた。部屋を出ようとしていたみたいだったがベッドに腰かけた。
「これからたくさん美桜の話をしよう…ゆっくりでいい…もう誰も君の邪魔はしないよ。僕も居るから安心していいよ…」
瑠維さんは優しく僕の頭を撫でた。
僕は撫でられて安心したのかそのまま眠ってしまった。
瑠維さんは暫くの間、僕の寝顔を見ていた。
落ち着いて眠っている僕を見ると小さな溜息を吐いてから部屋を出た。
瑠維は入院中に持っていった荷物を片付け始めた。
衣類を洗濯機に入れ洗濯を細々とした物をそれぞれの場所に片づけた。
勉強道具はリビングのテーブルに置くと以前亜月にクリスマスプレゼントと言って手渡した電子辞書もあった。
亜月は電子辞書を麗夏に取り上げられるか最悪壊されてしまうだろうと想像した。
だから亜月は禿河の家に持ち帰らず瀧野瀬の家に置いていた。
瑠維はその電子辞書を見ながら考えていた。
これからの亜月には誰にも気を遣わずにプレゼントをあげられることを嬉しく思ったけれどあと一つ亜月に言わなければならないと覚悟を決めた。
ただ亜月はこれまで悲惨なことを何度も経験したことが今日のように突然泣き出したみたいにショックを起こすかもしれないそう思うと瑠維の覚悟は少し揺らいでしまった。
グダグダ考えても仕方がないな…。亜月の右腕が治るまではこのマンションで生活することにも慣れなきゃならんしな。先延ばしにしていると思われるかもしれないが何が起こるかなんてわからないしな。デリケートな問題もあるから慎重に進めよう。
自分の判断を肯定するように大きく頷いた。
「……ですけどお義父さ……俺に……亜月は……なので父親……話せません。分かっています……俺が…ちゃんと……」
隣の部屋…というかリビングから瑠維さんの声が聞こえた。
瑠維さんが珍しく『俺』と言っていた。
瑠維さんは普段『僕』と言うし、仕事の時には『私』と使い分けていて『俺』と言うのは家族とか近しい関係の人のみに使っているから電話の相手はそういうことなのかなと思った。
僕は目が覚めて喉が渇いていた。
水を飲もうと起き上がりリビングに向かった。
リビングの扉を開けると通話が終わったからか携帯電話とにらめっこをしていた。
「瑠維さんの喋り声がしてたけど誰か来てたの?」
僕は目をこすりながら瑠維さんに尋ねた。
「あ、あぁ…電話だよ。今さっき瀧野瀬のお祖父様から亜月君の様子を聞かれたんだよ」
「ふーん…」
瑠維さんの秘密主義で僕は知らないことだらけだ。僕は瑠維さんの答えに軽く返事をするしかなかった。
僕はキッチンでコップに水を注いだ。
水を入れたコップを手にリビングの椅子に座った。
向かいに座る瑠維さんとの何か分からない沈黙がきつい。
「そうだ…これ。学校に提出する書類だよ。一応亜月君が持っていて」
瑠維さんは住所・氏名の変更になったことを書いた紙を渡してきた。
僕は変更になった内容が気になり、確認するため渡された紙を見た。
当然住所は禿河の家の場所ではなくこのマンションだった。
名前も『瀧野瀬亜月』に変更されていて僕はやっと自分の名前に実感が持てた。だって病院じゃずっと看護師さんからも病院の先生からも『亜月君』と呼ばれていたから。
「どうしたの亜月君?顔が嬉しそうだけど」
僕の顔がかなりニヤけていたみたいだ。
「な、な、なんでもないです」
慌てて答えたけれど恥ずかしくなって瑠維さんに渡されたさっきの書類を眺めた。
ふーん…あっそうか、保護者も僕の場合変更だよね。これはお祖父様だよね…。
一人納得するように目を向けた。
保護者:瀧野瀬 瑠維
続 柄: 父
「えっ?!えええええーーー!!!」
僕はビックリしすぎて大きな声を出してしまい、その声に瑠維さんが驚いた。
「うわっ、びっくりー!…どうしたんだい、亜月君?」
「ご、ごめんなさい…ってこれはどういうことなんですか?」
テーブルの上に置いた紙のある場所を指で指しながら瑠維さんを見た。
「あぁ…、それね…。えっと、うん、見なかったことにして欲しいな…」
えっ?!瑠維さんに説明を拒まれた感じ?
「ん…、あっと、えっと、その…ね。このことに関しては話も長くなるだろうし、亜月君の体調がまた悪くなっても困るから…ということで…怪我の治療が終わって完治してから…ゆっくりね」
瑠維さんの誤魔化せていない誤魔化し方にちょっと呆れながら一応は納得した。
納得はしたけど…したはずだけど…なんか中途半端で僕のモヤモヤは晴れない…。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
旧校舎の地下室
守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる