告白

おーろら

文字の大きさ
32 / 32
高校生 激動編

031. 北白川舞、どうにもならない絶望感

しおりを挟む
 何度も何度も紫凰君に話しかけた。
 話しかければちゃんと答えてくれていた紫凰君は一週間が過ぎた頃には顔を見ると嫌な顔をされるようになっちゃった。
 でも私だって身に覚えのない噂ばかりで友だちも離れてしまったから友だちに話して説得してもらおうと思っていた。
 なのに最後の方は紫凰君にも無視されるようになった。

 「どうして?私、紫凰君に何か悪いことした?こんな酷い仕打ちされる程の事してないでしょ?!」
 泣きそうになりながら私は紫凰君に向かって叫んでしまった。
 もうどうしようもない。
 紫凰君にも無視されちゃっている。
 亜月にも会うことができない。

 「お願いだから亜月に会わせてよ。じゃなかったらどこにいるのか教えてよ!」
 紫凰君の顔を見たら怒りで目つきが悪くなっていた。
 ものすごく恐くてもう紫凰君の顔をまともに見れなくなった。

 「君とはもう顔を会わせたくないって亜月が言ってた。もう俺に話しかけないでくれ…あぁ、そうだった。亜月から君へ伝言。『君の方から幼馴染みじゃないからぜっていに話しかけるなと言ってきただろ。なのに話しかけてくるなんて神経図太すぎだよね』だって」
 「えっ?!」
 突き刺すような瞳が私に向けられた。
 なんだか恥ずかしくなってきた。
 そこにはそれ以上いられなくなった。
 大きな声で亜月の名前を言ってしまったから周りの人にも麗夏ちゃんのことも知られているからまた噂になっちゃう。
 本当にこれ以上無理、ヤダ!
 何を言っても紫凰君は聞いてくれなかった。
 私は涙を流してしまった。
 泣き顔を見られたくなかったので下を向いては知って逃げた。

 五月の連休も終わったけど、隣の禿河の家に誰も帰って来なかった。
 亜月は帰ってくると思ってずっと待っていた。
 警察の“立入禁止”のテープが張られていた時は家の人たちも当然入れないから帰って来ないけれど、それがなくなったら今まで通りに亜月は隣にいるんだと思っていた。
 一週間くらい経つと家の中の荷物を片付けている人たちがいた。
 その後はずっと部屋にカーテンがかけられ、家の中の様子は何も見えなかった。
 更に数日後には不動産会社の名前が入った看板が立てられ、また立入禁止になっていた。
 それからは隣の家は麗夏ちゃんも亜月も帰ってくることはなかった。

 何度も亜月のことで紫凰君に話しかけていたけど、どんどん声が大きくなり周りの人たちに知られちゃった所為せいで紫凰君のような男子を敵にした女子生徒として有名になってしまった。
 もう学校にも行きたくない…。
 私がそんな風に思うようになってきたけれど自分の親にはそんなこと言えない。

 「私立高校に入学してお金がすごくかかったのに中退なんて許さない」
 一度両親、特に母親から言われた。
 麗夏ちゃんとも一緒にいられなくなって、亜月のそばにいられない。
 もうどうでもよくなっちゃった。
 授業も解らなくなってきた。
 自分の中でドロドロした気持ちがいっぱいだった。
 気持ちが落ち着かなくなった時に亜月が学校に戻ってきた。
 戻ってきた亜月は腕に包帯を巻いていた。
 顔にも傷痕がうっすらと見えた。
 亜月に何かあったみたいだけど、私にはわからなかった。
 昼休みになるとクラスが違うのにわざわざ紫凰君が付き添って歩いていた。

 「瀧野瀬君!」
 「はい?」
 同じクラスの女子なのだろうか、亜月が呼ばれたみたいで声のする方へ振り向いていた。
 『瀧野瀬』と呼ばれ、亜月は違和感なく話している。
 隣に立っている紫凰君も何も言わず一緒に話を聞いている。
 亜月は『禿河』じゃないの?
 麗夏ちゃんとは姉弟じゃなかったの?
 私には判らないことだらけだった。
 それどころか亜月は今まで知っていた顔ではなかった。
 クラスの女子と話す表情は少しばかり緩んでいた。
 麗夏ちゃんや私に見せる暗い顔や無表情ではなかった。
 柔らかい顔で対話する相手の女子が羨ましい。
 もう私の知っている亜月はいない。

 今まで大人しく麗夏ちゃんと私の後にくっついていた亜月はもういない。
 本当に『瀧野瀬亜月』という私の知らない男子高校生だった。
 紫凰君を通して亜月と話すチャンスを狙っていたけれどそのチャンスは一度もなかった。
 結局私ってば何してたんだろ?
 私って亜月とどうなりたかったんだろ?
 いつの間にか私は亜月に嫌われていたんだね。
 あぁ、亜月と仲良く遊べていた何もわかっていなかったあの頃に戻れば私と亜月の関係も違うものになっていたのかな?
 これからの私はどうすれば良かったんだろう?
 何が正解かもわからない…。
しおりを挟む
感想 1

この作品の感想を投稿する

みんなの感想(1件)

花雨
2021.08.10 花雨

お気に入り登録しときますね♪

2021.08.10 おーろら

ありがとうございます♪嬉しいです(o^^o)

解除

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

旧校舎の地下室

守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。