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第3話 洞窟から空に きっと全て夢だった

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 神様からの手紙を読んでから数日が経ち、俺は何故か洞窟の中にいた。
 

「何だろう、漫画みたいに強いスキルとか望んで無かった訳じゃ無いけど、モブが役割って・・・」
 転生して突きつけられた現実にどうしても納得が出来なかった俺は、色々と考えていた。今の俺はまだ子供だがモブという説明があった俺は成長していた。つまり、これからの努力次第ではモブという運命を変える事が出来るかもしれない。
「自分が主人公キャラじゃない事は自覚しているけれど、いざお前はモブだと言われると言葉では言い表せない何かがあるな」
 とはいえ、何をどうすればモブキャラでは無くなるのか皆目見当も付かない。俺が通うかもしれない学園だって、貴族や王族のような金持ちが行くような場所の筈・・・。運良くとは書いてあったが、入学試験とかもありそうな感じはする。
「う~ん、やっぱり勉強するべきかな~。昔から勉強は嫌いなんだよな。かと言って運動とかも得意では・・・」
 悩んだ末にお父さんに頼んで鍛えて貰おうと考えた。頭を使うより体を動かす方がまだマシだと思ったからだ。
「確か、今日は家に居たよな?」
 部屋を出てからお母さんの所に行き、お父さんが何処にいるのかを聞いた。
「お母様、お父様は今何処に居られますか?」
「お父さん? そうね、確か山の方に行って山菜とかを採ってくるとか言ってたけど・・・」
「分かりました、ありがとうございます!」
「お父さんの所に行くの? お父さん、危ない所に居るかもしれないから気を付けてね。近くにいないようならすぐに帰ってくるのよ?」
「はい」
 お母さんは、心配しているが行ってはダメとは言わなかった。俺としては、正直助かる。危険な所に入るつもりは無いけれど、十分に注意しておこう。
 そんなこんなで、お父さんがいる山まで行き、山に入る手前でお父さんが居ないか確認していたその時、地面が急に崩れてそのまま俺は滑り落ちていった。


 何処まで落ちたのか分からないが奇跡的に怪我は無かった。気付けば洞窟の中にいて、上を見て落ちてきた所を確認出来たが外の光は差し込んでいなかった。落ちてきた穴を確認出来る程に明るい事を不思議に思った俺は、周りを見ると大きな扉があった。
 扉は青く光っていて、この辺りはこの扉の光によって明るい事が分かった。体が動くことを確認して進み、扉の前に立ってみた。
 怖いという感情は無く、扉の先に何があるのかという好奇心が勝ち、そっと扉に手を伸ばし触れてみた。
 すると、扉は一層輝き始め、声が聞こえてきた。
「ダンジョン攻略を確認―― ダンジョン攻略により所有権を全て譲渡―― マスターの情報をインプットします」
「な、何!? 何が起きているんだ!?」
「インプット完了、レイン・ローズヴェルクをマスターとして認めます」
 何が起きているのか分からないまま、俺は光に包まれていった。
 すぐに、光は収まり目を徐々に開けて行く。
「なっ!?」
 驚きのあまり言葉を失った。さっきまで洞窟にいた筈なのに、青い空と白い雲が見える。外に出た訳では無いことはすぐに分かり、空を飛んでいる状態ということも分かった。もちろん、俺が飛んでいる訳では無く、何かに乗っている。
「これって、もしかして飛行機に乗っている?」
「確かに空を飛びますが、飛行機とは違いますよ? マスター」
 すでに、理解が追いついて無いような状態で更に追い打ちを掛けるような存在が横に現れた。
「初めまして、マスター。私の個体名はアルファですが、好きにお呼びになって下さい」
 宙に浮いている丸い球体、そして赤いレンズが俺の方を見て確かに声を掛けて来ていた。
「しかし、まさかダンジョンを攻略したのがこのような幼い子供だとはとても驚きです。あ、マスターを馬鹿にしている訳ではありませんよ。表情などはありませんが、結構驚いたもので」
 驚いたと言われているけど、正直俺の方が驚いている訳で、そもそもここは一体何処なのか、洞窟にいたのにどうして空の上にいるのか、ダンジョンって一体の何のことなのか、アルって呼んでも良いのかとか、多くの事を質問しようとしたが、頭がパンクしてしまいそのまま眠りについてしまう俺なのであった。
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