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第2話 待たせておいてモブっていうのは辛すぎる

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 昼寝が終わった後に神様からの手紙を確認しようと思っていたが、夕食を食べ、お風呂に入り、そのまま寝てしまったので結局手紙に気付いてた翌日に確認をする事になった。
 それにしても、あんなに寝るなんて思わなかったな。俺がまだ子供だからだろうか。
 前世の記憶があるおかげで精神年齢は高校生だが、今の俺はまだ7歳で子供だ。睡魔に抗うことは出来ない。まあ、手紙だから少し時間が空いても大丈夫だろう。
 そんな言い訳みたいなことを考えながら、机の引き出しに閉まった手紙を取り出す。
 朝食も食べ終わり、自由に動けるので、近くに両親がいないかを確認し手紙の中身を確認した。
 中身は、恐らく神様からのメッセージとゲームに付いている説明書のような物が入っていた。
「えっと、この紙は多分神様からのメッセージだよな? 何て書いてあるんだ?」
『まずは、連絡が遅くなってしまったこと申し訳ありません。言い訳になるかもしれないけれど、君を無理矢理送り出してしまった問題の解決が思いのほか大変で最近になってようやく落ち着いたので、手紙で申し訳ないけど謝罪と改めて世界の説明をしようと思いました』
 今更、強制的に転生させられた事については怒っていなかったが、きちんと謝罪をしてくれたのは良かった。自分勝手な神様とかだったら最低最悪の気分になっていたかもしれない。続きを読んでいく。
『一応君の今の状況も確認してから手紙を送っています(私の事を思い出しているかを確認しました)。この世界の説明ですが、君が元いた世界にあった乙女ゲームの世界みたいになっています』
「えっ!? この世界、乙女ゲームの世界なの? どうしよう、俺やった事無いけど大丈夫かな」
『この世界のことは、別の紙に詳しく書いているのでそちらを見て下さい。貴方の役割も書いてあります』
「役割? 一体何の事だ?」
 とりあえず、説明書を見てみることにした。表紙には、1人の女性と複数の男性が描かれていた。確かに乙女ゲーの世界感を感じる事は出来た。
 タイトルは特に書かれていない。当たり前か、あくまで『みたい』であってゲームの世界に入った訳では無いのだろうから。
 読み進めていくと、魔法が使える物が多い世界で貴族や平民といった身分があるみたいだ。
「うちは、貴族って感じしないよな。てことは、平民か?」
 決して貧乏という訳ではないが、豪華な暮らしをしている訳でも無い。お父さんが確か冒険者をしていて、そこで稼いだお金で生活しているというのを聞いたことがある。
 説明書の中にも冒険者について書かれている場所があった。一通り読み終わって、大抵の事は分かったのだが1つ疑問が残ってしまった。
「役割って書いてあったけど、何処に書いてるんだ?」
 説明書を読み返してみるが、特に何か書かれている様子は無い。ふと、思ったのはこの世界での主要人物であるかもしれないこと。説明書の中には、表紙に書かれている人物達の説明が書かれていた。
 ゲームでいう所のメインヒロインや攻略対象、悪役令嬢についても書かれていた。しかし、俺と同一人物のような人はいない。俺は髪の色が黒だが、誰1人として黒髪がいない。そもそも、名前が一致しない。
 結局どういった事か分からないまま説明書を閉じようとすると、1枚めくれていないページがあった。ページをめくるとそこには恐らくこの世界で学生になった俺の姿があった。
 年齢までは書いて居なかったが、今よりも背が伸びていたので数年後の姿だろう。だが、そんな事よりも俺には衝撃的な一文を見つけてしまった。
 『運良く学園に入れた平民、ただのモブです』
 名前の下に大きく描かれていた文章にショックを受け、神様の手紙を見返す。すると、最後に神様からこんな言葉が贈られていた。
『ちなみに、役割を変えることは出来ません。頑張って下さい』
 俺は、家を飛び出し、両親が聞こえない山の中で
「ふざけんな、馬鹿野郎~~~~~~~~~~~!!!!!!」
 と大声で叫んだのだった。

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