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4.初の海外です

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「すごい…見てエド。」
「俺も見てますから。」
私の目の前には大きな朱色の門があった。柱は赤色でぬられ繊細な彫刻が施されていた。彫刻の部分だけ金色で塗られていて、その上の両端には巨大な緑色の龍が並んでいる。これにも、細かく彫られていて目の部分は恐らく宝石でできていた。この門だけでこの街がどれだけ栄えているかがよくわかった。門の奥には飲み屋街があり、道にはたくさんの人々が往来している。
まるで前世の中華街を立派にしたような街だった。

「行ってみようか。」

私とエドはすでに国境を越えて、王子とミアのいる王国から抜け出していた。今世で初の海外。胸が高鳴る。この国は乙女ゲームにそれ以外の国は出てこなかったがしっかりと国として成立しているみたいだ。むしろこっちの方が立派なくらいだ。
エドの腕をつかんで門をくぐった。夜だからか大勢のひとで賑わっている。

「ちょっと、引っ張らないでくださいよ。」
「こんなところではぐれたらもう二度と会えないよ。」
スマホもないし。
「はぁ。わかりましたよ。」

通りの両脇にはたくさんの店が並んでいる。一軒一軒の距離が近くてかなりごちゃごちゃあいてみえた。それがなんともいえない活気をうみだしている。

「みて。あれ、美味しそうじゃない?」
「どれです?」
「あの皮で餡を包んであげたやつ。なんて読むのかはちょっとわかんないけど。」
「おいしそう…」
「買ってこよう。」
「言葉つうじますか?」
「いけるいける。大丈夫。任せて。」

店の前にいき、店のおじちゃんに話しかける
「これを2つお願い。」
「餡ハドレスル?」
「おすすめとかってある?」
「ニク、カジツ、オススメ。」
「エド、どうする?なにがいい?」
「俺は果実で。」
「ニイチャン、カジツ。ネエチャンドレスル?」
「私は肉で。」
「フタツデ500」
私は銅貨を5枚だした。日本でいうと銅貨は100円くらいの価値であろうか。
「イマアゲル」

おじちゃんは薄い皮に具をのせてまいていった。それを油にいれてあげ始まる。パチパチと油がはねた。
「エド、ここは国境に近いから、言葉が通じるのよ。」
「知らなかったです。」

「ハイ。」

木の葉につつまれて渡される。
「ありがとう。あの、どこかおすすめの宿はある?」
「ヨコミチハイッタトオリ。ジカンセイデタノシメルヨ。」
「どうも。」

落とさないようにエドに果実の方を手渡した。
エドがなんの反応もしなかった。
「どした?」
エドが少しきまずそうに言った。

「アイリーン様お金、あとで払いますね。」
「別にそれくらいいいから。それより、様つけて呼ばないでよ。これおごってあげる代わりに。」
「アイリーン?」
「そう。」

「エドって意外と甘党だよね。」
「悪いですか?」
「誰もそんなこと言ってないよ。むしろ趣味を共有出来そうな気がするから個人的には嬉しい。」
「気つかわなくていいですって。」
「本当だよ。今はおなかすいてるから肉だけどね。」

買った春巻きもどき?にかぶりつく。熱い肉汁が口のなかに広がり、この皮のパリパリとした食感とまざりあう。少し噛むと、皮が思いのほかもちもちしていていることに気が付いた。食べるのがとまらない。そこそこの大きさはあったが、飽きないのは鼻に抜ける独特の香りのおかげだろう。たまに、ピリッとした粒も入っていた。それが、アクセントになっている。もう少しだけ食べたい。この味をただ楽しみたい。

「たべんのはや…」
「うるさいわね。エド、見てないで食べなよ。さめちゃうよ。」

エドが一口かじった。中の具がおいしそう…

「あー。一口いります?」
「いいの!?」

遠慮せずに大きくかぶりつく。絶品。皮の感じが、肉のよりぶ厚く、もちっとしている。かむと、優しい甘味がでて来る皮はそれだけで美味しい。餡には多分干した実が入っているのだが、それがとてもよい。トロリとした感じがこの皮によくあう。そして、甘さにあきた頃に口の中で現れる胡桃の実はほんのりと塩気があり、食感も面白い。

って今更だけど間接キスだった…まあ、私も前世では成人した大人だったのだ。当然、前世では彼氏もいたし、動揺しないけど。動揺してないからね?婚約をいれなければ彼氏いない歴今世の年齢(18)+の3年ではあるけど。

「ホントにおいしそうにたべますね。アイリーンさ…んは。」
「だっておいしいもん。おいしいもの食べるのって幸せだよね。」
「なんかついてますよ。」
「どこ?」
「ほっぺのとこ。」
「え。うそ。そんなとこあるわけ…」

エドの顔が近づいてきた。王子の横だと目立たなかったけどコイツも中々美形でござるな。アップに耐えうる顔。右
のほっぺのあたりにてをのばされる。

「やっぱり、くるみがついてましたよ。」
「ありがとう。」
すごい恥ずかしい。口元とかじゃなくほっぺに食べカスつけてる女、ヤバすぎる。
食べ終わって街をぶらぶらと歩く。割と食べ歩きできるお店も多い。店の前に出店としてやっているみたいだ。

「なんか歩くだけで楽しいね。いいにおいもするし。」
「すごい賑やかで俺は空気感にのまれそうです。すでに飲まれ気味かも」
「そうなの?まあ、ここは確かにすごいわ。」
前世でいうとお祭りのような妙な熱気がある。

「なんかはめをはずしても許されそうな気がする。」
「確かにどんな人でもうけいれてくれそうな気はしますよね。」
「あ。ここ曲がったとこかな?宿って。」
「アイリーン様、やめときましょう。絶対やめた方がいいですって…」
少し覗いてみる。灯ろうが店の軒先にかかり少し怪しい雰囲気がただよう。そんな店が何軒もひしめきあっていた。そこだけ異様に男女のペアが多い。

あ、ラブホの通りだ。

「ごめん。」
エドに謝った。時間制うんぬんってこのことか…
「いや、通り入られたらどうしようかと思いましたよ…」
チラチラと客引きの姿もみえる。気づいてよかった。




歩き回った結果、まともそうな宿を発見した。
「2部屋空いてますか?」
「ゴメンネ。アイテナイ。ノコリ1ツ。」
私はエドと顔を見合わせた。
正直もうこれ以上歩きたくない。疲れたし。
「いいよね?」
「え…」
「布団は2組ありますよね?」
「アルヨ。」
「だって。ここでいいじゃん。」
グダグダと反対するエドを押し切る。
「一部屋お願いします。」
「ギンデ11。」
銀貨を11枚だす。日本円で1万1000円。ちょっと想定より高いけど仕方ない。

鍵をもらって部屋に続く階段を上がった。




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