1 / 40
それが運命というのなら#1
しおりを挟む
天音理月は自宅アパートで大学の課題をこなしながら、無意識に手首にある歯形を撫でた。もうそれは理月の癖だ。特に考え事をしている時に無意識に触っているようだった。歯形を見る度に、自分がオメガである事を思い知らされる。そして唯一体を繋げた男を思い出すのだ。
理月は抑制剤が効く体質なのか、元々の体質なのかは不明だが、ヒートを起こしたことがなかった。だが、ただ一人、あるアルファの男にだけ理月のオメガのフェロモンが反応し、激しくヒートを起こした。後にも先にもあんな激しいヒートを起こしたのはそれ一度きりだった。
その相手の男の名は宝来将星といった。
理月は青い瞳とブロンドの髪色を持つオメガだ。両親は日本人であったが、父方の叔父が理月とそっくりだった。父方の祖母がスウェーデン人との混血で、五人兄弟の末の弟である叔父だけが突然その血を受け継いだ。そして理月もまた、その血を色濃く受け継ぎ、叔父と同じ青い瞳にブロンドの髪色を持って産まれた。そしてその叔父はオメガだった。叔父の血を受け継いだ理月もやはり、オメガだった。予想はしていたとはいえ自分がオメガだと確信した時、しばらく絶望感に打ちひしがれた。
理月がオメガとして生まれたのは、叔父の血筋である事は間違いない。確かに叔父を恨んだ事もあった。だが、叔父は自分と同じ容姿の理月を可愛がってくれたし、理月もそんな優しい叔父が好きだった。今でも恨む事も嫌いになる事もできない。そのくらい叔父には懐いていた。
だが叔父はある日突然、自ら命を絶ってしまった。理由は、その当時の番の相手が別の人間と番ったのだという。オメガは一度番を作ると、相手が死ぬまで番を変える事ができない。番った相手を余程愛していたのか、絶望した叔父はあっさりと死を選んでしまったのだ。
理月がオメガであっても誰よりも強くなろうと決心したきっかけだ。叔父の事は大好きだったが、《そんな事》で自ら命を絶ってしまった叔父に失望したのも確かだった。
叔父ほどの中性的な美しさはなかったが、それでも整った顔立ちと鍛えた体から伸びる手足は長く、オメガにしては176センチと身長には恵まれていた。大抵のオメガは170センチもない華奢な体つきをしている事が多かったが、理月の外見は充分にベータ、もしくはアルファであると誤魔化せる事ができた。
理月は立場的にも身体的にも劣ると言われていオメガにもかかわらず、誰よりも強くなる努力をした。それを証明したのが行徳学園の入学だ。理月が通う行徳学園は悪の吹き溜りとして県内では有名で、腕に自信がない者は在籍するな、と言われている高校で理月はそこの頂点に君臨した男だった。
理月は性別をベータと偽っていたがまさか、行徳学園のトップがオメガであるなどと誰もが思わなかっただろう。
そして行徳学園と並んで危険視されていたチームがあった。黒いライダースの背中には三つの頭を持つ『冥界の番犬』と言われている犬を背負い、バイクで街を走り抜けていくバイクチーム『ケルベロス』
この、『行徳学園』と『ケルベロス』が県内の二大勢力と言われていた。
当時のリーダーは、宝来将星という男だった。
同時期に二大勢力の頂点に立つ男として、互いに意識はしていた。
だが、行徳学園には代々受け継がれている事があった。
『ケルベロスに絶対に手を出すな』
先輩からの言葉は不良たちにとって絶対である。故に、ケルベロスと行徳学園は決して交わる事がなかった。
それにケルベロスはあくまで、『バイクチーム』であると主張している。自ら喧嘩を売るような愚かなメンバーはいないが、売られた喧嘩は買う主義で、ひとたび喧嘩を売られれば相手を完膚無きまでに叩き潰す。徹底的な潰しに周囲の者は皆閉口するのだという。
行徳学園の先輩たちはきっと過去に身をもって、ケルベロスの恐ろしさを知った出来事があったのではないかと理月は予想していた。
将星とは間近で顔を合わす事はなかったが、街中では時折あの目立つライダース軍団を見かける。特にリーダーである宝来将星は、代々リーダーが受け継ぐと言われている、白いライダースを身に纏っていた為、その白いライダースは嫌でも目に入った。
将星がアルファだとすぐに分かった。自分とは違う厚みのある鍛え抜かれた逞しい体躯。それを際立たせるかのような褐色を帯びた肌。そんな体には至る所にタトゥーが入っているという噂だ。高身長で黒いライダースパンツが長い足の将星によく似合っていた。顎ほどまで伸ばした黒髪は青みがかかっており時折一つに束ねていた。鋭い切れ長の目はひと睨みされれば、皆が怯んだ。それは自分でなくとも、彼を見ればアルファであるのは一目瞭然だった。
理月は将星の姿を見ると、体が熱くなり武者震いを起こす。
《いつかあの男と差しで勝負がしたい》
元々喧嘩好きの理月は、喧嘩で負け無しと言われている将星を強くライバル視していた。周囲もきっと、《行徳の理月》と《ケルベロスの将星》が勝負をしてどちらが勝つのか興味があったはずだ。
自分だって、そうしたいのは山々だ。だが、相手がアルファの疑いがある限り、オメガである自分は近付く事はできなかった。
だが、そんな理月の運命を大きく変える事件が起きた。
理月は抑制剤が効く体質なのか、元々の体質なのかは不明だが、ヒートを起こしたことがなかった。だが、ただ一人、あるアルファの男にだけ理月のオメガのフェロモンが反応し、激しくヒートを起こした。後にも先にもあんな激しいヒートを起こしたのはそれ一度きりだった。
その相手の男の名は宝来将星といった。
理月は青い瞳とブロンドの髪色を持つオメガだ。両親は日本人であったが、父方の叔父が理月とそっくりだった。父方の祖母がスウェーデン人との混血で、五人兄弟の末の弟である叔父だけが突然その血を受け継いだ。そして理月もまた、その血を色濃く受け継ぎ、叔父と同じ青い瞳にブロンドの髪色を持って産まれた。そしてその叔父はオメガだった。叔父の血を受け継いだ理月もやはり、オメガだった。予想はしていたとはいえ自分がオメガだと確信した時、しばらく絶望感に打ちひしがれた。
理月がオメガとして生まれたのは、叔父の血筋である事は間違いない。確かに叔父を恨んだ事もあった。だが、叔父は自分と同じ容姿の理月を可愛がってくれたし、理月もそんな優しい叔父が好きだった。今でも恨む事も嫌いになる事もできない。そのくらい叔父には懐いていた。
だが叔父はある日突然、自ら命を絶ってしまった。理由は、その当時の番の相手が別の人間と番ったのだという。オメガは一度番を作ると、相手が死ぬまで番を変える事ができない。番った相手を余程愛していたのか、絶望した叔父はあっさりと死を選んでしまったのだ。
理月がオメガであっても誰よりも強くなろうと決心したきっかけだ。叔父の事は大好きだったが、《そんな事》で自ら命を絶ってしまった叔父に失望したのも確かだった。
叔父ほどの中性的な美しさはなかったが、それでも整った顔立ちと鍛えた体から伸びる手足は長く、オメガにしては176センチと身長には恵まれていた。大抵のオメガは170センチもない華奢な体つきをしている事が多かったが、理月の外見は充分にベータ、もしくはアルファであると誤魔化せる事ができた。
理月は立場的にも身体的にも劣ると言われていオメガにもかかわらず、誰よりも強くなる努力をした。それを証明したのが行徳学園の入学だ。理月が通う行徳学園は悪の吹き溜りとして県内では有名で、腕に自信がない者は在籍するな、と言われている高校で理月はそこの頂点に君臨した男だった。
理月は性別をベータと偽っていたがまさか、行徳学園のトップがオメガであるなどと誰もが思わなかっただろう。
そして行徳学園と並んで危険視されていたチームがあった。黒いライダースの背中には三つの頭を持つ『冥界の番犬』と言われている犬を背負い、バイクで街を走り抜けていくバイクチーム『ケルベロス』
この、『行徳学園』と『ケルベロス』が県内の二大勢力と言われていた。
当時のリーダーは、宝来将星という男だった。
同時期に二大勢力の頂点に立つ男として、互いに意識はしていた。
だが、行徳学園には代々受け継がれている事があった。
『ケルベロスに絶対に手を出すな』
先輩からの言葉は不良たちにとって絶対である。故に、ケルベロスと行徳学園は決して交わる事がなかった。
それにケルベロスはあくまで、『バイクチーム』であると主張している。自ら喧嘩を売るような愚かなメンバーはいないが、売られた喧嘩は買う主義で、ひとたび喧嘩を売られれば相手を完膚無きまでに叩き潰す。徹底的な潰しに周囲の者は皆閉口するのだという。
行徳学園の先輩たちはきっと過去に身をもって、ケルベロスの恐ろしさを知った出来事があったのではないかと理月は予想していた。
将星とは間近で顔を合わす事はなかったが、街中では時折あの目立つライダース軍団を見かける。特にリーダーである宝来将星は、代々リーダーが受け継ぐと言われている、白いライダースを身に纏っていた為、その白いライダースは嫌でも目に入った。
将星がアルファだとすぐに分かった。自分とは違う厚みのある鍛え抜かれた逞しい体躯。それを際立たせるかのような褐色を帯びた肌。そんな体には至る所にタトゥーが入っているという噂だ。高身長で黒いライダースパンツが長い足の将星によく似合っていた。顎ほどまで伸ばした黒髪は青みがかかっており時折一つに束ねていた。鋭い切れ長の目はひと睨みされれば、皆が怯んだ。それは自分でなくとも、彼を見ればアルファであるのは一目瞭然だった。
理月は将星の姿を見ると、体が熱くなり武者震いを起こす。
《いつかあの男と差しで勝負がしたい》
元々喧嘩好きの理月は、喧嘩で負け無しと言われている将星を強くライバル視していた。周囲もきっと、《行徳の理月》と《ケルベロスの将星》が勝負をしてどちらが勝つのか興味があったはずだ。
自分だって、そうしたいのは山々だ。だが、相手がアルファの疑いがある限り、オメガである自分は近付く事はできなかった。
だが、そんな理月の運命を大きく変える事件が起きた。
1
あなたにおすすめの小説
【完結 一気読み推奨】片想いの相手が「そろそろ恋愛したい」と言ったので、用済みの俺はニートになることにしました。
はぴねこ
BL
高校生の頃、片想いの親友に告白した。
彼はノンケだったから玉砕して友人関係も終わるものだと思っていた。
もしかすると気持ち悪いと軽蔑される覚悟までしていたのに、彼は「今は恋愛をしている時間がないんだ」と自分の夢を語ってくれた。
彼は会社を興した祖父のことをとても尊敬していて、自分も起業したいと熱く語ってくれた。
そして、俺の手を握って「できれば親友のお前には俺の右腕になってほしい」と言われた。
同性愛者の俺のことを気持ち悪いと遠ざけることもせずに、親友のままでいてくれた彼に俺は感謝して、同じ大学に進学して、大学の頃に彼と一緒にゲームを作成する会社を起業した。
あれから二十年間、本当に二人三脚で駆け抜けてきた。
そして、昨年売り出したVRMMOが世界的に大ヒットし、ゲーム大賞を取ったことを祝うパーティーで親友が語った言葉に俺の覚悟も決まった。
「俺もそろそろ恋愛したい」
親友のその言葉に、俺は、長年の片想いを終わらせる覚悟をした。
不憫な拗らせアラフォーが”愛”へと踏み出すお話です。
冷遇されたΩは運命の竜に守られ花嫁となる
花里しろ
BL
*誤字報告ありがとうございます!
稀少なオメガとして王都に招かれたリュカは、夜会で酷い辱めを受ける。
悲しみに暮れるリュカはテラスに出ると、夜空を見上げて幼い頃に出会った初恋の相手を思いその名を呼んだ。
リュカ・アレオンは男爵家の末っ子次男だ。病弱なリュカは両親と兄・姉、そして領民達に見守られすくすくと育つ。ある時リュカは、森で不思議な青年クラウスと出会う。彼に求婚され頷くも、事情がありすぐには迎えられないと告げられるリュカ。クラウスは「国を平定したら迎えに来る」と約束し、リュカに指輪を渡すと去って行く。
時は流れ王太子の番として選ばれたリュカは、一人王都へ連れて来られた。思い人がいるからと、リュカを見向きもしない王太子。田舎者だと馬鹿にする貴族達。
辛い日々を耐えていたリュカだが、夜会で向けられた悪意に心が折れてしまう。
テラスから身を投げようとしたその時、夜空に竜が現れリュカの元に降り立つ。
「クラウス……なの?」
「ああ」
愛しい相手との再会し、リュカの運命が動き出す。
ファンタジーオメガバースです。
エブリスタにも掲載しています。
運命はいつもその手の中に
みこと
BL
子どもの頃運命だと思っていたオメガと離れ離れになったアルファの亮平。周りのアルファやオメガを見るうちに運命なんて迷信だと思うようになる。自分の前から居なくなったオメガを恨みながら過ごしてきたが、数年後にそのオメガと再会する。
本当に運命はあるのだろうか?あるならばそれを手に入れるには…。
オメガバースものです。オメガバースの説明はありません。
当たり前の幸せ
ヒイロ
BL
結婚4年目で別れを決意する。長い間愛があると思っていた結婚だったが嫌われてるとは気付かずいたから。すれ違いからのハッピーエンド。オメガバース。よくある話。
初投稿なので色々矛盾などご容赦を。
ゆっくり更新します。
すみません名前変えました。
大好きな婚約者を僕から自由にしてあげようと思った
こたま
BL
オメガの岡山智晴(ちはる)には婚約者がいる。祖父が友人同士であるアルファの香川大輝(だいき)だ。格好良くて優しい大輝には祖父同士が勝手に決めた相手より、自らで選んだ人と幸せになって欲しい。自分との婚約から解放して自由にしてあげようと思ったのだが…。ハッピーエンドオメガバースBLです。
高貴なオメガは、ただ愛を囁かれたい【本編完結】
きど
BL
愛されていないのに形だけの番になるのは、ごめんだ。
オメガの王族でもアルファと番えば王位継承を認めているエステート王国。
そこの第一王子でオメガのヴィルムには長年思い続けている相手がいる。それは幼馴染で王位継承権を得るための番候補でもあるアルファのアーシュレイ・フィリアス。
アーシュレイは、自分を王太子にするために、番になろうとしてると勘違いしているヴィルムは、アーシュレイを拒絶し続ける。しかし、発情期の度にアーシュレイに抱かれる幻想をみてしまい思いに蓋をし続けることが難しくなっていた。
そんな時に大国のアルファの王族から番になる打診が来て、アーシュレイを諦めるためにそれを受けようとしたら、とうとうアーシュレイが痺れを切らして…。
二人の想いは無事通じ合うのか。
現在、スピンオフ作品の
ヤンデレベータ×性悪アルファを連載中
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる