「禁断の惑星 ジョリス」

火爪武士

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第2章 生態調査

第2話 邂逅

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 出会いは、唐突だった。オレンジ色に輝く草原の中に、それは居たのだ。
 大きさは、モルモットとウサギの中間くらいで、保護色の様に金色に輝いている希少種ミューズ種の幼生だった。

 全宇宙が血眼になって探しているジョカルの超希少種。不鮮明な写真と文献でしか残っていないのに...。
 ジョカルは、宿主を選ぶ生き物だとも聞いたことがある。
 あくまでも、噂ではあるが。

「どうして、自分の前に...」
「これ一体で、一つの星系が交換できるのだ」

 生来、冷静な性格にアカデミーの訓練と教育をうけたマッコール2等調査官は、彼に似合わず
興奮を抑え切れないでいた。

「すぐにディヴィス上官に報告しなければ!」

 と、建前を言葉にした。だか、生真面目な彼にしては、珍しく邪な考えが頭に浮かんだ。

「ラボは、ベネディクト種で手一杯だから、少し自分の側で観察してみよう」

 何もしなければ、大丈夫だと思った彼は、捕獲ゲージを不透明にチェンジして、自分のブースに運び入れた。
 ジョカルは、自分から攻撃はしないし、DNAさえ採取されなければ、成長や変化もしないし、長期間、食べ物や水は要らないのだ。


 「お前、可愛ええな!こんな、モルモットかウサギみたいな奴が、本当に理想のオ・ン・ナになるんか?」

「なるさ、ボブ。遠い昔に俺が出会ったジョカルの様に...」

「ええっ、1等がっ?」

「そうさ、おめぇみたいに若僧の頃にな」

 かつて、ジョン・ディヴィスは、叩き上げではあるが、未来を嘱望されたスターシッパーであった。

 が、若さ故の過ちだろうか...。しかし、誰も、彼を責めることは、出来ない。
 真摯で、直情的なところが、若さの特権でもあるからだ。

「ボブ、おめえ、射精(イク)瞬間より、気持ちイイと感じた時はあるか?」

「ええ、汚ない話ですが、排泄の時や、好きな物を食べたり、お酒を飲んでいる時もかなりの快感です」

「ほぅ、まだ、綺麗事をぬかすだけに、若いな」

「ドラッグは、禁制なので、当然やったこともありませんし...」

 この科学技術を極めた時代にあっても、所詮、生き物である人間の欲求を満たすものは、機械的なモノではなく、生物的なものであった。

 人は、新たな刺激を求め続ける。際限は無く、死ぬまで、続く悲しい性なのだ。
 永遠の旅人と揶揄される所以なのだろうか...
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