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第一章 学園の秘密
第2話 家族会議
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「おっほん、本日18時00分から、一階本堂において、家族会議を開催する。以上」
「あっ、それと、熱いお茶をくれぐれも、お忘れなきよう」
家族に大きな節目や行事があるごとに、祖父 光は、頻繁に家族会議を招集するが、誰も異論を挟むことの出来ない、狗尾草家の恒例行事である。
「また、お祖父さんの...」
「しっ、聞こえたらどうするの?」
「耳が遠いから、大丈夫っ!」
「案外、鋭いところがあるから、あんたも気をつけなさい」
「はぁい、面倒臭いなあ、もぅ。今日も一日中、堅苦しいことばかりで、疲れたぁ」
「晩ご飯は、その後だからね。あんたの好きなタンドリーチキンよ」
「やったー!でも、お寺の食事って、普通、精進料理ばっかりで、なまぐさ物は食べないって聞いたけれど...」
「そんな、修行僧みたいな質素なメシで、いざという時に力が出ると思うてるんかい?」
「お母さん、それって、何弁?」
「いやあ、ワタクシとしたことが、ちょっと気合が入ってしまって。ホッホッホ」
ことあるごとに開催される会議に、家族はマンネリ&ウザいと感じているのだが、主催者であるピカルは、どこ吹く風でこの時間にこそ、己のプレゼンス(存在)を感じているのである。
「そろそろ、時間じゃが、みんな揃っておるかのう?」
「みやおが、まだ。入学式初日で、疲れたみたいなので、すみません。お父様」
「すぐに呼んで参ります」
「みやお、みやお、どこにいるの?早くしなさいっ!」
「遅れて、ごめんなさぁい」
遅れて席に着いた娘ではあるが、誰も咎めることはしなかった。口には出さないが皆んな同じ心境なのであろう?
それが、回数を重ねた者ほど如実に表れる悲しい性(さが)であった。
「それでは、家族会議を始めるとする」
「おっほん、そもそも、この地は、いにしえより妖狐、霊猫、狢、はたまた、魑魅魍魎の跋扈する化外の地であった。
今から千年程前、人々に悪さをするのを見かねた旅の偉いお坊さんが、数多の妖(あやかし)、物の怪(もののけ)を鎮めた後、寺を建てなすった。
それが、当、光増寺じゃ...」
いつも、必ずこの下りから話が始まり、前口上が5分、要点15秒のルーチンワークでもあった。
したがって、この話が始まったとたんに皆んな目を閉じ、半ばうたた寝をする者も出る始末。
「こら、明。けしからん、当主の身でありながら、ありがたい当寺の沿革を軽んじるとは...」
「まあ、まあ、お祖父さんや...」
「お父上、目は閉じおりますが、ありがたいお話を反芻(はんすう)しておるのです。何なら、諳んじでもいたしましょうか?」
「おっほん、そもそも、この地はいにしえより、妖狐、霊猫...」
「おっほんと、そもそもは、要らん!」
父、明の暗誦は、完璧であった。結婚以来、事あるごとにこの口上を耳にして、タコが出来る程であった。
「で、あるからして、本日より、みやおが、無事当学園に入学したのじゃ」
誰もが知っている事実ではあるが、これも長年続いている狗尾草家のしきたりでもあった。
「珠枝さん、茶が冷めておる。あれだけ、熱いお茶をと、言っておるだろう」
「すみません、お父様」
いつもの長口上で、流石の熱いお茶も冷めてしまった。これもルーチンなのだ。
「あっ、それと、熱いお茶をくれぐれも、お忘れなきよう」
家族に大きな節目や行事があるごとに、祖父 光は、頻繁に家族会議を招集するが、誰も異論を挟むことの出来ない、狗尾草家の恒例行事である。
「また、お祖父さんの...」
「しっ、聞こえたらどうするの?」
「耳が遠いから、大丈夫っ!」
「案外、鋭いところがあるから、あんたも気をつけなさい」
「はぁい、面倒臭いなあ、もぅ。今日も一日中、堅苦しいことばかりで、疲れたぁ」
「晩ご飯は、その後だからね。あんたの好きなタンドリーチキンよ」
「やったー!でも、お寺の食事って、普通、精進料理ばっかりで、なまぐさ物は食べないって聞いたけれど...」
「そんな、修行僧みたいな質素なメシで、いざという時に力が出ると思うてるんかい?」
「お母さん、それって、何弁?」
「いやあ、ワタクシとしたことが、ちょっと気合が入ってしまって。ホッホッホ」
ことあるごとに開催される会議に、家族はマンネリ&ウザいと感じているのだが、主催者であるピカルは、どこ吹く風でこの時間にこそ、己のプレゼンス(存在)を感じているのである。
「そろそろ、時間じゃが、みんな揃っておるかのう?」
「みやおが、まだ。入学式初日で、疲れたみたいなので、すみません。お父様」
「すぐに呼んで参ります」
「みやお、みやお、どこにいるの?早くしなさいっ!」
「遅れて、ごめんなさぁい」
遅れて席に着いた娘ではあるが、誰も咎めることはしなかった。口には出さないが皆んな同じ心境なのであろう?
それが、回数を重ねた者ほど如実に表れる悲しい性(さが)であった。
「それでは、家族会議を始めるとする」
「おっほん、そもそも、この地は、いにしえより妖狐、霊猫、狢、はたまた、魑魅魍魎の跋扈する化外の地であった。
今から千年程前、人々に悪さをするのを見かねた旅の偉いお坊さんが、数多の妖(あやかし)、物の怪(もののけ)を鎮めた後、寺を建てなすった。
それが、当、光増寺じゃ...」
いつも、必ずこの下りから話が始まり、前口上が5分、要点15秒のルーチンワークでもあった。
したがって、この話が始まったとたんに皆んな目を閉じ、半ばうたた寝をする者も出る始末。
「こら、明。けしからん、当主の身でありながら、ありがたい当寺の沿革を軽んじるとは...」
「まあ、まあ、お祖父さんや...」
「お父上、目は閉じおりますが、ありがたいお話を反芻(はんすう)しておるのです。何なら、諳んじでもいたしましょうか?」
「おっほん、そもそも、この地はいにしえより、妖狐、霊猫...」
「おっほんと、そもそもは、要らん!」
父、明の暗誦は、完璧であった。結婚以来、事あるごとにこの口上を耳にして、タコが出来る程であった。
「で、あるからして、本日より、みやおが、無事当学園に入学したのじゃ」
誰もが知っている事実ではあるが、これも長年続いている狗尾草家のしきたりでもあった。
「珠枝さん、茶が冷めておる。あれだけ、熱いお茶をと、言っておるだろう」
「すみません、お父様」
いつもの長口上で、流石の熱いお茶も冷めてしまった。これもルーチンなのだ。
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