ノノと夢みる人形

ツチフル

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4、世界でいちばんすてきな夢

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 太陽がすっかり山の向こうへしずむと、お月さまがお星さまたちを起こして、今日もまたしんしんと夜がはじまりました。
 ここは北の町はずれにある、小さなお家。
 その小さなお家の小さなお部屋では、おばあさんが眠る用意をしています。
 パジャマに着替えて、ベッドをととのえて、ふかふかのお布団の中へともぐりこみ、それからお友だちをまねき入れるのです。
 おばあさんはずっとひとり暮らしで、寝るときはいつもひとりだったのですが、最近ではいっしょに寝てくれるお友だちがいます。
 それは、宝石のような青い目をしたお人形でした。
 おばあさんがこの町へ引っこしてきたときに、あの大きなお家へおいてきてしまったお人形です。
 もう何十年もむかしのことで、二度と会えないと思っていたお人形。
 それが、何十年もたったある日、おばあさんのベッドにおかれていたのです。
 いったい、誰が届けてくれたのでしょう。
 おばあさんはお人形を抱きしめて、たくさん喜び、たくさんあやまりました。
「もう、ぜったいに置いていかないからね」 
 それから、お人形を届けてくれた誰かに「どうもありがとう」と、たくさんの感謝をしたのでした。
 


 ある日の夜のこと。
 ノノは月の光となって、その小さなお部屋へと入りました。
 音をたてないように近づいてベッドをのぞくと、おばあさんがスヤスヤと眠っています。
 幸せそうな寝顔は、まるで小さな女の子のよう。
「とてもすてきな夢を見ているのね」
 それはきっと、世界で二ばんめにすてきな夢にちがいありません。
 じゃあ、世界でいちばんすてきな夢はだれが見ているのでしょうか?
 もちろん、きまっています。
「お人形さん。お人形さん。さあ、約束どおり」
 ノノはおばあさんのとなりで眠るお人形のおでこを、ツイ、ツツイ、となでて言いました。
「世界でいちばんすてきな、あなたの夢をいただくわ」


                           おしまい。



    
 …… え?
 世界でいちばんすてきな夢はどんな味がしたのかですって?
 
 実をいうと、ノノはまだ食べていないのです。
 お人形の見せてくれた夢はそれはそれはすてきなもので、たしかに世界でいちばんすてきな夢でした。
 ただ、あんまりにもすてきな夢なので、ノノは心配になってしまったのです。
「こんなにすてきな夢を食べてしまったら、きっともう、ほかの夢を食べられなくなってしまうわ」と。
 ですから、お人形は今でもおばあさんのとなりで夢を見つづけているのです。
 そして、ノノはというと。
 ときどきお人形のところへ出かけていっては、世界でいちばんすてきな夢をうっとりとながめるのでした。

               
                           ほんとうにおしまい。
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