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第二章 探索者フェンリル
2-18 プロレスの時間
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待つ事、三分。多分出てこないだろうと思って、おやつのカップ麺を作っておいたので、ちょうど出来上がりだ。
『申し訳ありません。結構罵ってやったのですが、出て来ませんね。呼び出しベルはこれに限るのですが』
『はっはっは。そいつは面白いな。まあここの奴は元々出にくいそうだからな。お疲れさん。まあ、こっちの新しい餌でも試してみる?』
『恐縮です』
ロイに水と餌をやって労い、他の女どももカップ麺を啜っていたのだが、丁度その時に地面がもりもりと盛り上がって何か大きなものが現れようとしていた。
「あ、来たよ!」
蝉かよ。シンディは慌ててカップ麺のスープを飲み干そうとして「アチチチ」とか言っているし。
「そのスープ、塩分多めだから残しておけよ」
「やだ。美味しいんだもん」
どうも、この世界の住人は塩分を気にしなさ過ぎて困る。日本のネットを見ている若者なんか塩分気にしまくりだというのに。まあ奴らだってカップ麺は止められないようだが。
なんとか魔物が姿を現す前にスープを飲み干したシンディ。
「よーし、腹ごなしに次の御馳走を狩るぞ~」
まあ、それは正しい行動でないと言えない事もないのだが。しかし、ベルバードに呼ばれる(罵られる)と本当にレアモンスターって出てくるのだな。
俺の眷属は特別なのかもしれないが。神の子の眷属という事が、一種の魔力の名刺に書き込まれていて魔物を刺激するのかもしれない。
「呆れた。本当に来ちゃったわね。助かるんだけどさ。あれを待っていると、マジで日が暮れるからね」
そして完全に姿を現したそいつは、なんと。
「牛じゃねえか。しかも、和牛っぽいな」
「さあ、尋常に勝負だ、ワギュホーン!」
なんで、そんな名前なんだよ。怪しい世界だな。やはり地球と繋がっているよな、ここ。
だが、その大きさは和牛のそれではない。全長四メートルを超えるかというほどの巨体は、俺の体重を遥かに超えるだろう。
へたをすると俺の倍くらいあるかもしれない。そしてその凶悪な角はアフリカかどこかで生息していそうなヤバイ牛の奴だ。
なんというか二本の極太の大角が、これまたヤバイ角度で曲線を描いている。世界最強のプロレスラーとて、一瞬のうちに串刺しにされるだろう。
こんな危険物が草原に埋まっているとは。いや埋まってはいないな。今さっき出現しただけなのだ。
「なあ、シンディの奴、張り切っているけど一人で大丈夫なのか」
「大丈夫だと思うよ。あの子は前にも倒した事があったから。あの時は出るまで十日も待たされて泣けたわ。仕方が無いからチームを半分に分けて、半数が鳥を狩りにいったくらいでさ。それに邪魔すると、あの子怒るからね。この肉にだけは執念を燃やしていてさ」
食い意地で倒したってところなのだろうか。お手並み拝見といくか。格闘神官さんの戦いぶりにも興味があるねえ。
「はちょう~」
何か気の抜けたような可愛らしい掛け声で飛び蹴りを食らわしているシンディ。
そういう大ぶりな技はあまりよろしくなくてよ。俺のようなフェンリルは空気を蹴って方向転換できるから、そういう事はないが、人間の場合、そいつの立派な角というかホーンで串刺しと言う事も。
なかった。シンディの蹴りは見事にヒットして、奴は二転三転と無様に転がっていってしまった。
「へえ、あの子やるなあ」
「特にお肉がかかるとねえ。あれは一種の魔法武技だから、あれで照準されたら魔物は避けられないの」
プロレス魔法なのかよ。相手の技は必ず受け切らなくてはなりませんってか。だが、奴は立ち上がった。脳震盪を起こしたのか、その足元はふらついて頼りない。
そこにシンディのぐーぱんが飛んできた。これも魔法のパンチだろう。拳がそれとわかる魔法の光のような物を纏っており、インパクトの瞬間に光った。
派手なエフェクトだけでなく、その威力も絶大だった。奴は立っている事ができずに倒れ伏した。
片手を高々と上げて誇らしげなシンディ。だが、正面から見たら涎を垂らし、見られたものじゃないのかもしれないが。
「やったー、仕留めたよー。久しぶりだなあ、これ。ありがとう、ロイ」
ロイもはしゃぐシンディの周りを飛び回って、その偉業を称えていたが、ロイはくるりっと体の向きを変えてホバーリングして、そのあたりを見ていた。
『どうした、ロイ』
『何か来ます。強力な複数の波動』
『なんだと』
だが浮かれたシンディたちは気づいていないようだ。
「あれ、どうしたのさ、スサノオ」
「お前達、何か出現するぞ、しかも複数だという」
「え、もしかしてワギュホーンのお替りなのかしら~」
また締まりのない嬉しそうな顔で、きょろきょろするシンディ。だがミル達は緊張している。
「今まで、こいつが立て続けに出てきたなんてことはない。イレギュラーっぽいわね、みんな用心して」
「あいよ」
「任せな」
「どんとこい」
そして皆で一斉に俺の方をじーっと横目で見ている。
「え、嫌だな。みんな、なんで俺の方をじっとみるのさ!」
ちょっと日頃の行いが悪すぎたかしらね。まだ大人締めにしていたつもりなんだけど。
『申し訳ありません。結構罵ってやったのですが、出て来ませんね。呼び出しベルはこれに限るのですが』
『はっはっは。そいつは面白いな。まあここの奴は元々出にくいそうだからな。お疲れさん。まあ、こっちの新しい餌でも試してみる?』
『恐縮です』
ロイに水と餌をやって労い、他の女どももカップ麺を啜っていたのだが、丁度その時に地面がもりもりと盛り上がって何か大きなものが現れようとしていた。
「あ、来たよ!」
蝉かよ。シンディは慌ててカップ麺のスープを飲み干そうとして「アチチチ」とか言っているし。
「そのスープ、塩分多めだから残しておけよ」
「やだ。美味しいんだもん」
どうも、この世界の住人は塩分を気にしなさ過ぎて困る。日本のネットを見ている若者なんか塩分気にしまくりだというのに。まあ奴らだってカップ麺は止められないようだが。
なんとか魔物が姿を現す前にスープを飲み干したシンディ。
「よーし、腹ごなしに次の御馳走を狩るぞ~」
まあ、それは正しい行動でないと言えない事もないのだが。しかし、ベルバードに呼ばれる(罵られる)と本当にレアモンスターって出てくるのだな。
俺の眷属は特別なのかもしれないが。神の子の眷属という事が、一種の魔力の名刺に書き込まれていて魔物を刺激するのかもしれない。
「呆れた。本当に来ちゃったわね。助かるんだけどさ。あれを待っていると、マジで日が暮れるからね」
そして完全に姿を現したそいつは、なんと。
「牛じゃねえか。しかも、和牛っぽいな」
「さあ、尋常に勝負だ、ワギュホーン!」
なんで、そんな名前なんだよ。怪しい世界だな。やはり地球と繋がっているよな、ここ。
だが、その大きさは和牛のそれではない。全長四メートルを超えるかというほどの巨体は、俺の体重を遥かに超えるだろう。
へたをすると俺の倍くらいあるかもしれない。そしてその凶悪な角はアフリカかどこかで生息していそうなヤバイ牛の奴だ。
なんというか二本の極太の大角が、これまたヤバイ角度で曲線を描いている。世界最強のプロレスラーとて、一瞬のうちに串刺しにされるだろう。
こんな危険物が草原に埋まっているとは。いや埋まってはいないな。今さっき出現しただけなのだ。
「なあ、シンディの奴、張り切っているけど一人で大丈夫なのか」
「大丈夫だと思うよ。あの子は前にも倒した事があったから。あの時は出るまで十日も待たされて泣けたわ。仕方が無いからチームを半分に分けて、半数が鳥を狩りにいったくらいでさ。それに邪魔すると、あの子怒るからね。この肉にだけは執念を燃やしていてさ」
食い意地で倒したってところなのだろうか。お手並み拝見といくか。格闘神官さんの戦いぶりにも興味があるねえ。
「はちょう~」
何か気の抜けたような可愛らしい掛け声で飛び蹴りを食らわしているシンディ。
そういう大ぶりな技はあまりよろしくなくてよ。俺のようなフェンリルは空気を蹴って方向転換できるから、そういう事はないが、人間の場合、そいつの立派な角というかホーンで串刺しと言う事も。
なかった。シンディの蹴りは見事にヒットして、奴は二転三転と無様に転がっていってしまった。
「へえ、あの子やるなあ」
「特にお肉がかかるとねえ。あれは一種の魔法武技だから、あれで照準されたら魔物は避けられないの」
プロレス魔法なのかよ。相手の技は必ず受け切らなくてはなりませんってか。だが、奴は立ち上がった。脳震盪を起こしたのか、その足元はふらついて頼りない。
そこにシンディのぐーぱんが飛んできた。これも魔法のパンチだろう。拳がそれとわかる魔法の光のような物を纏っており、インパクトの瞬間に光った。
派手なエフェクトだけでなく、その威力も絶大だった。奴は立っている事ができずに倒れ伏した。
片手を高々と上げて誇らしげなシンディ。だが、正面から見たら涎を垂らし、見られたものじゃないのかもしれないが。
「やったー、仕留めたよー。久しぶりだなあ、これ。ありがとう、ロイ」
ロイもはしゃぐシンディの周りを飛び回って、その偉業を称えていたが、ロイはくるりっと体の向きを変えてホバーリングして、そのあたりを見ていた。
『どうした、ロイ』
『何か来ます。強力な複数の波動』
『なんだと』
だが浮かれたシンディたちは気づいていないようだ。
「あれ、どうしたのさ、スサノオ」
「お前達、何か出現するぞ、しかも複数だという」
「え、もしかしてワギュホーンのお替りなのかしら~」
また締まりのない嬉しそうな顔で、きょろきょろするシンディ。だがミル達は緊張している。
「今まで、こいつが立て続けに出てきたなんてことはない。イレギュラーっぽいわね、みんな用心して」
「あいよ」
「任せな」
「どんとこい」
そして皆で一斉に俺の方をじーっと横目で見ている。
「え、嫌だな。みんな、なんで俺の方をじっとみるのさ!」
ちょっと日頃の行いが悪すぎたかしらね。まだ大人締めにしていたつもりなんだけど。
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