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第二章 探索者フェンリル
2-17 レアな奴
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「肉、肉ー」
朝から御機嫌なシンディ。今日こそ自らの手で肉を狩るつもりらしい。
稼ぎは関係なく、自分が食べる分を仕留めるのだ。それ、もう冒険者ではなくて狩人と言わないか。だが、彼女にはそのような事は関係ないらしい。
替えの服は宿屋に置いてあるので、パリっとしている。着替えは仕事をしている間に洗濯してくれるものらしい。
「ほー、そんなに美味いのかい。今から狩る奴は」
「そりゃあもう。ジューシーで脂が乗っていてさあ。エヘヘヘヘ」
なんだか、とっても締まりがない顔になってしまっている、この少女。俺のあのフェンリルマンと、どちらが人にお見せできないものだろうか。俺の個人的見解によれば、間違いなくこの浮かれ神官のにまにました笑顔なのだが。
「まあ、あれは別格で美味いよな。私も一押しだ」
おっと、どちらかといえばお肉否定派(除く唐揚げ)のベルミさんまで推しなのか。そいつは聞き捨てならないな。
「そうねえ。あれは確かに美味しいのは認めざるを得ないわね。でも」
「でも?」
アマンダは少し悩ましそうに、綺麗な黒髪をたくし上げながらこう言った。
「労力を考えると、ちょっと割に合わないかな。しかも、あのエレラビットや、バードザウルスが唐揚げにすると、あそこまで美味いとなればね」
「ほう、そこまでか」
「確かに捕獲はしにくい奴よね。というか、出現自体が稀だから坊主になりにくいんで、みんなあまり狙わないから余計に希少よね。取れたら儲けものくらいでいたらいいんじゃないかしら。今は潤っているからいいけど、懐が寂しかったら狙う気になれないわね」
ミルもリーダーとしては本来狙いたくないものだったらしい。昨日の戦果が大きかったため、捕獲に踏み切るらしい。うーん、しかしそのタイプはもしかして。
だが約一名はしゃぎまくって、妖しい踊りを舞いながら浮かれている奴がいたので、ここで口にするのは憚られた。まあ俺もそいつの味に興味があるしね。
本日のステージは草原地帯だった。この五階層はいろいろな地形が組み合わさってできている。各ゾーンはそう広くなくていいのだ。
昨日は森林、今日は草原。あと岩場と荒野の組み合わせ、それと低い山岳地帯があるらしい。それぞれの地帯で美味い物が獲れるらしい。
別名グルメ・ステージと呼ばれているそうだ。そこそこ手強い魔物が出るので、初心者には向かないらしいが、上級の冒険者を目指す夢を諦めたような中堅冒険者には人気だそうだ。
そして、そういう人達が比較的長生きするタイプの冒険者だったりするのだ。ミル達は、ずっと上で戦える技量を持ちながら、ここに留まっている。そのせいで見返りは少なくないのだが。
そういう人間は下の技量の人間の仕事を奪っているとして、軽蔑されたり揶揄されたりする場合もある。そして、今。
「よお、ミル。昨日は大層な稼ぎだったそうじゃないか。ちっ、いいご身分だな。もっと上でやれる力があるのによお、俺達の縄張りを荒らしやがって」
俺はミルに訊いてみた。俺の右前足に踏まれている物体について。
「こいつら、知り合い?」
「ああ、ここいらでしか戦えないクラスのチンピラ冒険者だ。御覧の通り行状がよくないので、鼻つまみ者なのさ」
それを聞いてさらに楽しく踏み踏みしておいた。
「くそ、なんだ、この狼は。放せ、離しやがれっ」
とりあえず、そいつの上に座ってしまい、次の話題に移った。
「それで、これからどうするんだい」
「うおおー、重い。死ぬ、どいてくれー」
おほほほ、わたくし、体重にだけは自信がありますのよ。軽く小型乗用車一台分だね。
「うるさい」
ミルに蹴られて、そいつは気絶したので俺はどいて、そいつらの仲間の方へ足で引っ掛けて放った。
連中は慌ててそいつを担いで逃げて行った。特に俺が一緒なので恐れをなしたらしい。いなくても、ミル達にはかなわないと思うのだが。
タンク役のでかい奴がいるな。あれが冒険者のチームでは普通なんだろう。何故、このチームはそうしないのかね。
「ここからは、ただ待つのさ」
「罵ったら大群で出てきてくれるとか?」
「無駄だ、そんな事はとっくに皆が試しているよ」
考えている事は皆同じですか。ただ待つだけなのは面白くないので、ロイに訊いてみた。
『なあ、何かいい方法はないのかな』
『では軽くお呼び出ししてみましょうか』
『出来るのか、そんな事が』
『応じるかはわかりませんが、一種の呼び出しベルのようなものです。故に我らはベルバードと呼ばれます』
『なんと! 知られざる眷属の力。そんないい能力を秘めていたなんて。偉いぞ、ロイ』
『恐縮です。では一曲行かせていただきます』
そして、ロイは俺の頭の上に可愛く止まり、軽やかに美しい歌を歌い出した。ミル達は不思議な顔をしてみている。
だが、俺は若干プルプルしてしまった。ロイの邪魔になるといけないと思って、なるべく我慢していたのだが辛抱できない。だって、ロイの奴ってば。
『よお、この草原に救うビッチの息子め。いきってねえで、とっとと出てこい。ここにおわすお方をどなたと心得るか。ちょっとその汚ねえ面貸しやがれ。
なあに、ほんの一分もあれば上等よ。おらおらおら、どうした。はあ? レアモンスター? それが一体なんぼのもんだ。出てこんかい、べらんめえ』
可愛い姿と声でなんという毒舌! さすが、この真っ黒狼の眷属だけあるわ。あるいは俺の影響を受けちゃっているのかもしれないな!
朝から御機嫌なシンディ。今日こそ自らの手で肉を狩るつもりらしい。
稼ぎは関係なく、自分が食べる分を仕留めるのだ。それ、もう冒険者ではなくて狩人と言わないか。だが、彼女にはそのような事は関係ないらしい。
替えの服は宿屋に置いてあるので、パリっとしている。着替えは仕事をしている間に洗濯してくれるものらしい。
「ほー、そんなに美味いのかい。今から狩る奴は」
「そりゃあもう。ジューシーで脂が乗っていてさあ。エヘヘヘヘ」
なんだか、とっても締まりがない顔になってしまっている、この少女。俺のあのフェンリルマンと、どちらが人にお見せできないものだろうか。俺の個人的見解によれば、間違いなくこの浮かれ神官のにまにました笑顔なのだが。
「まあ、あれは別格で美味いよな。私も一押しだ」
おっと、どちらかといえばお肉否定派(除く唐揚げ)のベルミさんまで推しなのか。そいつは聞き捨てならないな。
「そうねえ。あれは確かに美味しいのは認めざるを得ないわね。でも」
「でも?」
アマンダは少し悩ましそうに、綺麗な黒髪をたくし上げながらこう言った。
「労力を考えると、ちょっと割に合わないかな。しかも、あのエレラビットや、バードザウルスが唐揚げにすると、あそこまで美味いとなればね」
「ほう、そこまでか」
「確かに捕獲はしにくい奴よね。というか、出現自体が稀だから坊主になりにくいんで、みんなあまり狙わないから余計に希少よね。取れたら儲けものくらいでいたらいいんじゃないかしら。今は潤っているからいいけど、懐が寂しかったら狙う気になれないわね」
ミルもリーダーとしては本来狙いたくないものだったらしい。昨日の戦果が大きかったため、捕獲に踏み切るらしい。うーん、しかしそのタイプはもしかして。
だが約一名はしゃぎまくって、妖しい踊りを舞いながら浮かれている奴がいたので、ここで口にするのは憚られた。まあ俺もそいつの味に興味があるしね。
本日のステージは草原地帯だった。この五階層はいろいろな地形が組み合わさってできている。各ゾーンはそう広くなくていいのだ。
昨日は森林、今日は草原。あと岩場と荒野の組み合わせ、それと低い山岳地帯があるらしい。それぞれの地帯で美味い物が獲れるらしい。
別名グルメ・ステージと呼ばれているそうだ。そこそこ手強い魔物が出るので、初心者には向かないらしいが、上級の冒険者を目指す夢を諦めたような中堅冒険者には人気だそうだ。
そして、そういう人達が比較的長生きするタイプの冒険者だったりするのだ。ミル達は、ずっと上で戦える技量を持ちながら、ここに留まっている。そのせいで見返りは少なくないのだが。
そういう人間は下の技量の人間の仕事を奪っているとして、軽蔑されたり揶揄されたりする場合もある。そして、今。
「よお、ミル。昨日は大層な稼ぎだったそうじゃないか。ちっ、いいご身分だな。もっと上でやれる力があるのによお、俺達の縄張りを荒らしやがって」
俺はミルに訊いてみた。俺の右前足に踏まれている物体について。
「こいつら、知り合い?」
「ああ、ここいらでしか戦えないクラスのチンピラ冒険者だ。御覧の通り行状がよくないので、鼻つまみ者なのさ」
それを聞いてさらに楽しく踏み踏みしておいた。
「くそ、なんだ、この狼は。放せ、離しやがれっ」
とりあえず、そいつの上に座ってしまい、次の話題に移った。
「それで、これからどうするんだい」
「うおおー、重い。死ぬ、どいてくれー」
おほほほ、わたくし、体重にだけは自信がありますのよ。軽く小型乗用車一台分だね。
「うるさい」
ミルに蹴られて、そいつは気絶したので俺はどいて、そいつらの仲間の方へ足で引っ掛けて放った。
連中は慌ててそいつを担いで逃げて行った。特に俺が一緒なので恐れをなしたらしい。いなくても、ミル達にはかなわないと思うのだが。
タンク役のでかい奴がいるな。あれが冒険者のチームでは普通なんだろう。何故、このチームはそうしないのかね。
「ここからは、ただ待つのさ」
「罵ったら大群で出てきてくれるとか?」
「無駄だ、そんな事はとっくに皆が試しているよ」
考えている事は皆同じですか。ただ待つだけなのは面白くないので、ロイに訊いてみた。
『なあ、何かいい方法はないのかな』
『では軽くお呼び出ししてみましょうか』
『出来るのか、そんな事が』
『応じるかはわかりませんが、一種の呼び出しベルのようなものです。故に我らはベルバードと呼ばれます』
『なんと! 知られざる眷属の力。そんないい能力を秘めていたなんて。偉いぞ、ロイ』
『恐縮です。では一曲行かせていただきます』
そして、ロイは俺の頭の上に可愛く止まり、軽やかに美しい歌を歌い出した。ミル達は不思議な顔をしてみている。
だが、俺は若干プルプルしてしまった。ロイの邪魔になるといけないと思って、なるべく我慢していたのだが辛抱できない。だって、ロイの奴ってば。
『よお、この草原に救うビッチの息子め。いきってねえで、とっとと出てこい。ここにおわすお方をどなたと心得るか。ちょっとその汚ねえ面貸しやがれ。
なあに、ほんの一分もあれば上等よ。おらおらおら、どうした。はあ? レアモンスター? それが一体なんぼのもんだ。出てこんかい、べらんめえ』
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