外れスキル【レバレッジたったの1.0】を進化させ、俺はエルフ聖女と無双する ―冒険者パーティ追放勇者、バージョンアップの成り上がり―

緋色優希

文字の大きさ
30 / 169
第一章 外れスキル【レバレッジたったの1.0】

1-30 決着

しおりを挟む
 多くの毒を持つ魔物と戦った経験の豊富な上級冒険者は、様々なタイプの毒に対しても強い耐性を築き上げている。

 ましてやこの先輩みたいに殺しても死にそうにないような、そんな特別な冒険者が少々の毒なんかで倒れるはずがない。

 つまり、それは途轍もない威力を持った、ダンジョンの敵と見做された敵を倒すための超激烈な猛毒であり、そいつを俺みたいな新人の初級冒険者なんかが食らったらイチコロの、それはもう素晴らしい効果をもたらすだろう『偉力』があるという事だ。

 俺は震えながらも思わず先輩に駆け寄ったが、彼は蒼白な表情でニヤリっと笑って、震える手の最後の力を振り絞って槍を俺に手渡した。

 それは俺を襲う、奈落にも達するほどの絶望だった。

 踏破者たる上級冒険者すら倒した怪物とやりあわねばならない試練、その向こうにしか俺が向かえる生への扉がないという事なのだから。

「先輩。
 お、俺にあいつをやれっていうの~」

「死にたくなかったら、お前の自慢のスキルでなんとかしてみせろ。
 俺は最期にあれだけの敵とやりあえて満足だった。
 お前を食えなくて残念だったがな」

 うーん、こんな事を言っている人が、くたばってくれるのはありがたいのだが、それよりもっと危ない奴がまだ残っている。

 いっそ俺みたいな雑魚は見逃してくれないかなとか思ったのだが、どうやらそいつは無理なようだった。

「はよかかってこんかい、小僧」
 そう言いたそうな感じに、彼は大人しく伏せの姿勢で『お代わり』を待っていた。

 やっぱり、こいつもバトルジャンキーなのだ!

 俺は仰向けに起き上がらせた先輩に、無理やりにポーションと毒消しのポイズン・ポーションを半開きになった瀬死の口に流し込むようにして飲ませると、やけくそで叫んだ。

「ちくしょう。
 やりゃあいいんだろ、やりゃあ。
【マグナム・ルーレット】【神々の祝福】」

 そして、俺はまだ神に見放されていなかった。

 この土壇場の大ピンチの中、マグナム・ルーレットは奇跡的に六を叩き出す。

 そして神々の祝福の効果なのか、奴の体が虹色に輝いていた。

 そして、あの糞和朗くそわろう怪物バトルジャンキーめ。

 俺に向かって、遠慮のえの字もなくあの地獄の劫火のようなブレスを吐こうとして……なんと吐けなかった。

 信じ難い事態に驚愕して、一瞬動きを止めた奴。

 その隙を見逃さずに、俺は三十倍にブーストされた脚力を頼みに助走抜きでその場で飛び上がり、ダンジョンの天井を蹴って奴の死角から、まだ衝撃から立ち直れずに硬直しているそいつの弱点、首に槍をぶち込んだ。

 三十倍にブーストされた俺の素早さは、かろうじてそれを成し遂げた。

 俺は、あの先輩が最後に放った彼のスキルを【一瞬だけスキルのコピー】でパクっておいたのだ。

 だがタイムラグがあるので、こいつを丸々十分は使用できない。

 早期に決着をつけないと俺は確実に死ぬ。

 俺は一気に決めるべく、そいつを5×6で三十倍のパワーにより、一切の遠慮なく奴の弱点と思われる首に全力で叩き込んだのだ。

 俺の力も三十倍、先輩のあのなんだかよくわからないが超強力なスキルも三十倍なのだ。

 派生スキル神々の祝福は奴の能力を封じ、おまけに体も弱らせてくれていたようだ。

 それは強烈無比のブーストを受けた、あの先輩のスキルにより、鮮烈な光と共にまるでバターを切るかのように柔らかくその猪首を切断して、奴はそこから光る白い球を吐き出した。

 それは噂に聞く魔核というものだろう。
 そいつのような強大な魔物のみが持つ特別な物だ。

 それは三十センチくらいありそうな、野郎の身体の割には相当でかい物だった。

 そして首を落とされたので、そいつはどうやら絶命したようだったが、まだだ。

 あの破天荒なほどの再生力を知る俺は、スキルの効果時間が切れてしまう前に、その魔核を遠くへ蹴り飛ばしてそいつの周りから体が再生しないように計らってから、更にスキルを叩き込んでバラバラにしていった。

 奴を完全に百個以上に分解しても再生が始まらないのを確認し、俺は借り物のウルトラスキルが時間切れで消滅していくのを感じて、ようやく槍を支えに荒い息のまま膝を着いたのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

勤続5年。1日15時間勤務。業務内容:戦闘ログ解析の俺。気づけばダンジョン配信界のスターになってました

厳座励主(ごんざれす)
ファンタジー
ダンジョン出現から六年。攻略をライブ配信し投げ銭を稼ぐストリーマーは、いまや新時代のヒーローだ。その舞台裏、ひたすらモンスターの戦闘映像を解析する男が一人。百万件を超える戦闘ログを叩き込んだ頭脳は、彼が偶然カメラを握った瞬間に覚醒する。 敵の挙動を完全に読み切る彼の視点は、まさに戦場の未来を映す神の映像。 配信は熱狂の渦に包まれ、世界のトップストリーマーから専属オファーが殺到する。 常人離れした読みを手にした無名の裏方は、再びダンジョンへ舞い戻る。 誰も死なせないために。 そして、封じた過去の記憶と向き合うために。

貧乏冒険者で底辺配信者の生きる希望もないおっさんバズる~庭のFランク(実際はSSSランク)ダンジョンで活動すること15年、最強になりました~

喰寝丸太
ファンタジー
おっさんは経済的に、そして冒険者としても底辺だった。 庭にダンジョンができたが最初のザコがスライムということでFランクダンジョン認定された。 そして18年。 おっさんの実力が白日の下に。 FランクダンジョンはSSSランクだった。 最初のザコ敵はアイアンスライム。 特徴は大量の経験値を持っていて硬い、そして逃げる。 追い詰められると不壊と言われるダンジョンの壁すら溶かす酸を出す。 そんなダンジョンでの15年の月日はおっさんを最強にさせた。 世間から隠されていた最強の化け物がいま世に出る。

自由でいたい無気力男のダンジョン生活

無職無能の自由人
ファンタジー
無気力なおっさんが適当に過ごして楽をする話です。 すごく暇な時にどうぞ。

掘鑿王(くっさくおう)~ボクしか知らない隠しダンジョンでSSRアイテムばかり掘り出し大金持ち~

テツみン
ファンタジー
『掘削士』エリオットは、ダンジョンの鉱脈から鉱石を掘り出すのが仕事。 しかし、非戦闘職の彼は冒険者仲間から不遇な扱いを受けていた。 ある日、ダンジョンに入ると天災級モンスター、イフリートに遭遇。エリオットは仲間が逃げ出すための囮(おとり)にされてしまう。 「生きて帰るんだ――妹が待つ家へ!」 彼は岩の割れ目につるはしを打ち込み、崩落を誘発させ―― 目が覚めると未知の洞窟にいた。 貴重な鉱脈ばかりに興奮するエリオットだったが、特に不思議な形をしたクリスタルが気になり、それを掘り出す。 その中から現れたモノは…… 「えっ? 女の子???」 これは、不遇な扱いを受けていた少年が大陸一の大富豪へと成り上がっていく――そんな物語である。

現実世界にダンジョンが出現したのでフライングして最強に!

おとうふ
ファンタジー
2026年、突如として世界中にダンジョンが出現した。 ダンジョン内は無尽蔵にモンスターが湧き出し、それを倒すことでレベルが上がり、ステータスが上昇するという不思議空間だった。 過去の些細な事件のトラウマを克服できないまま、不登校の引きこもりになっていた中学2年生の橘冬夜は、好奇心から自宅近くに出現したダンジョンに真っ先に足を踏み入れた。 ダンジョンとは何なのか。なぜ出現したのか。その先に何があるのか。 世界が大混乱に陥る中、何もわからないままに、冬夜はこっそりとダンジョン探索にのめり込んでいく。 やがて来る厄災の日、そんな冬夜の好奇心が多くの人の命を救うことになるのだが、それはまだ誰も知らぬことだった。 至らぬところも多いと思いますが、よろしくお願いします!

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

帰って来た勇者、現代の世界を引っ掻きまわす

黄昏人
ファンタジー
ハヤトは15歳、中学3年生の時に異世界に召喚され、7年の苦労の後、22歳にて魔族と魔王を滅ぼして日本に帰還した。帰還の際には、莫大な財宝を持たされ、さらに身につけた魔法を始めとする能力も保持できたが、マナの濃度の低い地球における能力は限定的なものであった。しかし、それでも圧倒的な体力と戦闘能力、限定的とは言え魔法能力は現代日本を、いや世界を大きく動かすのであった。 4年前に書いたものをリライトして載せてみます。

異世界から日本に帰ってきたら魔法学院に入学 パーティーメンバーが順調に強くなっていくのは嬉しいんだが、妹の暴走だけがどうにも止まらない!

枕崎 削節
ファンタジー
〔小説家になろうローファンタジーランキング日間ベストテン入り作品〕 タイトルを変更しました。旧タイトル【異世界から帰ったらなぜか魔法学院に入学。この際遠慮なく能力を発揮したろ】 3年間の異世界生活を経て日本に戻ってきた楢崎聡史と桜の兄妹。二人は生活の一部分に組み込まれてしまった冒険が忘れられなくてここ数年日本にも発生したダンジョンアタックを目論むが、年齢制限に壁に撥ね返されて入場を断られてしまう。ガックリと項垂れる二人に救いの手を差し伸べたのは魔法学院の学院長と名乗る人物。喜び勇んで入学したはいいものの、この学院長はとにかく無茶振りが過ぎる。異世界でも経験したことがないとんでもないミッションに次々と駆り出される兄妹。さらに二人を取り巻く周囲にも奇妙な縁で繋がった生徒がどんどん現れては学院での日常と冒険という非日常が繰り返されていく。大勢の学院生との交流の中ではぐくまれていく人間模様とバトルアクションをどうぞお楽しみください!

処理中です...