61 / 169
第一章 外れスキル【レバレッジたったの1.0】
1-61 退屈は先輩の敵
しおりを挟む
そして翌日、キャラバンは再び次の街を目指して無事に出発した。
ここまでくる間にキャラバンは九十台程度に減っていた。
新たに加わった者も少しはいたので多少の入れ替わりを含めて。
まあ万が一の場合には、この先輩を扱き使えば多少の戦力の目減りなど気にはならないのだが。
これをその気にさせるだけの苦労をするくらいなら、その分自分で頑張った方が遥かにマシだった。
「どうでもいいけど、何故王国は盗賊を退治しないんだ?」
「それはやってもキリがないからだよ」
先輩が定位置の馬車の上からぶら下がって、窓を向いていた俺の目の前に逆さの顔を見せつけた。
「うわっ、いきなり変なところから出るなよ、先輩」
「とにかく、いたちごっこなのだから兵隊がいくらいたって足りないさ。
街から警備兵が呼ばれていくと、大概は逃げ出した後だしね。
仕方がないから盗賊退治には褒賞を出して、商会は冒険者を雇うと。お蔭で冒険者にも仕事は回ってくると言う訳さ」
「へえ、そういうもんか。
でも盗賊が出っ放しっていうのもアレなんじゃないの。
たとえば、そういう事は王国の政治が良くないせいだって言われかねないじゃないか」
だが先輩は、相変わらず逆さまのスタイルで唇に指を当てた。
「しーっ、そういう事はやたらと言わないの。
君の言う事は正論だけど、そういう事を公に言いまくる人に待っているのは獄中死か何かさ。
もれなく拷問付きでね。
もっと賢くおなり、少年よ。
俺は君にそんな無様な死に方をさせたりはしないよ。
俺が強くなった君を殺すのだから」
くそー、こんな奴に説教されてしまった。
その言っている内容は正しいのだが、要は自分で俺を殺したいだけなんじゃないか。
「先輩、あんた今退屈しているんだろ」
「じゃあ、君が俺と遊んでくれるのかい?
まだあまりにも勿体ないけど、今その気だっていうのなら考えないでもないが」
全然その気の無さそうな感じで、そのような事をのたもうた。
まるで欲情の気配もなく、何か子供のような無邪気さすら感じる。
こういう時の先輩って人畜無害なんだよな。
「うるせえ。
もうせっかく貴族なんかになったんだから、領地か王宮にでも大人しく引っ込んでいりゃあいいのに」
「だって、そんな事をすると、そのどちらかで皆が震えあがってしまうじゃないか。
俺はそういうところにはいない方がいいのさ」
「ふうん、ちゃんと自覚はあるんだね」
彼はにーっと、不気味な笑いを逆さまに浮かべて、また狂気を一瞬濃くさせた。
俺達が盗賊団から保護した五歳くらいの子供達二人は、じっとそれを見ていたが、突然こんな事を言った。
「おじちゃん、逆さまでおもしろーい。
ねえ、もっと何か面白い事やってー」
「あ、こら余計な事を」
だが何故か先輩は逆さまなままで思案している。
あ、まさか本当に相当退屈しているのか。
戯れに、子供相手に遊んでやってもいいくらいに。
「よし、じゃあこういうのはどうだい?」
先輩は一瞬どこかへヒュンと音を立てたかのように消えたかと思うと、やがて少時の間を置いて、地響きを立てて何かが凄いスピードで左手方面から近づいてくる気配がした。
そして、そこから馬車に飛びついた先輩が抜け抜けと言ったもんだ。
「ほら、新しい乗物さ」
あのなあ。
だが、子供達は喜んでいた。
「わあ、大きな熊さんだ。
可愛い~」
「僕も乗りたいー」
「じゃあ、おいで」
そう言って先輩は馬車に飛び移り、その男の子の方を窓から体を伸ばして連れ去り、馬車と並走していた熊に飛び乗った。
「どうだ、少しの距離なら熊は凄く早いんだぞ。
ノロマな馬車なんかじゃ逃げきれやしないからな」
「おーい、先輩ってばー」
その熊公は必死で走っていた。
可哀想に、よっぽど先輩が怖いんだな。
俺には痛いほどわかるぞ、その気持ち。
それにしても先輩ったら、なんて無邪気な顔で笑うんだよ。
もしかして、強者を求めて狂ってしまう前って、常にこんな風な感じだったのかな。
「マロウス」
「なんだ、セラシア」
「お前もせいぜい、あいつに乗り回されないように気を付ける事だな」
マロウスは頭を振って、気の無い返事を返した。
「あいつは今リクルに夢中さ。
今更、俺なんかに見向きもしないよ。
それにあいつの退屈も、そのうちに終わるさ。
何しろ、次の宿泊地は」
「ああ、そうだったな」
あれ、二人とも何の話なんだろう。
だが俺は熊に乗った奴らが気になって仕方がない。
いつの間にか女の子の方も乗せられている、というか本人が「可愛い」とか言って乗りたがっていたのだが。
いいけど馬を脅かさないでくれよ、先輩。
まあうちの馬って、あの先輩にも動じていないのだから大丈夫なのだろうけど。
さすがは英雄姫の愛馬?
ここまでくる間にキャラバンは九十台程度に減っていた。
新たに加わった者も少しはいたので多少の入れ替わりを含めて。
まあ万が一の場合には、この先輩を扱き使えば多少の戦力の目減りなど気にはならないのだが。
これをその気にさせるだけの苦労をするくらいなら、その分自分で頑張った方が遥かにマシだった。
「どうでもいいけど、何故王国は盗賊を退治しないんだ?」
「それはやってもキリがないからだよ」
先輩が定位置の馬車の上からぶら下がって、窓を向いていた俺の目の前に逆さの顔を見せつけた。
「うわっ、いきなり変なところから出るなよ、先輩」
「とにかく、いたちごっこなのだから兵隊がいくらいたって足りないさ。
街から警備兵が呼ばれていくと、大概は逃げ出した後だしね。
仕方がないから盗賊退治には褒賞を出して、商会は冒険者を雇うと。お蔭で冒険者にも仕事は回ってくると言う訳さ」
「へえ、そういうもんか。
でも盗賊が出っ放しっていうのもアレなんじゃないの。
たとえば、そういう事は王国の政治が良くないせいだって言われかねないじゃないか」
だが先輩は、相変わらず逆さまのスタイルで唇に指を当てた。
「しーっ、そういう事はやたらと言わないの。
君の言う事は正論だけど、そういう事を公に言いまくる人に待っているのは獄中死か何かさ。
もれなく拷問付きでね。
もっと賢くおなり、少年よ。
俺は君にそんな無様な死に方をさせたりはしないよ。
俺が強くなった君を殺すのだから」
くそー、こんな奴に説教されてしまった。
その言っている内容は正しいのだが、要は自分で俺を殺したいだけなんじゃないか。
「先輩、あんた今退屈しているんだろ」
「じゃあ、君が俺と遊んでくれるのかい?
まだあまりにも勿体ないけど、今その気だっていうのなら考えないでもないが」
全然その気の無さそうな感じで、そのような事をのたもうた。
まるで欲情の気配もなく、何か子供のような無邪気さすら感じる。
こういう時の先輩って人畜無害なんだよな。
「うるせえ。
もうせっかく貴族なんかになったんだから、領地か王宮にでも大人しく引っ込んでいりゃあいいのに」
「だって、そんな事をすると、そのどちらかで皆が震えあがってしまうじゃないか。
俺はそういうところにはいない方がいいのさ」
「ふうん、ちゃんと自覚はあるんだね」
彼はにーっと、不気味な笑いを逆さまに浮かべて、また狂気を一瞬濃くさせた。
俺達が盗賊団から保護した五歳くらいの子供達二人は、じっとそれを見ていたが、突然こんな事を言った。
「おじちゃん、逆さまでおもしろーい。
ねえ、もっと何か面白い事やってー」
「あ、こら余計な事を」
だが何故か先輩は逆さまなままで思案している。
あ、まさか本当に相当退屈しているのか。
戯れに、子供相手に遊んでやってもいいくらいに。
「よし、じゃあこういうのはどうだい?」
先輩は一瞬どこかへヒュンと音を立てたかのように消えたかと思うと、やがて少時の間を置いて、地響きを立てて何かが凄いスピードで左手方面から近づいてくる気配がした。
そして、そこから馬車に飛びついた先輩が抜け抜けと言ったもんだ。
「ほら、新しい乗物さ」
あのなあ。
だが、子供達は喜んでいた。
「わあ、大きな熊さんだ。
可愛い~」
「僕も乗りたいー」
「じゃあ、おいで」
そう言って先輩は馬車に飛び移り、その男の子の方を窓から体を伸ばして連れ去り、馬車と並走していた熊に飛び乗った。
「どうだ、少しの距離なら熊は凄く早いんだぞ。
ノロマな馬車なんかじゃ逃げきれやしないからな」
「おーい、先輩ってばー」
その熊公は必死で走っていた。
可哀想に、よっぽど先輩が怖いんだな。
俺には痛いほどわかるぞ、その気持ち。
それにしても先輩ったら、なんて無邪気な顔で笑うんだよ。
もしかして、強者を求めて狂ってしまう前って、常にこんな風な感じだったのかな。
「マロウス」
「なんだ、セラシア」
「お前もせいぜい、あいつに乗り回されないように気を付ける事だな」
マロウスは頭を振って、気の無い返事を返した。
「あいつは今リクルに夢中さ。
今更、俺なんかに見向きもしないよ。
それにあいつの退屈も、そのうちに終わるさ。
何しろ、次の宿泊地は」
「ああ、そうだったな」
あれ、二人とも何の話なんだろう。
だが俺は熊に乗った奴らが気になって仕方がない。
いつの間にか女の子の方も乗せられている、というか本人が「可愛い」とか言って乗りたがっていたのだが。
いいけど馬を脅かさないでくれよ、先輩。
まあうちの馬って、あの先輩にも動じていないのだから大丈夫なのだろうけど。
さすがは英雄姫の愛馬?
0
あなたにおすすめの小説
スキルハンター~ぼっち&ひきこもり生活を配信し続けたら、【開眼】してスキルの覚え方を習得しちゃった件~
名無し
ファンタジー
主人公の時田カケルは、いつも同じダンジョンに一人でこもっていたため、《ひきこうもりハンター》と呼ばれていた。そんなカケルが動画の配信をしても当たり前のように登録者はほとんど集まらなかったが、彼は現状が楽だからと引きこもり続けていた。そんなある日、唯一見に来てくれていた視聴者がいなくなり、とうとう無の境地に達したカケル。そこで【開眼】という、スキルの覚え方がわかるというスキルを習得し、人生を大きく変えていくことになるのだった……。
ダンジョン発生から20年。いきなり玄関の前でゴブリンに遭遇してフリーズ中←今ココ
高遠まもる
ファンタジー
カクヨム、なろうにも掲載中。
タイトルまんまの状況から始まる現代ファンタジーです。
ダンジョンが有る状況に慣れてしまった現代社会にある日、異変が……。
本編完結済み。
外伝、後日譚はカクヨムに載せていく予定です。
神樹の里で暮らす創造魔法使い ~幻獣たちとののんびりライフ~
あきさけ
ファンタジー
貧乏な田舎村を追い出された少年〝シント〟は森の中をあてどなくさまよい一本の新木を発見する。
それは本当に小さな新木だったがかすかな光を帯びた不思議な木。
彼が不思議そうに新木を見つめているとそこから『私に魔法をかけてほしい』という声が聞こえた。
シントが唯一使えたのは〝創造魔法〟といういままでまともに使えた試しのないもの。
それでも森の中でこのまま死ぬよりはまだいいだろうと考え魔法をかける。
すると新木は一気に生長し、天をつくほどの巨木にまで変化しそこから新木に宿っていたという聖霊まで姿を現した。
〝この地はあなたが創造した聖地。あなたがこの地を去らない限りこの地を必要とするもの以外は誰も踏み入れませんよ〟
そんな言葉から始まるシントののんびりとした生活。
同じように行き場を失った少女や幻獣や精霊、妖精たちなど様々な面々が集まり織りなすスローライフの幕開けです。
※この小説はカクヨム様でも連載しています。アルファポリス様とカクヨム様以外の場所では公開しておりません。
スキル【幸運】無双~そのシーフ、ユニークスキルを信じて微妙ステータス幸運に一点張りする~
榊与一
ファンタジー
幼い頃の鑑定によって、覚醒とユニークスキルが約束された少年——王道光(おうどうひかる)。
彼はその日から探索者――シーカーを目指した。
そして遂に訪れた覚醒の日。
「ユニークスキル【幸運】?聞いた事のないスキルだな?どんな効果だ?」
スキル効果を確認すると、それは幸運ステータスの効果を強化する物だと判明する。
「幸運の強化って……」
幸運ステータスは、シーカーにとって最も微妙と呼ばれているステータスである。
そのため、進んで幸運にステータスポイントを割く者はいなかった。
そんな効果を強化したからと、王道光はあからさまにがっかりする。
だが彼は知らない。
ユニークスキル【幸運】の効果が想像以上である事を。
しかもスキルレベルを上げる事で、更に効果が追加されることを。
これはハズレと思われたユニークスキル【幸運】で、王道光がシーカー界の頂点へと駆け上がる物語。
ダンジョン美食倶楽部
双葉 鳴
ファンタジー
長年レストランの下働きとして働いてきた本宝治洋一(30)は突如として現れた新オーナーの物言いにより、職を失った。
身寄りのない洋一は、飲み仲間の藤本要から「一緒にダンチューバーとして組まないか?」と誘われ、配信チャンネル【ダンジョン美食倶楽部】の料理担当兼荷物持ちを任される。
配信で明るみになる、洋一の隠された技能。
素材こそ低級モンスター、調味料も安物なのにその卓越した技術は見る者を虜にし、出来上がった料理はなんとも空腹感を促した。偶然居合わせた探索者に振る舞ったりしていくうちに【ダンジョン美食倶楽部】の名前は徐々に売れていく。
一方で洋一を追放したレストランは、SSSSランク探索者の轟美玲から「味が落ちた」と一蹴され、徐々に落ちぶれていった。
※カクヨム様で先行公開中!
※2024年3月21で第一部完!
収奪の探索者(エクスプローラー)~魔物から奪ったスキルは優秀でした~
エルリア
ファンタジー
HOTランキング1位ありがとうございます!
2000年代初頭。
突如として出現したダンジョンと魔物によって人類は未曾有の危機へと陥った。
しかし、新たに獲得したスキルによって人類はその危機を乗り越え、なんならダンジョンや魔物を新たな素材、エネルギー資源として使うようになる。
人類とダンジョンが共存して数十年。
元ブラック企業勤務の主人公が一発逆転を賭け夢のタワマン生活を目指して挑んだ探索者研修。
なんとか手に入れたものの最初は外れスキルだと思われていた収奪スキルが実はものすごく優秀だと気付いたその瞬間から、彼の華々しくも生々しい日常が始まった。
これは魔物のスキルを駆使して夢と欲望を満たしつつ、そのついでに前人未到のダンジョンを攻略するある男の物語である。
異世界だろうがソロキャンだろう!? one more camp!
ちゃりネコ
ファンタジー
ソロキャン命。そして異世界で手に入れた能力は…Awazonで買い物!?
夢の大学でキャンパスライフを送るはずだった主人公、四万十 葦拿。
しかし、運悪く世界的感染症によって殆ど大学に通えず、彼女にまでフラれて鬱屈とした日々を過ごす毎日。
うまくいかないプライベートによって押し潰されそうになっていた彼を救ったのはキャンプだった。
次第にキャンプ沼へのめり込んでいった彼は、全国のキャンプ場を制覇する程のヘビーユーザーとなり、着実に経験を積み重ねていく。
そして、知らん内に異世界にすっ飛ばされたが、どっぷりハマっていたアウトドア経験を駆使して、なんだかんだ未知のフィールドを楽しむようになっていく。
遭難をソロキャンと言い張る男、四万十 葦拿の異世界キャンプ物語。
別に要らんけど異世界なんでスマホからネットショッピングする能力をゲット。
Awazonの商品は3億5371万品目以上もあるんだって!
すごいよね。
―――――――――
以前公開していた小説のセルフリメイクです。
アルファポリス様で掲載していたのは同名のリメイク前の作品となります。
基本的には同じですが、リメイクするにあたって展開をかなり変えているので御注意を。
1話2000~3000文字で毎日更新してます。
エリクサーは不老不死の薬ではありません。~完成したエリクサーのせいで追放されましたが、隣国で色々助けてたら聖人に……ただの草使いですよ~
シロ鼬
ファンタジー
エリクサー……それは生命あるものすべてを癒し、治す薬――そう、それだけだ。
主人公、リッツはスキル『草』と持ち前の知識でついにエリクサーを完成させるが、なぜか王様に偽物と判断されてしまう。
追放され行く当てもなくなったリッツは、とりあえず大好きな草を集めていると怪我をした神獣の子に出会う。
さらには倒れた少女と出会い、疫病が発生したという隣国へ向かった。
疫病? これ飲めば治りますよ?
これは自前の薬とエリクサーを使い、聖人と呼ばれてしまった男の物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる