外れスキル【レバレッジたったの1.0】を進化させ、俺はエルフ聖女と無双する ―冒険者パーティ追放勇者、バージョンアップの成り上がり―

緋色優希

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第二章 バルバディア聖教国モンサラント・ダンジョン

2-12 勝利?

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「よし、次はスキル【我が道を行く】だ」

 こいつは、困った時に道を開いてくれるスキルなのだ。

 ダンジョンの中で使用すると、物理的に通路が見つけられ、あるいは強引に通路が誕生する事さえある。

 また困難に出会った時には解決策が現れる事もあるようだ。

 もちろん、後者の効果を狙ったものなのであるが、こいつも初めて実戦で使うものなので結果はどうなるものやら。

 すると不思議な事が起こった。
 実に劇的な効果だった。

 何故そうなったのかは、まったく不明なのだが。

 そいつは自らしゃがんで手をついたのだ。
 確か、それをやったら負けのルールだよな。

「マイッタ、マサカコノヨウナテガアッタトハ。

 カンゼンニワレノマケ、オマエノカチダ。
 ヤクソクダ、ショウヒンノヤリハ、モッテイクガイイ」

「ええっ」

 まさかの相手のギブアップ。
 予想の斜め上の展開が来た。

 そして何がどうしたのか問い質す暇もなく、突然轟っという感じで凄まじい風の鳴るような音と共に、周りのあのはっきりしないような空間が俺に向かって押し寄せてきた。

 それから俺は瞑っていた目を開けると、そこには皆が立っていた。

 そして足元には背嚢と賞品の槍があった。

 俺は手に持っていた元から持っていた槍を背中に背負い、その上から背嚢を背負った。

 それから賞品の槍を拾って手にした。

「お、勝ったのか。
 やるじゃないか、リクル」

「うーん」
 あれを勝ったと言うのか?

 確かに相手がギブアップを宣言したのだから、勝負には勝ったと言えなくもないのだが。

 俺としては大変複雑で微妙な気持ちだ。

「文字通り、凄く大負けにしてくれて、初回サービスの特典で勝たせてもらっただけの気がする。

 本物のドラゴナイトが相手だったら、俺は負けて殺されていたかもしれない」

「本物じゃないだと?
 じゃあ、あれは偽物のドラゴナイトだったのか?」

「いや、厳密に言えば本物っぽかった。
 凄く強くて俺の力がまったく通用しないんだ。

 だけど魔法は撃ってこないし、それどころか攻撃もしてこずに受けるだけ。

 しかも大サービスで自ら崖っぷちに立ってくれていた。

 なんていうか、『いっちょ揉んでやろう』みたいな感じの奴で、本当に困った」

「なんだ、そいつは」

「ほお、そいつが賞品の槍ってわけか?」

「ああ、そうみたいよ。
 これって材質は何かな」

 この山吹色をした不思議な槍を手にし、俺は訊いてみた。
 俺はこれを見た事がない。

「いいなあ、それがオリハルコンよ。
 リクル、最初からいいのが出たわね。

 やったじゃない。
 これで後は有利になるわよ」

「え、そうなのか。
 うちのパーティや周辺のパーティでオリハルコンを使っている奴は一人もいなかった。
 でも凄く軽いんだけど」

「軽量化の付与はそう負担にならないから付いている武器も多い。
 ちょっと見せてみろ」

 先輩は槍を受取ると軽く振って、『空気を』叩いた。

 空気が激しく震えてパシンっという音を立てて光った。

「先輩! あんた、今一体何をしたの?」

「空気を叩いてインパクトブレーカーの有無を確かめた。

 こいつは軽量化の付与の効果で軽いが、命中時には元の重量となって相手に叩きつけられ、しかも倍の力でインパクトするように付与がなされている。

 この付与はなかなかいいものだぞ」

「うわあ、空気ってどうやって叩くんだよ……」

 俺は未だに、この先輩の足元にもよらないようだ。

 今度ドラゴナイトに会った時は一撃で倒すくらいでないと、いつまで経っても追いつけないわ。

 だが、姐御はこんな事を言ってきた。

「みんな、どうする?
 バニッシュはリクルの良い武器が出たら戻ってくるようにと言っていた。

 次にこいつがまた妙な扉に引っ張り込まれて、今度は容赦なしときたらマズイかもしれん」

「それはあるわね。
 リクル、あんたはどう思う?」

「ああ、姐御に一票入れてもいい?
 なんか毒気を抜かれちゃってさあ。
 これじゃない感でいっぱいだわ」

「あ、そう」

「しかもドラゴナイトとタイマンで、スキルまで使ったのにまったく通用していないのがまた問題だ。

 あいつって、下層の上の方に入る魔物なんだよな。
 パーティの足引っ張りになりたくないし、バニッシュにそいつを鑑定してもらいたい」

「あっはっは、じゃあ戻ろうか。
 あれが強いのは当り前だから気にしなくていいよ。

 なんていうか、上層で言えば初心者相手にスライムではなく、いきなりオークが出てくるような、あれはそんな感じの魔物だから」

「うわ、あのダンジョンも結構スパルタだなあ」

「その代わり、あれをクリヤすると一気にその先十層分くらいは進めるの。
 頑張りなさい、リクル」

「へーい」
「では戻るぞ」

 姐御が決定をして、俺達はダンジョンに入ってすぐに地上へと帰還した。

 先輩がもっと渋ると思っていたのだが、このダンジョンが結構面白そうだと思ったものか大人しくしていた。

 俺はバージョン11. 1になっていた。
 曲がりなりにも格上の魔物と戦い、相手をギブアップさせたからかもしれない。

 特殊な空間で戦った事もポイントだったのだろうか。
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