111 / 169
第二章 バルバディア聖教国モンサラント・ダンジョン
2-24 博打コンビ
しおりを挟む
そして、俺達は一旦地上へと帰還した。
明日も宝箱の探索をしたいけど、扉の探索もあるしなあ。
ダンジョンの入り口付近にある、テーブルや椅子のみが置かれた屋根付きのレストハウスで、今後の予定について打ち合わせをした。
「なあ、みんな午後からどうするの。
俺って実はまだ扉の魔物以外に、ここのダンジョンで魔物と出会っていないんだけど」
「あははは、あんた本当に変わっているわねえ。
そんな奴は他にまずいないわよ」
「まあ、少し魔物とのエンカウント率が悪いのは感じるわね」
「みんな、扉の中に引き籠っているんじゃないの」
「十分あり得るね。
それなら扉の中から冒険者が生きて帰ってこないのも頷ける」
「その可能性も有りだけど、扉の中に俺が出会ったヤバイ蜘蛛がいた場合は、普通の冒険者はまず生きて出てこられないぜ。
今まで中の魔物が留守だったとかで宝物だけ拾ってきた奴はいるって話は聞いたけど、それはかなりラッキーだったんじゃないのか」
「やっぱり扉は鬼門ねえ」
「油断していると、こっちのゾーンにも扉が湧くかもよ。
混沌の扉もどこでも湧くみたいだし。
あれは突然に中から、素早く魔物が捕まえに来るから避けるのが難しい。
あの修行僧みたいな感じでサービス精神旺盛なドラゴナイト以外の魔物がいたら、ヤバイよ。
中には危険な奴が混じっているかもしれない」
「ここのダンジョン自体が、今は大きく危険に晒されている訳だな」
「そうね、このダンジョンはもう切り上げましょうか。
もう結構探索できたし、お金も充分に稼げたわ。
みんな錬金ボックスはドワーフ国にまで売りにいかない?
あそこならたくさん需要があるから、きっと高く売れるわ。
あのなかなか行けない国を見物しながらという事で」
「いいな、それ。
リナはどうする?」
仲間からそう訊ねられ、彼女も思案するように自分の髪を弄っていたが、こう言い出した。
「あたし、もうちょっと残ろうかな。
あたしは錬金ボックスを持っていないし。
リクル、昼から二人で一緒に組まない」
「いいよー、今日は暇だから。
もう少しリナの博打に付き合うのも悪くない」
いっそ普段は使えないサイコロ三昧というのも面白いかもしれない。
そして一の目が出たら速攻で逃げるぜ。
リナって強気で六をずっと出しまくって、運を使い切ってから一を連発するタイプじゃあないのかなと思っている。
彼女と一緒に攻めるのなら、行ける間は強気で攻めるのが正解かな。
うちはシリウス達とリナのオートマタがいるから、正確には二人きりじゃない。
そうそう死んでしまうほど悪い事にはならんだろう。
「じゃあ、あたし達はもう切り上げて、旅の支度に入るわ。
ドワーフ国ハンマースパークから帰国したら新人教育ね。
あんたもいい加減に国へ帰ってきなさいよ」
「はーい」
そして彼らは行ってしまい、俺とリナだけがその場に残された。
「あ、俺は弁当を買ってきたかったな。
いつものダンジョン飯しかねえや」
「弁当なら余分があるから分けてあげるわよ」
「ありがとう。
しかし、この収納は便利だよな。
荷物は槍以外みんな仕舞っちゃったよ」
「まあね、落としたら悲惨だけど。
でもいいな、無限収納」
「じゃあさ、昼からリナのお姉さん用の無限収納アイテム探しをしないか。
無限収納アイテムじゃなくても収納アイテムが出たら、お姉さん達にあげればいい。
錬金ボックスもそれなりに嵩張るしね」
ああ、でも彼女達は自分達で持つのは無理とか言っていたような気がする。
まあ需要はたくさんありそうだから売ってもいいしな。
他のメンバーに渡しておくと有益かもしれないしな。
「そうねー、ちゃんと収納アイテムが出るといいな」
「そいつはリナの強運と、俺のサイコロの出目次第だな。
問題ないように普通のタイプの方がいいかもな」
「でも、あたし的には無限収納がいいなあ」
そして、ダンジョンの入る前にテーブルで、お弁当で昼食を済ませた。
なんだか同じ年頃の女の子と二人だけでこうしていると、デートのお弁当ランチみたいだ。
単にダンジョン行きの前の腹ごしらえなんだけど。
「いや美味かったなー、弁当。
なんだか手作りっぽい感じだったし」
「そいつは、お姉ちゃんが作ってくれた奴だよ」
「うーん、すでに売約済みなのが実に惜しまれる人材だな」
彼女、貴重な魔法使いだしね。
彼氏のマイケルさんの方もドラゴナイトの修行に呼ばれるくらいだから、なかなか見所のある強者なのだろう。
「お姉ちゃんが相手だと、リクルから見て結構年上になっちゃうわよ。
そういや、あんたって幾つ?」
「十六」
「へえ、中級だよね。
若いのにたいしたもんだ」
「君は? せいぜい一つ上くらいだよな。
君も中級だろう」
「同じ歳だよ。
結構バランスがいいパーティで頑張ると、こんなもんよ」
明日も宝箱の探索をしたいけど、扉の探索もあるしなあ。
ダンジョンの入り口付近にある、テーブルや椅子のみが置かれた屋根付きのレストハウスで、今後の予定について打ち合わせをした。
「なあ、みんな午後からどうするの。
俺って実はまだ扉の魔物以外に、ここのダンジョンで魔物と出会っていないんだけど」
「あははは、あんた本当に変わっているわねえ。
そんな奴は他にまずいないわよ」
「まあ、少し魔物とのエンカウント率が悪いのは感じるわね」
「みんな、扉の中に引き籠っているんじゃないの」
「十分あり得るね。
それなら扉の中から冒険者が生きて帰ってこないのも頷ける」
「その可能性も有りだけど、扉の中に俺が出会ったヤバイ蜘蛛がいた場合は、普通の冒険者はまず生きて出てこられないぜ。
今まで中の魔物が留守だったとかで宝物だけ拾ってきた奴はいるって話は聞いたけど、それはかなりラッキーだったんじゃないのか」
「やっぱり扉は鬼門ねえ」
「油断していると、こっちのゾーンにも扉が湧くかもよ。
混沌の扉もどこでも湧くみたいだし。
あれは突然に中から、素早く魔物が捕まえに来るから避けるのが難しい。
あの修行僧みたいな感じでサービス精神旺盛なドラゴナイト以外の魔物がいたら、ヤバイよ。
中には危険な奴が混じっているかもしれない」
「ここのダンジョン自体が、今は大きく危険に晒されている訳だな」
「そうね、このダンジョンはもう切り上げましょうか。
もう結構探索できたし、お金も充分に稼げたわ。
みんな錬金ボックスはドワーフ国にまで売りにいかない?
あそこならたくさん需要があるから、きっと高く売れるわ。
あのなかなか行けない国を見物しながらという事で」
「いいな、それ。
リナはどうする?」
仲間からそう訊ねられ、彼女も思案するように自分の髪を弄っていたが、こう言い出した。
「あたし、もうちょっと残ろうかな。
あたしは錬金ボックスを持っていないし。
リクル、昼から二人で一緒に組まない」
「いいよー、今日は暇だから。
もう少しリナの博打に付き合うのも悪くない」
いっそ普段は使えないサイコロ三昧というのも面白いかもしれない。
そして一の目が出たら速攻で逃げるぜ。
リナって強気で六をずっと出しまくって、運を使い切ってから一を連発するタイプじゃあないのかなと思っている。
彼女と一緒に攻めるのなら、行ける間は強気で攻めるのが正解かな。
うちはシリウス達とリナのオートマタがいるから、正確には二人きりじゃない。
そうそう死んでしまうほど悪い事にはならんだろう。
「じゃあ、あたし達はもう切り上げて、旅の支度に入るわ。
ドワーフ国ハンマースパークから帰国したら新人教育ね。
あんたもいい加減に国へ帰ってきなさいよ」
「はーい」
そして彼らは行ってしまい、俺とリナだけがその場に残された。
「あ、俺は弁当を買ってきたかったな。
いつものダンジョン飯しかねえや」
「弁当なら余分があるから分けてあげるわよ」
「ありがとう。
しかし、この収納は便利だよな。
荷物は槍以外みんな仕舞っちゃったよ」
「まあね、落としたら悲惨だけど。
でもいいな、無限収納」
「じゃあさ、昼からリナのお姉さん用の無限収納アイテム探しをしないか。
無限収納アイテムじゃなくても収納アイテムが出たら、お姉さん達にあげればいい。
錬金ボックスもそれなりに嵩張るしね」
ああ、でも彼女達は自分達で持つのは無理とか言っていたような気がする。
まあ需要はたくさんありそうだから売ってもいいしな。
他のメンバーに渡しておくと有益かもしれないしな。
「そうねー、ちゃんと収納アイテムが出るといいな」
「そいつはリナの強運と、俺のサイコロの出目次第だな。
問題ないように普通のタイプの方がいいかもな」
「でも、あたし的には無限収納がいいなあ」
そして、ダンジョンの入る前にテーブルで、お弁当で昼食を済ませた。
なんだか同じ年頃の女の子と二人だけでこうしていると、デートのお弁当ランチみたいだ。
単にダンジョン行きの前の腹ごしらえなんだけど。
「いや美味かったなー、弁当。
なんだか手作りっぽい感じだったし」
「そいつは、お姉ちゃんが作ってくれた奴だよ」
「うーん、すでに売約済みなのが実に惜しまれる人材だな」
彼女、貴重な魔法使いだしね。
彼氏のマイケルさんの方もドラゴナイトの修行に呼ばれるくらいだから、なかなか見所のある強者なのだろう。
「お姉ちゃんが相手だと、リクルから見て結構年上になっちゃうわよ。
そういや、あんたって幾つ?」
「十六」
「へえ、中級だよね。
若いのにたいしたもんだ」
「君は? せいぜい一つ上くらいだよな。
君も中級だろう」
「同じ歳だよ。
結構バランスがいいパーティで頑張ると、こんなもんよ」
0
あなたにおすすめの小説
掘鑿王(くっさくおう)~ボクしか知らない隠しダンジョンでSSRアイテムばかり掘り出し大金持ち~
テツみン
ファンタジー
『掘削士』エリオットは、ダンジョンの鉱脈から鉱石を掘り出すのが仕事。
しかし、非戦闘職の彼は冒険者仲間から不遇な扱いを受けていた。
ある日、ダンジョンに入ると天災級モンスター、イフリートに遭遇。エリオットは仲間が逃げ出すための囮(おとり)にされてしまう。
「生きて帰るんだ――妹が待つ家へ!」
彼は岩の割れ目につるはしを打ち込み、崩落を誘発させ――
目が覚めると未知の洞窟にいた。
貴重な鉱脈ばかりに興奮するエリオットだったが、特に不思議な形をしたクリスタルが気になり、それを掘り出す。
その中から現れたモノは……
「えっ? 女の子???」
これは、不遇な扱いを受けていた少年が大陸一の大富豪へと成り上がっていく――そんな物語である。
帰って来た勇者、現代の世界を引っ掻きまわす
黄昏人
ファンタジー
ハヤトは15歳、中学3年生の時に異世界に召喚され、7年の苦労の後、22歳にて魔族と魔王を滅ぼして日本に帰還した。帰還の際には、莫大な財宝を持たされ、さらに身につけた魔法を始めとする能力も保持できたが、マナの濃度の低い地球における能力は限定的なものであった。しかし、それでも圧倒的な体力と戦闘能力、限定的とは言え魔法能力は現代日本を、いや世界を大きく動かすのであった。
4年前に書いたものをリライトして載せてみます。
日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。
【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~
シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。
木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。
しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。
そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。
【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】
(更新終了) 採集家少女は採集家の地位を向上させたい ~公開予定のない無双動画でバズりましたが、好都合なのでこのまま配信を続けます~
にがりの少なかった豆腐
ファンタジー
突然世界中にダンジョンが現れた。
人々はその存在に恐怖を覚えながらも、その未知なる存在に夢を馳せた。
それからおよそ20年。
ダンジョンという存在は完全にとは言わないものの、早い速度で世界に馴染んでいった。
ダンジョンに関する法律が生まれ、企業が生まれ、ダンジョンを探索することを生業にする者も多く生まれた。
そんな中、ダンジョンの中で獲れる素材を集めることを生業として生活する少女の存在があった。
ダンジョンにかかわる職業の中で花形なのは探求者(シーカー)。ダンジョンの最奥を目指し、日々ダンジョンに住まうモンスターと戦いを繰り広げている存在だ。
次点は、技術者(メイカー)。ダンジョンから持ち出された素材を使い、新たな道具や生活に使える便利なものを作り出す存在。
そして一番目立たない存在である、採集者(コレクター)。
ダンジョンに存在する素材を拾い集め、時にはモンスターから採取する存在。正直、見た目が地味で功績としても目立たない存在のため、あまり日の目を見ない。しかし、ダンジョン探索には欠かせない縁の下の力持ち的存在。
採集者はなくてはならない存在ではある。しかし、探求者のように表立てって輝かしい功績が生まれるのは珍しく、技術者のように人々に影響のある仕事でもない。そんな採集者はあまりいいイメージを持たれることはなかった。
しかし、少女はそんな状況を不満に思いつつも、己の気の赴くままにダンジョンの素材を集め続ける。
そんな感じで活動していた少女だったが、ギルドからの依頼で不穏な動きをしている探求者とダンジョンに潜ることに。
そして何かあったときに証拠になるように事前に非公開設定でこっそりと動画を撮り始めて。
しかし、その配信をする際に設定を失敗していて、通常公開になっていた。
そんなこともつゆ知らず、悪質探求者たちにモンスターを擦り付けられてしまう。
本来であれば絶望的な状況なのだが、少女は動揺することもあせるようなこともなく迫りくるモンスターと対峙した。
そうして始まった少女による蹂躙劇。
明らかに見た目の年齢に見合わない解体技術に阿鼻叫喚のコメントと、ただの作り物だと断定しアンチ化したコメント、純粋に好意的なコメントであふれかえる配信画面。
こうして少女によって、世間の採取家の認識が塗り替えられていく、ような、ないような……
※カクヨムにて先行公開しています。
異世界から日本に帰ってきたら魔法学院に入学 パーティーメンバーが順調に強くなっていくのは嬉しいんだが、妹の暴走だけがどうにも止まらない!
枕崎 削節
ファンタジー
〔小説家になろうローファンタジーランキング日間ベストテン入り作品〕
タイトルを変更しました。旧タイトル【異世界から帰ったらなぜか魔法学院に入学。この際遠慮なく能力を発揮したろ】
3年間の異世界生活を経て日本に戻ってきた楢崎聡史と桜の兄妹。二人は生活の一部分に組み込まれてしまった冒険が忘れられなくてここ数年日本にも発生したダンジョンアタックを目論むが、年齢制限に壁に撥ね返されて入場を断られてしまう。ガックリと項垂れる二人に救いの手を差し伸べたのは魔法学院の学院長と名乗る人物。喜び勇んで入学したはいいものの、この学院長はとにかく無茶振りが過ぎる。異世界でも経験したことがないとんでもないミッションに次々と駆り出される兄妹。さらに二人を取り巻く周囲にも奇妙な縁で繋がった生徒がどんどん現れては学院での日常と冒険という非日常が繰り返されていく。大勢の学院生との交流の中ではぐくまれていく人間模様とバトルアクションをどうぞお楽しみください!
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる