外れスキル【レバレッジたったの1.0】を進化させ、俺はエルフ聖女と無双する ―冒険者パーティ追放勇者、バージョンアップの成り上がり―

緋色優希

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第二章 バルバディア聖教国モンサラント・ダンジョン

2-30 お説教の時間

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 俺のスキルのバージョンは、今【レバレッジ小粋な13.5】とある。

 こりゃあまた上がったもんだなあ。
 あの一角が協会から封鎖されたほどの騒動だったので無理もないのだが。

 どうでもいい事だったが、俺の称号が、もう訳のわからないおかしな物になってしまっている。

 バージョン13.0の基本機能スキルは【回復能力十倍】だ。

 相対的にみて回復能力が不足なので生まれたものらしい。

 今回、道中の記憶はないのだが、ちょっと死にかけていたみたいだからな。

 ただし回復力は、他と扱いが少し異なるものなので、むしろオーバースペック気味なくらいになった。

 これにも全能力十倍の恩恵があるのだ。
 13.5倍×十倍×十倍で千三百五十倍の回復力か。

 今の俺には、ほぼプラナリア並みの再生力があるのかもしれない。

 そのお蔭でまだ生きているようだ。
 もちろん真ん中で切っても二人にはならないのだろうが。

 そんなやり方で同じ記憶を持った人間が増えたら怖いわ。

 特種技能スキルは【忘却の恩恵】とある。

 これは、かつて一瞬だけ借りてきた事のあるスキルを十分だけ無条件で発動できる。

 クールタイムはあるが、そのスキルに応じた時間となる。

 これはまた、ほぼ最強の力だな。

 あの先輩のダンジョン管理魔物さえもぶっ倒すスキルや、英雄姫の大魔法すら限定十分間でいいなら好きに使えるんだぜ。

 いわば俺は、今までの攻撃スキルは借り物の人任せであった弱小勇者から、最強勇者にジョブチェンジできたようなものだ。

 こここそは、まさに転職の大神殿なのだ。
 スキル別のクールタイムがどうなっているのかは知らないけどな。

 だが、これも前回の戦闘時には無意識に使っていたのだろう。

 そうでなければ、今頃はこの俺もリナやナタリーもろとも生きてここにはいまい。

 もしかしたら、あのカミエの【斬撃】スキルって、斬撃百倍の攻撃スキルの恩恵を受けられる物なのかね。

 それならば生き残れたのも納得なのだが。
 あの戦いはスキルの恩恵が消え失せるまでの僅か十分の間に片がついたのだ。

 補助は【縁の下の向こう側】という、これまた訳のわからない名前のものだ。

 普通は、縁の下の力持ちとかじゃないのかよ。

 これはパーティを通り越し、希望する無制限の人数に何らかの能力上昇一つだけを20%もたらす。

 効果時間は、やはり十分だけ。
 これを信仰の力の上昇そのものに振り向ける事すら可能なようだ。

 地味だけどトータルでは凄い力? になるのだろうか。

 効果は体感ギリギリの大変微妙なもののようだが、本気でヤバイ紙一重の時にはこいつを使って危機を凌げるような、もしかしたら使えるスキルなのかもしれない。

 この手のスキルが多すぎて、もうよくわからない。

 こいつには特にクールタイムはない。

 だが重ね掛けはできないらしいのだが、使ってみない事には使い勝手もよくわからないようなスキルだ。

 なんというか、タイトルからして果てしなく明後日の方向へ行ってしまったようなスキルだな。

 そして当然の事ながら、やらかしてしまった当事者である俺とリナは、双方のパーティの立ち合いの下、神殿と協会の合同事情聴取を受け、さすがに大司祭様や協会長からも怒られた。

「いやあ、いつの時代にも、こういう『やらかすタイプ』の勇者様はいらっしゃったと思うのだが、本当にまあ困ったものです。

 リクル様……いくら凄いスキルを持っていたとしても、限度という物は弁えましょうか。

 そのうち本当に死んでしまいますからね?」

「は、はーい」

「もう、君達。
 やっぱり若い子にいきなり中級冒険者資格を与えると碌な事にならないな。

 まあ実績的な事をいえば、リクル君などは、もう確実に上級でもいいくらいの内容なのだがねえ。

 いや本当に困ったものだね。
 冒険者協会としても実に頭が痛い」

「へーい……」

 ああ、俺の上級冒険者への昇進が遠のいたなあ。
 そしてまたリナの奴が俺に向かって口汚く喚いていた。

「くそう、リクル。
 お前って、あの山のようなドラゴンを一人で退治してのけた『聖女様パーティの勇者』だったのか。

 もう~、とんだとばっちりだあ」

「喧しいぞ、リナ。
 元はといえば、あんなに駄目だって言ったのに、お前が最後に徹底的に無視するからだろう。

 うちの狼まで懐柔して味方につけやがって。
 もう、なんて女だ」

「だって無限収納が欲しかったんだもん。
 リクルばっかり大量に貰っていてズルイ~」

「ふん、そんな物は当り前だ。
 俺には自分のレバレッジや補正スキルがついているんだからな。

 それがあれこれと上乗せになっているんだもの。
 それで、お前と一緒の訳がないだろう」

「えー、何それ。
 ふざけるなあ。
 そんなのズル過ぎるでしょうがあ。
 最初からやり直せー」

 だが、ここでまた、あれこれと雷が落ちた。

「馬鹿もーん。まだ大司祭の説教の最中なのだぞ」

「お前達、いい加減にしておきなさい。
 あまり良くない態度だと冒険者資格を停止しますよ」

「リクル、お前は後でまた追加のお説教だからな!」

 姐御以外の、他の面子も好き放題に言っていた。

「俺は罰を与えるのなら、鍛錬でも構わないと思うのだがな」

 あ、それはへたなお説教よりも地味に効くな。
 マロウスのスパルタ鍛練上乗せは、ちょっと勘弁だ。
 今でも結構ギリギリだというのに。

「それだと、またパワーアップした分、何かやらかすのではないのかのう」

 まあ年寄りの意見って、そういう時は概ね正しいよね。
 俺は今若さが絶賛大爆発中なので。

「やれやれ、これだから成人したての子というのは困ったものね」

 エラヴィス閣下、聞いたぞ。
 あんただって二年前は結構やらかしていたそうじゃないかあ。
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