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第二章 バルバディア聖教国モンサラント・ダンジョン
2-59 剣の思い出
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「お、リクル。
だいぶ余分なリキが抜けてきたみたいじゃないか」
「そうすかー?
あんまり特に変わんないつもりですけどね」
「口調は前から軽いんだけどね。
まあ、なかなかいい感じなんじゃない」
俺の旧指導員二名からお褒めに預かってしまった。
じゃあ、ついでに宝箱探索も軽くいってみますかあ。
「じゃあ、本日は金目の物を狙って。
スキル全開の上に、このブースト・ブレスレットで頑張りますねー。
さあて、ここ掘れワンワン」
俺の気の抜けるような台詞がダンジョンの回廊を吹き抜けていき、そしていつもの土饅頭がポコポコと湧いてきた。
もう宝箱沸かしは手慣れたもので、湧いてくる数まで毎回記録更新している。
今回は、その数およそ二百。
蜘蛛も狼も特に騒いでいないので、どうやら今回は蜘蛛の出現は回避できたようだった。
一応、彼らも番犬代わりに他のメンバーにもついている。
後は金目の物が入っているかどうかだ。
本来なら宝箱が湧かない遺跡の方は、どちらかというと金目の物というよりも、特殊な物が湧きやすい傾向にあるので、今日は坑道ダンジョンの方でやっている。
「大きな葛籠、小さな葛籠が選り取り見取りねえ」
「まあどちらか好きな方じゃなくて全部取っちゃっていいわけなので、俺達ラッキーだね」
「まあ、まさにそのラッキーっていう奴が肝心だな」
本来なら宝箱が湧かないはずの、湧かせにくいはずの石床で沸かしまくったので、こちらの鉱山跡でも大量に宝箱を沸かせられるようになってしまった。
もう通路中びっしりの土饅頭は壮観の一言だった。
「普通はありえないわよね、こんな光景」
「勇者の仕事は聖教国財政の再建?」
俺の感慨に対して、姐御も苦笑しながら返してくれる。
「むう、まあ今日のところはそうしておいてくれ」
そして、皆でポコポコと土饅頭を開放して中身を集めていた。
あまりにも宝箱の数が多いので、時間が切迫するから、俺の狼や蜘蛛なんかも手伝ってくれる。
特に蜘蛛は実に器用に中身を取り出す。
狼も結構前足が器用だ。
それはもう、通路中に土で出来た繭か卵のような大中小の土饅頭がビッシリと湧いているので、凄い光景だった。
「リクル、結構金目の物が入っているわよ。
やったねー」
「そうすか、そいつはよかった」
「魔法金属も結構多めだから、導師にもまた御土産が渡せる」
そして皆が喜ぶ中で先輩が、ある開封された宝箱の前に立って、じっと静かに見下ろしていた。
「あれ、なんか特別な物でもあったすか」
「ん? ああ、ちょっと懐かしくてな。
昔、こういう感じの剣を使っていたのさ」
俺がその割れた卵の中を覗き込むと、それは初心者がよく使うような、ただの鉄の剣だった。
「これ、見事にハズレっすね。
さすがにスキルを使っていても、数があまりに多いとこんなものかな。
へえ、先輩も昔は無手じゃなかったんだ」
「ああ、そうだな。
だが、あの頃は金に困って、終いにはこういうハズレ剣さえ代わりが買えなくなってな。
もうスキルを用いたパンチの威力をひたすら磨いたもんだ。
服も革の装備が買えなくて、布の奴をずっと着ていてな」
今の装備は初心忘れるなかれって事?
まあ、それ以前の問題の、完全にイカれたスタイルなのだが。
「俺も似たようなもんす。
ほら、この皮手袋で魔物を殴っていた。
もう突然にパーティから放り出されたもんだから、剣の整備代が払えなくって。
防具も布の服といくらかの安防具だったね。
俺の方は、ほんのつい最近の話だけど」
先輩は静かに笑うと、何故かその剣を拾って収納アイテムに仕舞っていた。
「駆け出しの頃に、この無限収納アイテムがあったら、今頃はもっと違う人生だったのかもな」
「それ絶対に追い剥ぎに殺されてない?
ちょうど俺があんたと初めて会った時みたいに首を締め上げられて」
それを聞いた先輩は楽しそうに思い出し笑いをしていた。
うん、この人って絶対に俺を狩るのを諦めていないよね。
あの時は死ぬかと思った。
よかったよ、この人がイカれた奇妙な殺しの性癖の持ち主で。
普通の格上乱暴者が相手だったら俺はあの時に殺されていた。
今俺は先輩を通して学習した。
こういうタイプのヤバイ人間って、普通の環境ではまず発生しないのだと。
俺は少し昔に浸っている雰囲気の先輩をそっとしておいて回収作業に戻った。
あるわ、あるわ。
とにかく宝箱から中身を出してしまわないと、また地面に戻ってしまう。
まあ普通は五分ってとこか。
これがミミックの場合は三十分経っても消えたりはしないんだが。
あれがまた結構強いんだ。
あいつ、動く必要がないからな。
全部その場に立っての攻撃で、発生してからその宝箱を開けたパーティを全滅させる間だけ持ち堪えればいいから。
錬金ボックスを残す魔導ミミックなどは魔力全開で魔法を放ってくるそうなのだ。
俺はいつもそうされる前にクイックに倒してしまうけど。
何故か自爆タイプがいないのが幸いなのだが。
宝箱の番人だから、宝箱を吹き飛ばすような行為はNGなのか。
結構金目の物が集まった。
魔法金属の昔の刻印がされたものに、よく流通していて比較的高価で流動性の高い武具、少し古めの希少価値の高い金貨などが入った小型の宝箱に宝石付きの装身具。
普通ならこれで終了なのだが、そのまま二回戦に突入していく。
まるで宝箱畑の二毛作か何かのようだ。
先輩もあまり熱心ではないとはいえ、手早く広い集めていた。
この人の場合、本人の物欲が薄いからな。
彼が本当に欲しかった物は、おそらく今ではもう手に入れる事が出来ない物で、そのぽっかりと開いた胸の穴を埋める術がないのであろう。
強いて埋めようとすると、すぐ自分が死地に向かったり、俺のような人間を手にかけたりしようとするのだ。
まあ今もここでこんな事をやっている事自体が、半分死地に向かっているといえない事もない。
聖女のパーティと一緒、つまり今邪神が湧いたら、共に死地に行くのだ。
聖女の肉壁として。
まあ、この俺もしっかりとそれに帯同させていただいてますがね!
だいぶ余分なリキが抜けてきたみたいじゃないか」
「そうすかー?
あんまり特に変わんないつもりですけどね」
「口調は前から軽いんだけどね。
まあ、なかなかいい感じなんじゃない」
俺の旧指導員二名からお褒めに預かってしまった。
じゃあ、ついでに宝箱探索も軽くいってみますかあ。
「じゃあ、本日は金目の物を狙って。
スキル全開の上に、このブースト・ブレスレットで頑張りますねー。
さあて、ここ掘れワンワン」
俺の気の抜けるような台詞がダンジョンの回廊を吹き抜けていき、そしていつもの土饅頭がポコポコと湧いてきた。
もう宝箱沸かしは手慣れたもので、湧いてくる数まで毎回記録更新している。
今回は、その数およそ二百。
蜘蛛も狼も特に騒いでいないので、どうやら今回は蜘蛛の出現は回避できたようだった。
一応、彼らも番犬代わりに他のメンバーにもついている。
後は金目の物が入っているかどうかだ。
本来なら宝箱が湧かない遺跡の方は、どちらかというと金目の物というよりも、特殊な物が湧きやすい傾向にあるので、今日は坑道ダンジョンの方でやっている。
「大きな葛籠、小さな葛籠が選り取り見取りねえ」
「まあどちらか好きな方じゃなくて全部取っちゃっていいわけなので、俺達ラッキーだね」
「まあ、まさにそのラッキーっていう奴が肝心だな」
本来なら宝箱が湧かないはずの、湧かせにくいはずの石床で沸かしまくったので、こちらの鉱山跡でも大量に宝箱を沸かせられるようになってしまった。
もう通路中びっしりの土饅頭は壮観の一言だった。
「普通はありえないわよね、こんな光景」
「勇者の仕事は聖教国財政の再建?」
俺の感慨に対して、姐御も苦笑しながら返してくれる。
「むう、まあ今日のところはそうしておいてくれ」
そして、皆でポコポコと土饅頭を開放して中身を集めていた。
あまりにも宝箱の数が多いので、時間が切迫するから、俺の狼や蜘蛛なんかも手伝ってくれる。
特に蜘蛛は実に器用に中身を取り出す。
狼も結構前足が器用だ。
それはもう、通路中に土で出来た繭か卵のような大中小の土饅頭がビッシリと湧いているので、凄い光景だった。
「リクル、結構金目の物が入っているわよ。
やったねー」
「そうすか、そいつはよかった」
「魔法金属も結構多めだから、導師にもまた御土産が渡せる」
そして皆が喜ぶ中で先輩が、ある開封された宝箱の前に立って、じっと静かに見下ろしていた。
「あれ、なんか特別な物でもあったすか」
「ん? ああ、ちょっと懐かしくてな。
昔、こういう感じの剣を使っていたのさ」
俺がその割れた卵の中を覗き込むと、それは初心者がよく使うような、ただの鉄の剣だった。
「これ、見事にハズレっすね。
さすがにスキルを使っていても、数があまりに多いとこんなものかな。
へえ、先輩も昔は無手じゃなかったんだ」
「ああ、そうだな。
だが、あの頃は金に困って、終いにはこういうハズレ剣さえ代わりが買えなくなってな。
もうスキルを用いたパンチの威力をひたすら磨いたもんだ。
服も革の装備が買えなくて、布の奴をずっと着ていてな」
今の装備は初心忘れるなかれって事?
まあ、それ以前の問題の、完全にイカれたスタイルなのだが。
「俺も似たようなもんす。
ほら、この皮手袋で魔物を殴っていた。
もう突然にパーティから放り出されたもんだから、剣の整備代が払えなくって。
防具も布の服といくらかの安防具だったね。
俺の方は、ほんのつい最近の話だけど」
先輩は静かに笑うと、何故かその剣を拾って収納アイテムに仕舞っていた。
「駆け出しの頃に、この無限収納アイテムがあったら、今頃はもっと違う人生だったのかもな」
「それ絶対に追い剥ぎに殺されてない?
ちょうど俺があんたと初めて会った時みたいに首を締め上げられて」
それを聞いた先輩は楽しそうに思い出し笑いをしていた。
うん、この人って絶対に俺を狩るのを諦めていないよね。
あの時は死ぬかと思った。
よかったよ、この人がイカれた奇妙な殺しの性癖の持ち主で。
普通の格上乱暴者が相手だったら俺はあの時に殺されていた。
今俺は先輩を通して学習した。
こういうタイプのヤバイ人間って、普通の環境ではまず発生しないのだと。
俺は少し昔に浸っている雰囲気の先輩をそっとしておいて回収作業に戻った。
あるわ、あるわ。
とにかく宝箱から中身を出してしまわないと、また地面に戻ってしまう。
まあ普通は五分ってとこか。
これがミミックの場合は三十分経っても消えたりはしないんだが。
あれがまた結構強いんだ。
あいつ、動く必要がないからな。
全部その場に立っての攻撃で、発生してからその宝箱を開けたパーティを全滅させる間だけ持ち堪えればいいから。
錬金ボックスを残す魔導ミミックなどは魔力全開で魔法を放ってくるそうなのだ。
俺はいつもそうされる前にクイックに倒してしまうけど。
何故か自爆タイプがいないのが幸いなのだが。
宝箱の番人だから、宝箱を吹き飛ばすような行為はNGなのか。
結構金目の物が集まった。
魔法金属の昔の刻印がされたものに、よく流通していて比較的高価で流動性の高い武具、少し古めの希少価値の高い金貨などが入った小型の宝箱に宝石付きの装身具。
普通ならこれで終了なのだが、そのまま二回戦に突入していく。
まるで宝箱畑の二毛作か何かのようだ。
先輩もあまり熱心ではないとはいえ、手早く広い集めていた。
この人の場合、本人の物欲が薄いからな。
彼が本当に欲しかった物は、おそらく今ではもう手に入れる事が出来ない物で、そのぽっかりと開いた胸の穴を埋める術がないのであろう。
強いて埋めようとすると、すぐ自分が死地に向かったり、俺のような人間を手にかけたりしようとするのだ。
まあ今もここでこんな事をやっている事自体が、半分死地に向かっているといえない事もない。
聖女のパーティと一緒、つまり今邪神が湧いたら、共に死地に行くのだ。
聖女の肉壁として。
まあ、この俺もしっかりとそれに帯同させていただいてますがね!
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