外れスキル【レバレッジたったの1.0】を進化させ、俺はエルフ聖女と無双する ―冒険者パーティ追放勇者、バージョンアップの成り上がり―

緋色優希

文字の大きさ
147 / 169
第二章 バルバディア聖教国モンサラント・ダンジョン

2-59 剣の思い出

しおりを挟む
「お、リクル。
 だいぶ余分なリキが抜けてきたみたいじゃないか」

「そうすかー?
 あんまり特に変わんないつもりですけどね」

「口調は前から軽いんだけどね。
 まあ、なかなかいい感じなんじゃない」

 俺の旧指導員二名からお褒めに預かってしまった。

 じゃあ、ついでに宝箱探索も軽くいってみますかあ。


「じゃあ、本日は金目の物を狙って。

 スキル全開の上に、このブースト・ブレスレットで頑張りますねー。

 さあて、ここ掘れワンワン」

 俺の気の抜けるような台詞がダンジョンの回廊を吹き抜けていき、そしていつもの土饅頭がポコポコと湧いてきた。

 もう宝箱沸かしは手慣れたもので、湧いてくる数まで毎回記録更新している。

 今回は、その数およそ二百。

 蜘蛛も狼も特に騒いでいないので、どうやら今回は蜘蛛の出現は回避できたようだった。

 一応、彼らも番犬代わりに他のメンバーにもついている。

 後は金目の物が入っているかどうかだ。

 本来なら宝箱が湧かない遺跡の方は、どちらかというと金目の物というよりも、特殊な物が湧きやすい傾向にあるので、今日は坑道ダンジョンの方でやっている。

「大きな葛籠、小さな葛籠が選り取り見取りねえ」

「まあどちらか好きな方じゃなくて全部取っちゃっていいわけなので、俺達ラッキーだね」

「まあ、まさにそのラッキーっていう奴が肝心だな」

 本来なら宝箱が湧かないはずの、湧かせにくいはずの石床で沸かしまくったので、こちらの鉱山跡でも大量に宝箱を沸かせられるようになってしまった。

 もう通路中びっしりの土饅頭は壮観の一言だった。

「普通はありえないわよね、こんな光景」

「勇者の仕事は聖教国財政の再建?」

 俺の感慨に対して、姐御も苦笑しながら返してくれる。

「むう、まあ今日のところはそうしておいてくれ」

 そして、皆でポコポコと土饅頭を開放して中身を集めていた。

 あまりにも宝箱の数が多いので、時間が切迫するから、俺の狼や蜘蛛なんかも手伝ってくれる。

 特に蜘蛛は実に器用に中身を取り出す。
 狼も結構前足が器用だ。

 それはもう、通路中に土で出来た繭か卵のような大中小の土饅頭がビッシリと湧いているので、凄い光景だった。

「リクル、結構金目の物が入っているわよ。
 やったねー」

「そうすか、そいつはよかった」

「魔法金属も結構多めだから、導師にもまた御土産が渡せる」

 そして皆が喜ぶ中で先輩が、ある開封された宝箱の前に立って、じっと静かに見下ろしていた。

「あれ、なんか特別な物でもあったすか」

「ん? ああ、ちょっと懐かしくてな。
 昔、こういう感じの剣を使っていたのさ」


 俺がその割れた卵の中を覗き込むと、それは初心者がよく使うような、ただの鉄の剣だった。

「これ、見事にハズレっすね。
 さすがにスキルを使っていても、数があまりに多いとこんなものかな。

 へえ、先輩も昔は無手じゃなかったんだ」


「ああ、そうだな。
 だが、あの頃は金に困って、終いにはこういうハズレ剣さえ代わりが買えなくなってな。

 もうスキルを用いたパンチの威力をひたすら磨いたもんだ。

 服も革の装備が買えなくて、布の奴をずっと着ていてな」


 今の装備は初心忘れるなかれって事?
 まあ、それ以前の問題の、完全にイカれたスタイルなのだが。

「俺も似たようなもんす。
 ほら、この皮手袋で魔物を殴っていた。

 もう突然にパーティから放り出されたもんだから、剣の整備代が払えなくって。

 防具も布の服といくらかの安防具だったね。
 俺の方は、ほんのつい最近の話だけど」

 先輩は静かに笑うと、何故かその剣を拾って収納アイテムに仕舞っていた。

「駆け出しの頃に、この無限収納アイテムがあったら、今頃はもっと違う人生だったのかもな」

「それ絶対に追い剥ぎに殺されてない?
 ちょうど俺があんたと初めて会った時みたいに首を締め上げられて」

 それを聞いた先輩は楽しそうに思い出し笑いをしていた。

 うん、この人って絶対に俺を狩るのを諦めていないよね。

 あの時は死ぬかと思った。

 よかったよ、この人がイカれた奇妙な殺しの性癖の持ち主で。

 普通の格上乱暴者が相手だったら俺はあの時に殺されていた。

 今俺は先輩を通して学習した。
 こういうタイプのヤバイ人間って、普通の環境ではまず発生しないのだと。

 俺は少し昔に浸っている雰囲気の先輩をそっとしておいて回収作業に戻った。

 あるわ、あるわ。
 とにかく宝箱から中身を出してしまわないと、また地面に戻ってしまう。

 まあ普通は五分ってとこか。
 これがミミックの場合は三十分経っても消えたりはしないんだが。

 あれがまた結構強いんだ。
 あいつ、動く必要がないからな。

 全部その場に立っての攻撃で、発生してからその宝箱つちまんじゅうを開けたパーティを全滅させる間だけ持ち堪えればいいから。

 錬金ボックスを残す魔導ミミックなどは魔力全開で魔法を放ってくるそうなのだ。

 俺はいつもそうされる前にクイックに倒してしまうけど。

 何故か自爆タイプがいないのが幸いなのだが。

 宝箱の番人だから、宝箱を吹き飛ばすような行為はNGなのか。

 結構金目の物が集まった。

 魔法金属の昔の刻印がされたものに、よく流通していて比較的高価で流動性の高い武具、少し古めの希少価値の高い金貨などが入った小型の宝箱に宝石付きの装身具。

 普通ならこれで終了なのだが、そのまま二回戦に突入していく。

 まるで宝箱畑の二毛作か何かのようだ。

 先輩もあまり熱心ではないとはいえ、手早く広い集めていた。

 この人の場合、本人の物欲が薄いからな。

 彼が本当に欲しかった物は、おそらく今ではもう手に入れる事が出来ない物で、そのぽっかりと開いた胸の穴を埋める術がないのであろう。

 強いて埋めようとすると、すぐ自分が死地に向かったり、俺のような人間を手にかけたりしようとするのだ。

 まあ今もここでこんな事をやっている事自体が、半分死地に向かっているといえない事もない。

 聖女のパーティと一緒、つまり今邪神が湧いたら、共に死地に行くのだ。

 聖女の肉壁として。

 まあ、この俺もしっかりとそれに帯同させていただいてますがね!
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

勤続5年。1日15時間勤務。業務内容:戦闘ログ解析の俺。気づけばダンジョン配信界のスターになってました

厳座励主(ごんざれす)
ファンタジー
ダンジョン出現から六年。攻略をライブ配信し投げ銭を稼ぐストリーマーは、いまや新時代のヒーローだ。その舞台裏、ひたすらモンスターの戦闘映像を解析する男が一人。百万件を超える戦闘ログを叩き込んだ頭脳は、彼が偶然カメラを握った瞬間に覚醒する。 敵の挙動を完全に読み切る彼の視点は、まさに戦場の未来を映す神の映像。 配信は熱狂の渦に包まれ、世界のトップストリーマーから専属オファーが殺到する。 常人離れした読みを手にした無名の裏方は、再びダンジョンへ舞い戻る。 誰も死なせないために。 そして、封じた過去の記憶と向き合うために。

掘鑿王(くっさくおう)~ボクしか知らない隠しダンジョンでSSRアイテムばかり掘り出し大金持ち~

テツみン
ファンタジー
『掘削士』エリオットは、ダンジョンの鉱脈から鉱石を掘り出すのが仕事。 しかし、非戦闘職の彼は冒険者仲間から不遇な扱いを受けていた。 ある日、ダンジョンに入ると天災級モンスター、イフリートに遭遇。エリオットは仲間が逃げ出すための囮(おとり)にされてしまう。 「生きて帰るんだ――妹が待つ家へ!」 彼は岩の割れ目につるはしを打ち込み、崩落を誘発させ―― 目が覚めると未知の洞窟にいた。 貴重な鉱脈ばかりに興奮するエリオットだったが、特に不思議な形をしたクリスタルが気になり、それを掘り出す。 その中から現れたモノは…… 「えっ? 女の子???」 これは、不遇な扱いを受けていた少年が大陸一の大富豪へと成り上がっていく――そんな物語である。

自由でいたい無気力男のダンジョン生活

無職無能の自由人
ファンタジー
無気力なおっさんが適当に過ごして楽をする話です。 すごく暇な時にどうぞ。

貧乏冒険者で底辺配信者の生きる希望もないおっさんバズる~庭のFランク(実際はSSSランク)ダンジョンで活動すること15年、最強になりました~

喰寝丸太
ファンタジー
おっさんは経済的に、そして冒険者としても底辺だった。 庭にダンジョンができたが最初のザコがスライムということでFランクダンジョン認定された。 そして18年。 おっさんの実力が白日の下に。 FランクダンジョンはSSSランクだった。 最初のザコ敵はアイアンスライム。 特徴は大量の経験値を持っていて硬い、そして逃げる。 追い詰められると不壊と言われるダンジョンの壁すら溶かす酸を出す。 そんなダンジョンでの15年の月日はおっさんを最強にさせた。 世間から隠されていた最強の化け物がいま世に出る。

帰って来た勇者、現代の世界を引っ掻きまわす

黄昏人
ファンタジー
ハヤトは15歳、中学3年生の時に異世界に召喚され、7年の苦労の後、22歳にて魔族と魔王を滅ぼして日本に帰還した。帰還の際には、莫大な財宝を持たされ、さらに身につけた魔法を始めとする能力も保持できたが、マナの濃度の低い地球における能力は限定的なものであった。しかし、それでも圧倒的な体力と戦闘能力、限定的とは言え魔法能力は現代日本を、いや世界を大きく動かすのであった。 4年前に書いたものをリライトして載せてみます。

現実世界にダンジョンが出現したのでフライングして最強に!

おとうふ
ファンタジー
2026年、突如として世界中にダンジョンが出現した。 ダンジョン内は無尽蔵にモンスターが湧き出し、それを倒すことでレベルが上がり、ステータスが上昇するという不思議空間だった。 過去の些細な事件のトラウマを克服できないまま、不登校の引きこもりになっていた中学2年生の橘冬夜は、好奇心から自宅近くに出現したダンジョンに真っ先に足を踏み入れた。 ダンジョンとは何なのか。なぜ出現したのか。その先に何があるのか。 世界が大混乱に陥る中、何もわからないままに、冬夜はこっそりとダンジョン探索にのめり込んでいく。 やがて来る厄災の日、そんな冬夜の好奇心が多くの人の命を救うことになるのだが、それはまだ誰も知らぬことだった。 至らぬところも多いと思いますが、よろしくお願いします!

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

処理中です...