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第二章 バルバディア聖教国モンサラント・ダンジョン

2-61 ど根性勇者

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 それから、姐御はふと気がついたようだ。

「お前、またスキルのバージョンが上がったのか。
 また珍妙な称号がついておるな」

「あ、うん」

【レバレッジど根性で15.0】

 もはやこの俺の魂のスキル自体が、これが根性スキルである事を隠さなくなってきた。

 こいつはまた酷いものだ。

 俺こそはど根性勇者とでもいうべきものなのだろうか。

 農家の跡取り予定者として厳しく育てられ、畑で根性を入れ過ぎていたので、そのような根性を常に見せる性格に生まれ育っているのだし。

 そいつは今のスキルの発生状況からすると、実にありがたくない傾向なのだが。

 基本能力スキルは【無敵の鍛錬1日1万回スクワット】

 体力の上昇が制限時間十分の間、再現なく続くスキルで、肉弾戦の決着戦に向く。

 解除後に立ち上がれるかどうかは根性次第という禁断の根性スキルか。

 前回に引き続き根性論路線を一直線に突っ走っていやがるな。

 これはまだいいのだ。
 たぶん、強敵相手に自動で発動しそうな気もするし。

 だが派生スキルの方が完全に駄目な代物だった。

 特殊技能は【あたしゃ今年で八十になります】

 また変なタイトルのスキルが発現していた。

 この先に取得できるだろうと予測される未来に得られる力の状態まで圧倒的にブーストされる究極ブーストだとある。

 ただし先の時系列において、一瞬でもスキル発現当時に予測した(受け取った)力に達しない、鍛錬をサボってその予測数値を下回ると、そこが限界点と判定されてそこよりなかなか進めない壁にぶち当たる。

 この損失は発狂レベルだ。

 たとえば十年に設定すると、三日後にうっかり精進が瞬間だけ不足したなんていったら、十年間成長なしっていう事だ。

 それを越えるためにはスキル発動時間から設定した期間と同じだけの上乗せ期間の間は常時、予定よりも倍の精進が必要になるマイナス補正が働き続ける。

 油断すると物凄い利息を払う羽目になるのだ。

 その歳月の間は精進の半分が全て無駄になるという、ありえない人生が待っている。

 十年分使ったとすると、もし三日目の時点で精進が足りなければ、その先の十年間も合わせた二十年間は常時二倍の量の精進が必要なペナルティが発生するのだ。

 確実に、そのスキル発動時に受け取った力を、受け取った時に設定した未来の時点で期間内は常時越えていないといけない。

 たとえ一瞬でも下回ったら駄目なので、実際には安全マージンをみて、本来すべき精進の二・五倍から三倍の精進が必要だろう。

 時間設定次第ではスキルを付与した人間全員の持つ能力成長の未来を閉ざしてしまうし、第一その前に心が折れてしまう。

 将来の精進を担保にレバレッジするという、ある意味で一番凶悪なブーストスキルだ。

 こんなものは絶対に使わないぞ。
 いくらなんでもリスクが割に合わなすぎる。

 まるで鍛練を前倒ししての精進促進スキルだ。
 これは俺よりもマロウス向きの代物だった。

 補助は【栄光のパレード】

 スキルを与えた者には、どこまでも行軍する力を与えるが、限度を超えると二度と立ち上がれない。

 まだこっちの方がいいか。
 パーティメンバーや使役する眷属も、後でまとめてダウンだけど。

 でもやり過ぎると『二度と立ち上がれない』とあるから、やっぱり駄目だな。

 俺は邪神様ではなく、おそらく邪神に対抗するために俺の魂が生み出しただろう、これらのスキルの方を封印しておいた。

 さすがに他人巻き添え系の凶悪スキルは使用できない。

 自分だけでも使いたくない代物なのだから。

 どうやら俺の魂は果てしなく続くデスパレードのような、ど根性路線のスパルタスキル道を究めたいと思っているようだった。
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