外れスキル【レバレッジたったの1.0】を進化させ、俺はエルフ聖女と無双する ―冒険者パーティ追放勇者、バージョンアップの成り上がり―

緋色優希

文字の大きさ
152 / 169
第二章 バルバディア聖教国モンサラント・ダンジョン

2-64 お使い登山

しおりを挟む
 聖山か。

 ダンジョンの力を利用した邪神の封印のために、あそこからもダンジョンへ力を借りているのだっけ。

 巷ではダンジョンの浸食を聖山が防いでいるとか言われていたのだが、それは間違った話だった。

 だから、あそこの麓までダンジョンが通じているのだ。

 本来ならば邪神の封印されている遺跡をダンジョン化するだけで済んでいたろうに。

「へえ、みんな忙しいんだなあ。
 そうか、あそこもダンジョンに接していたんだっけね」


「ああ、ここのダンジョンというか聖教国は複雑な成り立ちだからな。

 私も一度聖山へ見に行こうとは思っておったのだが、今は聖教国への視察の話が相次いでいて、それどころではない」


「視察?」


「まあその、なんというのか、ここへの支援のお話だ。

 相手方にも予算とか財政局とかの話があってなあ。

 私がここにいるのなら是非視察したいという事で、こちらからも手紙を山盛り書かねばならんという事だ。

 彼らにも一度は来てもらった方がよいしな。
 しばらく、机の前から離れられそうにない」


 ああ、お金の話は聖女の権威を使った方が、出す方も受け取る方も双方にとって都合がいいから。

 今はここに姐御がいるんだから、その方がいいよな。


「ああ、そういう話かあ。
 お疲れ様っす。

 その場に勇者リクルはいなくても大丈夫?」


「はは、大丈夫だ。
 手紙を送ったからといって、すぐに視察に来るわけじゃないさ。

 またその時には頼むとしよう」


「また、視察に来た人用の御土産を宝箱から見繕っておきます?」

 その言い草には姐御も苦笑していたが、まあすぐに笑顔を向けてくれるレベルだった。

「お前は本当にそういう細かい事に気を回す男だな」

「それが新人レーティング一位の実力ですって。
 下積み冒険者の心得ですから」


「わかった。
 では、よろしくな。

 管理事務所にはルバート司祭がおられるから、彼に確認してから、一応お前が直接聖山の様子を見てくれ。

 その旨、書状を用意するから」


「はい、じゃあ確かに」

 俺は、しばしの間の後に、赤い蝋で封をして聖女の指輪印を押した書状を受取った。

 こういう失くしたら困るような大事な物を受け取った時って、収納アイテムが本当に便利。


「念のため、何か気になる感じだったら、必要なら借り物のスキルを使ってでも見ておいてくれ。

 あそこなら、そう問題はないと思うのだが」


「わっかりやしたー。
 ちなみに、聖山お勧めのランチとかは?」


「そうだな。
 ランチなら七合目の三十食限定の雲海ランチか。

 あれは人気だから十一時開始のかなり前から並んでいないと買えないぞ。

 あとは五合目の団子屋で売っている、聖山名物の三食団子が絶品だな。

 あ、ついでにそいつを土産に頼む。
 うちの連中はみんな、結構アレが大好きでな」


「そうかあ、じゃあ買ってきますね」
「いってきまーす」


「ああ、気をつけてな。
 慌てずゆっくり行ってこい。

 聖山は険しく見えるが、中級冒険者の足ならどうってことないさ。

 特にお前達ならばな」


 マロウスあたりなら毎日鍛練で登っていそうだな。

 俺達は大神殿の裏から外に出て、祈りの塔の向こうにある聖山を眺めた。

「十一時前か、今は九時半だな」

「うちらの足なら余裕じゃない?」


「よし、それじゃ姐御のお使いは後にしよう。

 司祭が話の長い人だと限定ランチに間に合わないと困る。

 よくあるんだ、そういう悲劇が」


「それはありうるね!」


「もう今日のランチの胃袋は雲海ランチで決まりさ。

 帰りに五合目で御土産の三食団子を買ってから管理事務所に行こう」


「走る?」
「ううん、これで」

 そして、そこには俺が呼び出した二体の狼がいた。

「あは、乗物付き登山ツアーだったか」

 だが、そこにお邪魔虫がやってきた。
 というか、最初からいるんだけど。

「ほお、聖山とな」
「あれ、ルミナスは聖山に詳しいの?」

「まあね。
 こう見えて元々は聖女セラシアの契約精霊だったのですが」

「そういや、そうだったね」

「あたし、雲海ランチについてくるデザートシリーズが好きなの。
 あれは美味しいよ」

「へえ」

 そしてアイドルグリープは勢揃いだった。

「よし、久し振りに『聖山餡蜜』を!」

「うちは聖山サブレ。
 あれ、あの山でしか取れない聖山甘胡桃入りなの」

「そこに『聖山名物精霊餅』の名がないとは遺憾という他に言葉なし」

「聖山スープは魔法使いが好んで飲むみたいよ」

 何気にこいつら精霊はグルメなので、こういう時には姐御よりも当てになったりするのだ。

「ようし、精霊さんと行く、聖山グルメツアーだ~」


「リクル、一応は聖女様のお使いも忘れないようにね。

 グルメに目が眩んで、あたしもちょっと忘れそうだけど」


「おう!」

 こうして勇者と精霊の聖山食い倒れツアーは始まったのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

勤続5年。1日15時間勤務。業務内容:戦闘ログ解析の俺。気づけばダンジョン配信界のスターになってました

厳座励主(ごんざれす)
ファンタジー
ダンジョン出現から六年。攻略をライブ配信し投げ銭を稼ぐストリーマーは、いまや新時代のヒーローだ。その舞台裏、ひたすらモンスターの戦闘映像を解析する男が一人。百万件を超える戦闘ログを叩き込んだ頭脳は、彼が偶然カメラを握った瞬間に覚醒する。 敵の挙動を完全に読み切る彼の視点は、まさに戦場の未来を映す神の映像。 配信は熱狂の渦に包まれ、世界のトップストリーマーから専属オファーが殺到する。 常人離れした読みを手にした無名の裏方は、再びダンジョンへ舞い戻る。 誰も死なせないために。 そして、封じた過去の記憶と向き合うために。

貧乏冒険者で底辺配信者の生きる希望もないおっさんバズる~庭のFランク(実際はSSSランク)ダンジョンで活動すること15年、最強になりました~

喰寝丸太
ファンタジー
おっさんは経済的に、そして冒険者としても底辺だった。 庭にダンジョンができたが最初のザコがスライムということでFランクダンジョン認定された。 そして18年。 おっさんの実力が白日の下に。 FランクダンジョンはSSSランクだった。 最初のザコ敵はアイアンスライム。 特徴は大量の経験値を持っていて硬い、そして逃げる。 追い詰められると不壊と言われるダンジョンの壁すら溶かす酸を出す。 そんなダンジョンでの15年の月日はおっさんを最強にさせた。 世間から隠されていた最強の化け物がいま世に出る。

自由でいたい無気力男のダンジョン生活

無職無能の自由人
ファンタジー
無気力なおっさんが適当に過ごして楽をする話です。 すごく暇な時にどうぞ。

掘鑿王(くっさくおう)~ボクしか知らない隠しダンジョンでSSRアイテムばかり掘り出し大金持ち~

テツみン
ファンタジー
『掘削士』エリオットは、ダンジョンの鉱脈から鉱石を掘り出すのが仕事。 しかし、非戦闘職の彼は冒険者仲間から不遇な扱いを受けていた。 ある日、ダンジョンに入ると天災級モンスター、イフリートに遭遇。エリオットは仲間が逃げ出すための囮(おとり)にされてしまう。 「生きて帰るんだ――妹が待つ家へ!」 彼は岩の割れ目につるはしを打ち込み、崩落を誘発させ―― 目が覚めると未知の洞窟にいた。 貴重な鉱脈ばかりに興奮するエリオットだったが、特に不思議な形をしたクリスタルが気になり、それを掘り出す。 その中から現れたモノは…… 「えっ? 女の子???」 これは、不遇な扱いを受けていた少年が大陸一の大富豪へと成り上がっていく――そんな物語である。

帰って来た勇者、現代の世界を引っ掻きまわす

黄昏人
ファンタジー
ハヤトは15歳、中学3年生の時に異世界に召喚され、7年の苦労の後、22歳にて魔族と魔王を滅ぼして日本に帰還した。帰還の際には、莫大な財宝を持たされ、さらに身につけた魔法を始めとする能力も保持できたが、マナの濃度の低い地球における能力は限定的なものであった。しかし、それでも圧倒的な体力と戦闘能力、限定的とは言え魔法能力は現代日本を、いや世界を大きく動かすのであった。 4年前に書いたものをリライトして載せてみます。

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

(更新終了) 採集家少女は採集家の地位を向上させたい ~公開予定のない無双動画でバズりましたが、好都合なのでこのまま配信を続けます~

にがりの少なかった豆腐
ファンタジー
突然世界中にダンジョンが現れた。 人々はその存在に恐怖を覚えながらも、その未知なる存在に夢を馳せた。 それからおよそ20年。 ダンジョンという存在は完全にとは言わないものの、早い速度で世界に馴染んでいった。 ダンジョンに関する法律が生まれ、企業が生まれ、ダンジョンを探索することを生業にする者も多く生まれた。 そんな中、ダンジョンの中で獲れる素材を集めることを生業として生活する少女の存在があった。 ダンジョンにかかわる職業の中で花形なのは探求者(シーカー)。ダンジョンの最奥を目指し、日々ダンジョンに住まうモンスターと戦いを繰り広げている存在だ。 次点は、技術者(メイカー)。ダンジョンから持ち出された素材を使い、新たな道具や生活に使える便利なものを作り出す存在。 そして一番目立たない存在である、採集者(コレクター)。 ダンジョンに存在する素材を拾い集め、時にはモンスターから採取する存在。正直、見た目が地味で功績としても目立たない存在のため、あまり日の目を見ない。しかし、ダンジョン探索には欠かせない縁の下の力持ち的存在。 採集者はなくてはならない存在ではある。しかし、探求者のように表立てって輝かしい功績が生まれるのは珍しく、技術者のように人々に影響のある仕事でもない。そんな採集者はあまりいいイメージを持たれることはなかった。 しかし、少女はそんな状況を不満に思いつつも、己の気の赴くままにダンジョンの素材を集め続ける。 そんな感じで活動していた少女だったが、ギルドからの依頼で不穏な動きをしている探求者とダンジョンに潜ることに。 そして何かあったときに証拠になるように事前に非公開設定でこっそりと動画を撮り始めて。 しかし、その配信をする際に設定を失敗していて、通常公開になっていた。 そんなこともつゆ知らず、悪質探求者たちにモンスターを擦り付けられてしまう。 本来であれば絶望的な状況なのだが、少女は動揺することもあせるようなこともなく迫りくるモンスターと対峙した。 そうして始まった少女による蹂躙劇。 明らかに見た目の年齢に見合わない解体技術に阿鼻叫喚のコメントと、ただの作り物だと断定しアンチ化したコメント、純粋に好意的なコメントであふれかえる配信画面。 こうして少女によって、世間の採取家の認識が塗り替えられていく、ような、ないような…… ※カクヨムにて先行公開しています。

処理中です...