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第一章 幸せの青い鳥?
1-4 魔獣ガルーダの頼み事
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翌日、ふかふかな感触の中、朝日と共に目覚めた私。
ハッと気がつくと、彼が上から覗き込んでいた。
どうやら魔法の特訓中に、彼の素敵な七色の羽毛布団の上で寝てしまっていたようだ。
ドキっ。
さすがに寝起きに、このガルーダ様の御尊顔のアップは心臓に良くない。
普通に覗き込まれていると、このいかにも鳥ですといった感じの眼が怖い。
まあガルーダというものは地球では神様っぽい存在であり、それなりに会話が成り立つ、かなりのイケメン(あくまでガルーダとして)だし別に恐ろしい存在ではないのですが、それでもビジュアル的にね。
「ようやく起きたか。
それにしても覚えの悪い奴だ。
魔力はたくさんある癖に、基本的な魔法の習得にあんなにかかるとは」
「えー、それは酷いですよ。
昨日まで、魔法なんて物が存在するなんて夢にも思わなかったんですからー。
あー、なんか体が汗臭いし、着替えたいけど替えがないなあ」
「ふむ。
それでは、こいつはどうだ?
浄化の魔法だ。覚えろ」
「え?」
彼は浄化の魔法を唱え、私の体は一瞬にして綺麗になって大変爽やかな状態になった。
「うわ、凄い。
これは絶対に覚えなくちゃ!」
「はっはっは、我らの浄化は強力だぞ。
羽根の繕いにも使うのでな。
よく覚えておけ。
人間はトイレの始末にも使うそうだ」
「浄化、浄化、浄化!」
それから百二十七回目にして、ようやく超強力浄化魔法を覚える事が出来た。
やったね!
「お前という奴は相変わらず物覚えが……」
「わ、悪うございましたね!
あと、火起こしって出来るのですか?」
「出来るぞ、こうやるのだ。
それっ」
そのいきなり出現した炎は空中に留まり、特に燃やす物がなくても燃え続けて、焚火の炎くらいの火力はありそうな感じだった。
ついでに練習したが、もう魔法は三回目なのもあって比較的早く習得した。
それでも覚えられたのは三十七回目の事だった。
遅く起きたのもあり、また魔法の練習を延々とやっていたため、もうご飯が朝昼兼用になってしまった。
「へえ、便利。
でも調理するには食材や調理器具を置く台が要るなあ」
「では、これをやろう」
そう言って彼が差し出したものは、先の尖った丈夫そうな細い枝だった。
「それは、なかなか燃えにくい種類の枝なのでな。
薪にするには不向きであろうが、肉を刺して焼くには具合がよかろう」
「ありがとう~」
塩はないが、そこは我慢。
おそらく爪で裂いたであろう肉をじっくりと焚火で焙って、持っていたペットボトルの中に作った水を飲みながら、しっかりと洗っておいた葉野菜を齧ったのだが。
「ま、まずーい」
その葉は、人間の食用にはあまり向かない種類だったらしい。
幾種類か試してみて、一番マシそうな奴を齧り、後は果実なんかで埋め合わせをした。
肉も味付けが一切ないので微妙な味わいだったが、贅沢を言っていると今は生きていけない。
「贅沢な奴だ。
それらは一番美味い食料なのだぞ」
そうかもしれない。
人間とは必要な栄養素が異なるので、味覚も異なるのかもしれないのだ。
これらだって、ちゃんと味付けして調理すれば美味しく食べられるかもしれないのだが、さすがに現状それは無理であった。
なんとしても、早く人間の街へ行かなくては。
「それでは、あなたの頼み事というのを聞かせてもらっていいですか」
だが、しばしの間が開いた。
「あれ? どうしました?」
「い、いやな。
ちょっと言いにくい事なのでな。
特に人間には」
「何を今更。
あなた、そんなキャラじゃないでしょ」
それから、人間でいえば咳払いに当たるような、若干奇妙な喉に何か引っ掛かったかのような声を一声発し、彼は打ち明けた。
「じ、実はな。
お前の能力で、私を助けてほしいのだ」
「私の能力というと?」
「その例の、我らと話が出来るというあれだ。
我も人の言葉を使ったりするが、我らの言葉を使える人の子はおらぬ。
お前は、動物・魔物・魔獣などと自在に話が出来る。
これは、おそらく何かお前の特質のような物が、世界を渡る時にスキル化したというようなものだ。
なんというか、お前の願望に近いようなものだ。
魂の力とでもいうか」
それを聞いて、私は思わず天を仰いでしまった。
なるほど、このような異世界へやってきてしまってさえなお、モフモフを愛するミス・ドリトルとしての本領発揮な訳ですね。
いかにも私らしくて、なんとも言えません。
でも、それが実際に役に立ってしまっているので別によいのですが。
いやむしろ、役に立つどころではなく、これがなかったら確実に行き倒れになっていたはず。
いっそ、これを『ユニークスキル・ミスドリトル』と命名してみましょうか⁉
「それで、肝心の内容は?」
「う、うむ。そ、それはな」
また言い淀んでいる。
何かこう、ガルーダというか、魔獣として人間に頼む事を恥じているかのような雰囲気?
「もう! 往生際が悪いですね。
さあ、きりきりと吐け、おっさん」
そして、彼はついに観念したかのように話を切り出した。
「済まん、我の恋路の縁を結んではもらえないだろうか」
「ええっ」
自分だって、まだ異性と縁を結んだ事など一度もないというのに、こんな魔獣さんのキューピッドをやれというの?
そんなの無理い。
友達の縁結びをした事すらもないのですが。
あ、動物ならあるのですが、さすがにそれと魔獣さんなる物を比べるのはなんなのですけれども。
「でもなんで?
普通に求婚すればいいじゃないですか。
あなた、なんか凄くイケメンっぽい感じだし。
ガルーダの女の子からも、結構もてるんじゃないですか?」
「うむ、このあたりに住む七色ガルーダの中では我が一番立派な雄なのは間違いないところだ。
羽根の美しさ、体の大きさ、飛ぶ力や魔法の強さなどなど。
だがなあ、それが必ずしも決め手にはならぬのだ」
それはまた面倒臭い種族だな。
そんな孔雀の尾羽のように立派で目立つ美しい羽根をお持ちなのだから、それの良し悪しで結婚相手の優劣を決めてしまえばいいのに。
なまじ知能が高そうな生き物だから、そうなるんだろうなあ。
人間と一緒、いや羽根の美しさを大事な要素とする孔雀や、雄の強さが一番みたいなジャコウウシっぽい要素も加わっている分、人間以上に面倒臭いぞ。
「えーと、具体的には?」
「なんというか、これまた我の相手がこのあたりの雌ガルーダの中では一番の美しさや雌としての最高の素養を持つ者でな」
「まさにベストカップルではないですか。
それの何がいけないと、そのお相手は言うので?」
「まあ、そのなんだ。
我らの種族の雌というものは大変気位が高くてな。
なんというか、理想が高いというか。
自分にはもっと相応しい相手がいる、みたいな。
まあそういうものだ」
ああ、これまた雌の方も一番面倒臭い奴だった。
「他の仲間から言ってもらっても駄目なんですか?
例えば、長老様とかに」
「そういう無理強いのような事は掟で禁じられていてな。
同じ仲間からならよいのだが、それには向こうが耳を貸さないのでな。
なんというか、頑張って口説くしかないというか……」
最後の辺は、かなりションボリとした、人間で言えば肩を落としたみたにトーンの低い様子だった。
「それを私にやれというので?
同じ種族の方が説得してみても駄目な案件なのに?」
「まあ、なんというか神頼みみたいなものか。
こうして稀人などという、我らよりも希少な者と偶然出会ったのも何かの思し召し。
向こうも興味くらいは持ってくれるだろう。
トライしてくれるだけでもいい。
それだけで礼はするし、人里まで送ってやろう。
頼む、この通り!」
私は溜息を吐いて、こう言った。
「じゃあ、まず塩を捜してちょうだいな。
トライはその後よ」
こうして私は、この異世界なる場所でいきなり、魔獣さんの仲人をする羽目になってしまった。
スキル・ミスドリトルの華麗なるデビュー?
ハッと気がつくと、彼が上から覗き込んでいた。
どうやら魔法の特訓中に、彼の素敵な七色の羽毛布団の上で寝てしまっていたようだ。
ドキっ。
さすがに寝起きに、このガルーダ様の御尊顔のアップは心臓に良くない。
普通に覗き込まれていると、このいかにも鳥ですといった感じの眼が怖い。
まあガルーダというものは地球では神様っぽい存在であり、それなりに会話が成り立つ、かなりのイケメン(あくまでガルーダとして)だし別に恐ろしい存在ではないのですが、それでもビジュアル的にね。
「ようやく起きたか。
それにしても覚えの悪い奴だ。
魔力はたくさんある癖に、基本的な魔法の習得にあんなにかかるとは」
「えー、それは酷いですよ。
昨日まで、魔法なんて物が存在するなんて夢にも思わなかったんですからー。
あー、なんか体が汗臭いし、着替えたいけど替えがないなあ」
「ふむ。
それでは、こいつはどうだ?
浄化の魔法だ。覚えろ」
「え?」
彼は浄化の魔法を唱え、私の体は一瞬にして綺麗になって大変爽やかな状態になった。
「うわ、凄い。
これは絶対に覚えなくちゃ!」
「はっはっは、我らの浄化は強力だぞ。
羽根の繕いにも使うのでな。
よく覚えておけ。
人間はトイレの始末にも使うそうだ」
「浄化、浄化、浄化!」
それから百二十七回目にして、ようやく超強力浄化魔法を覚える事が出来た。
やったね!
「お前という奴は相変わらず物覚えが……」
「わ、悪うございましたね!
あと、火起こしって出来るのですか?」
「出来るぞ、こうやるのだ。
それっ」
そのいきなり出現した炎は空中に留まり、特に燃やす物がなくても燃え続けて、焚火の炎くらいの火力はありそうな感じだった。
ついでに練習したが、もう魔法は三回目なのもあって比較的早く習得した。
それでも覚えられたのは三十七回目の事だった。
遅く起きたのもあり、また魔法の練習を延々とやっていたため、もうご飯が朝昼兼用になってしまった。
「へえ、便利。
でも調理するには食材や調理器具を置く台が要るなあ」
「では、これをやろう」
そう言って彼が差し出したものは、先の尖った丈夫そうな細い枝だった。
「それは、なかなか燃えにくい種類の枝なのでな。
薪にするには不向きであろうが、肉を刺して焼くには具合がよかろう」
「ありがとう~」
塩はないが、そこは我慢。
おそらく爪で裂いたであろう肉をじっくりと焚火で焙って、持っていたペットボトルの中に作った水を飲みながら、しっかりと洗っておいた葉野菜を齧ったのだが。
「ま、まずーい」
その葉は、人間の食用にはあまり向かない種類だったらしい。
幾種類か試してみて、一番マシそうな奴を齧り、後は果実なんかで埋め合わせをした。
肉も味付けが一切ないので微妙な味わいだったが、贅沢を言っていると今は生きていけない。
「贅沢な奴だ。
それらは一番美味い食料なのだぞ」
そうかもしれない。
人間とは必要な栄養素が異なるので、味覚も異なるのかもしれないのだ。
これらだって、ちゃんと味付けして調理すれば美味しく食べられるかもしれないのだが、さすがに現状それは無理であった。
なんとしても、早く人間の街へ行かなくては。
「それでは、あなたの頼み事というのを聞かせてもらっていいですか」
だが、しばしの間が開いた。
「あれ? どうしました?」
「い、いやな。
ちょっと言いにくい事なのでな。
特に人間には」
「何を今更。
あなた、そんなキャラじゃないでしょ」
それから、人間でいえば咳払いに当たるような、若干奇妙な喉に何か引っ掛かったかのような声を一声発し、彼は打ち明けた。
「じ、実はな。
お前の能力で、私を助けてほしいのだ」
「私の能力というと?」
「その例の、我らと話が出来るというあれだ。
我も人の言葉を使ったりするが、我らの言葉を使える人の子はおらぬ。
お前は、動物・魔物・魔獣などと自在に話が出来る。
これは、おそらく何かお前の特質のような物が、世界を渡る時にスキル化したというようなものだ。
なんというか、お前の願望に近いようなものだ。
魂の力とでもいうか」
それを聞いて、私は思わず天を仰いでしまった。
なるほど、このような異世界へやってきてしまってさえなお、モフモフを愛するミス・ドリトルとしての本領発揮な訳ですね。
いかにも私らしくて、なんとも言えません。
でも、それが実際に役に立ってしまっているので別によいのですが。
いやむしろ、役に立つどころではなく、これがなかったら確実に行き倒れになっていたはず。
いっそ、これを『ユニークスキル・ミスドリトル』と命名してみましょうか⁉
「それで、肝心の内容は?」
「う、うむ。そ、それはな」
また言い淀んでいる。
何かこう、ガルーダというか、魔獣として人間に頼む事を恥じているかのような雰囲気?
「もう! 往生際が悪いですね。
さあ、きりきりと吐け、おっさん」
そして、彼はついに観念したかのように話を切り出した。
「済まん、我の恋路の縁を結んではもらえないだろうか」
「ええっ」
自分だって、まだ異性と縁を結んだ事など一度もないというのに、こんな魔獣さんのキューピッドをやれというの?
そんなの無理い。
友達の縁結びをした事すらもないのですが。
あ、動物ならあるのですが、さすがにそれと魔獣さんなる物を比べるのはなんなのですけれども。
「でもなんで?
普通に求婚すればいいじゃないですか。
あなた、なんか凄くイケメンっぽい感じだし。
ガルーダの女の子からも、結構もてるんじゃないですか?」
「うむ、このあたりに住む七色ガルーダの中では我が一番立派な雄なのは間違いないところだ。
羽根の美しさ、体の大きさ、飛ぶ力や魔法の強さなどなど。
だがなあ、それが必ずしも決め手にはならぬのだ」
それはまた面倒臭い種族だな。
そんな孔雀の尾羽のように立派で目立つ美しい羽根をお持ちなのだから、それの良し悪しで結婚相手の優劣を決めてしまえばいいのに。
なまじ知能が高そうな生き物だから、そうなるんだろうなあ。
人間と一緒、いや羽根の美しさを大事な要素とする孔雀や、雄の強さが一番みたいなジャコウウシっぽい要素も加わっている分、人間以上に面倒臭いぞ。
「えーと、具体的には?」
「なんというか、これまた我の相手がこのあたりの雌ガルーダの中では一番の美しさや雌としての最高の素養を持つ者でな」
「まさにベストカップルではないですか。
それの何がいけないと、そのお相手は言うので?」
「まあ、そのなんだ。
我らの種族の雌というものは大変気位が高くてな。
なんというか、理想が高いというか。
自分にはもっと相応しい相手がいる、みたいな。
まあそういうものだ」
ああ、これまた雌の方も一番面倒臭い奴だった。
「他の仲間から言ってもらっても駄目なんですか?
例えば、長老様とかに」
「そういう無理強いのような事は掟で禁じられていてな。
同じ仲間からならよいのだが、それには向こうが耳を貸さないのでな。
なんというか、頑張って口説くしかないというか……」
最後の辺は、かなりションボリとした、人間で言えば肩を落としたみたにトーンの低い様子だった。
「それを私にやれというので?
同じ種族の方が説得してみても駄目な案件なのに?」
「まあ、なんというか神頼みみたいなものか。
こうして稀人などという、我らよりも希少な者と偶然出会ったのも何かの思し召し。
向こうも興味くらいは持ってくれるだろう。
トライしてくれるだけでもいい。
それだけで礼はするし、人里まで送ってやろう。
頼む、この通り!」
私は溜息を吐いて、こう言った。
「じゃあ、まず塩を捜してちょうだいな。
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