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第一章 幸せの青い鳥?
1-8 異種族井戸端会議
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相手は、なんというか面食らっていたようだ。
そういう感じの人間臭い表情をしている。
幸いな事に、私の事を捕食対象として見做さずに、好奇心の対象としたようだ。
無闇に攻撃したりしてこないのは、彼らが生態系の頂点に立つような強力で知的な種族だという事もあるのだろう。
それに、何故か普通に話しかけてきているし。
もしかして、魔獣は他の種族と普通に会話が出来るのかもしれない。
もしかして捕食する相手とも会話が成り立つのだろうか。
それはちょっと嫌だな。
鶏や豚の意味のわかるリアルな悲鳴や命乞いは聞きたくない。
日本では、そういう生々しい場面に遭遇する事は無かったが、この世界では非常に怪しい。
市場で生きた動物を売っていたり、そいつらがその場で肉にされていたりしそうなので。
「あのう、たぶん私達はあなたを捜していたと思うのですが」
「私を? あなた、この辺で見かけない種族ね。
何の種族?」
「ああ、私は人間ですよ。
わかります?」
「人間⁉ あなたが⁇
噂に聞く人間という生き物はかなり好戦的で、私達を見ると即座に襲ってくる者もいると聞いたのですが。
あなたって、そういう雰囲気が全然ないですよね。
私を見てもまったく驚いていないし」
「ああ、私は多分あなたに求婚しているだろう『自称この辺りで一番強い雄の七色ガルーダ』とやらの友人ですから」
「なんだ、彼の知り合いだったの。
それで、もしかして彼も来ているの」
「彼が来ていないと、人間の私はこんなところに来られないですよ。
せっかく、あなたが来てくれたかと思えば、今度は奴が帰ってこないのですが。
これだから時間にルーズな男は困りますね。
あいつめ、どこをほっつき歩いているんだろう」
「雄なんて、皆そんなものよ」
「そうでしたか。
そういや、ガルーダの雄は行動半径が雌よりも広いんでしたっけ」
「そうそう。
どいつもこいつも表六玉もいいところよ」
気難しいというよりも、彼女は雄のガルーダ全般に不満を持っていそうだ。
男と女の間にある溝は、異世界における異種族の間にもあったものらしい。
自分はその種の経験値が少なすぎて今一つついていけていない。
「あの男ってねー。
本当にルーズなのよー。
待っていると、ちっとも来ないし。
獲物を獲ってくると言って出かけると、今みたいにどこかへ行ったきりだし」
「それは駄目ですね。
帰ってきたら、そのあたりを共に弾劾しましょう。
奴め、『男には付き合いってものがあるんだ』とか言っていたりしませんか」
「そういう事も言う時があるわよ。
ただの苦しい言い訳だけど」
「それ、とっても駄目な奴」
「そうなのよー。
結構見場はいいし、強い雄だし。
確かにこの辺りでは一番の七色ガルーダの雄なんだけどねー」
「いっそ、他の雄に乗り換えられては」
あっさりと駄目雄ガルさんを裏切って、女性の味方につくスタンス。
だが彼女は苦笑して言った。
「あら、それは駄目よ。
他の雄も似たり寄ったりな奴ばっかりなんですもの」
これには苦笑を返す他は無かった。
そういうのって種族特性みたいなもんなのか。
殆どライオンの雄だな。
気ままに縄張りのパトロールに出かけていって遊び回っているくせに、御飯の時だけ帰ってくるみたいな。
狩りはお母さんの仕事だ。
それからも、あれこれと聞いておいた。
魔物や魔獣の話、食べられる植物や土の中の食材、そして危険生物に関してなど。
絶対に、この方の方がガルさんよりも博識。
あと回復魔法を伝授してもらった。
魔法の教え方も凄く上手だ。
あの男、魔法は凄いのかもしれないが教え方がへたくそ!
もしかして回復魔法などは苦手だったから教えてくれなかったんじゃないの?
「わーい、強力な回復魔法を五つも覚えちゃった。
ありがとう、ナナさん」
彼女の名前も、やはり発音できないものだったので、彼女の事はそう呼ぶようにした。
「でも、サヤ。
あなた強い攻撃魔法を覚えられないのね。
あなたって力も強くなさそうだし、爪も弱そう。
この世界では気をつけないといけないわよ。
早く人間の街へ行きなさい」
あのう、それはあなたの返答次第なんですけどね~。
さんざん返事を渋っている割には、ガルさんからの求婚をバッサリ切るつもりもなさそうだ。
なんだかんだ言って、彼は優良物件なものらしい。
将来は、私も見習うべき対応なのかもしれない。
「とりあえず、良さげな男はキープ」
今はそれどころじゃないんだけど。
それからも井戸端会議を続ける事、約二時間。
空が茜に染まり出す頃、ようやく奴は帰ってきた。
「やれやれ、表六玉のお帰りねえ」
「これは絶対に〆るべき案件」
そうとは知らずに、奴は暢気に大声で叫んでいた。
「あれー、******。
探していたんだよー。
サヤ、いい獲物がごっそり獲れたぜ」
どうやら、ミスター表六玉はすっかり狩りに夢中になっていたものらしい。
七色ガルーダと人間の女の子は共に頭を振る破目になっていた。
そういう感じの人間臭い表情をしている。
幸いな事に、私の事を捕食対象として見做さずに、好奇心の対象としたようだ。
無闇に攻撃したりしてこないのは、彼らが生態系の頂点に立つような強力で知的な種族だという事もあるのだろう。
それに、何故か普通に話しかけてきているし。
もしかして、魔獣は他の種族と普通に会話が出来るのかもしれない。
もしかして捕食する相手とも会話が成り立つのだろうか。
それはちょっと嫌だな。
鶏や豚の意味のわかるリアルな悲鳴や命乞いは聞きたくない。
日本では、そういう生々しい場面に遭遇する事は無かったが、この世界では非常に怪しい。
市場で生きた動物を売っていたり、そいつらがその場で肉にされていたりしそうなので。
「あのう、たぶん私達はあなたを捜していたと思うのですが」
「私を? あなた、この辺で見かけない種族ね。
何の種族?」
「ああ、私は人間ですよ。
わかります?」
「人間⁉ あなたが⁇
噂に聞く人間という生き物はかなり好戦的で、私達を見ると即座に襲ってくる者もいると聞いたのですが。
あなたって、そういう雰囲気が全然ないですよね。
私を見てもまったく驚いていないし」
「ああ、私は多分あなたに求婚しているだろう『自称この辺りで一番強い雄の七色ガルーダ』とやらの友人ですから」
「なんだ、彼の知り合いだったの。
それで、もしかして彼も来ているの」
「彼が来ていないと、人間の私はこんなところに来られないですよ。
せっかく、あなたが来てくれたかと思えば、今度は奴が帰ってこないのですが。
これだから時間にルーズな男は困りますね。
あいつめ、どこをほっつき歩いているんだろう」
「雄なんて、皆そんなものよ」
「そうでしたか。
そういや、ガルーダの雄は行動半径が雌よりも広いんでしたっけ」
「そうそう。
どいつもこいつも表六玉もいいところよ」
気難しいというよりも、彼女は雄のガルーダ全般に不満を持っていそうだ。
男と女の間にある溝は、異世界における異種族の間にもあったものらしい。
自分はその種の経験値が少なすぎて今一つついていけていない。
「あの男ってねー。
本当にルーズなのよー。
待っていると、ちっとも来ないし。
獲物を獲ってくると言って出かけると、今みたいにどこかへ行ったきりだし」
「それは駄目ですね。
帰ってきたら、そのあたりを共に弾劾しましょう。
奴め、『男には付き合いってものがあるんだ』とか言っていたりしませんか」
「そういう事も言う時があるわよ。
ただの苦しい言い訳だけど」
「それ、とっても駄目な奴」
「そうなのよー。
結構見場はいいし、強い雄だし。
確かにこの辺りでは一番の七色ガルーダの雄なんだけどねー」
「いっそ、他の雄に乗り換えられては」
あっさりと駄目雄ガルさんを裏切って、女性の味方につくスタンス。
だが彼女は苦笑して言った。
「あら、それは駄目よ。
他の雄も似たり寄ったりな奴ばっかりなんですもの」
これには苦笑を返す他は無かった。
そういうのって種族特性みたいなもんなのか。
殆どライオンの雄だな。
気ままに縄張りのパトロールに出かけていって遊び回っているくせに、御飯の時だけ帰ってくるみたいな。
狩りはお母さんの仕事だ。
それからも、あれこれと聞いておいた。
魔物や魔獣の話、食べられる植物や土の中の食材、そして危険生物に関してなど。
絶対に、この方の方がガルさんよりも博識。
あと回復魔法を伝授してもらった。
魔法の教え方も凄く上手だ。
あの男、魔法は凄いのかもしれないが教え方がへたくそ!
もしかして回復魔法などは苦手だったから教えてくれなかったんじゃないの?
「わーい、強力な回復魔法を五つも覚えちゃった。
ありがとう、ナナさん」
彼女の名前も、やはり発音できないものだったので、彼女の事はそう呼ぶようにした。
「でも、サヤ。
あなた強い攻撃魔法を覚えられないのね。
あなたって力も強くなさそうだし、爪も弱そう。
この世界では気をつけないといけないわよ。
早く人間の街へ行きなさい」
あのう、それはあなたの返答次第なんですけどね~。
さんざん返事を渋っている割には、ガルさんからの求婚をバッサリ切るつもりもなさそうだ。
なんだかんだ言って、彼は優良物件なものらしい。
将来は、私も見習うべき対応なのかもしれない。
「とりあえず、良さげな男はキープ」
今はそれどころじゃないんだけど。
それからも井戸端会議を続ける事、約二時間。
空が茜に染まり出す頃、ようやく奴は帰ってきた。
「やれやれ、表六玉のお帰りねえ」
「これは絶対に〆るべき案件」
そうとは知らずに、奴は暢気に大声で叫んでいた。
「あれー、******。
探していたんだよー。
サヤ、いい獲物がごっそり獲れたぜ」
どうやら、ミスター表六玉はすっかり狩りに夢中になっていたものらしい。
七色ガルーダと人間の女の子は共に頭を振る破目になっていた。
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