異世界へようこそ、ミス・ドリトル

緋色優希

文字の大きさ
31 / 104
第一章 幸せの青い鳥?

1-31 回復魔法

しおりを挟む
「そうか、回復魔法士として働く事にしたか。
 ではよろしくな、サヤ」

「はい、改めてよろしくお願いいたします」

 そういう事で、自分が預かりにされている上司ふくだんちょうに挨拶をしてから、仕事場へ向かう事になった。

「じゃあ、サヤ。
 この神官服に着替えてちょうだい」

「わかりましたー」

 これは地球で言えば、ナース服みたいなものか。

「ねえ、ベロニカさん」

「ん? なんだ」

「この神官服なんだけど、神官ではない私なんかが着ていてもいいの?」

「まあ神官服を着ているが、騎士団に本物の神官は一人もいないから安心しろ。

 回復魔法を使う者は神殿の管轄とか神殿が勝手に言っているから、軋轢を避けるためだけに一応着ているだけだ」

「なあんだ、よかった。
 神官服を着ている集団で、一人だけ不信心者が混じっているのは気が引けていましたので」

 でも神官服なのですよ。
 ラノベなんかでは、よくこれを着ているヒロインとかがいるじゃない。

 ちょっと憧れはあったのだ。
 コスプレに走るほどオタクではなかっただけで。

 何せ、モフモフ系だったものでして。
 姿見の大きな鏡に映したら、我ながらなかなか似合っていた。

 その手のイベントならば、このまま紛れ込んでも通用するかもしれない。

 これはもし日本へ帰れる事があったのなら、是非御土産に持って帰って試すとしましょう。

 しばらく、鏡の前でくるくると踊ってから、マリエールさんのところへ戻った。

「あら、結構似合うじゃない。
 なかなか可愛いわよ。
 じゃあ、こっちで魔力の測定をしてみましょうか」

 おお、こいつは定番の行事ですね。
 ガルさんは、私の魔力はたくさんあると言っていましたが、実際にはいかなるレベルにあるものか。

 浄化の魔法は日常使いしていますが、その他はサボっていますね。

 もし、騎士団の野外演習にでもついていくのであれば、水作りや火起こしなどは役に立つはずですので、また精進しておきましょうかね。

「あなた、他に魔法は使える?」

「えーと、浄化の魔法と水出し魔法と、火起こしというか竈代わりに使える持続性の高い火魔法ですね。

 後はエアバレットの出来損ないのような物を。
 詳しい人に言わせると、インテリ系の能力なので、あまり攻撃魔法とかは上手く使えないらしいです」

「上等、上等。
 回復魔法士なんて、大体そんなものだから。
 回復魔法の他に日常魔法が使えれば重宝するわ」

「それはよかったです。
 どうやら私って新しい魔法を覚えるのが苦手なようで、日常魔法を覚えるのにもかなり苦労したんです」

「そう。まあ、今ある物でも十分じゃないのかな。
 じゃあ、いろいろテストしてみますね」

 とりあえず、測定器のような物を出してきてくれた。
 少し平たい金属製の箱型をしたものだった。

 上部に測定用のパッドのような物が据えられていて、手の平マークが描かれているので、どうやらそこに手を翳せば自動で測定してくれるものらしい。

 マリエールさんも、笑顔でそこに手を載せるように指し示した。

「では遠慮なく」

 そして、マリエールさんの表情が緊迫した。
 前にもこういうパターンがあったような。

 ああ、冒険者ギルドの時だ。
 マズイ、また何かやってしまったのか、私。

「どうした、マリエール」

「ああいえ、この子って一瞬にして魔力測定器のメーターを振り切ってしまったので。
 今までこんな事は一度もなかったんだけど」

 ベロニカさんは測定器の型式を見ていたようだった。
 う、身分証を見た時も思ったのだが、私ってここの字が読めない。

 会話は『スキル・ミスドリトル』のお蔭で問題なく出来ているけど、字はさすがに無理だった。

 ここの文字はアルファベットのような物で、象形文字や漢字のようなトンデモ文字でなくてまだ助かったのだが。

 ミミズのたくり文字でもなくて、文書は一字一字が独立して書かれている英語のような形式だからまだいいようなものの。

 十進法の数字だけはもう覚えた。
 文字は全部で三十個くらいだと思うけど、今覚えている最中だ。

 英語はそこそこいける方なので、なんとか取得は出来そうなのだけれど、結構時間はかかりそう。

 せめて自分の名前だけは、早急に読み書きできるようにしておこう。

「そうか。
 マリエール、実はな。
 こいつは、いわゆる稀人という奴だ。

 魔力は高いはずだとは思っていたが、メーターを振り切ってしまったか。
 ああ、そういう話は騎士団長も副騎士団長も知っているから心配しなくていい。

 私がこの子の御世話係なんだ。
 しばらく、様子を見に通うとしよう」

「そうだったの⁉
 へえ、じゃあ一回実地で魔法を見せてもらった方がいいかな」

「その方がいいかもしれんな」
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

聖女召喚

胸の轟
ファンタジー
召喚は不幸しか生まないので止めましょう。

存在感のない聖女が姿を消した後 [完]

風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは 永く仕えた国を捨てた。 何故って? それは新たに現れた聖女が ヒロインだったから。 ディアターナは いつの日からか新聖女と比べられ 人々の心が離れていった事を悟った。 もう私の役目は終わったわ… 神託を受けたディアターナは 手紙を残して消えた。 残された国は天災に見舞われ てしまった。 しかし聖女は戻る事はなかった。 ディアターナは西帝国にて 初代聖女のコリーアンナに出会い 運命を切り開いて 自分自身の幸せをみつけるのだった。

その聖女は身分を捨てた

喜楽直人
ファンタジー
ある日突然、この世界各地に無数のダンジョンが出来たのは今から18年前のことだった。 その日から、この世界には魔物が溢れるようになり人々は武器を揃え戦うことを覚えた。しかし年を追うごとに魔獣の種類は増え続け武器を持っている程度では倒せなくなっていく。 そんな時、神からの掲示によりひとりの少女が探し出される。 魔獣を退ける結界を作り出せるその少女は、自国のみならず各国から請われ結界を貼り廻らせる旅にでる。 こうして少女の活躍により、世界に平和が取り戻された。 これは、平和を取り戻した後のお話である。

社畜聖女

碧井 汐桜香
ファンタジー
この国の聖女ルリーは、元孤児だ。 そんなルリーに他の聖女たちが仕事を押し付けている、という噂が流れて。

聖女が降臨した日が、運命の分かれ目でした

猫乃真鶴
ファンタジー
女神に供物と祈りを捧げ、豊穣を願う祭事の最中、聖女が降臨した。 聖女とは女神の力が顕現した存在。居るだけで豊穣が約束されるのだとそう言われている。 思ってもみない奇跡に一同が驚愕する中、第一王子のロイドだけはただ一人、皆とは違った視線を聖女に向けていた。 彼の婚約者であるレイアだけがそれに気付いた。 それが良いことなのかどうなのか、レイアには分からない。 けれども、なにかが胸の内に燻っている。 聖女が降臨したその日、それが大きくなったのだった。 ※このお話は、小説家になろう様にも掲載しています

奥様は聖女♡

喜楽直人
ファンタジー
聖女を裏切った国は崩壊した。そうして国は魔獣が跋扈する魔境と化したのだ。 ある地方都市を襲ったスタンピードから人々を救ったのは一人の冒険者だった。彼女は夫婦者の冒険者であるが、戦うのはいつも彼女だけ。周囲は揶揄い夫を嘲るが、それを追い払うのは妻の役目だった。

主婦が役立たず? どう思うかは勝手だけど、こっちも勝手にやらせて貰うから

渡里あずま
ファンタジー
安藤舞は、専業主婦である。ちなみに現在、三十二歳だ。 朝、夫と幼稚園児の子供を見送り、さて掃除と洗濯をしようとしたところで――気づけば、石造りの知らない部屋で座り込んでいた。そして映画で見たような古めかしいコスプレをした、外国人集団に囲まれていた。 「我々が召喚したかったのは、そちらの世界での『学者』や『医者』だ。それを『主婦』だと!? そんなごく潰しが、聖女になどなれるものか! 役立たずなどいらんっ」 「いや、理不尽!」 初対面の見た目だけ美青年に暴言を吐かれ、舞はそのまま無一文で追い出されてしまう。腹を立てながらも、舞は何としても元の世界に戻ることを決意する。 「主婦が役立たず? どう思うかは勝手だけど、こっちも勝手にやらせて貰うから」 ※※※ 専業主婦の舞が、主婦力・大人力を駆使して元の世界に戻ろうとする話です(ざまぁあり) ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

女神に頼まれましたけど

実川えむ
ファンタジー
雷が光る中、催される、卒業パーティー。 その主役の一人である王太子が、肩までのストレートの金髪をかきあげながら、鼻を鳴らして見下ろす。 「リザベーテ、私、オーガスタス・グリフィン・ロウセルは、貴様との婚約を破棄すっ……!?」 ドンガラガッシャーン! 「ひぃぃっ!?」 情けない叫びとともに、婚約破棄劇場は始まった。 ※王道の『婚約破棄』モノが書きたかった…… ※ざまぁ要素は後日談にする予定……

処理中です...