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第一章 幸せの青い鳥?
1-35 モフモフ・ハンター・サヤ
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そうこうするうちに、マースデン騎士団の交流のための訪問日がやってきた。
予定としては、まず騎士団本部に先方がやってきて、こっちの第一王子並びにマースデンと血縁関係のある第二王子フランクもやってくるという。
それから王宮へ赴き、国王を交えて懇親会を開くらしい。
そして晩餐会を執り行い、向こうの騎士団が王宮に泊まっていき、翌日の朝に出立するというスケジュール。
肝心の団旗は先方が騎士団本部を訪れた時に掲げられる予定で、王宮でも先方の物と並べて掲揚されるそうだ。
まあそういう訳で、私はお留守番なのだった。
怖い物見たさで(結構イケメンという噂の)第二王子を見ておきたかったのだが、先日のヤバイ回復魔法の件もあったので、絶対に目を付けられたりする事の無いようにお留守番をせよという訳なのだ。
あと王宮での晩餐会のメニューに興味があったのだが、どっちみち私はそのような良い物の御馳走には与れないそうだから、そこは必然的に興味が薄れた。
向こうの騎士団と一緒にマースデン王国の王太子様が来るそうで、彼はこれまた結構イケメンだという噂なので、それも見てみたかったのだが断念せざるを得なかった。
仕方がないので、朝っぱらからリュールさんを見送った後に、ベロニカさんをガイドに公爵家の邸内探索と洒落込んだ。
例の従魔である魔物の捜索なのだ。
ベロニカさんは呆れていたが、まあ一人だけお留守番で可哀想だと思ったのだろう。
馬専任聖女様の御世話係として付き合ってくれる事になった。
「隠し空間になっていたら絶対に見つかりませんよ。
そもそも、従魔とはいえ魔物が勝手に徘徊していたら大変ではないですか。
まあ邸内ならばともかく、屋敷の外へ出てしまうとね」
そういや、今は彼らの主がお出かけ中でいないんだよね。
お留守番で寂しくないのかな。
私なんか、大変寂しい気持ちでいっぱいなのですが。
本日は私も大きく関わった案件である、あのモフモフな団旗の晴れ舞台だというのに。
それと、百数十枚もの希少な幻の羽根で飾られた団旗を見て、先方や第二王子がどんな顔をするのか。
本音で言うと、それを見られないのが一番寂しい。
「まあ、第一そんな空間がこの邸内にあるとするならば、御当主やリュールの妹さんの部屋が一番怪しいですからね。
そこはプライベートゾーンなので進入禁止ですから」
「ですよねー」
まあ、要するに第一容疑者を拘束出来ない捜査なので、所詮はただの退屈凌ぎでしかないという結末。
「まあ、今まで特にこの屋敷を探検してこなかったので、退屈凌ぎに回ってみても面白いかなと」
「もう。いい歳をして、子供ですか」
「だから、自分の国ではまだ子ども扱いなんですってば。
そもそも本当に子供だったら、初日に何をおいても探検しまくりでしたよ」
そんな会話をしつつ、廊下の壁や床などを隈なく探しながら、入れる部屋を順番に探していく。
たぶん、従業員の部屋にはそのようなモフモフの隠れ里など、さすがの御当主様といえども作っていないだろうから、それは捜査から除外しておく。
どっちみち人の部屋に無断で入れないし。
物置きなんかは、裏をかくという形でそうなっていてもおかしくないので、念入りに探してみた。
自分の中にはきっと存在しているはずだと信じている『モフモフ・レーダー』は既に起動済みだ。
結構、自分の家の犬猫の隠れていそうな場所とか、野良猫の集会場なんかを嗅ぎつける能力は高めだった。
だが、物置きにはそうたいした物は入っていなかった。
一番の収穫が、何故かあった普通の麦わら帽子だった。
夏になったら被ってみよう。
後でこいつを貰っていいか、公爵夫人に聞いてみようっと。
「もうこうなったら、なんでもいいから出てこないかな。
鼠でもイタチでも小鳥でもなんでもこい」
「鼠なんかどうするのですか。
少なくとも、私は要りませんよ」
「この世界の鼠は、もしかしてハムスターみたいに可愛いかもしれない。
そのような、心の求める仮説を唱えてみる」
「ハムスターというものが何なのかわかりませんが、そんなに鼠が欲しかったらダンジョンへ行くと鼠系の魔物もいますよ。
いっそラットマンなんか如何です。
醜悪なだけでまったく可愛くないですし、女性であれを喜ぶ方はまずいませんが」
「モフモフ・ハンターを自称する身としては、ちょっと挑戦してみたくはありますね。
それは強い奴ですか?」
「強くはないですが、数が多いですね。
まあゴブリンやコボルトなんかの鼠版みたいなものですね。
あいつらよりもラットマンの方が不潔感は数倍凄いですよ。
たまに騎士団の新人訓練で出かけると遭遇しますが、あれの相手は新人に全部やらせますね」
「じゃあ、要らないです」
別に私は鼠に固執している訳ではない。
どっちかというと、本当はあまり触りたくない気持ちだ。
単に、せっかくのイベントデーにお留守番をしていなければならない寂しさを埋めるために馬以外のモフモフに癒されたいだけなので。
でもちょっとがっかりです。
予定としては、まず騎士団本部に先方がやってきて、こっちの第一王子並びにマースデンと血縁関係のある第二王子フランクもやってくるという。
それから王宮へ赴き、国王を交えて懇親会を開くらしい。
そして晩餐会を執り行い、向こうの騎士団が王宮に泊まっていき、翌日の朝に出立するというスケジュール。
肝心の団旗は先方が騎士団本部を訪れた時に掲げられる予定で、王宮でも先方の物と並べて掲揚されるそうだ。
まあそういう訳で、私はお留守番なのだった。
怖い物見たさで(結構イケメンという噂の)第二王子を見ておきたかったのだが、先日のヤバイ回復魔法の件もあったので、絶対に目を付けられたりする事の無いようにお留守番をせよという訳なのだ。
あと王宮での晩餐会のメニューに興味があったのだが、どっちみち私はそのような良い物の御馳走には与れないそうだから、そこは必然的に興味が薄れた。
向こうの騎士団と一緒にマースデン王国の王太子様が来るそうで、彼はこれまた結構イケメンだという噂なので、それも見てみたかったのだが断念せざるを得なかった。
仕方がないので、朝っぱらからリュールさんを見送った後に、ベロニカさんをガイドに公爵家の邸内探索と洒落込んだ。
例の従魔である魔物の捜索なのだ。
ベロニカさんは呆れていたが、まあ一人だけお留守番で可哀想だと思ったのだろう。
馬専任聖女様の御世話係として付き合ってくれる事になった。
「隠し空間になっていたら絶対に見つかりませんよ。
そもそも、従魔とはいえ魔物が勝手に徘徊していたら大変ではないですか。
まあ邸内ならばともかく、屋敷の外へ出てしまうとね」
そういや、今は彼らの主がお出かけ中でいないんだよね。
お留守番で寂しくないのかな。
私なんか、大変寂しい気持ちでいっぱいなのですが。
本日は私も大きく関わった案件である、あのモフモフな団旗の晴れ舞台だというのに。
それと、百数十枚もの希少な幻の羽根で飾られた団旗を見て、先方や第二王子がどんな顔をするのか。
本音で言うと、それを見られないのが一番寂しい。
「まあ、第一そんな空間がこの邸内にあるとするならば、御当主やリュールの妹さんの部屋が一番怪しいですからね。
そこはプライベートゾーンなので進入禁止ですから」
「ですよねー」
まあ、要するに第一容疑者を拘束出来ない捜査なので、所詮はただの退屈凌ぎでしかないという結末。
「まあ、今まで特にこの屋敷を探検してこなかったので、退屈凌ぎに回ってみても面白いかなと」
「もう。いい歳をして、子供ですか」
「だから、自分の国ではまだ子ども扱いなんですってば。
そもそも本当に子供だったら、初日に何をおいても探検しまくりでしたよ」
そんな会話をしつつ、廊下の壁や床などを隈なく探しながら、入れる部屋を順番に探していく。
たぶん、従業員の部屋にはそのようなモフモフの隠れ里など、さすがの御当主様といえども作っていないだろうから、それは捜査から除外しておく。
どっちみち人の部屋に無断で入れないし。
物置きなんかは、裏をかくという形でそうなっていてもおかしくないので、念入りに探してみた。
自分の中にはきっと存在しているはずだと信じている『モフモフ・レーダー』は既に起動済みだ。
結構、自分の家の犬猫の隠れていそうな場所とか、野良猫の集会場なんかを嗅ぎつける能力は高めだった。
だが、物置きにはそうたいした物は入っていなかった。
一番の収穫が、何故かあった普通の麦わら帽子だった。
夏になったら被ってみよう。
後でこいつを貰っていいか、公爵夫人に聞いてみようっと。
「もうこうなったら、なんでもいいから出てこないかな。
鼠でもイタチでも小鳥でもなんでもこい」
「鼠なんかどうするのですか。
少なくとも、私は要りませんよ」
「この世界の鼠は、もしかしてハムスターみたいに可愛いかもしれない。
そのような、心の求める仮説を唱えてみる」
「ハムスターというものが何なのかわかりませんが、そんなに鼠が欲しかったらダンジョンへ行くと鼠系の魔物もいますよ。
いっそラットマンなんか如何です。
醜悪なだけでまったく可愛くないですし、女性であれを喜ぶ方はまずいませんが」
「モフモフ・ハンターを自称する身としては、ちょっと挑戦してみたくはありますね。
それは強い奴ですか?」
「強くはないですが、数が多いですね。
まあゴブリンやコボルトなんかの鼠版みたいなものですね。
あいつらよりもラットマンの方が不潔感は数倍凄いですよ。
たまに騎士団の新人訓練で出かけると遭遇しますが、あれの相手は新人に全部やらせますね」
「じゃあ、要らないです」
別に私は鼠に固執している訳ではない。
どっちかというと、本当はあまり触りたくない気持ちだ。
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