86 / 104
第二章 世直し聖女
2-29 新兵器登場
しおりを挟む
そして、お昼は美味しい王宮ランチを食べ終えて、それからお菓子を焼く事にした。
草色の奴が煩いので。
あとチュールにも約束してたような気がするし。
それに本日はベロニカさんを応援に呼んでおいたので、ちょっとそっちからの圧力もね。
「よーし、本日は準備しておいたホイップクリームを使用しますよ」
『僕、一番』
「はいはい。約束ですからね」
「それが例の美味しい奴ですか」
ベロニカさんの目が妖しく光を帯びてきた。
この方がいらっしゃるので、今日も少し量を多く作る必要がありますね。
「そうです。
本日はシュークリームのカスタードクリームにホイップクリームを合わせたダブルシューを製作します。
あと、ホイップクリームをプリンに乗せたプリンアラモードもね。
あと、もう一つ試作してみようと思っています」
更にもう一つ考えて準備をしておいたのだが、そいつはまた夜のお楽しみという事で。
「ほお、ついにアレを世に出される事に。
おめでとうございます、サヤ様」
「ありがとう、アメリ。
今日はあなたもお酒禁止ですから、その代わり美味しいスイーツを用意しますよ」
「楽しみです」
気のせいかもしれませんが、そこの床で二人の酔っ払いのベッドになっている草色の奴が、スイーツと聞いてピクっと動いたような気がしますね。
まあ夕方までには気付け薬の代わりに、いろいろとお供えしておこうかと思っていたのでいいのですけれども。
「ではまず、待望のペアシューから。
これは中に詰めるクリームを二種類使用しますので少し大きめサイズなのが普通です。
大きい方が形的にはしっかりしますので、皮は割と柔らかめ設定ですかね。
でもやはり油断するとペシャンコになってしまうのは変わりません。
柔らかいので特に」
じっくりと焼きながら、その間に他の鉄板に細長く生地をセットしていく私。
「それは?」
「こいつはエクレア。
チョコが手に入りましたので、これを。
こいつはサイズが小さめなので、ホイップクリームは使いません。
その代わりにチョコがかかっておりますので、二つの味が楽しめる事に変わりないです」
そして、また草色の奴がピクピクっとしている。
何回ピクっとしたら起き上がるのか。
最低でも夕方直前には起こさないといけないのですけどね。
まだ蹴りを入れる時間じゃありませんね。
どうせ蹴りを入れるなら、そいつを敷布団や枕の代わりにしている奴らから。
でもさすがにイケメン王太子に蹴りを入れるのは少々躊躇われます。
そのあたりは弟の元王子様にやっていただきますか。
タイムリミットまで、あと三時間といったところですかね。
今夜の主賓であるはずの草色の奴も含めて、お前らいい加減に起きろよ。
一体いつまで飲んでたんだ、もう。
その間にプリンアラモード用のプリンやフルーツなどの仕込みをしておきますか。
チュールがそれらを食べたそうにしてるので、各部素材を少し齧らせておく事に。
チャックが何故かウエハースが気になるらしくて、ひょいっと触手でつまんで齧っていた。
「それ、美味しいですか?」
『微妙です。
本官には少々歯ごたえが足りないかもしれないと聖女サヤに報告しておきます。
しかし、微妙かつ気になる物ですとも考察結果を告白します』
これはチャックにしては珍しい反応が返ってきたな。
ウエハースが気に入ったのなら、もっと買っておくか。
確かにこの手のウエハースは多少硬めに出来ているような。
きっとすぐにふやけてしまいそうなアイスクリームに刺す物と共用にしているのではないかと思うのだが、そもそも、この世界にはアイスクリームは無さそうなんだけど。
この子の場合、普通に食べられる物を欲する事自体が珍しいのだし。
たぶん、食い物を欲しがるのはこれが初めてなんじゃないのだろうか。
だが、確かに微妙な物には違いない。
そして焼き上がって来た大きめのシューが冷めてから、エクレアを魔導オーブンに突っ込んでおいて、切り込みを入れてクリームを詰めていきます。
これが美味いんだな、また。
『一個食べる』
「はいどうぞ。
どうせなら、そこの草色の奴の前で食べてきて。
いい加減に起こさないとな。
うっかり取られないようにね。
もし起き上がってきたら、こっちへ誘導してちょうだい」
『はーい』
まあ、そいつが起き上がって王太子が布団から放り出されたのなら私のせいじゃないですからね。
万が一頭を打って死んでも、私が生き返らせておけば無かった事に出来ますし。
その辺は本人の係累である弟さんで人体実験済みですので何も問題ありませんね。
草色の奴が煩いので。
あとチュールにも約束してたような気がするし。
それに本日はベロニカさんを応援に呼んでおいたので、ちょっとそっちからの圧力もね。
「よーし、本日は準備しておいたホイップクリームを使用しますよ」
『僕、一番』
「はいはい。約束ですからね」
「それが例の美味しい奴ですか」
ベロニカさんの目が妖しく光を帯びてきた。
この方がいらっしゃるので、今日も少し量を多く作る必要がありますね。
「そうです。
本日はシュークリームのカスタードクリームにホイップクリームを合わせたダブルシューを製作します。
あと、ホイップクリームをプリンに乗せたプリンアラモードもね。
あと、もう一つ試作してみようと思っています」
更にもう一つ考えて準備をしておいたのだが、そいつはまた夜のお楽しみという事で。
「ほお、ついにアレを世に出される事に。
おめでとうございます、サヤ様」
「ありがとう、アメリ。
今日はあなたもお酒禁止ですから、その代わり美味しいスイーツを用意しますよ」
「楽しみです」
気のせいかもしれませんが、そこの床で二人の酔っ払いのベッドになっている草色の奴が、スイーツと聞いてピクっと動いたような気がしますね。
まあ夕方までには気付け薬の代わりに、いろいろとお供えしておこうかと思っていたのでいいのですけれども。
「ではまず、待望のペアシューから。
これは中に詰めるクリームを二種類使用しますので少し大きめサイズなのが普通です。
大きい方が形的にはしっかりしますので、皮は割と柔らかめ設定ですかね。
でもやはり油断するとペシャンコになってしまうのは変わりません。
柔らかいので特に」
じっくりと焼きながら、その間に他の鉄板に細長く生地をセットしていく私。
「それは?」
「こいつはエクレア。
チョコが手に入りましたので、これを。
こいつはサイズが小さめなので、ホイップクリームは使いません。
その代わりにチョコがかかっておりますので、二つの味が楽しめる事に変わりないです」
そして、また草色の奴がピクピクっとしている。
何回ピクっとしたら起き上がるのか。
最低でも夕方直前には起こさないといけないのですけどね。
まだ蹴りを入れる時間じゃありませんね。
どうせ蹴りを入れるなら、そいつを敷布団や枕の代わりにしている奴らから。
でもさすがにイケメン王太子に蹴りを入れるのは少々躊躇われます。
そのあたりは弟の元王子様にやっていただきますか。
タイムリミットまで、あと三時間といったところですかね。
今夜の主賓であるはずの草色の奴も含めて、お前らいい加減に起きろよ。
一体いつまで飲んでたんだ、もう。
その間にプリンアラモード用のプリンやフルーツなどの仕込みをしておきますか。
チュールがそれらを食べたそうにしてるので、各部素材を少し齧らせておく事に。
チャックが何故かウエハースが気になるらしくて、ひょいっと触手でつまんで齧っていた。
「それ、美味しいですか?」
『微妙です。
本官には少々歯ごたえが足りないかもしれないと聖女サヤに報告しておきます。
しかし、微妙かつ気になる物ですとも考察結果を告白します』
これはチャックにしては珍しい反応が返ってきたな。
ウエハースが気に入ったのなら、もっと買っておくか。
確かにこの手のウエハースは多少硬めに出来ているような。
きっとすぐにふやけてしまいそうなアイスクリームに刺す物と共用にしているのではないかと思うのだが、そもそも、この世界にはアイスクリームは無さそうなんだけど。
この子の場合、普通に食べられる物を欲する事自体が珍しいのだし。
たぶん、食い物を欲しがるのはこれが初めてなんじゃないのだろうか。
だが、確かに微妙な物には違いない。
そして焼き上がって来た大きめのシューが冷めてから、エクレアを魔導オーブンに突っ込んでおいて、切り込みを入れてクリームを詰めていきます。
これが美味いんだな、また。
『一個食べる』
「はいどうぞ。
どうせなら、そこの草色の奴の前で食べてきて。
いい加減に起こさないとな。
うっかり取られないようにね。
もし起き上がってきたら、こっちへ誘導してちょうだい」
『はーい』
まあ、そいつが起き上がって王太子が布団から放り出されたのなら私のせいじゃないですからね。
万が一頭を打って死んでも、私が生き返らせておけば無かった事に出来ますし。
その辺は本人の係累である弟さんで人体実験済みですので何も問題ありませんね。
0
あなたにおすすめの小説
存在感のない聖女が姿を消した後 [完]
風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは
永く仕えた国を捨てた。
何故って?
それは新たに現れた聖女が
ヒロインだったから。
ディアターナは
いつの日からか新聖女と比べられ
人々の心が離れていった事を悟った。
もう私の役目は終わったわ…
神託を受けたディアターナは
手紙を残して消えた。
残された国は天災に見舞われ
てしまった。
しかし聖女は戻る事はなかった。
ディアターナは西帝国にて
初代聖女のコリーアンナに出会い
運命を切り開いて
自分自身の幸せをみつけるのだった。
その聖女は身分を捨てた
喜楽直人
ファンタジー
ある日突然、この世界各地に無数のダンジョンが出来たのは今から18年前のことだった。
その日から、この世界には魔物が溢れるようになり人々は武器を揃え戦うことを覚えた。しかし年を追うごとに魔獣の種類は増え続け武器を持っている程度では倒せなくなっていく。
そんな時、神からの掲示によりひとりの少女が探し出される。
魔獣を退ける結界を作り出せるその少女は、自国のみならず各国から請われ結界を貼り廻らせる旅にでる。
こうして少女の活躍により、世界に平和が取り戻された。
これは、平和を取り戻した後のお話である。
聖女が降臨した日が、運命の分かれ目でした
猫乃真鶴
ファンタジー
女神に供物と祈りを捧げ、豊穣を願う祭事の最中、聖女が降臨した。
聖女とは女神の力が顕現した存在。居るだけで豊穣が約束されるのだとそう言われている。
思ってもみない奇跡に一同が驚愕する中、第一王子のロイドだけはただ一人、皆とは違った視線を聖女に向けていた。
彼の婚約者であるレイアだけがそれに気付いた。
それが良いことなのかどうなのか、レイアには分からない。
けれども、なにかが胸の内に燻っている。
聖女が降臨したその日、それが大きくなったのだった。
※このお話は、小説家になろう様にも掲載しています
奥様は聖女♡
喜楽直人
ファンタジー
聖女を裏切った国は崩壊した。そうして国は魔獣が跋扈する魔境と化したのだ。
ある地方都市を襲ったスタンピードから人々を救ったのは一人の冒険者だった。彼女は夫婦者の冒険者であるが、戦うのはいつも彼女だけ。周囲は揶揄い夫を嘲るが、それを追い払うのは妻の役目だった。
主婦が役立たず? どう思うかは勝手だけど、こっちも勝手にやらせて貰うから
渡里あずま
ファンタジー
安藤舞は、専業主婦である。ちなみに現在、三十二歳だ。
朝、夫と幼稚園児の子供を見送り、さて掃除と洗濯をしようとしたところで――気づけば、石造りの知らない部屋で座り込んでいた。そして映画で見たような古めかしいコスプレをした、外国人集団に囲まれていた。
「我々が召喚したかったのは、そちらの世界での『学者』や『医者』だ。それを『主婦』だと!? そんなごく潰しが、聖女になどなれるものか! 役立たずなどいらんっ」
「いや、理不尽!」
初対面の見た目だけ美青年に暴言を吐かれ、舞はそのまま無一文で追い出されてしまう。腹を立てながらも、舞は何としても元の世界に戻ることを決意する。
「主婦が役立たず? どう思うかは勝手だけど、こっちも勝手にやらせて貰うから」
※※※
専業主婦の舞が、主婦力・大人力を駆使して元の世界に戻ろうとする話です(ざまぁあり)
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
女神に頼まれましたけど
実川えむ
ファンタジー
雷が光る中、催される、卒業パーティー。
その主役の一人である王太子が、肩までのストレートの金髪をかきあげながら、鼻を鳴らして見下ろす。
「リザベーテ、私、オーガスタス・グリフィン・ロウセルは、貴様との婚約を破棄すっ……!?」
ドンガラガッシャーン!
「ひぃぃっ!?」
情けない叫びとともに、婚約破棄劇場は始まった。
※王道の『婚約破棄』モノが書きたかった……
※ざまぁ要素は後日談にする予定……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる