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第二章 世直し聖女
2-30 必殺のアイテム
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『ねえ、サヤ。
その草色、ピクピクしているだけでちっとも起きないね。
思いっきりシュークリームの匂いを嗅がせてみたんだけど』
「急性アルコール中毒で死んでないでしょうね。
一応、そいつのための宴が開かれる予定なのですけれど。
そもそも、神獣などと呼ばれるような、実体さえも消してしまえるような奇天烈な生き物が、そう簡単に死ぬものなのだろうか」
すると、その草色の『ふごーっ』というような立派な鼾がまるで私の疑問に答えるかのように流れてきた。
他の奴らも皆鼾をかいてますしね。
もう、おやつは結構な数が揃ってきたのですが、奴ら一向に起きてくる気配が欠片もない。
皆であれこれと試食も済ませたので、良い匂いはたっぷり漂っているのですが。
「リュール、もう一時間して起きなかったら、好きな奴から蹴りを入れてみてください」
「そうか、仕方がないな。
どいつもこいつも本当に困った奴らだ」
その意見には激しく同意しますが、リュールがどれから蹴りを入れていくのか、ちょっと興味はありますね。
やっぱり思いっきり世話を焼かす上司の騎士団長かしら。
あるいは、同じく世話の焼ける実のお兄ちゃん?
まあその辺は寝ていたってそう困りませんので、彼の職務的には絶対に起こさないといけない草色からかな。
あれさえ起こせば、他の奴らは強制的に敷布団や枕から引き剥がされて、起き上がるしかないという必然性もありますしね。
そして、さらにスイーツを量産して夜の部のお菓子を作る準備をしているうちに、もう時間になってしまった。
「仕方がないな。
ああそうだ。
リュール、ちょっと向こうを向いていてください。
まだ新しい神官服に着替えてませんでした。
それから、そいつらを起こしましょう」
向こうを向いているだけのイケメンな元王子様に衣擦れの音を聞かせながら着替えをするというイベントをこなし、そのうちに迎えが来てしまいそうなほど時間が迫ったので、処刑タイムという事で蹴りを実施する事になった。
リュールは器用に騎士団長の体の下に足を差し込んで、ズイっとゆっくり床へ彼をずり降ろしました。
それ、ゴンっと頭が床に当たるようにしないと起きないのでは。
私の場合は遠慮なく、アメリに床へ落とさせましたよね?
それから俯せ加減に乗っかっている兄王太子を足で何度もひっくり返していき、芋虫ゴロゴロで同じく床に落としました。
もちろん、そんな生易しい起こし方で起きるような奴らではありませんが。
「それもう足でやる必要がないんじゃ」
「お前が執拗に蹴りに拘っていたのではないか。
さすがに上司と王太子に蹴りを入れるわけにもいかんだろう。
最後の奴はどうするかな」
「もういいです。
チャックお願い。
くすぐりの刑でね」
『イエスマム』
そして、チャックはそいつらに近づくと、触手をざらっとまとめて伸ばし、全員まとめて刑を執行した。
まず王太子殿下がジタバタしながら起き上がり、その次が騎士団長で、こっちはかなり時間がかかった。
草色は起きそうなのに何故か抵抗して起きないので、チャックは上に乗っかるようにして、足でわさわさまで実行したがピクピクするだけで何故か起きない。
「このう。それならそれで考えがあります。
それ、チャック。
例の物でやっておしまいなさい」
そう言って私はチャックに収納から出したそいつを渡した。
『では、皆さん。行きますよと本官は宣言します』
そして、まだ寝惚けている連中を除き、全員が対応に入った。
それを見て、チャックがかまします。
次の瞬間に、草色の両耳の部分で物凄い音が炸裂し、まだ寝惚けていた二人も飛び起きた。
「なんだ、なんだ」
「敵襲⁉」
そして、その執念深く眠りから覚めなかった今夜の主役が、ようやく目覚めた。
もちろん、そいつはクラッカーであった。
それは日本でも、何かあれば使っていたお気に入りのアイテムなので、ちゃんと買っておいたのだ。
「やれやれ、やっと起きましたか。
ここまでしないと起きないなんて私並みの寝坊助ですね。
おはよう、サル」
「おや、今何か大きな音がしたような。
気のせいだったでごわすか?」
「……今度から、あなたを起こす時には、クラッカーを十個鳴らす事にしますね」
「腹へった。何か食い物欲しい」
「ギリギリまで寝ていて、起きるなり言う事がそれですか。
では仕方がないからもう会場へ行きましょうか。
本当は呼ばれるまで、ここで待っていないといけないはずなんですが」
「ああ、構わん。
今夜はそいつが主賓なんだから。
俺達はただの付き添いだ」
「でも、また今晩も弾けるつもり満々の方々が、そこに約二名いらっしゃいますけどね」
だが、王太子殿下は文句を言った。
「なんだ、もうそんな時間か。
どうせならもっと早く起こしてくれ」
「どの口でそれを言いますか。
もういいです。
そのまんま寝ていたから王子様ルックが見事なくらい皺になっているじゃありませんか。
とりあえず浄化だけかけておきましょうか」
騎士団長にはリュールが浄化をかけていた。
もろに背中が汚れていますから。
王子様はまだ布団に寄っかかっていた分は綺麗だったけど、膝とかは汚れちゃっていたし、前の方が皺になってる。
所詮、今夜は王太子も刺し身のツマ。
それに元々ワイルド系の王子なんで問題なしっ!
その草色、ピクピクしているだけでちっとも起きないね。
思いっきりシュークリームの匂いを嗅がせてみたんだけど』
「急性アルコール中毒で死んでないでしょうね。
一応、そいつのための宴が開かれる予定なのですけれど。
そもそも、神獣などと呼ばれるような、実体さえも消してしまえるような奇天烈な生き物が、そう簡単に死ぬものなのだろうか」
すると、その草色の『ふごーっ』というような立派な鼾がまるで私の疑問に答えるかのように流れてきた。
他の奴らも皆鼾をかいてますしね。
もう、おやつは結構な数が揃ってきたのですが、奴ら一向に起きてくる気配が欠片もない。
皆であれこれと試食も済ませたので、良い匂いはたっぷり漂っているのですが。
「リュール、もう一時間して起きなかったら、好きな奴から蹴りを入れてみてください」
「そうか、仕方がないな。
どいつもこいつも本当に困った奴らだ」
その意見には激しく同意しますが、リュールがどれから蹴りを入れていくのか、ちょっと興味はありますね。
やっぱり思いっきり世話を焼かす上司の騎士団長かしら。
あるいは、同じく世話の焼ける実のお兄ちゃん?
まあその辺は寝ていたってそう困りませんので、彼の職務的には絶対に起こさないといけない草色からかな。
あれさえ起こせば、他の奴らは強制的に敷布団や枕から引き剥がされて、起き上がるしかないという必然性もありますしね。
そして、さらにスイーツを量産して夜の部のお菓子を作る準備をしているうちに、もう時間になってしまった。
「仕方がないな。
ああそうだ。
リュール、ちょっと向こうを向いていてください。
まだ新しい神官服に着替えてませんでした。
それから、そいつらを起こしましょう」
向こうを向いているだけのイケメンな元王子様に衣擦れの音を聞かせながら着替えをするというイベントをこなし、そのうちに迎えが来てしまいそうなほど時間が迫ったので、処刑タイムという事で蹴りを実施する事になった。
リュールは器用に騎士団長の体の下に足を差し込んで、ズイっとゆっくり床へ彼をずり降ろしました。
それ、ゴンっと頭が床に当たるようにしないと起きないのでは。
私の場合は遠慮なく、アメリに床へ落とさせましたよね?
それから俯せ加減に乗っかっている兄王太子を足で何度もひっくり返していき、芋虫ゴロゴロで同じく床に落としました。
もちろん、そんな生易しい起こし方で起きるような奴らではありませんが。
「それもう足でやる必要がないんじゃ」
「お前が執拗に蹴りに拘っていたのではないか。
さすがに上司と王太子に蹴りを入れるわけにもいかんだろう。
最後の奴はどうするかな」
「もういいです。
チャックお願い。
くすぐりの刑でね」
『イエスマム』
そして、チャックはそいつらに近づくと、触手をざらっとまとめて伸ばし、全員まとめて刑を執行した。
まず王太子殿下がジタバタしながら起き上がり、その次が騎士団長で、こっちはかなり時間がかかった。
草色は起きそうなのに何故か抵抗して起きないので、チャックは上に乗っかるようにして、足でわさわさまで実行したがピクピクするだけで何故か起きない。
「このう。それならそれで考えがあります。
それ、チャック。
例の物でやっておしまいなさい」
そう言って私はチャックに収納から出したそいつを渡した。
『では、皆さん。行きますよと本官は宣言します』
そして、まだ寝惚けている連中を除き、全員が対応に入った。
それを見て、チャックがかまします。
次の瞬間に、草色の両耳の部分で物凄い音が炸裂し、まだ寝惚けていた二人も飛び起きた。
「なんだ、なんだ」
「敵襲⁉」
そして、その執念深く眠りから覚めなかった今夜の主役が、ようやく目覚めた。
もちろん、そいつはクラッカーであった。
それは日本でも、何かあれば使っていたお気に入りのアイテムなので、ちゃんと買っておいたのだ。
「やれやれ、やっと起きましたか。
ここまでしないと起きないなんて私並みの寝坊助ですね。
おはよう、サル」
「おや、今何か大きな音がしたような。
気のせいだったでごわすか?」
「……今度から、あなたを起こす時には、クラッカーを十個鳴らす事にしますね」
「腹へった。何か食い物欲しい」
「ギリギリまで寝ていて、起きるなり言う事がそれですか。
では仕方がないからもう会場へ行きましょうか。
本当は呼ばれるまで、ここで待っていないといけないはずなんですが」
「ああ、構わん。
今夜はそいつが主賓なんだから。
俺達はただの付き添いだ」
「でも、また今晩も弾けるつもり満々の方々が、そこに約二名いらっしゃいますけどね」
だが、王太子殿下は文句を言った。
「なんだ、もうそんな時間か。
どうせならもっと早く起こしてくれ」
「どの口でそれを言いますか。
もういいです。
そのまんま寝ていたから王子様ルックが見事なくらい皺になっているじゃありませんか。
とりあえず浄化だけかけておきましょうか」
騎士団長にはリュールが浄化をかけていた。
もろに背中が汚れていますから。
王子様はまだ布団に寄っかかっていた分は綺麗だったけど、膝とかは汚れちゃっていたし、前の方が皺になってる。
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