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第一章 渡り人
1-9 回復魔法
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「さあ着いたぞ、アンソニー。ここが教会だ」
う、ボロい。まあ田舎の小さな村なんだから仕方がない。
人手もないし、どうにも困ったら村から人を出して直すんだろう。この前の教会の人と二人しかいないんじゃないかな。
だが、俺は探した。神父様の姿を。どこだ、俺のターゲットは。ホシは一体どこだ。気分は刑事ドラマの主役だぜ。
だが、傍から見ていると可愛いものらしい。皆、かがんで頭を撫でてくれる。うん、チェックしたけれど、どいつもこいつも碌なスキルは持っていないな。
しかし、結構高度な裁縫や革細工のスキルの持ち主と、美味しいお菓子の作り方を知っている人がいたので、ありがたく頂いた。この世界では手に職をつけておいて損はあるまい。
頭を撫でてやっている子供が、まさかそんな可愛げのない事を考えているとは誰も思っていないようだ。だが、俺もうろうろしているうちに可愛い物を見つけた。どうやら精霊らしい、変わった鳥だ。
「鳥さん、鳥さん。もしかして精霊さん?」
「そうだけど、あんた誰? あたしが見えるとは。あ、渡り人発見」
「渡り人?」
「あんた、世界を魂で渡ったんでしょ」
「イエス。さすが、よく知っているね。ところで神父様を知らない?」
「あっちで回復施術しているわよ」
「わあ、見たい!」
「じゃあ、ついていらっしゃい」
俺は、その優雅に羽ばたく極楽鳥のような色彩豊かな精霊鳥の後をついていった。この精霊も俺には触れるのだろうか。
他の人の体は見事に通り抜けているのだけれど。まるで立体映像だ。目に見えているのではなく、渡り人の魂がその存在を感じ取れて、脳内にその映像を直接結んでいるだけなのかもしれない。
「あー、アンソニー。そんなところにいたー」
う、追っ手に捕まってしまった。いや、別に撒いた訳じゃないんだが。
「もう。一人でうろうろしちゃ駄目よ」
「でも、ミョンデも砂糖を使ったお菓子に釣られていたよね」
「あう」
しまった。そんな素敵イベントがあったのか。まだ4歳の姉上には厳しい攻撃だな。
「アンソニー、そんな顔しなくても。はい、これ、お前の分」
優しい優しい兄上様、いつもありがとうございます。
すでに齢8ヶ月にして、兄上に弱みを握られてしまっている俺。まあ体はチビなんだからしょうがない。
俺はこの体で初めて味わう砂糖菓子の至福に半分魂を持っていかれていたのだが、現場にはなんとか到着できた。
ナビゲーターの極楽鳥精霊が羽根で指し示すところには、少し年配の神父様がいた。この神父様が亡き後には後釜に座る手もあるかなどと黒い事を考えていたら、精霊鳥が呆れた様子で見ていた。
いっけねえ、精霊は心を読むんだったな。俺はとっさに笑顔のピースサインで胡麻化した。相手はやれやれといった感じで首を振っていたのだが。
「さあ、気を楽にして。あなたに神の福音を。ヒール」
おおっ。初めて見る回復魔法。人が魔法を使っているのは初めてなのだ。
今までは自分が使っていたライトの魔法しかない。そっと神父様に近づき、電磁交換に集中している俺。その間に神父様は何人にも施していたので、ハッと気がついたら回復魔法を習得していた。
「たいしたもんねえ、渡り人」
「馬鹿を言えよ。このスキル・魔法習得のスキルは俺の研究と努力と修練の賜物なんだぞ」
苦労したんだぜえ。物凄く実入りは良かったんだが調子こきすぎて殺されて、今はこのザマなのだがね。けたけたと笑う精霊鳥。
ああ、精霊に隠し事はできないからね。いいんだけどさ。どうせ、他の人には笑われているのは見えないのだし。
「おや、君は精霊とお話ができるのかね?」
「え? え?」
ヤベエ。神父様も精霊が見える人だったらしい。それは可能性ありだよな。何か清廉そうな方だし。慌てる俺に神父様は唇に手を当てて、笑ってこう言ってくれた。
「それは私と君の秘密にしておこう。よかったら一緒においで。もっと回復魔法を見せてあげよう」
「わあ~」
俺は神父様にギュッと抱き着いた。嬉しくされて抱き着きたかったのもあるのだが、やはりスキルは欲しい。神父様は村人に施術を繰り返し、そして、ついに俺は獲得したのだ。
『回復魔法全般』
う、この神父様は凄い。各種の回復魔法を一通り持っている。
毒消しや病気の対応、高度な治療魔法など、後は瘴気のような穢れを消したりする事もできるようだ。さすがは教会だなあ。そして実践で学ぶ俺なのだった。
「あと、良い物を見せてあげよう」
そう言ってついていった先には。なんと『図書室』があった。
「うわー! うわわわわ」
びっしりと棚に詰まった本。俺は歓喜して突っ込んでいった。やっと歩き出したばかりの赤ん坊の全力に過ぎませんが。
物語、狩猟や農業に役立つ実用書、裁縫や料理、哲学や神学などの本がいっぱいだ。子供向けのものも多い。目移りするぜ。その様子に神父様も本当に幸せそうだ。
「はは、信者さんが寄付してくれたものとかだよ。よかったら字も教えてあげるから通いなさい」
「はい、先生」
こうして俺は黒猫先生に次ぐ、第二の先生に出会えたのであった。夢中で本を読んでいた。傍からは赤ん坊がただ弄り回しているようにしか見えないのだろうが。
いやあ、自分の足で歩けるって本当にいいわあ。でも、まだ勝手には出歩けないのですがね。やっともうすぐ9か月目になる赤ん坊なので。帰りは兄上に背負われて鼻提灯でしたわ。いや、面倒見のいい兄で助かります。
う、ボロい。まあ田舎の小さな村なんだから仕方がない。
人手もないし、どうにも困ったら村から人を出して直すんだろう。この前の教会の人と二人しかいないんじゃないかな。
だが、俺は探した。神父様の姿を。どこだ、俺のターゲットは。ホシは一体どこだ。気分は刑事ドラマの主役だぜ。
だが、傍から見ていると可愛いものらしい。皆、かがんで頭を撫でてくれる。うん、チェックしたけれど、どいつもこいつも碌なスキルは持っていないな。
しかし、結構高度な裁縫や革細工のスキルの持ち主と、美味しいお菓子の作り方を知っている人がいたので、ありがたく頂いた。この世界では手に職をつけておいて損はあるまい。
頭を撫でてやっている子供が、まさかそんな可愛げのない事を考えているとは誰も思っていないようだ。だが、俺もうろうろしているうちに可愛い物を見つけた。どうやら精霊らしい、変わった鳥だ。
「鳥さん、鳥さん。もしかして精霊さん?」
「そうだけど、あんた誰? あたしが見えるとは。あ、渡り人発見」
「渡り人?」
「あんた、世界を魂で渡ったんでしょ」
「イエス。さすが、よく知っているね。ところで神父様を知らない?」
「あっちで回復施術しているわよ」
「わあ、見たい!」
「じゃあ、ついていらっしゃい」
俺は、その優雅に羽ばたく極楽鳥のような色彩豊かな精霊鳥の後をついていった。この精霊も俺には触れるのだろうか。
他の人の体は見事に通り抜けているのだけれど。まるで立体映像だ。目に見えているのではなく、渡り人の魂がその存在を感じ取れて、脳内にその映像を直接結んでいるだけなのかもしれない。
「あー、アンソニー。そんなところにいたー」
う、追っ手に捕まってしまった。いや、別に撒いた訳じゃないんだが。
「もう。一人でうろうろしちゃ駄目よ」
「でも、ミョンデも砂糖を使ったお菓子に釣られていたよね」
「あう」
しまった。そんな素敵イベントがあったのか。まだ4歳の姉上には厳しい攻撃だな。
「アンソニー、そんな顔しなくても。はい、これ、お前の分」
優しい優しい兄上様、いつもありがとうございます。
すでに齢8ヶ月にして、兄上に弱みを握られてしまっている俺。まあ体はチビなんだからしょうがない。
俺はこの体で初めて味わう砂糖菓子の至福に半分魂を持っていかれていたのだが、現場にはなんとか到着できた。
ナビゲーターの極楽鳥精霊が羽根で指し示すところには、少し年配の神父様がいた。この神父様が亡き後には後釜に座る手もあるかなどと黒い事を考えていたら、精霊鳥が呆れた様子で見ていた。
いっけねえ、精霊は心を読むんだったな。俺はとっさに笑顔のピースサインで胡麻化した。相手はやれやれといった感じで首を振っていたのだが。
「さあ、気を楽にして。あなたに神の福音を。ヒール」
おおっ。初めて見る回復魔法。人が魔法を使っているのは初めてなのだ。
今までは自分が使っていたライトの魔法しかない。そっと神父様に近づき、電磁交換に集中している俺。その間に神父様は何人にも施していたので、ハッと気がついたら回復魔法を習得していた。
「たいしたもんねえ、渡り人」
「馬鹿を言えよ。このスキル・魔法習得のスキルは俺の研究と努力と修練の賜物なんだぞ」
苦労したんだぜえ。物凄く実入りは良かったんだが調子こきすぎて殺されて、今はこのザマなのだがね。けたけたと笑う精霊鳥。
ああ、精霊に隠し事はできないからね。いいんだけどさ。どうせ、他の人には笑われているのは見えないのだし。
「おや、君は精霊とお話ができるのかね?」
「え? え?」
ヤベエ。神父様も精霊が見える人だったらしい。それは可能性ありだよな。何か清廉そうな方だし。慌てる俺に神父様は唇に手を当てて、笑ってこう言ってくれた。
「それは私と君の秘密にしておこう。よかったら一緒においで。もっと回復魔法を見せてあげよう」
「わあ~」
俺は神父様にギュッと抱き着いた。嬉しくされて抱き着きたかったのもあるのだが、やはりスキルは欲しい。神父様は村人に施術を繰り返し、そして、ついに俺は獲得したのだ。
『回復魔法全般』
う、この神父様は凄い。各種の回復魔法を一通り持っている。
毒消しや病気の対応、高度な治療魔法など、後は瘴気のような穢れを消したりする事もできるようだ。さすがは教会だなあ。そして実践で学ぶ俺なのだった。
「あと、良い物を見せてあげよう」
そう言ってついていった先には。なんと『図書室』があった。
「うわー! うわわわわ」
びっしりと棚に詰まった本。俺は歓喜して突っ込んでいった。やっと歩き出したばかりの赤ん坊の全力に過ぎませんが。
物語、狩猟や農業に役立つ実用書、裁縫や料理、哲学や神学などの本がいっぱいだ。子供向けのものも多い。目移りするぜ。その様子に神父様も本当に幸せそうだ。
「はは、信者さんが寄付してくれたものとかだよ。よかったら字も教えてあげるから通いなさい」
「はい、先生」
こうして俺は黒猫先生に次ぐ、第二の先生に出会えたのであった。夢中で本を読んでいた。傍からは赤ん坊がただ弄り回しているようにしか見えないのだろうが。
いやあ、自分の足で歩けるって本当にいいわあ。でも、まだ勝手には出歩けないのですがね。やっともうすぐ9か月目になる赤ん坊なので。帰りは兄上に背負われて鼻提灯でしたわ。いや、面倒見のいい兄で助かります。
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