DNAにセーブ&ロード 【前世は散々でしたが、他人のDNAからスキルを集めて、今度こそ女の子を幸せにしてみせます】

緋色優希

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第一章 渡り人

1-10 狩猟の時間

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 そうして、俺は暇があると教会に入り浸った。兄上が畑仕事に行く前に神父様に預けていき、帰りに日暮れ前に迎えにきてくれる。

 むろん、食料などは毎朝持っていくのだ。俺が大食漢なので。叔父も俺がよく食べるので恐縮して、獲物が余ると教会へよく持ってきてくれる。

「叔父ちゃん、ありがとー」
「はは、いっぱい食って大きくなれよ、アンソニー」

 すでにかなり大きくなっている俺。今はもう一歳になったのだが、圧倒的に重い。すでに20キロを超えた。赤ん坊がな。

 完全に小学生クラスの怪物と化している。何しろ、普通の子が5キロくらいの頃に11キロはあったからな~。

 その分はよく食べます。そのうち自分で食料を手に入れないと、十分な蛋白質などが摂取できないだろう。

 本を読むかたわら、罠の作り方も練習していた。鍛冶屋さんでもらった鉄屑、紐、石や枝などの自然物。スキルとして組み込まれているデータを、DNAロードの能力で脳内のメモリーに展開していく。

「お前は器用だねえ。それで動物を捕まえたいのかい?」
 眼鏡のアルスラムさんがそう訊いてくれる。

 もうおむつは取れているのだ。何しろガタイがいからね。すでに一人で歩いているし。さすがに誰かがついていないと家からは出してもらえないのだが。

 母親も俺のような重量物を背負って畑に出るのは厳しいし、まだ草取りをさせられるような歳ではないので、教会で預かってもらえるのは、ありがたいらしい。

 その図体を見て、誰もがもう俺を赤ん坊扱いしなくなった。もはや生体サイボーグといってもいいのではないだろうか。自分のスキルで体を成長強化しているからな。

 兄上は、どちらかというと線が細いタイプなので、俺は赤ん坊から脱却できていない歳なのだが、もう背負われる事はない。そのうち、瞬間とはいえ兄を背負って見せるぜ。そういうスキルってないのかしら。

 そして、ついに叔父について罠を仕掛ける練習をさせてもらえる事になった。俺が頑張ってこしらえた針金罠だ。ウサギ用の簡単な物だ。ウサギは畑を狙う害獣なので許可が下りた。

 針金自体が貴重なので、そんな物を仕掛ける猟師はいないのだが。鉄屑を村の鍛冶屋さんからいただいたスキルでなんとか作り上げた自家製の針金で作ったものだ。

 日本で普通に使われている針金のようにはいかない。細長くした鉄など簡単に折れてしまうのだ。なんとかかんとか、鍛冶屋さんにも手伝ってもらい、やや太目な針金罠は完成した。

 新しい売り物ができるかもという期待で、鍛冶屋の親父も半分お遊びでやってくれた。赤ん坊は普通このような物を欲しがらないものだけれどね。

「そうら、アンソニー坊、できたぞ。お前は本当に変わった子供だねえ」

 俺は全部で5本作ってくれたそれを使って、叔父に手伝ってもらい、ニンジンを餌に朝方仕掛けておいた。

 そして夕方見て回ったが、なんと見事に三匹もかかっていた。二つは壊れてしまっていたのだが。さすがに手製の針金はウサギが暴れた程度でも持たない場合があるようだった。

 さっそく勇んで、教会へ届けた。ウサギを一匹抱きしめてきた俺を見て神父様達も驚いた。

「ほお、自分で考え付いた罠でウサギを捉えたというのかい? たいしたものだな」
 神父様に褒めてもらえて素直に嬉しい。天上の喜びでございますがな。

 いやあ、前世の記憶というか、狩猟免許を持ったウサギ捕り名人の爺さんからいただいたスキルのお蔭ですわ。

 習熟しないと狩猟の成果には繋がらないのでしょうが。それでも、今日は大量だったのだ。素直に喜びたい。

 それから鍛冶屋の親父さんのところにもお礼にと一匹持っていく。
「ファングさん、ウサギ捕れたよー!」

「ほう。やったか。たいしたものだな。ウサギは作物を荒らすからな。こいつはこの先も有効な罠かもしれん」

「もっといい針金作ってえ。二個は針金が壊れちゃった。まだまだ硬くて脆いんだ。もっと粘る鉄がいいの」

 俺はそう言いながら、壊れた針金を差し出した。ファングさんは、その破損の具合を見ながら唸った。

「うーむ、粘る鉄か。そうだな、引き続きやってみるか。そいつは他の物にも使えそうだ」
 柔らか過ぎても駄目なんだがな。

 一通りの知識は伝えておいた。教会の本から学んだという言い訳はしておいたが。どうせ、この親父も本は読めないんだからバレやしない。

 残りの一匹は当然我が家の食卓に供された。母親も驚いたが、今日はシチューにしてくれるようだ。俺は非常にそわそわしながら待った。自分が獲った初の獲物が料理されているのだ。思わず大きく腹の虫を鳴かせた。

「アンソニー、食いしん坊だから、とうとう自分でウサギを獲ってきちゃったのねえ」

 ミョンデ姉が感心したように言ったが、ミハエル兄は優しく頭を撫でてくれた。まだ父と一緒に畑に残っていたエマ姉が帰ってきた。

「ああ、いい匂い。もう、お腹ペコペコよ」
「お姉ちゃん、今日はアンソニーが獲ってきたウサギのシチューよ」

「まあ凄い。まだ小さいのに本当に獲ってきちゃったのね、えらいえらい」
 大好きなエマ姉に頭を撫でられて、天にも昇る心地だったが、ちゃんと謙遜はしておく。

「猟師の叔父さんと一緒だもの。あと面倒を見ながら本を読ませてくれる神父様達や、手伝ってくれる鍛冶屋のファングさん達のお蔭だよ。僕一人じゃ無理だよ~」

 そして家族全員と叔父で囲んだ夕食は天上の味だった。ありがとう、ウサギ。

 それから毎日、罠の改良をしながら10個くらい仕掛けていき、平均で毎日ウサギが5匹は獲れた。さすがに毎日ウサギばかりでは飽きるので売ったりもした。

 罠はだんだん壊れにくくなってきたようだ。ウサギを売ったお金の中からファングさんにも、きちんとお礼を払い、残りから家に半分入れて、後は村の役場に貯金した。

 そういうお金の中から村で困る人がいると村役場が一時的にお金を貸してあげたりするのだ。借りたまま夜逃げする人はまずいない。

 そうなると生きていけなくなってしまうからだ。いろんな職業はあるけれど、学もない農民には再就職はかなり厳しいだろう。簡単に他所の村では農民として雇ってはくれない。

 そして気が付いたら、いつのまにか、俺は村ではウサギのアンソニーと呼ばれていた。幼児だが、スキル頼みの知識と腕力で解体すらできるようになっていたのだ。
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