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第一章 渡り人
1-17 手強い奴ら
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彼女はつかつかとやってくると、ひょいっと俺を抱き上げた。硬直のあまり身動き一つできずに、比較的豊かな胸の谷間に顔を押し付けられた。
俺はガクガクと震えながら、その状況をあまり堪能できなかった。そして彼女は、笑顔で子供をあやすふりをしながら、凍るような低い声で、俺の耳元で囁く。
「面白い坊やだ。人間のくせに精霊が見えているんだね。そうか、渡り人か。まさか、そのようなスキルを持っている人間がいようとはな。他人のスキルを使えるようにできるのか。おーおー、あいつらのスキルが全部あるじゃないか。どこで、その厄介なスキルを手に入れた?」
うわ、俺がスキルハンターの能力を持っているのが、もろにバレているのか。他人のスキルも見えるらしい。俺は観念して正直に答えた。
「えーと、生前に研究して自分で作り上げたものです。この世界ではない場所で」
「はっはっは。だが、私のはやらないよ。エルフのスキルなんてものは、勝手に人に渡してはならないものなのでね。
まあ、あっちのチームの連中から盗めるものなら盗んでごらん。だが、あいつらは手強いぞ。中でも向こうのリーダーをしている上級冒険者のアラビムはなあ。バレたら、只じゃすまないと思うけれどね」
あ、どうやら見逃してくれるつもりらしい。面白がっているのか。
「まあこの先、この物騒な世界で生きるためには危ない橋も渡っておかないとね。とりあえず、あんたらがゴブリンを撃ち漏らした時の用心なのさ。あんたらだって神様じゃないんだ。念のために、いただける物はいただいておくのさ」
エルフのお姉ちゃんは、それを聞いて、さもおかしいという感じでさらに笑った。
「あんた、いい根性しているね。気に入ったよ。あたしはマリア。じゃあ、良い物をやろう。エルフの秘薬、完全回復薬だ。貴重品だから、一本だけしかやれない。どうしてもという時だけ使いな」
俺は、そのガラス瓶に入った綺麗な緑なのか紫なのかよくわからない液体を見詰めた。
「これって飲むの? かけるの?」
「んー、どちらでもいいが、外傷だけならかけた方がいいかな」
地面に開放された俺は、それを大事そうにウサギ革で作られたお手製のもふもふポシェットの中に仕舞った。
「ありがとう。まあ、挑戦してみるさ。別にスキルを奪ってしまう訳じゃない。スキルをコピーされても元のスキルが消えてしまうわけではないから。それにコピーしたスキルは消えないから、バレたってどうにもならない。まあ半殺しで済むんだったら、大人しくお薬の恩恵に与るよ」
それを聞いたエルフのマリアはまた大笑いしている。最初から、そのつもりでくれたのか?
そして、彼ら別の冒険者チームが探索から帰ってきた。
「おー、お前ら戻ってきたのか。どうだった。本当にゴブリンなんているのか? 欠片も見えないぞ。ん? その餓鬼はなんだ」
マリアはくすくす笑っている。俺のスキルハントを見物する腹らしい。精霊が見える人間にまず悪さをする奴はいないので、俺の狼藉は多めに見てくれるつもりのようだ。俺はマリアに向けて横目でニヤリと笑い、いきなり奴には突っ込んではいかない。
「ああ、彼らはこの村の狩人、森の主さ。地形の参考のために来てもらった。また、場合によっては村が襲撃される可能性があるそうだ。
そっちの子は将来の防衛ために見学だと。村長からの依頼だ。理に適っているから連れてきた。昨日、きっちりゴブリンを仕留めてゴブリン・スレイヤーの称号は持っているよ。腕前もさっき確認した。お守りなら、そこの叔父がやってくれるってさ」
ほう、と言った顔つきで奴は俺を見た。
「名は?」
「アンソニー。アンソニー・ブックフィールドだ」
「はは。いい面構えだ、さすがに猟師の子だな」
「お父さんは猟師の才能が無くて農家に婿入り。お爺ちゃんが凄い猟師だったよ」
俺はそんな事を言いながら、彼らの面子を見ていた。なるほどな。こっちのチームは一癖も二癖もありそうだ。
アネッサみたいに真っ直ぐな奴は一人もいない。どいつが何の役割をするのかも推察が難しい。手近にいた女に近寄ろうとしたら、逃げられた。
「悪いわね、坊や。あたしは、このエバンスに夢中なの。子供といえども他の男なんて近寄らせないわ」
「じゃあ、エバンスお兄ちゃん」
そう言って俺は彼のマントを掴んだが、振り払われた。死んだ真似は通用しそうもないメンツなので、大人しく大の字に転がっておいた。ちっ。
「俺は子供が嫌いだ」
こっちだって、お前みたいな奴は好きじゃねえんだがな。
覚えてろ。後で必ずお前のスキルを奪った挙句に、そのマントで目いっぱい鼻を拭いてやるぜ。なあに、ほんの利息代わりだ、遠慮なんかするなよ。それと、お前の女のスキルも手に入れた挙句に、おっぱいにも思いっきり顔を埋めてやるぜ~。
精霊は俺の心を読めるので、エルフのお姉にチクったらしい。楽しそうだな、マリア姉。どうせなら、もっと彼女のおっぱいを堪能しておけばよかった!
俺はガクガクと震えながら、その状況をあまり堪能できなかった。そして彼女は、笑顔で子供をあやすふりをしながら、凍るような低い声で、俺の耳元で囁く。
「面白い坊やだ。人間のくせに精霊が見えているんだね。そうか、渡り人か。まさか、そのようなスキルを持っている人間がいようとはな。他人のスキルを使えるようにできるのか。おーおー、あいつらのスキルが全部あるじゃないか。どこで、その厄介なスキルを手に入れた?」
うわ、俺がスキルハンターの能力を持っているのが、もろにバレているのか。他人のスキルも見えるらしい。俺は観念して正直に答えた。
「えーと、生前に研究して自分で作り上げたものです。この世界ではない場所で」
「はっはっは。だが、私のはやらないよ。エルフのスキルなんてものは、勝手に人に渡してはならないものなのでね。
まあ、あっちのチームの連中から盗めるものなら盗んでごらん。だが、あいつらは手強いぞ。中でも向こうのリーダーをしている上級冒険者のアラビムはなあ。バレたら、只じゃすまないと思うけれどね」
あ、どうやら見逃してくれるつもりらしい。面白がっているのか。
「まあこの先、この物騒な世界で生きるためには危ない橋も渡っておかないとね。とりあえず、あんたらがゴブリンを撃ち漏らした時の用心なのさ。あんたらだって神様じゃないんだ。念のために、いただける物はいただいておくのさ」
エルフのお姉ちゃんは、それを聞いて、さもおかしいという感じでさらに笑った。
「あんた、いい根性しているね。気に入ったよ。あたしはマリア。じゃあ、良い物をやろう。エルフの秘薬、完全回復薬だ。貴重品だから、一本だけしかやれない。どうしてもという時だけ使いな」
俺は、そのガラス瓶に入った綺麗な緑なのか紫なのかよくわからない液体を見詰めた。
「これって飲むの? かけるの?」
「んー、どちらでもいいが、外傷だけならかけた方がいいかな」
地面に開放された俺は、それを大事そうにウサギ革で作られたお手製のもふもふポシェットの中に仕舞った。
「ありがとう。まあ、挑戦してみるさ。別にスキルを奪ってしまう訳じゃない。スキルをコピーされても元のスキルが消えてしまうわけではないから。それにコピーしたスキルは消えないから、バレたってどうにもならない。まあ半殺しで済むんだったら、大人しくお薬の恩恵に与るよ」
それを聞いたエルフのマリアはまた大笑いしている。最初から、そのつもりでくれたのか?
そして、彼ら別の冒険者チームが探索から帰ってきた。
「おー、お前ら戻ってきたのか。どうだった。本当にゴブリンなんているのか? 欠片も見えないぞ。ん? その餓鬼はなんだ」
マリアはくすくす笑っている。俺のスキルハントを見物する腹らしい。精霊が見える人間にまず悪さをする奴はいないので、俺の狼藉は多めに見てくれるつもりのようだ。俺はマリアに向けて横目でニヤリと笑い、いきなり奴には突っ込んではいかない。
「ああ、彼らはこの村の狩人、森の主さ。地形の参考のために来てもらった。また、場合によっては村が襲撃される可能性があるそうだ。
そっちの子は将来の防衛ために見学だと。村長からの依頼だ。理に適っているから連れてきた。昨日、きっちりゴブリンを仕留めてゴブリン・スレイヤーの称号は持っているよ。腕前もさっき確認した。お守りなら、そこの叔父がやってくれるってさ」
ほう、と言った顔つきで奴は俺を見た。
「名は?」
「アンソニー。アンソニー・ブックフィールドだ」
「はは。いい面構えだ、さすがに猟師の子だな」
「お父さんは猟師の才能が無くて農家に婿入り。お爺ちゃんが凄い猟師だったよ」
俺はそんな事を言いながら、彼らの面子を見ていた。なるほどな。こっちのチームは一癖も二癖もありそうだ。
アネッサみたいに真っ直ぐな奴は一人もいない。どいつが何の役割をするのかも推察が難しい。手近にいた女に近寄ろうとしたら、逃げられた。
「悪いわね、坊や。あたしは、このエバンスに夢中なの。子供といえども他の男なんて近寄らせないわ」
「じゃあ、エバンスお兄ちゃん」
そう言って俺は彼のマントを掴んだが、振り払われた。死んだ真似は通用しそうもないメンツなので、大人しく大の字に転がっておいた。ちっ。
「俺は子供が嫌いだ」
こっちだって、お前みたいな奴は好きじゃねえんだがな。
覚えてろ。後で必ずお前のスキルを奪った挙句に、そのマントで目いっぱい鼻を拭いてやるぜ。なあに、ほんの利息代わりだ、遠慮なんかするなよ。それと、お前の女のスキルも手に入れた挙句に、おっぱいにも思いっきり顔を埋めてやるぜ~。
精霊は俺の心を読めるので、エルフのお姉にチクったらしい。楽しそうだな、マリア姉。どうせなら、もっと彼女のおっぱいを堪能しておけばよかった!
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